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ナシ属

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナシ属
Pyrus
セイヨウナシ
セイヨウナシ
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
階級なし : バラ類 Rosids
: バラ目 Rosales
: バラ科 Rosaceae
亜科 : サクラ亜科 Amygdaleae[1]
: ナシ属 Pyrus
学名
Pyrus L. [2]
タイプ種
Pyrus communis[2]

ナシ属 (Pyrus) は、バラ目バラ科の植物分類項目の一つ。バラ科のうちリンゴ属やナシ属などの仁果様の果実(種とそれを包む芯をさらに果肉が包む構造の果実)を収穫するものを仁果類という[3]

概要

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中国西部・南西部が発祥地と考えられている。ナシ属には西に移動したセイヨウナシや、東に移動した和ナシなど約30種が含まれる。ほとんどの種は落葉樹である。花は5弁花で、多くの種では白色だが、まれに黄色やピンクのものもある。果実は食用となり、セイヨウナシのようにびん形のものや、ナシのようにリンゴに似た球形なものなどがある。

日本に分布するナシ属の野生植物は、本州(北東北を除く)に自生するニホンヤマナシ(日本山梨)のほか、東北地方北部にイワテヤマナシ(岩手山梨)、関東地方西部と長野県山梨県静岡県アオナシ(青梨)、東海地方マメナシ(豆梨)が自生する。

種類

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南ヨーロッパから地中海西アジアに分布する。
  • 学名:Pyrus pyraster (英名:Wild Pear, European Wild Pear)
  • ヤナギバナシ(柳葉梨)- 学名:Pyrus salicifolia (英名:Willow-Leaved Pear)
ヨーロッパ東南から西・中央アジアに分布する。若葉は銀白色の綿毛に覆われる。果実は洋ナシ形、葉はヤナギのように細長く、観賞用には葉が垂れるものもある。
主に食用に用いる栽培品種。世界中で生産されている。
  • ヒマラヤナシ・インドナシ - 学名:Pyrus pashia (英名:Himalayan Pear, Indian Wild Pear)
小~中の落葉低木。ヒマラヤ、インドアフガニスタン中国南西部、など南アジアを含み広く分布する。果実は食用や観賞用にも用い栽培されている。
日本本州朝鮮半島南部、中国に分布する。和ナシの接ぎ木に用いる。果樹として商業利用する和ナシの多くがこの種に由来する。
日本で最も流通し食用に用いる一般的なナシ、栽培品種。
  • ホクシヤマナシ(北支山梨) - 学名:Pyrus ussuriensis
朝鮮半島北部、中国東北部から北部に分布する。果樹として商業利用するチュウゴクナシの多くがこの種に由来する。
主に食用に用いる栽培品種。
  • イワテヤマナシ(岩手山梨)・ミチノクナシ(陸奥梨) - 学名:Pyrus ussuriensis var. aromatica
日本北東北地方に分布する自生植物で、ホクシヤマナシの近縁種[4]。古い時代に野生化したニホンナシとの交配が進み、環境省レッドリスト(2007年)では絶滅危惧IA類(CR)に[4]、同リスト(2012年)では絶滅危惧IB類(EN)に選定されている。現在は純粋な品種は岩手県にしかないという報告もあり、保護が望まれている[5]。ホクシヤマナシ、チュウゴクナシはミチノクナシと同一種ともされる[6]
  • アオナシ(青梨) - 学名:Pyrus ussuriensis var. hondoensis
イワテヤマナシの変種、日本関東地方西部、中部地方の一部に分布する[7]。朝鮮半島や中国東北部の町付近の山林に少数分布する[7]
日本東海地方、朝鮮半島、中国南部に分布する。果実は小さく、観賞用や接ぎ木に用いる。
  • ホクシマメナシ(北支豆梨)・マンシュウマメナシ(満州豆梨) - 学名:Pyrus betulifolia (英名:Birchleaf pear)
中国北部に分布する。接ぎ木に利用されることもある。
  • タイワンイヌナシ(台湾犬梨) - 学名:Pyrus kawakamii (英名:Evergreen Pear)
台湾に分布する。

脚注

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  1. ^ Potter, D. et al.; Eriksson, T.; Evans, R. C.; Oh, S.; Smedmark, J. E. E.; Morgan, D. R.; Kerr, M.; Robertson, K. R. et al. (2007). “Phylogeny and classification of Rosaceae”. Plant Systematics and Evolution 266 (1–2): 5–43. doi:10.1007/s00606-007-0539-9.  [Referring to the subfamily by the name "Spiraeoideae"]
  2. ^ a b Pyrus
  3. ^ 仁果類 農林水産省、2021年3月8日閲覧。
  4. ^ a b ミチノクナシでは自生植物と古い時代の帰化植物が交雑している(2010年2月22日) 農業・食品産業技術総合研究機構 2013年10月10日閲覧
  5. ^ 「岩手ゆかりのナシを植樹 神戸大、復興の象徴に」(2012年3月21日) 共同通信社 2013年10月10日閲覧
  6. ^ ミチノクヤマナシ「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  7. ^ a b 「埼玉県レッドデータブック2005」(維管束植物・アオナシ) 埼玉県庁 2013年10月10日閲覧

参考文献

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  • トニー・ロード 他 『フローラ』 産調出版、2005年
  • 堀田満 他 『世界有用植物事典』 平凡社、1989年