ナムーナ
ナムーナ Namouna | |||||||
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フィリップ・シャプロンによる第1幕1場の舞台スケッチ | |||||||
構成 | 2幕3場 | ||||||
振付 | L・プティパ | ||||||
作曲 | E・ラロ | ||||||
台本 |
L・プティパ C・ニュイッテル | ||||||
美術 |
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衣装 |
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設定 | 17世紀のコルフ島 | ||||||
初演 |
1882年3月6日 パリ・オペラ座 | ||||||
主な初演者 |
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ポータル 舞台芸術 ポータル クラシック音楽 |
『ナムーナ』 (Namouna) は、エドゥアール・ラロ作曲によるバレエ作品である。
概要
[編集]1879年にオペラ座の総裁に就任した作曲家ヴォーコルベイユ(Auguste-Edouard Vaucorbeil 1821年 - 1884年)からの依頼で1881年11月から1882年2月までの4ヶ月間で作曲された。この間、ラロは過労が原因で倒れてしまい、第2幕のオーケストレーションについてグノーの助言をもらいながら、なんとか期日どおりにプロローグ付き2幕3場の全曲を完成させている。
初演は、オペラ座にて1882年3月6日に、シャルル・ニュイッテルの台本、リュシアン・プティパの振付、リタ・サンガッリ、ルイ・メラントの主役により行われた。初演当時、まだ19歳だったドビュッシーは『ナムーナ』を「色彩とリズムの最高傑作」と高く評価し、あまりに夢中になりすぎて劇場で騒ぎを起こしたため、退場処分となっている。しかし、バレエ自体は成功せず、主役がラロの音楽を嫌ったこともあり、わずか15回の公演の後、演目から外されてしまっている。
リュシアン・プティパによるオリジナル版は、すでにオペラ座のレパートリーから消えているが、セルジュ・リファール振付による『白の組曲』(Suite en blanc、1943年)にこのバレエ曲の抜粋が使用されている。
なお、ピーター・ライトやジャック・カーターなどが、この作品の再振付を手がけていて、カーター版については牧阿佐美バレヱ団のレパートリーにもなっている[1]。
登場人物
[編集]- ナムーナ : 女奴隷。オッタヴィオに解放される。
- オッタヴィオ : 若い貴族。
- アドリアーニ : 裕福な航海業者。ナムーナの持ち主。
- ヘレナ : オッタヴィオの許婚。
あらすじ
[編集]原作はカサノヴァ伝説に基づくミュッセの詩。舞台はギリシャ、イオニア海に浮かぶコルフ島。
プロローグ
[編集]コルフ島の賭博場。アドリアーニとオッタヴィオは賭けを行うが、アドリアーニは勝利の女神に見放され、ことごとく負けてしまう。とうとう自分の持ち船と秘蔵の女奴隷ナムーナを賭けるが、それでも負けてしまい財産を失う。だが、オッタヴィオはナムーナを奴隷の身から解放しただけで、賭けで得た残りの財産は全てアドリアーニに返却して鷹揚なところを見せる。それにもかかわらず、アドリアーニはオッタヴィオに対して恨みを持つ。
第1幕
[編集]コルフ島の朝の広場。オッタヴィオが許婚であるヘレナと一緒に窓辺でセレナードを歌っていると、アドリアーニが登場、賭けの恨みからオッタヴィオに決闘を申し込む。そこへヴェールを被った女(実はナムーナ)が現れ、妖艶な踊りで決闘を止めさせてしまう。オッタヴィオはヘレナから邸に入るよう誘われるが、アドリアーニに雇われた刺客に襲われる。刺客は撃退したが、命が危ないことを悟ったオッタヴィオは、再度登場したナムーナにしたがって、船で海へと旅立つ。
第2幕
[編集]ナムーナは奴隷商人アリの島にオッタヴィオを匿う。ヴェールを脱いだナムーナの美貌にオッタヴィオは魅かれるが、まもなくアドリアーニと部下が島へ上陸する。ナムーナは酒と踊りで彼らを酔わせて島を脱出しようとするが、アドリアーニが酔いから覚めナムーナ達を追い詰める。その時、ナムーナの従僕アンドリスクがアドリアーニを刺し殺し、オッタヴィオとナムーナは船に乗って旅立って行く。
組曲
[編集]ラロは舞台初演後、全23曲のうちから3つの管弦楽組曲を編曲している。このバレエからの組曲(もしくは、それらからの指揮者の抜粋)はしばしば演奏され、第1組曲全曲はエルネスト・アンセルメ、ジャン・マルティノン(共に組曲に含まれていない、「煙草のワルツ」も録音)、ポール・パレーなどによって録音も行われている。
第1、第2組曲はそれぞれ5曲ずつ[2]、第3組曲は3曲で編成されている。
第1組曲
[編集]- 前奏曲(Prélude)
- セレナード(Sérénade)
- 主題と変奏(Themè varié)
- 市場の行列(Parade de foire)
- 異国の祭り(Fête foraine)
第2組曲
[編集]- モロッコ舞曲(Danse marocaine)
- マズルカ(Mazurka)
- 昼寝(La Sieste)
- シンバルの踊り(Pas de Cymbales)
- プレスト(Presto)
第3組曲
[編集]- メヌエット(Menuet)
- タンブーラン(Tambourin)
- 速いワルツ
脚注
[編集]- ^ ライト版は1967年、カーター版は1990年にそれぞれ制作されている。
- ^ ラロ:ナムーナ組曲第1番, 第2番
参考文献
[編集]- Beaumont, Cyril W., Complete Book of Ballets, 1949, Putnam, pp.457-463
- 『最新名曲解説全集4 管弦楽I』(音楽之友社)
- 『名曲事典』属啓成(著)、(1991年第16刷発行 音楽之友社)
- 各種CD解説(デッカ盤-アンセルメ、ASV盤-バット、Valois盤-ロバートソンなど)
- 『十九世紀フランス・バレエの台本』―パリ・オペラ座― 平林正司 (著)、慶應義塾大学出版会 (ISBN 978-4766408270)
- 『ロマン派音楽の多彩な世界』―オリエンタリズムからバレエ音楽の職人芸まで― 岩田 隆 (著)、朱鳥社 (ISBN 978-4434070464)