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トリシクロブタベンゼン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
トリシクロブタベンゼン
識別情報
PubChem 143698
ChemSpider 126777 チェック
特性
化学式 C12H12
モル質量 156.22 g mol−1
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

トリシクロブタベンゼン (Tricyclobutabenzene) はベンゼン環に3つのシクロブタン環が縮合した芳香族炭化水素である。この化合物やその誘導体は珍しい立体配座や反応性を示す傾向があり、よく研究の対象となる。[6]ラジアレンはこの化合物の異性体である。

無置換のトリシクロブタベンゼン (C12H12) は1979年[1]に次の反応によって合成された[2][3]。この化合物は250℃まで安定である。

トリシクロブタベンゼンの合成

以下の反応によって[4]合成されたポリ酸素化トリシクロブタベンゼンにおいて、2つのカルボニル基間の結合長が160 pmと測定されている[3]

Scheme 2. Polyoxygenated tricyclobutabenzene

通常のカルボニル基間の結合長は148pmであり、類似した構造を持つイサチンにおいても154pmであることを考えるとこの結合長は異常に長い。これと対照的に、芳香環の結合長に変化は見られない。

新規なオキソカーボン類であるヘキサオキソトリシクロブタベンゼン (C12O6) においても同様の構造が見られる[5]。ヘキサオキソトリシクロブタベンゼンの合成における出発物質としては、ベンゾトリイン合成等価体である下図のヨードトリフラートが用いられた。

Scheme 3 Benztriyne synthon

脚注

[編集]
  1. ^ Tricyclobutabenzene Wutichai Nutakul, Randolph P. Thummel, Austin D. Taggart J. Am. Chem. Soc.; 1979; 101(3); 770-771. doi:10.1021/ja00497a064
  2. ^ 反応の概要: シクロブテンをグリニャール試薬に変換しカップリング反応→ジメチルシクロブテン-1,2-ジカルボン酸とディールス・アルダー反応メタノール中で水酸化カリウムによってエステル加水分解しジカルボン酸に→酢酸鉛(IV)による脱炭酸芳香族化
  3. ^ a b Poly-Oxygenated Tricyclobutabenzenes via Repeated [2 + 2] Cycloaddition of Benzyne and Ketene Silyl Acetal Toshiyuki Hamura, Yousuke Ibusuki, Hidehiro Uekusa, Takashi Matsumoto, and Keisuke SuzukiJ. Am. Chem. Soc.; 2006; 128(11) pp 3534 - 3535; doi:10.1021/ja0602647
  4. ^ 反応の概要: 鍵となる反応は、ヨードトリフラートから形成されたアラインn-ブチルリチウムとケテンシリルアセタールを反応させることで起こる[2+2]環化付加反応である。この後、シリルアセタールはフッ化水素酸アセタール三フッ化ホウ素との反応によってそれぞれケトンに変換される。
  5. ^ Dodecamethoxy- and Hexaoxotricyclobutabenzene: Synthesis and Characterization Toshiyuki Hamura, Yousuke Ibusuki, Hidehiro Uekusa, Takashi Matsumoto, Jay S. Siegel, Kim K. Baldridge, and Keisuke Suzuki J. Am. Chem. Soc.; 2006; 128(31) pp 10032 - 10033; (Communication) doi:10.1021/ja064063e