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ヒガンマムシグサ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ヒガンマムシグサ
千葉県南房総市 2022年3月中旬
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 単子葉類 Monocots
: オモダカ目 Alismatales
: サトイモ科 Araceae
: テンナンショウ属 Arisaema
: ヒガンマムシグサ
A. aequinoctiale
学名
Arisaema aequinoctiale Nakai et F.Maek. (1932)[1]
シノニム
  • Arisaema undulatifolium auct. non Nakai[2]
  • Arisaema stenophyllum Nakai et F.Maek. (1932)[3]
  • Arisaema yoshinagae Nakai (1939)[4]
  • Arisaema undulatifolium Nakai var. yoshinagae (Nakai) Seriz. (1980)[5]
  • Arisaema limbatum Nakai et F.Maek. var. aequinoctiale (Nakai et F.Maek.) Seriz. (1980)[6]
和名
ヒガンマムシグサ(彼岸蝮草)[7]

ヒガンマムシグサ(彼岸蝮草、学名: Arisaema aequinoctiale)は、サトイモ科テンナンショウ属多年草である[7][8][9]。別名、ハウチワテンナンショウ、ヨシナガマムシグサ[1]

小型の株は雄花序をつけ、同一のものが大型になると雌花序または両性花序をつける雌雄偽異株で、雄株から雌株に完全に性転換する[9]

特徴

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地下に球茎があり、腋芽が2列に並ぶ。植物体の高さは大きなものでは高さ90 cmになる。偽茎部は4 - 50 cmになり、葉柄は偽茎部より短い。はふつう2個つき、ほぼ同じ大きさ。葉身は鳥足状に分裂し、小葉は (5-)7-13個になり、披針形から楕円形で、ときに縁に鋸歯があり、しばしば中脈にそって白斑が生じる。小葉間の葉軸はやや発達する[7][8][9]

花期は、3-4月。花序が先に展開し、次に葉が展開する。花序柄は花時に葉柄より長く、偽茎部とほぼ同じ長さ、雌株の花序柄は雄株とくらべ長い。仏炎苞はふつう紫褐色から黄褐色(オリーブ色)で、ごくまれに黄緑色から緑色になる。仏炎苞筒部の口辺部がやや耳状に開出し、開出部の幅は8mm未満。仏炎苞舷部は卵形から狭倒卵形で、先端は鋭突頭になり、前方に曲がる。花序付属体は有柄で棒状になる。1つの子房中に8-21個の胚珠がある。果実は夏に赤熟する。染色体数は2n=26[7][8][9]

分布と生育環境

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日本固有種[10]。本州の関東地方中部地方広島県山口県および四国に分布し、照葉樹林の林下、林縁などに生育する[9][8]房総半島の集団は海岸近くにも生育する[9]タイプ標本の採集地は千葉県の清澄山[11]

名前の由来

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和名ヒガンマムシグサは、「彼岸蝮草」の意で、春の彼岸のころに咲くことによる[7]中井猛之進および前川文夫 (1932) による命名[11]

種小名(種形容語)aequinoctiale は、「昼夜同時間の」「彼岸の季節の」の意味[12]

近縁の種

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本属の、同じマムシグサ節 Sect. Pistillataのヒガンマムシグサ群 A. undulatifolium group に属する、ミミガタテンナンショウ Arisaema limbatum によく似ており、仏炎苞筒部の口辺部が著しく発達し、開出部の幅が8mm以上あるものをミミガタテンナンショウとし、その幅が8mm未満であるものをヒガンマムシグサとしている[13][14]が、小型の株では区別が難しいという[9]。また、同じヒガンマムシグサ群に属する、仏炎苞筒部の口辺部が発達するウワジマテンナンショウ Arisaema undulatifolium subsp. uwajimense にも似るが、ウワジマテンナンショウは、学名が示すとおり、ナガバマムシグサ Arisaema undulatifolium亜種である[13][14]

なお、神奈川県箱根金時山産で、中井猛之進および前川文夫 (1932) によって発表されたハウチワテンナンショウ Arisaema stenophyllum Nakai et F.Maek. (1932)[3]と、高知県産で、中井猛之進 (1939) によって発表されたヨシナガマムシグサ Arisaema yoshinagae Nakai (1939)[4] は、分類表内に示すようにヒガンマムシグサのシノニムとなっている。

ギャラリー

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脚注

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  1. ^ a b ヒガンマムシグサ「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  2. ^ ヒガンマムシグサ(シノニム)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  3. ^ a b [1]「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  4. ^ a b ヒガンマムシグサ(シノニム)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  5. ^ ヒガンマムシグサ(シノニム)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  6. ^ [2]「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  7. ^ a b c d e コトバンク ヒガンマムシグサ
  8. ^ a b c d 邑田仁 (2015)「サトイモ科」『改訂新版 日本の野生植物 1』p.100
  9. ^ a b c d e f g 邑田仁・大野順一・小林禧樹・東馬哲雄 (2018)、『日本産テンナンショウ属図鑑』pp.215-218
  10. ^ 『日本の固有植物』pp.176-179
  11. ^ a b F.Maekawa, Alabastra Diversa I., Arisaema aequinoctiale NAKAI et F.MAEKAWA sp. nov., The Botanical Magazine, 『植物学雑誌』、Vol.46, No.546: pp.561-562, (1932).
  12. ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1482
  13. ^ a b 邑田仁 (2015)「サトイモ科」『改訂新版 日本の野生植物 1』(テンナンショウ属検索表)pp.93-96
  14. ^ a b 邑田仁・大野順一・小林禧樹・東馬哲雄 (2018)、「日本産テンナンショウ属全種の検索表」『日本産テンナンショウ属図鑑』pp.98-104

参考文献

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  • 加藤雅啓・海老原淳編著『日本の固有植物』、2011年、東海大学出版会
  • 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 1』、2015年、平凡社
  • 牧野富太郎原著、邑田仁・米倉浩司編集『新分類 牧野日本植物図鑑』、2017年、北隆館
  • 邑田仁・大野順一・小林禧樹・東馬哲雄著『日本産テンナンショウ属図鑑』、2018年、北隆館
  • 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  • コトバンク ヒガンマムシグサ, 2022年3月26日閲覧(小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)から転載)
  • F. Maekawa, Alabastra Diversa I., Arisaema aequinoctiale NAKAI et F.MAEKAWA sp. nov., The Botanical Magazine, 『植物学雑誌』、Vol.46, No.546: pp.561-562, (1932).