コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

ヒダリマキマイマイ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ヒダリマキマイマイ
ヒダリマキマイマイ
分類
: 動物界 Animalia
: 軟体動物門 Mollusca
: 腹足綱 Gastropoda
: 有肺目 Pulmonata
亜目 : 真有肺亜目 Eupulmonata
下目 : 柄眼下目 Stylommatophora
上科 : マイマイ上科 Helicoidea
: ナンバンマイマイ科 Camaenidae
: マイマイ属 Euhadra
: ヒダリマキマイマイ E. quaesita
学名
Euhadra quaesita (Deshayes,1850)
英名
Sought-after False Hadra

ヒダリマキマイマイ(左巻蝸牛)、学名 Euhadra quaesita は、有肺目ナンバンマイマイ科に分類されるカタツムリの一種。日本の本州北部と周辺島嶼に分布し、比較的目に付く機会も多い。また、チャイロヒダリマキマイマイ(茶色左巻蝸牛)E. q. Montiumヘグラマイマイ(舳倉蝸牛)E. q. heguraensis の2亜種が知られる。

特徴

[編集]

成貝は殻高33mm・殻径50mm前後。やや高い円錐形で、和名通り左巻きである。左巻きの巻貝は珍しく、学名にある"quaesita"も「稀な」という意味がある。殻色は黄褐色-褐色、殻表は艶はないが滑らかで、成長脈を刻む程度。色帯は0204型(巻きに沿って1本線と臍孔周辺)が多いが、0000型(無帯)や1234型など変異もある。殻口は環状に厚くなり白い。臍孔は深く開く。軟体の背面は黒や黄褐色の斑点が点在するが、生息環境により変異がある[1][2][3]

本州の中部地方関東地方東北地方に分布し、伊豆諸島や石川県舳倉島山形県飛島など周辺離島にも分布する[2]

半樹上性で湿った場所を好み、森林や草原など比較的幅広い環境に生息するが[3][4]市街地水田などでは少ない。また近年では宅地造成などの開発によって減少している。生態は不明な点も多いが、枯葉やキノコなどを餌とする。コンクリートなどの人工物についた藻類を食べて、これらに食痕を残すこともある。飼育下ではサツマイモイカの甲など様々なものを食べる。

繁殖方法は雌雄同体で、交尾で他個体と精莢を交換した後に産卵する。5月頃から交尾を始めるが、7-9月によく産卵する。1回の産卵数は30-40個ほど、最多で120個の記録がある。卵は30-40日で孵化するが、秋に産卵された卵はそのまま越冬し翌春に孵化する[5]

近縁種

[編集]

本州中部-北部には、他にも左巻きのカタツムリが生息している[2][6]

  • ヒダリマキマイマイ Euhadra quaesita (Deshayes, 1850)
    • チャイロヒダリマキマイマイ E. q. montium (Martens,1879)
    ヒダリマキマイマイの亜種。殻幅50mm前後。殻の色が暗褐色で火炎彩をもつ。関東地方と中部地方の山地に分布する。
    • ヘグラマイマイ E. q. heguraensis Kuroda et Tan,1936
    石川県舳倉島の固有亜種。殻径30mmほどと小形で、臍孔が狭く、殻口が著しく下向きなどの特徴がある。
  • ムラヤママイマイ E. murayamai Habe,1976
  • ムツヒダリマキマイマイ E. decorata (Pilsbry et Hirase,1903)
    • ナンブマイマイ(ナンブヒダリマキマイマイ) E. d. diminuta Toba et Kuroda,1936
  • トバマイマイ E. tobai S. Hirase,1929
  • イワデマイマイ E. iwadensis Toba et Kuroda,1936
  • オオタキマイマイ E. grata (Gude,1900) - 貝類研究者大滝五百太に因んだ献名
    • ミチノクマイマイ E. g. gratoides Kira,1959
    • エムラマイマイ E. g. emurai Kuroda,1931 - 貝類学者江村重雄に因んだ献名
    • トビシママイマイ E. g. tobisimae Kuroda,1931
    • エチゴマイマイ E. g. echigoensis Murayama, Takizawa et Habe,1991
  • ミヤマヒダリマキマイマイ E. scaevola (Martens,1877)
    • ヒラヒダリマキマイマイ E. s. interioris Pilsbry,1928
    • ミカワマイマイ E. s. mikawa Amano,1939

参考文献

[編集]
  1. ^ 波部忠重・小菅貞男『エコロン自然シリーズ 貝』1978年刊・1996年改訂版 ISBN 9784586321063
  2. ^ a b c 東正雄『原色日本陸産貝類図鑑』1995年 保育社 ISBN 9784586300617
  3. ^ a b 内田亨監修『学生版 日本動物図鑑』北隆館 1948年初版・2000年重版 ISBN 4832600427
  4. ^ 檜山義夫監修 『改訂版 野外観察図鑑 6 貝と水の生物』旺文社 1986年初版・1998年改訂版 ISBN 4010724269
  5. ^ 小菅貞男『ポケット図鑑 日本の貝』1994年 成美堂出版 ISBN 4415080480
  6. ^ 川名美佐男『かたつむりの世界(マイマイ属)』近未来社 ISBN 9784906431250