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ディアブロケラトプス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ディアブロケラトプス(Diabloceratops)は、角竜下目の恐竜の属。

ディアブロケラトプス
Diabloceratops
ディアブロケラトプス
D. eatoni 頭骨(右下)
地質時代
白亜紀後期
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
下綱 : 主竜形下綱 Archosauromorpha
上目 : 恐竜上目 Dinosauria
: 鳥盤目 Ornithischia
亜目 : 周飾頭亜目 Marginocephalia
下目 : 角竜下目 Ceratopia
: ケラトプス科 Ceratopidae
亜科 : セントロサウルス亜科 Centrosaurinae
: ディアブロケラトプス属 Diabloceratops
学名
Diabloceratops
Kirkland et al, 2012
  • D. eatoni Kirkland et al, 2012
ディアブロケラトプス・エアトニの頭骨(大阪市立自然史博物館特別展・恐竜戦国時代の覇者!トリケラトプスにて)

ディアブロケラトプスはかなり原始的なセントロサウルス亜科の一つで、アメリカ合衆国ユタ州の後期白亜紀の地層であるワーウィープ層の下部から発見され、2010年に記載論文が発表された[1]。推定で全長5.5mほどに成長したと考えられる中型の角竜である[2]。 模式種であるD.エアトニは半分風化した一個体分の頭部のみで知られている[3]。 特徴的な目の上の長い角と目立つスパイクの生えたフリルが「悪魔の角をもつ顔」あるいは「悪魔のケラトプス」という意味の学名の由来で、丸みを帯びた鼻と相まって他のセントロサウルス亜科の角竜とは似つかない。むしろ目の上の長い角と短い鼻の角という組み合わせは先述のとおりカスモサウルス亜科を思わせる形質である。前後に短い鼻面もまた他の角竜類と区別される点である[4]。 D.エアトニの唯一の標本は1998年に発見され、2000年にユタ自然史博物館らによって発掘された。ディアブロケラトプスは最古のケラトプス類というわけではないが、その発見はケラトプス類の初期の進化を知る上で重要であると言える[5]

概要

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復原図

ディアブロケラトプスはほとんどの典型的な角竜類の動物たちと同じように、骨でできた大きなフリル(襟飾り)で後頭部を装飾していた。正中線上のフリルの縁を形成する縁頭頂骨には一対の前方にカーブした大きなスパイク状のホーンレットが備わっている。ディアブロケラトプスはケラトプス科の中でもセントロサウルス亜科に属する。しかし典型的なより進化したセントロサウルス亜科に見られるような鼻骨の上の角は、存在しなかったか非常に小さく目立たないかで、より祖先的なズニケラトプスとの関連を思わせる。ズニケラトプス・クリストフェリ Zuniceratops christferi は極めて原始的なケラトプス科あるいはその祖先ないしその近縁種である。上眼窩角(目の上の角)は小さいが明瞭であり、上向きに反っている。頭骨は他のいかなるセントロサウルス類よりも上下に深く前後に短い構造になっている[6]。 フリルに備わっている非常に大きな二本のスパイクは、エイニオサウルススティラコサウルスマカイロケラトプスのものに似ている。ディアブロケラトプス・エアトニは知られている中で最も初期のセントロサウルス類の一つで、ジェームズ・カークランド博士はより原始的なプロトケラトプス類に関連する特徴を兼ね備えていると記述している。頭骨の装飾には左右に一つずつ大きな開口部(窓)があいているが、これらは成長すると共に小さくなったものと思われる。より進化したケラトプス類ほどこの開口部は小さくなる傾向がある。この初期ケラトプス類は以前、その形態的特徴からして他の単一の自然分類群に内包できないと見なされていたが、カークランドはむしろより多くの派生的・漸新的な形質がいくつも見られるとし、ますます近縁種と関連していることを指摘している。

発見と種

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ディアブロケラトプス・エアトニの唯一の化石標本はアメリカ合衆国ユタ州ケイン郊外、レイクパウエル地区周辺のグランド・ステアーケースエスカランテ国立記念公園にあるワーウィープ累層で発見された。2002年、Don DeBlieux がワーウィープ累層のラストチャンスクリークの露頭を探検し、後に本種のホロタイプとなる化石を発掘した。ワーウィープ累層は放射線年代測定によって約8100万~7600万年前と見積もられ、地質年代は白亜紀後期カンパニアン前期とされている[7] 。標本は下顎骨を含む部分的な頭骨成分である。その頭骨は、右側がほぼ完全で死んだそのままの状態、左側が風化によって断片化していた。ユタ自然史博物館に収蔵された模式標本は UMNH VP 16699 とラベリングされた。別の標本、UMNH VP 16704 はさらに古くに既に発見されていた。それが発見されたのは1998年、ジョシュア・スミス Joshua A. Smith の手によってであった。発掘場所は同じくワーウィープ累層だが、2010年にディアブロケラトプスが設立されるまで一切記載論文が書かれることはなかった。この標本もユタ自然史博物館に収蔵されている。

属名はスペイン語で「悪魔」を意味する単語 Diablo (ネックシールドの角状のホーンレットに因む)とラテン語化された古代ギリシャ語の ceratops, (角のある顔)を組み合わせたもので、「悪魔の角をもつ顔」という意味である。また ceratops という単語は慣習的に角竜類に与えられがちなもので、実質的に「角竜」の意味もあるので「悪魔の角竜」とも訳せる。種小名 eatoni はウィーバー州立大学の古生物学者ジェフリー・イートン Jeffrey Eaton への献名である。イートンはディアブロケラトプスの記載論文のファーストオーサーであるカークランドの友人で、グランド・ステアーケースエスカランテ国立記念公園で本種を発見するにあたり多大なる貢献をした。ディアブロケラトプスの唯一の種である Diabloceratops eatoniは2010年にジェームズ・カークランドと Donald DeBlieux により記載命名された。

生息地

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ワーウィープ累層は放射線年代測定で8100万~7600万年前の地層と推定されている[8]。ディアブロケラトプス・エアトニが生息していた頃、西内陸海道は最も広く拡大していた時期であり、ほぼ完全にララミディア大陸南部を北アメリカ大陸から孤立させていた。 ララミディア大陸南部の恐竜の生息地は、湖畔、池沼、湿地、西から流れる河川系を含んでいた。ワーウィープ累層はグランド・ステアーケースエスカランテ地区の一部で、ザイオン国立公園とグランドキャニオンまで伸びる巨大な堆積岩の連続からなる地層である。河川系の堆積物やその他の証拠は、白亜紀当時のその場所が湿潤な気候であったことを示唆している[9]

古動物相

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ディアブロケラトプスはアクリスタヴス・ガグスラルソニAcristavus gagslarsoni[10][11]ランベオサウルス亜科の一つであるアデロロフス・ハッチソニ Adelolophus hutchisoni[12] のようなハドロサウルス類等とその古環境で共存していた。他にも未命名の曲竜類パキケファロサウルス類、そして獣脚類リトロナクス・アルゲステスも共存していた。リトロナクスはこの時期この土地の生態系において高位の捕食者であり、ディアブロケラトプスたちの天敵たりえた存在である[13][14][15]。]

ディアブロケラトプスの時代のワーウィープの脊椎動物はもちろん恐竜だけではなかった。淡水魚アミア、大量のエイサメコンプセミスに代表されるようなカメクロコダイル[16]、そしてハイギョがそうだ[17]。 多くの哺乳類もこの動物相に含まれる。数種類の多丘歯類クラドテリア類有袋類食虫類が知られている[18] 。 哺乳類はカイパロウィッツ累層で見つかるものと比べてずっと原始的である。ワーウィープ累層の生痕化石ワニ類のものが鳥盤類や獣脚類のものと同じくらい多い[19]

分類

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Ryan et al. (2016)による系統樹: [20]

centrosauriniセントロサウルス亜科
Nasutoceratopsini ナストケラトプス族

Avaceratops lammersi (ANSP 15800) アヴァケラトプス

MOR 692

CMN 8804

Nasutoceratops titusi ナーストケラトプス

Malta new taxon

Xenoceratops foremostensis ゼノケラトプス

Albertaceratops nesmoi アルベルタケラトプス

Sinoceratops zhuchengensis シノケラトプス

Wendiceratops pinhornensisウェンディケラトプス

Centrosaurini

Rubeosaurus ovatus ルベオサウルス

Styracosaurus albertensisスティラコサウルス

Spinops sternbergorum スピノプス

Centrosaurus apertus セントロサウルス

Coronosaurus brinkmaniコロノサウルス

Pachyrhinosaurini

Einiosaurus procurvicornis エイニオサウルス

Achelousaurus horneri アケロウサウルス

w:Pachyrhinosaurus パキリノサウルス

Pachyrhinosaurus canadensis

Pachyrhinosaurus lakustai

Pachyrhinosaurus perotorum

Diabloceratops eatoni ディアブロケラトプス・エアトニ

大衆文化におけるディアブロケラトプス

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独特な形状の頭部と印象的な名称も相まって、命名後間もないにもかかわらずディアブロケラトプスの知名度は高く、2014年に海洋堂によって立体化されている[21]。またゲームでも、コロプラソーシャルゲーム『恐竜ドミニオン』やオンラインゲーム『The isle』でも登場しており、漫画でも所十三の『D-ZOIC』や久正人の『ジャバウォッキー1914』に登場している。

出典

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  1. ^ Kirkland, J.I. and DeBlieux, D.D. (2010). "New basal centrosaurine ceratopsian skulls from the Wahweap Formation (Middle Campanian), Grand Staircase–Escalante National Monument, southern Utah", In: Ryan, M.J., Chinnery-Allgeier, B.J., and Eberth, D.A. (eds.) New Perspectives on Horned Dinosaurs: The Royal Tyrrell Museum Ceratopsian Symposium. Bloomington, Indiana University Press, pp. 117–140
  2. ^ Glut, D. F., 2012, Dinosaurs, the Encyclopedia, Supplement 7: McFarland & Company, Inc, 866pp.
  3. ^ * Michael J. Ryan, Brenda J. Chinnery-Allgeier, David A. Eberth, (2010)『New Perspectives on Horned Dinosaurs: The Royal Tyrrell Museum Ceratopsian Symposium』en:Indiana university press, ISBN 978-0253353580. 128 pp
  4. ^ DIABLOCERATOPS”. 12 May 2015閲覧。
  5. ^ Diabloceratops eatoni”. 12 May 2015閲覧。
  6. ^ DIABLOCERATOPS”. 11 December 2013閲覧。
  7. ^ J. I. Kirkland and D. D. DeBlieux. 2007. New horned dinosaurs from the Wahweap Formation, Grand Staircase-Escalante National Monument, southern Utah. Utah Geological Survey Notes 39(3):4-5
  8. ^ Introduction: Kaiparowits Basin Project Overview," Getty, et al. (2010); page 479.
  9. ^ Zubair A. Jinnah, #30088 (2009)Sequence Stratigraphic Control from Alluvial Architecture of Upper Cretaceous Fluvial System - Wahweap Formation, Southern Utah, U.S.A. Search and Discovery Article #30088. Posted June 16, 2009.
  10. ^ Gates, T. A.; Horner, J. R.; Hanna, R. R.; Nelson, C. R. (2011). “New unadorned hadrosaurine hadrosaurid (Dinosauria, Ornithopoda) from the Campanian of North America”. Journal of Vertebrate Paleontology 31 (4): 798. doi:10.1080/02724634.2011.577854. 
  11. ^ New Horned Dinosaurs from the Wahweap Formation”. Utah Geology (2007年). 2017年8月6日閲覧。
  12. ^ Terry A. Gates; Zubair Jinnah; Carolyn Levitt; Michael A. Getty (2014). “New hadrosaurid specimens from the lower-middle Campanian Wahweap Formation of Utah”. In David A. Eberth; David C. Evans. Hadrosaurs: Proceedings of the International Hadrosaur Symposium. Indiana University Press. pp. 156–173. ISBN 978-0-253-01385-9 
  13. ^ John Wesley Powell Memorial Museum display, visited April 30th, 2009
  14. ^ Diabloceratops eatoni”. Natural History Museum of Utah. 16 November 2013閲覧。
  15. ^ http://geology.utah.gov/surveynotes/articles/pdf/horned_dinos_39-3.pdf
  16. ^ Thompson, Cameron R. "A preliminary report on biostratigraphy of Cretaceous freshwater rays, Wahweap Formation and John Henry Member of the Straight Cliffs Formation, southern Utah." Abstracts with Programs - Geological Society of America, vol.36, no.4, pp.91, Apr 2004
  17. ^ Orsulak, Megan et al. "A lungfish burrow in late Cretaceous upper capping sandstone member of the Wahweap Formation Cockscomb area, Grand Staircase-Escalante National Monument, Utah." Abstracts with Programs - Geological Society of America, vol. 39, no. 5, pp.43, May 2007
  18. ^ Eaton, Jeffrey G; Cifelli, Richard L. "Review of Cretaceous mammalian paleontology; Grand Staircase-Escalante National Monument, Utah. Abstracts with Programs - Geological Society of America, vol.37, no.7, pp.115, Oct 2005
  19. ^ Tester, Edward et al. Isolated vertebrate tracks from the Upper Cretaceous capping sandstone member of the Wahweap Formation; Grand Staircase-Escalante National Monument, UtahAbstracts with Programs - Geological Society of America, vol. 39, no. 5, pp.42, May 2007
  20. ^ Ryan, M.J.; Holmes, R.; Mallon, J.; Loewen, M.; Evans, D.C. (2017). “A basal ceratopsid (Centrosaurinae: Nasutoceratopsini) from the Oldman Formation (Campanian) of Alberta, Canada”. Canadian Journal of Earth Sciences 54. doi:10.1139/cjes-2016-0110. http://www.nrcresearchpress.com/doi/pdf/10.1139/cjes-2016-0110. 
  21. ^ 海洋堂 恐竜発掘記 トリケラトプス ディアブロケラトプス