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ダフニス (衛星)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ダフニス
Daphinis
キーラーの空隙中のダフニス (中央の点)
キーラーの空隙中のダフニス
(中央の点)
仮符号・別名 Saturn XXXV
S/2005 S 1
分類 土星の衛星
発見
発見日 2005年5月1日[1]
発見者 カッシーニ調査チーム
軌道要素と性質
平均公転半径 136505.5±0.1 km[2]
離心率 (e) 0.0000331±0.0000062[2]
公転周期 (P) 0.5940798 日
(14.257915 時間)[2]
軌道傾斜角 (i) 0.0036°±0.0013°[2]
土星の衛星
物理的性質
三軸径 8.6 × 8.2 × 6.4 km[3]
平均半径 3.8±0.8 km[3]
質量 (7.7±1.5) ×1013 kg[3]
平均密度 0.34±0.26 g/cm3[3]
表面重力 0.001 m/s²
脱出速度 ~0.006 km/s
アルベド(反射能) 0.5[4]
表面温度 ~78 K
Template (ノート 解説) ■Project

ダフニス[5][6] (Saturn XXXV Daphnis) は、土星の第35衛星である。土星の環A環にあるキーラーの空隙の中を公転している。羊飼い衛星の一つであり、環の粒子に影響を与えてキーラーの空隙を形作っている。

発見

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ダフニスが発見されるより前に、キーラーの空隙の外縁部に重力的に引き起こされた波状の構造から、衛星の位置が示唆されていた[7]

土星探査機カッシーニ2005年5月1日に撮影した6枚の写真の中から、惑星科学者キャロリン・ポルコ率いるカッシーニ調査科学チームによって5月6日にダフニスが発見された[4]

名称

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発見された当初は、S/2005 S 1 という仮符号が与えられた。正式にダフニスと命名されたのは2006年7月17日である[8]。その名はギリシア神話ヘルメースの息子であり、美少年の笛吹きダフニスに由来する。ダフニスは羊飼い、パイプ奏者、牧歌的な詩人であり、この衛星が羊飼い衛星としての役割を持つことになぞらえている。また同じくA環の中を公転する羊飼い衛星のパンの由来となったパーンとは兄弟である[1]。また、命名と同時に Saturn XXXV という確定番号も与えられた。

軌道

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土星からの平均距離は 136,505 km であり、A環のキーラーの空隙の中に軌道を持っている。

ダフニスの軌道傾斜角軌道離心率は非常に小さいが、0ではない値を持つ。両方とも、特に軌道傾斜角に関しては、同じ羊飼い衛星でエンケの間隙内に存在するパンよりも著しく大きな値を持つ。軌道離心率があることにより軌道を一周する間に土星との距離はおよそ 9 km 変化し、また軌道傾斜角により 17 km ほど上下することになる。

土星の環への影響

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ダフニスがA環に立てた波はダフニスが軌道傾斜角を持つため垂直方向に盛り上がっており、そのため土星が春分点・秋分点に近い位置にいる時は環に影を落とす。

ダフニスは土星の環にキーラーの空隙を形成しており、その幅はおよそ 42 km である。ダフニスが通過する度に空隙の縁は重力の影響を受けてさざなみが立ったような特徴を示す[7]。空隙の両縁では公転速度が異なるため、空隙の内側で立った波はダフニスの公転に先行する方向に進み、逆に外側で立った波は公転から遅れる方向に進む。これが上や右の写真で見られる左右方向に延びた波の成因である。

ダフニスがわずかに軌道傾斜角を持っている影響で、空隙の両縁に立つ波は環の平面に対して垂直成分を持つ。これは環の平面から 1500 m ほどの高さに到達する[9][10]

物理的特徴

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カッシーニによって撮影されたダフニス。

2017年1月18日にダフニスは十分に近距離から撮影され、その形状が明らかになった。衛星はほとんどが滑らかな表面に覆われた不規則な形状をしており、クレーターは少なく、また赤道面にリッジ構造を持つことが判明した[11]

出典

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  1. ^ a b Planet and Satellite Names and Discoverers”. Planetary Names. 国際天文学連合. 2018年11月23日閲覧。
  2. ^ a b c d Jacobson, R. A.; Spitale, J.; Porco, C. C.; Beurle, K.; Cooper, N. J.; Evans, M. W.; Murray, C. D. (2008). “REVISED ORBITS OF SATURN'S SMALL INNER SATELLITES”. The Astronomical Journal 135 (1): 261–263. doi:10.1088/0004-6256/135/1/261. ISSN 0004-6256. 
  3. ^ a b c d Thomas, P.C. (2010). “Sizes, shapes, and derived properties of the saturnian satellites after the Cassini nominal mission”. Icarus 208 (1): 395–401. doi:10.1016/j.icarus.2010.01.025. ISSN 00191035. 
  4. ^ a b Daniel W. E. Green (2005年5月6日). “IAUC 8524: S/2005 S 1; V2361 Cyg; C/1998 U7”. Central Bureau for Astronomical Telegrams. 国際天文学連合. 2018年11月23日閲覧。
  5. ^ 衛星日本語表記索引”. 日本惑星協会. 2019年3月9日閲覧。
  6. ^ 太陽系内の衛星表”. 国立科学博物館. 2019年3月9日閲覧。
  7. ^ a b Porco, C. C. (2005). “Cassini Imaging Science: Initial Results on Saturn's Rings and Small Satellites”. Science 307 (5713): 1226–1236. doi:10.1126/science.1108056. ISSN 0036-8075. 
  8. ^ Daniel W. E. Green (2006年7月17日). “IAUC 8730: P/1999 X1 = 2006 O1; SATURN XXXV (DAPHNIS) = S/2005 S 1; 177P; THE EDGAR WILSON AWARD 2006; V2576 Oph”. Central Bureau for Astronomical Telegrams. 国際天文学連合. 2018年11月23日閲覧。
  9. ^ Mason, Joe (2009年6月11日). “Saturn's Approach To Equinox Reveals Never-before-seen Vertical Structures In Planet's Rings”. CICLOPS web site. 2009年6月13日閲覧。
  10. ^ Weiss, J. W. et al. (2009-06-11). “Ring Edge Waves and the Masses of Nearby Satellites”. The Astronomical Journal (American Astronomical Society) 138 (1): 272–286. Bibcode2009AJ....138..272W. doi:10.1088/0004-6256/138/1/272. http://www.iop.org/EJ/abstract/1538-3881/138/1/272/ 2009年6月15日閲覧。. 
  11. ^ “Daphnis Up Close”. Cassini: Mission to Saturn. https://solarsystem.nasa.gov/resources/17589/daphnis-up-close/?category=images 2017年1月19日閲覧。