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ドクダミ科

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ドクダミ科

(上) 1a. ドクダミ、(下) 1b. ハンゲショウ
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : モクレン類 Magnoliids
: コショウ目 Piperales
: ドクダミ科 Saururaceae
学名
Saururaceae F.Voigt (1811)[1]
タイプ属
ハンゲショウ属 Saururus L. (1753)
英名
lizard's tail family[2]

ドクダミ科(ドクダミか、学名: Saururaceae)は、コショウ目に属するの1つである。多年草であり、精油を含み、単葉互生する。個々のは小さく花被を欠き、雄しべ雌しべだけからなる。しばしば花序(花の集まり)の基部に花弁状の白い苞をもち、花序全体が1個の花のように見える(図1)。北米および東アジアから東南アジアに分布し、4属6種ほどが知られる。日本ではドクダミハンゲショウが生育している。

特徴

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地下茎が発達した多年草であるが[3][2][4][5][6]、アネモプシス属は比較的発達した維管束形成層をもつ[7]維管束は1–2輪に配置している[3][5][7]。節は多隙性 (5–9) 多葉跡 (7–9)[7]互生し、単葉葉縁は全縁、葉柄向軸側托葉がついている[3][2][4][5][6][8]葉脈は掌状から羽状[7][9](下図2)。気孔は cyclocytic[9]精油細胞をもつ[4][5][6]。集晶または砂晶をもつ[7]フラボノイドロイコアントシアニジンを有し、エラグ酸サポニンを欠く[7][9]

花序穂状または総状(下図3)、頂生または葉に対生状につく[3][7]。しばしば花序の基部にある[注 1]が白色で花弁状になり、花序全体が1個の花のように見えることがある[2][4][5][6](下図3a, b)。は小型で両性、基部に(小苞、ときに不明瞭)がつき、花被を欠く[3][2][4][5][6](下図3a, d)。雄しべは3–8個、花糸は糸状、ときに基部で雌しべに合着する[3][2][4][5][6][7][9]。葯は2室で縦裂する[2][4][5][6]。タペート組織は分泌型[9]。小胞子形成は同時型[7]。花粉はボート形、小型(20 µm 以下)、2細胞性[7][9]雌しべは離生または合生(1室)、心皮は3–5(–7)個、雄しべと対生し、子房上位から下位[3][2][4][5][6][7]。柱頭は乾性[7][9]胚珠は直生または半倒生、1心皮あたり2–13個、縁辺胎座または側膜胎座[3][2][4][5][6][9]果実さく果または分離果(単位となる分果は非裂開果)[3][2][4][5][6][9]種子はほぼ球形、種皮は膜質、外胚乳(周乳)が発達し、は小さい[3][2][4][5][6]

3a. Anemopsis californica花序: 基部の苞が大きく、上部の花の苞も見える
3b. ドクダミの花序: 基部の苞が大きく花弁状
3c. ハンゲショウの花序: 花序付近の葉の一部が白くなる
3d. アメリカハンゲショウの花序: 各花は、雌しべ雄しべだけからなる

分布・生態

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4. 葦毛湿原ハンゲショウ

北米南部および東アジアから東南アジア温帯から熱帯域に分布する[1][7]

多くは湿った場所に生育する[3][5](図4)。

人間との関わり

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5a. ドクダミ地下茎の料理(中国貴州省
5b. ドクダミの園芸品種 'カメレオン'

ドクダミは日本では雑草として極めて身近な存在であるが、ハーブや食用野菜に利用されることがある(どくだみ茶、爽健美茶ベトナム料理など)[14][15][16][17][18](図5a)。ドクダミやハンゲショウはときに生薬とされる[17][18][19]。またドクダミやハンゲショウは観賞用に栽培されることがあり、園芸品種も存在する[20][21](図5b)。

分類

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ドクダミ科は単純な花などの特徴から古くから認識されていたグループであり、同様に花被を欠く花をつけるコショウ科とともにコショウ目に分類されていた(新エングラー体系クロンキスト体系など)[22][23][24][25]。またコショウ目の植物は、モクレン科クスノキ科など原始的と考えられてきた木本類と同様に精油をもつため、"原始的"な被子植物の一群と考えられ、古草本類 (paleoherb) ともよばれていた[26]

やがて20世紀末以降の分子系統学的研究によって、ドクダミ科はコショウ科に近縁であることが確認され、また同様に古草本類として扱われていたウマノスズクサ科も近縁であることが示された。2020年現在ではこれら3科はコショウ目にまとめられている[7][8][27]。またコショウ目はモクレン目クスノキ目などとともに単系統群を構成し、被子植物の初期分岐群の1つであることが示唆されており、この系統群はモクレン類 (magnolids) とよばれている[7][8][27]

ドクダミ科

アネモプシス属 (Anemopsis)

ドクダミ属 (Houttuynia)

ハンゲショウ属 (Saururus)

ギムノテカ属 (Gymnotheca)

6. ドクダミ科内の系統仮説[28]

2020年現在、ドクダミ科には4属6種ほどが知られている[1][7](下表1)。分子系統学的研究からは、アネモプシス属とドクダミ属、ハンゲショウ属とギムノテカ属がそれぞれ単系統群を構成することが示唆されている[7][28](図6)。ただし前者の単系統性は支持されないこともある[29]

表1. ドクダミ科の種までの分類体系の一例[1][3][5][6]

脚注

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注釈

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  1. ^ この構造は総苞片とされることが多いが[4][10]、厳密な意味での総苞片(花序全体の苞)ではないともされ[11]、花序の最下にある花の苞(小苞)であるともされる[3][12][13]

出典

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  1. ^ a b c d Saururaceae”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2021年8月28日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k Simpson, M. G. (2005). “Saururaceae”. Plant Systematics. Academic Press. p. 153. ISBN 978-0126444605 
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m 大森雄治 (1999). “日本のドクダミ科・コショウ科・センリョウ科植物”. 横須賀市博物館研究報告 自然科学 46: 9-21. NAID 40003710131. 
  4. ^ a b c d e f g h i j k l 大橋広好 (2015). “ドクダミ科”. In 大橋広好, 門田裕一, 邑田仁, 米倉浩司, 木原浩 (編). 改訂新版 日本の野生植物 1. 平凡社. p. 54. ISBN 978-4582535310 
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n Saururaceae”. Flora of North America. Missouri Botanical Garden and Harvard University Herbaria. 2021年8月29日閲覧。
  6. ^ a b c d e f g h i j k l Saururaceae”. Flora of China. Missouri Botanical Garden and Harvard University Herbaria. 2021年8月29日閲覧。
  7. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q Stevens, P. F. (2001 onwards). “Saururaceae”. Angiosperm Phylogeny Website. Version 14, July 2017. 2021年8月29日閲覧。
  8. ^ a b c d Kabeya, Y. & Hasebe, M.. “モクレン類/コショウ目/ドクダミ科”. 陸上植物の進化. 基礎生物学研究所. 2021年8月29日閲覧。
  9. ^ a b c d e f g h i Watson, L. & Dallwitz, M.J. (1992 onwards). “Saururaceae A. Rich.”. The Families of Angiosperms. 2021年8月29日閲覧。
  10. ^ 林 弥栄 & 門田 裕一 (監修) (2013). “ドクダミ”. 野に咲く花 増補改訂新版. 山と渓谷社. p. 18. ISBN 978-4635070195 
  11. ^ 清水建美 (2001). “総苞”. 図説 植物用語事典. 八坂書房. p. 150. ISBN 978-4896944792 
  12. ^ 福原達人. “ドクダミ科”. 植物形態学. 2021年9月4日閲覧。
  13. ^ 塚谷裕一 (2013年10月21日). “花弁とがくの違いについて”. みんなのひろば 植物Q&A. 日本植物生理学会. 2021年9月4日閲覧。
  14. ^ 六角橙 (2021年7月9日). “【どくだみの効果的な駆除方法!】”. 暮らしーの. 2021年9月4日閲覧。
  15. ^ ベトナム香草その9 ドクダミ (Rau diếp cá)”. ダナン観光案内所 (2017年4月28日). 2021年8月30日閲覧。
  16. ^ 製品情報”. 爽健美茶. 日本コカ・コーラ株式会社. 2021年8月30日閲覧。
  17. ^ a b 磯田進. “ドクダミ”. 公益社団法人日本薬学会. 2021年8月30日閲覧。
  18. ^ a b ドクダミ”. 武田薬品工業株式会社. 2021年8月30日閲覧。
  19. ^ ハンゲショウ”. 熊本大学薬学部 薬草園 植物データベース. 2021年9月4日閲覧。
  20. ^ ドクダミ”. みんなの趣味の園芸. NHK出版. 2021年8月30日閲覧。
  21. ^ ハンゲショウ”. みんなの趣味の園芸. NHK出版. 2021年8月30日閲覧。
  22. ^ Melchior, H. (1964). A. Engler's Syllabus der Pflanzenfamilien mit besonderer Berücksichtigung der Nutzpflanzen nebst einer Übersicht über die Florenreiche und Florengebiete der Erde. I. Band: Allgemeiner Teil. Bakterien bis Gymnospermen 
  23. ^ Cronquist, A. (1981). An integrated system of classification of flowering plants. Columbia University Press. ISBN 9780231038805 
  24. ^ 井上浩, 岩槻邦男, 柏谷博之, 田村道夫, 堀田満, 三浦宏一郎 & 山岸高旺 (1983). “コショウ目”. 植物系統分類の基礎. 北隆館. pp. 222–223 
  25. ^ 加藤雅啓 (編) (1997). “分類表”. バイオディバーシティ・シリーズ (2) 植物の多様性と系統. 裳華房. p. 270. ISBN 978-4-7853-5825-9 
  26. ^ 加藤雅啓 (編) (1997). “9-2-1 被子植物内の大きな系統関係”. バイオディバーシティ・シリーズ (2) 植物の多様性と系統. 裳華房. pp. 147–152. ISBN 978-4-7853-5825-9 
  27. ^ a b Chase, M. W., Christenhusz, M. J. M., Fay, M. F., Byng, J. W., Judd, W. S., Soltis, D. E., ... & Stevens, P. F. (2016). “An update of the Angiosperm Phylogeny Group classification for the orders and families of flowering plants: APG IV”. Botanical Journal of the Linnean Society 181 (1): 1-20. doi:10.1111/boj.12385. 
  28. ^ a b Massoni, J., Forest, F. & Sauquet, H. (2014). “Increased sampling of both genes and taxa improves resolution of phylogenetic relationships within Magnoliidae, a large and early-diverging clade of angiosperms”. Molecular Phylogenetics and Evolution 70: 84-93. doi:10.1016/j.ympev.2013.09.010. 
  29. ^ Meng, S. W., Douglas, A. W., Li, D. Z., Chen, Z. D., Liang, H. X. & Yang, J. B. (2003). “Phylogeny of Saururaceae based on morphology and five regions from three plant genomes”. Annals of the Missouri Botanical Garden 90 (4): 592-602. doi:10.2307/3298544. 

外部リンク

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