ピクシレーション
ピクシレーション(英: pixilation)は人間を1コマずつ動かして撮影しそれらを連続再生する技法・作品である[1]。
概要
[編集]ピクシレーションは人形アニメーションを「人」を使っておこなうことに例えられる[2]。本来は自由に運動できる人間を「ポージングした人型人形」としてコマ撮りする。少し変化した別のポージングでまた撮影し、これを繰り返すことで映像のなかに実在しない動きを生み出す、つまりアニメーションを作っている[2]。この点でピクシレーションはストップモーション・アニメーションの一種である[1][2](⇒#アニメーションとの関係)。
セグンド・デ・チョーモンの『El hotel eléctrico』(1908年)やエミール・コールの『Jobard ne peut pas voir les femmes travailler』(1911年)など映画黎明期からある技法であるが、「ピクシレーション」という語はそれよりずっと後、カナダのアニメーターのグラント・マンロー(1923年 - 2017年)が造った[3]。様々なピクシレーション作品が制作され続けている(⇒#作品例)。
アニメーションとの関係
[編集]ピクシレーションはアニメーションの一種である[4][1]。特にストップモーション・アニメーションの一種である[1][2]。
人間は現実の時空間のなかで運動でき、この実際運動を連続撮影したものが実写映像である。ピクシレーションはあえてこれと反し、各コマのために個別にポージングしこれを都度撮影する[2][1]。最終的な映像からは人間が映り動いているように感じられるが、この動きは現実に起きた動きではない。静物を連続的に表示して「実在しない動き」を感じさせる映像となっており、これはまさにアニメーションである。
作品例
[編集]映画
[編集]- セグンド・デ・チョーモンの『El hotel eléctrico』(1908年)
- エミール・コールの『Jobard ne peut pas voir les femmes travailler』(1911年)
- ノーマン・マクラレンのアカデミー短編ドキュメンタリー映画賞受賞作品『隣人』(1952年)、『いたずら椅子』(1957年)、『ささいな二つの話』
- チャック・メンヴィル&レン・ジャンソンの短編『Stop Look and Listen』(1967年)、『Blaze Glory』(1968年)、『Sergeant Swell of the Mounties』(1972年)
- マイク・ジトロフの『マイク・ザ・ウィザード』(1989年) - 同名の短編(1979年)もある。
- ヤン・クーネンの短編『Gisèle Kérosène』(1989年)
- 『鉄男』(1989年)
- ヤン・シュヴァンクマイエルの『フード』(1992年)、『悦楽共犯者』(1996年)の一部
- ボレックスブラザーズの『親指トムの奇妙な冒険』(1993年)
- PESのアカデミー賞ノミネートの1分40秒の短編『Fresh Guacamole』(2012年)と『Western Spaghetti』(2008年)
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テレビ
[編集]- 『セサミストリート』(Milo Counting、Ordering a Pizza、George the Farmer)
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ミュージックビデオ
[編集]- ダグ・E・フレッシュ&ザ・ゲット・フレッシュ・クルー『All The Way To Heaven』
- ABC『Be Near Me』
- オービタル『The Box』
- フェニックス『Consolation Prizes』
- オーケー・ゴー『End Love』
- ザ・キュアー『ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド』
- コールドプレイ『ウォーターフォール 〜一粒の涙は滝のごとく』と『ストロベリー・スウィング』
- ザ・ホワイト・ストライプス『ザ・ハーデスト・ボタン・トゥ・ボタン』
- カニエ・ウェスト『Heard 'Em Say』
- カーズ『Hello Again』
- オーレン・ラヴィー『Her Morning Elegance』
- キナ・グラニス『In Your Arms』
- カトリーナとザ・ウェーブズ『Is That It?』
- アル・ヤンコビック『Lame Claim to Fame』
- ジョージ・クリントン『Last Dance』
- ダニエル・シルヴェストリ『Ma Che Discorsi]』
- クラッシュ・テスト・ダミーズ『Now You See Her』
- ザ・ユーズド『Paralyzed』
- ニュー・シューズ『Point of No Return』
- トーキング・ヘッズ『Road to Nowhere』
- ファット・ボーイズ『Sex Machine』
- ベス・オートン『Shopping Trolley』
- ピーター・ガブリエル『スレッジハンマー』
- レディオヘッド『ゼア・ゼア』
- ザ・ブレイヴリー『Time Won't Let Me Go』
- スリップノット『Vermilion』
- レ・コロック
- ミシェル・ゴンドリー
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ピクシレーションに似ているもの
[編集]通常の動画をコマ落ちさせることによってピクシレーションに似た効果をあげることができるが、品質は劣る。
マイケル・ジャクソンの『Leave Me Alone』はビデオのフレーム速度を減速させ、オブジェクトに重ねたものである。
脚注
[編集]出典
[編集]- ^ a b c d e "ピクシレーション(Pixilation)とは、人物を被写体として連続した動作を静止画像として撮影し、それぞれに数フレーム単位の表示時間を設定して繋ぎ合わせる、いわゆるコマ撮りアニメーション技法のことである。" pp.1-2 より引用。坂本, 憲信 (2014). "クロスメディアによるデザイン表現の教育実践に関する一考察". 日本デザイン学会研究発表大会概要集. 61: 1–2.
- ^ a b c d e "本来自在に動く人間を動かぬオブジェとしてコマ撮りしアニメーションとするピクシレーション" p.36 より引用。谷口, 昭弘 (2017). "書評:栗原詩子著 『物語らないアニメーション─―ノーマ ン・マクラレンの不思議な世界』". 音楽学. 63 (1): 36–38.
- ^ Grant Munro
- ^ "ピクシレーション(pixilation)... 映画術の存在を前提としたアニメーション" p.6 より引用。小出, 正志 (2018). "アニメーションの原点、その研究の原点、学問と学会の原点". アニメーション研究. 19 (2): 3–16.
外部リンク
[編集]- Watch A Chairy Tale, Neighbours and Monsieur Pointu at the National Film Board of Canada
- Spin Award-winning Pixilation Short Film by Dustball and André Nguyen (4:13)
- Fuerte Malacate's Pixilation Music Video by Sebastián Baptista (3:13)
- Paranoiaparadise Some pixilation cut to house music (0:36)
- Leap Of Faith Voice of Apollo's Pixilation Music Video by the band. (5:41)
- Mirage Surreal animated dance utilizing the Pixilation technique by Joel Fletcher and Mark Danel, 1981. (4:49)
- https://vimeo.com/62474345 'The Hunter Pixilation Project'
- Two Gentlemen of Honour Slapstick short film utilizing Pixilation, 2012. (3:21)