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ズーチェック運動

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ズー・チェックから転送)
アンチ・ズー団体による動物園ボイコットのデモ行動 (PETA)[1]

ズーチェック運動(ズーチェックうんどう、: Zoo Check Campaign)とは、動物園を監視する“動物園調査”(Zoo Check , Zoo Investigation)を通して、「貧弱[2]」「わびしい[2][注釈 1]などと形容される展示を行う動物園に対して抗議活動などをし、それによって、人間に“搾取”される動物の削減を行うことを目的としている市民活動のことである[注釈 2]

概説

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動物園ボランティアの作業風景(米)

動物権利運動[注釈 3]に伴い、“動物園廃止運動”として1970年代の欧州からはじまり、80-90年代に広まった[3]。この運動は、動物園の飼育動物の環境改善を目指す動物福祉の向上を狙う目的だけではなく、公衆から“わびしい展示”が見えなければいいとする大衆運動でもあり[注釈 4]、動物園調査の結果、動物福祉が劣るとみなされた動物園は、閉鎖勧告を受けるなどの攻撃対象にされ、対象とされた動物園は閉鎖に至ったり、雇用が失われたり、動物の殺処分や自然減が行われる[注釈 5]

この市民活動や時代の変化に対応する形で、動物園の展示技術の向上や、飼育動物の環境エンリッチメント (environmental enrichment) の概念が1980年代の米国で成長し[3]、動物園で様々な試みが行われ、そして善い変革を行うよう推奨する市民活動も「市民ZOOネットワーク」などにより行われる[注釈 6]

動物園調査とは

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意味

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動物園調査は狭義には、1980年代に英国人が始めたとされ、ズーチェック団体[注釈 7]や教育機関などが用意する“独自の調査法”[注釈 8]に基づき、動物園に飼養される動物に関して、市民が改善点[注釈 9]を探す私的調査、外部調査を指す[4][5]。狭義の動物園調査(ズーチェック)は、米国では1980年に[3]、英国では1984年に[6]、日本では1996年に[7]、中国では2010年に[5]、幾つかの動物園で行われた。

広義の動物園調査とは、ズーチェック団体の考えた狭義の調査法とは無関係に、従来通り、動物園への市民・消費者からの苦情や要望、あるいは専門家の意見まで、外部から様々な改善点を見つけることである[注釈 10][8][9][10][11]。調査の目的は様々であるが、その時代に見合った「動物園の正常化」を目指すもので、学術権威が意見する場合もある[12]。日本での広義の動物園調査は1905年の上野動物園のゾウ飼育にさかのぼることができる[13]

“動物園調査”を示す「ズーチェック」という呼称が造られる以前から、動物園には人びとの様々な考えが寄せられていたが、その「考えを見つけること」が動物園調査である[注釈 11]。なお、公的機関が動物園を検査する場合は“査察”であり、施設の開設前に行われる査察は“審査”と呼ばれ、何れも一般市民の動物園調査とは異なり法定権限や指導力、専門性を持つ。また、動物園が自園を調査することは一般に内部調査でありズーチェック(動物園調査)とは呼ばない。[注釈 12]

市民参加と公表

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狭義の動物園調査(ズーチェック)は専門家だけではなく広く大衆が行えるように、動物の典型的なストレス行動の例や、わびしい展示の例、動物園の抱える課題などを書籍やインターネットなどで予め啓発する[4][14][15]。広く大衆に啓発するのは、市民(消費者)の意識向上の狙いがある。また、ズーチェック団体自身も動物園調査を行い、結果を公表し抗議活動を行う場合もある。例えば、東京の動物権利団体による動物園調査の結果[7]、神奈川県小田原市の小田原動物園が狭いことが判り、その団体の抗議活動などが行われ、2012年現在、閉園する方向となっている[注釈 13]

チェックリストの内容

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著名なズーチェック団体が掲げるチェックリストでは、動物の把握、飼養場の把握、環境の把握、給餌と給水の把握、安全策などに分類される調査内容を最低限含むこととされている。このチェックリストはチェックする者の素養で結果が大きく異なる。詳しくは「ズーチェック運動の問題点」を参照。このチェックリストは、短時間の観察や、飼育の記録を閲覧又はアンケートで調査できる単純な内容であり[16][17]、欧州の別の動物権利団体Animal Equality は、特に調査の必要があるとみなした動物園に数か月の潜伏調査を行い、動物園調査の信頼性を増している[18]

動物園調査の結果

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日本の幾つかの動物園の調査資料[17]、日本各地のホッキョクグマ飼育を調査した資料[19]、日本のクマ類の飼育環境の考察[20]などが存在するが、動物園は年々変化しているため、最新の調査結果と考察が必要となる。

動物の不適応行動

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アジアゾウのロッキング行動

病的な行動とそうではないものがある[注釈 14]

  • 常同行動(常動行動。意味もなくおなじ行為を繰り返す。“貧乏揺すり”程度から病的な程度まである。)[21][22]
  • 自傷行為[21]
  • 口や鼻の穴をいじって暇つぶし[23]
  • 不可解な吐き戻し[21]
  • 頭をかきむしるなど過剰なグルーミング(毛繕い)による脱毛[3][24][注釈 15]
  • 意味もなく柵を舐め続ける[4]
  • 不必要に糞、尿を食す[4]
  • 繁殖障害(交尾法がわからない[21][25]、育児法を知らない[25]、育児放棄[21]
  • 発育障害(脳が正常に発育しない、正常な体重増加が見られない)[26]
  • 指吸い及び類似行動[27][注釈 16]
  • 社会的問題(不必要に喧嘩が多い、異常に相手を攻撃する)
  • 群れ不適応[注釈 17][21][28][29][30][24]

上記の幾つかの病的症状を“Zoochosis”(ズーコシス:動物園精神疾患、"Animal psychopathology"(動物精神疾患)」と同じ)と呼ぶ人もいる[22][31][32][33]

動物園調査の比較

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アジアゾウのボール遊び

従来の「動物福祉」[注釈 18]と、「動物の権利」(動物権)による動物園調査は異なる性質をもつ[注釈 19]

本来の意図

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動物園調査の本来の意図は、動物保護(動物愛護、博愛)の精神から、虐待・虐殺を防ぐことである。動物保護とはイギリスの "Animal Abuse Prevention"(動物虐待防止)の考えが原点であり、動物の虐待・虐殺をやめさせることが目的である[要出典]。この価値観からの動物園調査(ズーチェック)は昔からあり、19世紀に設立された英国動物虐待防止協会(当時は「王立動物虐待防止協会」)などがそれで、動物虐待防止の法律を整備したり、「動物虐待防止の観点から〜という行為をやめさせる活動」が主体である。例えば過去には、動物を過度に鞭打つ行為や、乱暴な殺し方、餓死など動物への無慈悲な取り扱いを防止し、逆に20世紀末ごろからは、餌の過剰による肥満[34]などの不適切な飼育をやめさせることである[13]。その後、この考えは動物福祉(アニマルウェルフェア)という形で広まっていく[注釈 20]。日本では第二次大戦後すぐの1946年に「日本動物福祉協会」の前身が活動をはじめ、1949年には「日本動物愛護協会」も設立された[35]

動物権の台頭

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動物権による動物園調査

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だが、1970年代から台頭した「動物権」(動物の権利、アニマルライト)[注釈 21]によれば、人間による動物への“搾取”(利用)は“悪”であるため、動物園はその存在自体が“動物の虐待施設”とみなされ、動物権利活動家の非難や抗議の対象となり、動物園が閉鎖に追い込まれる場合もでた[36]。又、西洋で発生した動物権は、動物の殺処分は適切な方法で行えば“許容される”[注釈 22][37]ため、「人工哺育は不自然」という理由で殺される場合[38]や、閉鎖した動物園が大量の動物を殺処分する場合がある。動物権利団体は動物園の閉鎖を目的として存在するため、この観点からの動物園調査(ズーチェック)は、本来の意味の“動物福祉”[注釈 23]から言えば、適切になされているとは言い難い。その団体の主張が“動物福祉”なのか、“動物権利”なのかを見分ける方法は「動物園の否定」[39]以外に、「食肉の否定(菜食の推奨)」[40][41]、「毛皮の否定」[42]、「サーカスの否定」[43]、「動物権利宣言の啓蒙」[44][45][46]などにより判断される。市民はどの立場から動物園調査(ズーチェック)が呼びかけられているのか、吟味する必要がある[注釈 24]。一方、21世紀のRSPCAは動物の権利を意識した動物園調査を行う[47][48][49]

ズーチェック運動とは

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動物権とは

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太古より人類は動物を利用してきたが[注釈 25]、哲学では古来から動物の取り扱いについて、「動物には知性が無い」、「動物は痛みを感じる」の概ね2つの考察で論じられ、そして20世紀後半には、動物は痛みを感じるので適切に取り扱う方向に考えられるようになった[50]。これを受けて1970年代から台頭した動物権利論により、人権宣言を模した「動物権利宣言」が活動家により作成された[51]。その前提条件に「人間が動物を“搾取”している」という“階級闘争”に似た価値観を置いた[注釈 26]そして、人間が動物を“搾取”(利用)している場所は、狩猟場、畜産場、動物実験、毛皮、食肉業、ペット、サーカスなどとともに、動物園も掲げられた[注釈 27]。現代のズーチェック運動はこれを発端にするため、動物園の存在自体を問題視している[注釈 28]

動物園の是非

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「ズーチェック運動」という一部の市民による活動は、そもそも“動物園が人類に必要か否かの議論”[52][53][54]に始まる[注釈 29]動物の権利によれば、「人類が動物を“搾取”する」のは“悪”であるとみなされるため、一方、動物権利団体代表の野上ふさ子(ポン・フチ)(1949-2012)によれば、「植民地主義の否定」という発想から動物園は植民地主義のなごりで不要であり、かつ、動物園は動物を檻(おり)に閉じ込め“搾取”(あるいは動物虐待)している[52][28][23]という“誤解”[注釈 30]が含有される。この歴史解釈は背景にある共産主義陣営の崩壊[注釈 31]とともに消失したが、後者の「檻に閉じ込めている」は、動物園を“刑務所”、動物を“犯罪者”に例えて擬人化した感情論[注釈 32]ではあるものの、その後も広く用いられる表現である[2]。これは、先進国を中心に20世紀後半の社会が豊かになり、人々はテレビを通じて野生動物を見られるようになったため[25]、一部の人々の世界観・価値観が変化し、野生下の動物の生態を“最善”と考え、動物園での生態と比べるために生み出された共感(誤解)であるが、必ずしも野生下のほうが“最善”ではないと動物権利論では語られる[55][56][注釈 33]。野生下よりも動物園のほうが動物が利益を得られる場合は、野生動物に利益を与えなければ人道に反する場合もある[57]

動物権によるズーチェック運動

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動物権利運動には『動物園は動物を“搾取”(虐待)している』[28]という“誤解”[要出典]が根底にあるため、動物園の“監視”に「動物園調査(ズーチェック)」を用いるようになった。従来の動物福祉の向上の観点から展示動物に“できるだけより善く”暮らしてもらうという発想ではなく、“人間は動物を搾取している”、“動物園は不要”とする思想のため、動物園の都合、歴史や技量などとは無関係に、展示動物が異常行動をしないか、又は、世界でも高度な基準と照らし合わせを行い、一律に高いハードルで“監視”をする。例えば、秋田県の水族館のホッキョクグマ飼育舎はカナダのマニトバ州の基準[注釈 34]で設置されたが、日本とカナダの動物権利団体などの抗議により、カナダに拒否された[37][58][注釈 35]。また、静岡県の自然動物公園がスマトラゾウを借り受けようとしたのを同じく抗議した。動物権利団体は「動物園は不要」とする価値観の下、動物園調査で“あら捜し”を行ったり、また行うように市民に呼びかける。これがいわゆる「ズーチェック運動」とされるものである。この運動には「動物園は不要」とする価値観があるため、問題点が見出された施設は動物園調査の結果を公表されうるし、或いは営業妨害されうる。[注釈 36]

ズーチェック運動とは、動物園調査(ズーチェック)という調査により動物園の飼養に問題があると見なした外部の個人や団体が、その動物園や関係する取締機関に問い合わせや苦情を行うことから始まる[59]。著名なズーチェック団体は動物園調査の予告や結果の公表、或いは動物園への営業妨害や取締機関への抗議活動までをも「動物園調査(ズーチェック)」と称する場合もあるが、一般にそれらの行動は動物園調査には含めず“動物園への調査”だけがズーチェック(動物園調査)である[注釈 37]。これは善意の個人・団体が善意で動物園調査を行い、善意で動物園へ改善点(要望)を連絡する(いわゆる慈善行為)[60]とは区別する必要があるためである[注釈 38]

動物権利運動では、市民(人間)の権利獲得運動と同種と捉えているため、動物園への営業妨害(抗議活動)がしばしば行われる。例示すると、「利用しないことの呼びかけ(不買運動)」「メディアやインターネットで非難[59]」「口コミで悪評の拡散」「内部情報のリークや内部告発を行わせる[61]」「近所や出入口でデモ・集会を行う[62][1][63]」「動物園協会から脱退させる」「国会・地方議会に質疑させる[64]」「行政が指導するように促す[65][66]」「動物の輸出入を妨害する[65][67][66]」「免許・資格の取り消しを求める」「世論調査や住民投票を行う[注釈 39]」「他国の団体にも協力を仰ぐ」「訴訟を行う[59][68]」などがあり、また悪質な場合は、「私有地の無断侵入」「内通者の手引き」「合鍵などの無断使用」「無許可の撮影と公表」[69]などの不法行為もあり、軽い破壊行為(侵入や逸走のために鍵や窓、金網の破壊など)を伴ったり、「脅迫」「暴力」「破壊」行為などのエコテロリスト犯罪もある[70]

環境エンリッチメント

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ニュージーランドの動物園のキリン

エンリッチメントとは

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動物福祉団体の動物園調査によって指摘された改善点に応える形で、動物福祉(アニマルウェルフェア)の考えの一環として、「飼育動物の環境エンリッチメント (environmental enrichment)」という概念が1980年代にアメリカで体系化され、1990年代から普及した[3]。環境エンリッチメントという概念は飼育管理技法の一つで、動物になぜストレスが発生するのか、動物の心は満たされているのかという福祉的な観点『思い遣り』を考え改善するもので[56]、アメリカ動物園水族館協会 (AZA) の定義では、『動物の種にふさわしい行動と能力を引き出し、動物福祉を向上させるような方法で動物の環境を構築し、改造すること』[3]をいい、動物園の飼育動物の生活の質を向上させるように生活環境をより善くより豊かにする発想である[56][注釈 40]

この発想及び、1990年代から重視される「顧客満足度」の向上[注釈 41]という発想から[71]、動物園の改修又は飼育の改革が行われる。中にはベテラン飼育員が飼育舎の設計に深く関与して改修を行い、評判となる展示もある[注釈 42]。動物園にとって環境エンリッチメントと顧客満足度の2つの観点は車の両輪の様に同じ道を歩むものであり、ここでは両者を分けずに紹介する。これらは動物種に応じた様々な試みが行われる[72]。例えば、野生下の動物は餌を探すのに長時間かかるが飼育下では時間がかからないことに着目し、暇な時間が動物にストレスとならないように餌を隠して探させ、その生き生きとした様子を展示することや[3]、キリンの餌場を高所に配置すれば、キリンが食べにくそうに頭を下げる不都合から解消される上に、キリンが舌を器用に使って高所の餌を捕らえる様子が観察できるようになることである[28][73]

餌箱で遊ぶマレーグマ(独)

改修の工夫例として、ケージサイズ・飼養場の拡張、見学場所を目立たなくする工夫、地下(水底)から地上(水中)を観察する工夫、樹木・岩・小川・池などの造園、アスレチックの造成、動物の隠れ場所の工夫[56]、動物の脚にやさしい床面[56]、猛獣が観客を眺める工夫(見学者を遊び相手にする発想)、空調設備・霧・シャワー・日陰を設置、水深・水流・波の工夫、水槽の水のリサイクル、などがある。飼育の工夫例として、給餌方法の向上[56](遊びのために餌を隠して配置、採食に時間がかかるように餌をばら撒く工夫など)、給餌メニューの工夫(粗食を与える工夫。季節に応じドングリ給餌及びどんぐりの募集など)、給餌回数を増やす[56]、好奇心・満足感を満たす仕掛けの配置[56](餌が入っている箱や朽木などの配置。遊び道具の配置、大型類人猿に道具を使わせる工夫など)、トレーナーや来園者が遊び相手をする(トラとプールで遊ぶ[74]など)、木道・渡り廊下を設置(レッサーパンダ・アライグマなど)、複数種の混合飼育、群れでの飼育(ゾウなど)逆に単体での飼育(クマ類など)の工夫、動物がバックヤードに戻れる工夫[56]などがある。

これらは動物園の動物に「できるだけ善い環境」を提供することで、展示の見栄えの向上や顧客満足度や動物福祉の向上を狙うだけに留まらず、飼育動物の健康増進が導かれ、平均寿命の増加や、繁殖のし易さなどを導き出し、「ズーストック計画」などの動物園の機能(期待される役割)を補強するものでもある。そして、2002年からNPO「市民ZOOネットワーク」などが、善い施設の改善を行った日本の動物園を「エンリッチメント大賞」として選出するようになった。

エンリッチメント大賞

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この賞は日本の動物園等を対象に、応募により日本の有識者が選定するもの[21]。狭義のズーチェック(動物園調査)の様に動物園等の“ダメだし”をするのではなく、日本国内の先進例の動物園等や飼育担当者を評価してより善い施設を作ることを目指し、その過程に市民が関れるものである[21]

※ この賞は2002年度から「市民ZOOネットワーク」により行われる。

最良の動物園

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米・ブロンクス動物園のニシローランドゴリラ[75]

※以上は、David DeGrazia(デヴィッド・ドゥグラツィア)ジョージ・ワシントン大学準教授(哲学・倫理学)が例示したもので、「最良の動物園」の傾向は、ケージから自然生息地に近い展示へ移行していることを指摘している[2]

なお、 DeGrazia (2002)によれば、動物権論から見ると、動物飼育には2つの条件(1)動物の基礎的な身体的及び心理的ニーズが満たされなければならない[2]。(2)動物は少なくとも野生で暮らすのと同じくらい良好な生活条件を与えられなければならない[2]。があり、更に、動物園には「動物を道徳的地位をもつ存在として尊重する態度を涵養する責任がある」とし[2]、「唯一の正当化できる動物園は少数の非常に優れた公立動物園で、大きくて自然に近い展示施設を持つため、動物をそばで見ることはしばしば難しくなる(正当化できる動物園は双眼鏡が必要)」と、動物の道徳的な扱いの要求と飼育スペースの巨大化を指摘した[2]。日本で双眼鏡が必要なほど大きな展示施設は、自然の山林を用いた「サホロリゾート ベア・マウンテン」や「勝浦ぞうの楽園」があり[注釈 44]、全てが人為の従来型の発想から脱却し、“自然そのもの”を有効活用した民間動物園(但し単一種)である。

変わる動物園

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  • 「いま動物園がおもしろい」で例示された他国の動物園(掲載順)。
    • 生態的展示)- ブロンクス動物園(ニューヨーク)[77]シンガポール動物園ナイトサファリ[77]、ハーゲンベック動物園(ドイツ)(1907年、無柵放養式(むさくほうようしき)の組み合わせによるパノラマ展示)[77]
    • (環境一体型展示)- フィラデルフィア動物園(アメリカ)[77]、ウッドランドパーク動物園(アメリカ・シアトル市、1977年に環境一体型展示)[77]、ブロンクス動物園(ニューヨーク)[77]

今日的な課題

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哲学倫理学の DeGrazia (2002) などにより、米国のブロンクス動物園が高く評価されるのは1999年オープンの「コンゴ・ゴリラの森」に見られるように展示・演出・福祉・教育・生息地の保全のどれも“世界最高水準”[3]であることだけではなく、都市型動物園ながら敷地面積が広大であること[76]ランドスケープなどの展示方法が優れていること[77]、情報提示に優れていること[78][77]、種の保全を行うこと[79]、研究者が多数在籍し学術研究が盛んであること[79]などに昔から優れた先進性を示し、動物園の抱える今日的な課題の手本であり続けたからである。日本においてブロンクス動物園の真似(ランドスケープ型展示)を行おうとすると、都市部の動物園では“小さな箱庭”になってしまうため、上野動物園のように「行動展示」への方向性を示す場合もある。

ズーチェック運動の問題点

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世界動物園水族館協会 (WAZA) は、動物園・水族館のスタッフは動物園への批判者と対話し、アンチ・ズー(動物園批判者)の誤った主張は訂正し、アンチ・ズーの認識の時代遅れな部分は抗議し正していかねばならないとしている[80]

批判者による調査

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公正な調査が求められる[54]

批判的調査

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1996年に日本の動物権利団体が英国の団体と行った10か所の動物園調査では、「多くの動物園は旧態依然とした“見世物小屋”であり、この数十年見るべき改修を行っておらず、動物はケアさえ受けられない状況」と結論を述べた[28]。動物園への批判の中に、この“見世物小屋”或いは“見世物”という非難がしばし見聞されるが[25][81]、欧米において“見世物小屋”とは、“道路脇”にケージや檻が置かれ野生動物が飼育される展示を指し[82][80]、「見物人がおよそ野生動物を尊重できず、教育にも科学研究にも繁殖にも役に立たないような状態」と、動物権利論の DeGrazia (2002) は述べている[82][注釈 45]。この意味において、当時の日本の動物園の過半は教育も科学研究も繁殖も行われており[83][注釈 46]、(路上の)“見世物小屋”には相当しない。また中国では2010年の13か所の動物園調査により、「動物の管理方法は極めて野蛮」「動物の生活環境は劣悪」「動物たちが生命を維持するのがやっと」と厳しい評価がなされたが[5]、サーカスで危険防止に猛獣の牙を抜き、サーカス引退後に動物園で飼育していたところ、その動物園が行ったように指摘したり[5]、予想外の極めて稀な事故死[84]を例示した。これらの例の様に、動物園批判者は過激な言葉で話題作りをしているが、これは客観公平公正な調査を行っているとは言い難い[54][85]。そもそも、批判者による調査に、法に基いた行政組織の様な客観公正公平さを期待することはできない[54]

一方、動物園は市民のために存在し、動物園を維持をする主体が市民なのであるから、これは“市民の道徳観の現れ”ともいえるという意見もある[注釈 47]。そもそも、"Zoological Gardens"(直訳すれば、「動物学の園(その)」)を福沢諭吉が「動物園」と解釈し[86]、日本の動物園の“手本”である上野動物園が博物館というよりも娯楽施設としての側面が強く、これが以後の日本の動物園のあり方を決定づけたため、模倣した動物園が作られていった歴史もある[28][81]

また、動物園批判者には、動物園には動物行動学の専門家が存在しないと解釈し、外部から専門家を招くべきと意見することがあるが、動物園からは「職員に専門家がいる」「動物園技師が専門家であるべき」と反論されている[87]。これは、動物行動学は野生動物を対象とする学問であるため飼育下に応用できない場合があり、飼育下の動物行動に詳しいのは動物園そのものであることと、動物園の運営や革新には多様な最新情報(最新技術)が必要とされ、外部の専門家を招いても効果が乏しいことを意味する。例えば、最新のペンギンの環境エンリッチメントを行う場合においては、東京の動物権利団体が主張する通りに動物行動学の専門家や学識経験者から指導を受けても効果は乏しく、国内の動物園水族館の飼育担当者が中心となって組織する「ペンギン会議」から意見を得れば最新情報(最新技術)が容易に入手でき、設備投資に失敗する可能性が低くなる(同様の飼育専門家集団に「ゾウ会議[88]」もある)。あるいは、大型霊長類の為に高いタワーを造り環境エンリッチメントの向上を図る例があるが、これは大型霊長類の飼育を長年行う京都大学霊長類研究所が手本となった新知見で、優れた飼育技術である為に模倣する動物園がでている[25]。この様に多様で最新の飼育技術が必要であるため、一般人からも意見を募集した動物園もある[注釈 48]

専門性

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手を振るクマ

調査の専門家の育成が求められる

調査の質

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動物園調査(ズーチェック)を行う者の素養で、「日当たりが悪い」・「じめじめしている」・「空気がよどんでいる」など主観的な結果を出すケース[89]や、「塗装が剥げている」・「柵が錆びている」など動物福祉上も機能上も問題の無いことを主張するケース[90]、稀に飼養場の無断撮影とそれの無断公表を行うケース[69]など、質の低い調査が行われるが、本来は法的権限を持たない一般市民には実行の難しい内部調査であるためにおこる“過失”であり、なおかつ高度な専門性を要する調査であることを理解していないための“見識の低さ”である[注釈 49]。例えば、住宅調査の様に湿度計・照度計・流量計・臭気計・騒音計などの測定器を用いて感覚を排除し客観性を示す工夫や[91]、ストレスをホルモン分泌で調べる工夫[92][93]、柵・ケージの塗装の剥げや錆などの耐久性について主観的な調査を避ける見識、調査者自身が不法行為を犯してないか客観視する姿勢、自身の調査結果が検証性や論理性などがあるのかを考察する素養、などの“専門性が欠如”している。これは一部の個人・団体が調査の質(動物福祉の向上)よりも暴露(スクープ)を重視するため、適切な人材と人員(人数)がいないにもかかわらず調査を行う歪みである。また、短時間の簡単な調査であるため、推測した調査内容の公表を行い、のちにそれを否定する証言が出る場合もある[要出典]

また、ズーチェック団体が掲げるチェックリストでは簡単に短時間で行える比較的単純な調査に留まり[4][14]、動物のQOLの把握、エンリッチメントの評価、個体の生涯調査などの長時間・長期間の観察を要する調査項目(動物の専門家が本格的に取り組むべき調査)を行う概念は乏しい。例えば、「現にストレス行動をする飼育動物がその動物園にいるか。一日に何時間のストレス行動をするか。あるいは動物園の何%の動物がストレス行動をしたか。」という基礎的で極めて重要な調査内容が欠如している。動物園にストレスを抱えた動物がいるのであれば、その個体そのものに適切に対応しなければ倫理(人道)に反するからであるが、単純な動物園調査は個別の事案には対処できない調査(偶然の発見を期待する調査)である。例えば、ある動物権利団体が、ある観光牧場を20年間追跡調査をしたとしても[94]、それは10年ごと又は数年ごとに単純な調査を行ったに留まっており[94]、実際の個体の生涯(例えば、その個体の群れの中の地位や日常生活)や、ストレス行動率やストレス個体率、怪我率や動物の死因などが殆ど理解できず、本来の動物福祉の観点(一頭一頭を大切に扱う)からの十分な調査(見張り番)とはいえないものであった。動物園の何%の動物がストレスを抱えるか、他、疾病率、怪我率、事故死率などの生涯調査の把握は、DeGrazia (2002) が主張する野生下との現実主義的な比較において有効な観点であるが行われず、感情論やスクープでの印象操作(イメージ操作)[95]などで世論が導かれている側面がある[注釈 50]

検証性

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市民による動物園調査(ズーチェック)は行政が行う立入検査とは異なり、専門的な知識や法による権限に基づいておらず検証性の低いものになりがちであり、それが原因で行政や専門家と見解が食い違うことがある。

例えば、「個体が異常に痩せている」のを東京の動物権利団体が見つけ写真撮影し[96][97]、給餌量が少ない動物虐待と判断して[96][97]インターネット上に調査結果を公表し[96][97]行政に文書で通知したが[96]、その後の行政と獣医師などの専門家が行った立入検査では、高齢や病気、強い個体からの迫害が痩せた理由で、餌の投与量が十分であるにもかかわらず、その個体だけが痩せていた例がある[98][99]。これは調査者が管理者に個体の体調について詳細な説明を求め、客観的な検証を行えばよく、専門的視野に欠けたケースである[注釈 51]また2004年に閉鎖した元観光牧場において、飼い主が引き続き猛獣の飼養をしていたところ、2011年に飼養場内に動物の遺骨が見つかり、同上の市民団体に給餌量が少ない動物虐待と公表されたのは、その私有地に不法侵入した市民が飼養場を盗撮してインターネット上に公表したからであるが、その後の行政の立入検査では動物が餓死するほど給餌量が少ない事実は確認されず、寧ろ適切な給餌量で、近隣からもそれを裏付ける証言があった例もある。これは遺骨の発見により給餌量の少なさからの共食い(動物虐待)を判断してしまい、他の可能性も検討する専門性に欠けた行動である[注釈 52][要出典]

この様な、追跡調査された事実と食い違いを見せる検証性の低い動物園調査(ズーチェック)により、その施設名の公表をも行ったり、マスメディアも団体の主張を鵜呑みに報道するのは、そもそも人権よりも動物権を重視している視点である。動物権が脚光を浴び、専門性や検証性の乏しい調査と公表が行われる現状では、その行為に対して法による監視(私的調査の禁止、調査官の主観の禁止、指標や基準の整備、及び公的調査の専門家育成など)が必要である[注釈 53]

感情論

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その個人が動物園の動物にいかなる感情を持つのかによる。

チンパンジー
レッサーパンダ

一般的な感情論

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動物園批判には、「動物が可哀想」と感じ[53]、例えば、「この動物園の動物の目は死んでいる」[14][100]などの客観性や検証性に乏しい感情論が行われる[要出典]

野生動物の生息地に直接観察に行くことを勧める場合[14](対象動物の生息地以外での飼育に反対する場合)、同じく、動物の代わりに動物ロボットを展示することを求める場合[101]、同じく、動物の展示の代わりに動物の映像を放映すればよいと主張する場合[102][28][注釈 54]、同じく、国内飼育総数の少なさを無視して対象動物を国内に求めるように主張する場合(ホッキョクグマなど)や[37]、動物が可哀想と考えて、動物のしつけ・訓練に反対する場合(ゾウ[27][61]など)、同じく、動物のショーや芸[注釈 55]に反対する場合[25]、同じく、動物どうしの喧嘩が行われる状態に反対する場合[100][注釈 56]、同じく、環境エンリッチメントの向上のために餌を食べ難くすることに反対する場合、同じく、環境エンリッチメントの向上のための科学的な「共生展示」」(混合展示[103])に反対する場合[104]、芸やショーを毛嫌いして、立つレッサーパンダのブームを批判する場合[25]、野生の生態を優先させるあまり、動物の擬人化に反対する場合[25]、動物の気持ちを推察したつもりで、動物を至近距離から見せることに反対する場合、同じく、動物と人とのふれあいに反対する場合[注釈 57]、動物権のみを優先して、動物の移送(移動・輸入)に反対する場合[105]、同じく、逸走猛獣の射殺に反対する場合、逆に「育児放棄の仔の人工哺育は不自然」と主張し殺処分を勧める場合[38]、人工繁殖を人工的だと批判する場合[28][38]、動物園と野生下での違いを理解せず、チンパンジーの塔を15m以下にすることに反対する場合[注釈 58]、チンパンジーのショーやテレビ出演に反対する場合[28][106][107][注釈 59]、動物園の餌やり体験は野生動物への餌付けにつながると主張する場合[108]、野生生物の家畜化に反対する場合[注釈 60]、動物園の動物の野生復帰は不可能だと主張する場合[100][注釈 61]など、現実性や利便性、合理性、検証性、論理性などに乏しい様々な感情論が行われる。

しかし、もし対象動物がその動物の生息地に行かねば見られないとしたら、市民の多くが経済的理由で見られなくなる動物種が多数となるが[28]、これは人の経済的弱者よりも動物の権利が上にくることを意味する[注釈 62]。また、野生のクマに餌付けをさせないために動物園に餌やり体験の禁止を申し出る場合は、社会実験などによって因果関係を立証した後でなければ科学的とは言い難い[注釈 63]。また、動物権理論の DeGrazia (2002) は、野生下の動物の暮らしと動物園のそれとの危害と利益との現実主義的な検証の必要性を指摘しており、感情論(最も厳しい批判者)は動物が被る危害と得られる利益とを比較して考察していないと批判する。これは、そもそも欧州由来の動物権利論の発生が動物への“博愛”という感情から始まり、そこから派生する主張についても他者の感情に訴える手法が一般的に取られるためであるが、市民が動物園に“監視”の目的で訪れるということは、教養と娯楽の施設である動物園を「楽しめないように啓蒙されている」ことを意味する[注釈 64]

動物園に行く大人と行かない大人

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昼寝するクマ
喧嘩するクマ

21世紀になると、動物園は娯楽の施設からの脱却をはかり、学習・教養の場(いわゆる博物館)に変化しようとしている[109]。また展示方法に工夫を凝らし、市民の目を引かせる。しかしながら、それは動物種を教科書的に理解した(短時間で得られる知識)に留まるという欠点がある。そこで、動物は生きていて、活動するから動物なのだから、それ自体を楽しむという価値観が唱えられるようになった。動物園を楽しむ一つの方法は、「個体識別」をし、一頭一頭の違う「個性」を見分け、その個性を観賞・観察することだとする意見がある[110][111]。個体によって性格や行動が異なる場合が多いためである。なお「個別識別」は野生動物の研究者が用いる手法(フォーカルアニマルサンプリング[92])に似ていて、かつ短期で探究が行える[110]。また、環境エンリッチメントの工夫を探すことや、展示設計・展示思想を比較することでも動物園を楽しめる[21]。或いは、「動物種の観察」を行うのも動物園の楽しみ方の一つである。自身の健康維持のために、動物園の動物を25年以上観察し続けた『私の動物園勉強法』では、カンガルーやワラビーの排糞行動に興味を持った筆者が10年間ほど糞を数え続け、最終的に少しでも体重を増やさない為に摂食と同時に排糞する戦略を付き止め(同114頁)、そして他の動物の排糞をも観察し動物種の歴史による違いも見つけ、「それぞれの個体が、それぞれの歴史の中で戦略、戦術を作り、その歴史の一部を動物園で見せてくれた」(同179頁)と総括し、「周りの状況と動物達の行動を連動させて、彼らの気分や行動理由を読み解くことがお勧めの知的好奇心」(同51頁)と動物園の楽しみ方を示した。また、動物園で生涯学習をする[112]のも楽しみ方で「大人のための飼育体験」などがある[113]。しかし動物園批判には「まともな大人は“野生の動物への配慮のない動物園”が好きなのはおかしい」「憂鬱にならないとしたら、その大人の感性はすりつぶされている」「心が和むとしたら、その人の心は正常だろうか?」[25]と、感情論を述べる。旭山動物園が低迷を続けた1980年代、旭山動物園は“まともな大人”の市議会や市民から『きたない、くさい、おもしろくない』と悪評がたっていた。また昔から『動物が動かない』[11]、『動物が寝てばかりで、つまらない』とする動物行動学を理解していない感想[53][注釈 65]、『動物が見えない』[11]、『いつ行っても変わり映えしない』[21]などの不満があるが[107]、しかし子供は動物が好きであり、だからこそ大人は子や孫にねだられて動物園に行き、大人1人で動物園に行くのは恥ずかしいとする文化(社会)を生み[114]、その打開策に東京ディズニーランドを模倣して「(大人にも通じる)ストーリー性」を求めたり、旭山動物園の様に「(大人にも通じる)行動展示」を行うようになった[注釈 66]。しかしながら、多くの動物園水族館では動物園ガイドにボランティアを募集したり[115]、金銭や餌を寄付するという慈善行為も行われており[116][117]、これらは大人(市民)が行う行為である[118]。なお、動物園を“子供向けの娯楽施設”とみる感覚は日本だけではなく他国にもある[119]

タブー

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肉食獣が生きた獲物を捕らえる「狩り」を実際に見せること[注釈 67]はもちろんのこと[104]、食用動物の肉の推奨や販売、製品動物の製品の推奨や販売もタブーである[注釈 68]。これらは動物が死なないと手に入らないため、動物園ではタブー視される。動物園では「動物の死亡告知」もタブー視されるが、動物園批判者が動物の死亡を感情で論じても非論理的な上、死を隠すのは「死」の社会教育の機会を失う[104]。そして、老衰した動物の展示、障害を追った動物の展示もタブーである[注釈 69]。タブーを破って展示したことで、「障害を見せ物にしている」と感情論で批判があるが、社会から老いを隠してよいのか、交通事故や人為的な原因での事故など現代社会の犠牲による障害を隠してよいのか、論理的に考証せねばならない[104][120]

ゾウのしつけ

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飼育員とボランティアがゾウを入浴させている(ニュージーランド)

タイ式のゾウのしつけ・訓練(馴化)[121]がしばしば感情論で反対されるが、日本では裁判が行われ、ゾウのしつけは虐待ではないと判断されている[61]。さて、「動物園のデザイン」57頁によると、タイ式のゾウ調教用のフックは皮膚の厚さが3cmあるゾウにとっては「チクッ」とする程度と説明され、ゾウのしつけは人命を守るためや、麻酔を打つ際の転倒骨折を防いだり、爪を切るネイルケアなど、ゾウの日常生活に欠かせないことが示される。「動物の赤ちゃんを育てる」156-158頁では堀に落ちたオスゾウをしつけで救助。ムスト(マスト:発情期)中のオスゾウも餌としつけでクサリを巻き必要な作業ができ、176-178頁にはゾウのバック(後ずさり)から筆者亀井一成が護身用フックで難を逃れる様子が書かれる。「キリンが笑う動物園」8頁によると、ゾウの訓練は人間との関係を築くことや、予定される引越しや新生活の管理の為であり、76頁では、ゾウに限らず、病気になった時に適切な対処を可能にするとある。「日本の動物園」137-140頁によると、ゾウのしつけ自体が動物福祉の向上(エンリッチメントの向上)につながるとし、特に人間への恐怖・不信感の払拭、並びに、飼育員との緊張感の緩和や飼育員との心的交流によるQOLの向上、診療や治療の容易さ・移送のストレスの緩和・人工授精・採精・体重測定・採尿・採血など飼育管理の容易さと動物福祉の向上、そして解説に集まる入場者の前で、実物のゾウが静止することによりメッセージ性が高まる効果があるとする。また一方、従来のタイ、インドの習慣の代わりに、「オペラント条件づけ」の応用の「ターゲットトレーニング」が行われるようになったとし、精神的・肉体的に傷つかない方法と紹介する。動物園ライターの森由民は、30歳を過ぎてから調教が始まった池田動物園「メリー」の例を出し、ゾウのコントロールの大切さを説く[122]。また、2011年のエンリッチメント大賞となった事例では、ゾウのしつけにより、飼育員が直接指導しながら効果的な繁殖と育児指導、育児放棄の回避、新しい群れの形成も行えるとする。怪我の治療の例として、「市原ぞうの国」の仔ゾウ「ゆめ花」は、2012年8月22日に脚の治療が行われたが、しつけにより全身麻酔をせずに行えた[123]。全身麻酔を用いないのは麻酔で死ぬ可能性を回避するためで、また、ゾウ全頭にしつけが行き届いているため、他の大人のゾウたちとゆめ花は鼻を伸ばし体を触ってコミュニケーションをし、応援できるよう配慮することもできた[123]。逆に、ゾウと違って、しつけができないサイでは、危険な方法で日常の脚のケアを行う。2012年11月の多摩動物公園のインドサイの足裏のケアでは、飼育員がサイの腹をブラシでくすぐって寝転がし、その数分間で足裏のケアを行う[124]。麻酔を用いないため、ブラッシングのくすぐりに飽きたサイが急に起きたら飼育員は速やかに避難する[124]

ロマンチスト

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ロマンチスト(非現実主義者)が動物園を考えると、野生下が最善であると決め付けるため、歴史上、実行しなかった行為を要請する場合がある。例えば、動物園にクマ類の冬ごもりを行うよう要請し、動物園がそれに応じて冬ごもり実験を実施することがある[106]。これは一見、科学的に「野生での習性の模倣」を主張するが、動物を道徳的に取扱うほうが倫理上望ましいと考えると、野生下での苦しみを解いて、危険を取り除いた状態の提供が望ましい。冬ごもりは絶食状態が長期間続き、死ぬ可能性(もちろん死なない可能性のほうが高い)のある行為のため、「しないことが望ましいと実証されている」のであるならば、しないほうが望ましい(冬ごもりはクマが体力を消耗する割にはクマの利益(健康と長寿)に寄与しない可能性がある)。[注釈 70]

過酷な野生

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ロマンチックに動物の権利を考えると、野生下と動物園との現実主義的な検証を廃して、動物園の全廃を訴えやすいが、野生下では、怪我と病気[125]、厳しい天候、飢餓、長距離の移動[126]、不慮の事故、肉食動物・危険生物、冬眠・夏眠、縄張り争い・序列・共食い[127]、仔の低い生存率、狩猟・駆除[104]、環境汚染[128]・気候変動[129]・生息地減少[104]などがあり、また、仔育ての失敗(迷子・教育の失敗など)もあり、人為が得られる動物園に比べ遙かに過酷で、大抵の種が長寿(長生き)し難い現実がある(DeGrazia (2002)など)[56][注釈 33]

巨額の費用

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タイのジャイアントパンダ舎

ズーチェック(動物園調査)をクリアするには巨額の設備投資や、それに見合う運転資金が必要となる場合がある[27][130][131]。一般に飼育面積が広いほど環境エンリッチメントの向上が図れるからである(逆に、適切な飼育面積が確保できない場合は飼育頭数や種類を減らす場合もある)。資金不足を見越して、個人事業主は動物園を経営せず、公的機関が行うように主張する者もある[注釈 71]。1980年代の米国フロリダ州タンバのローリーパーク動物園は「アメリカで最悪の動物園の1つ」と評価され閉鎖を勧告されたが、2,000万ドルを投じて再建された[36]鹿児島市平川動物公園の2010年から7年間のリニューアルは総額43億円を投じ[130]、到津の森公園は年間2億円の予算を投じている[132]

1990年代から2000年代の日本において、リストラクチャリングで企業が動物園事業から撤退したのは、投資の回収が難しいのが原因と考えられる[注釈 72]。また、都市部は用地買収に巨額の資金が必要であり、動物園を都市部ではなく辺境に開設し広い空間の確保を考える場合もあるが、どの様な立地であっても飼育舎の改修に資金が必要となる[27]。動物園は、公立、私立の事業形態を問わず、その資金は市民(ないし消費者)が出していることに変わりがなく、行き過ぎたズーチェック運動には注意すべきである[133]

一方、動物福祉の向上に巨額の資金が必ずしも必要とはいえず、環境エンリッチメントを推進する市民団体には、飼育面積の拡大に比して少ない費用で高い効果が得られる工夫[注釈 73]や、飼育員による人為や情熱[注釈 74]を評価する視点もあり、それはエンリッチメント大賞にも反映されている。

他の飼育動物との格差

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ミャンマーでのクマの畜産

人類は家畜・使役動物と、動物園の展示動物とを選別し、差を設けてきた。家畜や使役動物[注釈 75]には大型哺乳類がいるが、生産物の価格競争や経営規模の面から経営効率を考えて、一般的に飼育面積やケージは小さくする[注釈 76]。経営効率は動物の健康に悪い環境を生み、動物福祉と相反するため、動物園には効率を与えない。ズーチェック運動の対象動物は大型哺乳類が比較的多くなるが、この現象は動物園の大型哺乳類はそれに見合う広い飼育面積や適切な飼育環境が不足する場合があるためである[注釈 77]。ズーチェック運動により、ますます動物間の格差が広がるが、これは“見えなければいい”という大衆の身勝手な感情論である[要出典]

殺処分

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ズーチェック運動が動物園の閉鎖を目指している場合、動物の殺処分を安易に行う風潮に拍車をかけてしまう問題が発生する。動物権利論からも哲学・倫理学からも宗教や慣習からも動物の殺害が好ましくないのは言うまでも無く、大量に殺処分が行われる場合は殺処分の回避がなされる。例えば、2012年に閉園した秋田八幡平クマ牧場のクマ27頭の処分回避に向けた取り組みなどである。これはズーチェック運動によって、新たに行政に仕事が増えた(市民の税金が投入された)例でもある。

1996年、動物権利団体(東京)の動物園調査(ズーチェック)で劣悪だと指摘された民間動物園があるが、その動物園は各地の動物園の不要動物・余剰動物の引き受け先であり、不要動物・余剰動物の最後の安息の地でもあったが、その動物園を非難の対象にしては不幸な境遇の動物を「ますます」不幸にする結果となる[注釈 78]。この不要・余剰動物の問題を、愛玩などの飼育目的の飼い犬・飼い猫の頭数調整と同一視が難しいのは、犬猫は日本国内だけでも2,000万匹以上(2011年現在)存在し、飽和状態だからである[注釈 79]

動物園の動物に対する頭数調整は必要性が乏しい場合があり[注釈 80]、世界で希少種となり保護が必要な動物種の場合(例えばホッキョクグマなど)、なおさら頭数調整は望ましくない。なお、日本の展示動物の飼育基準では、展示動物の終生飼育が努力規定されている[134]。英国と日本とでは死生観や安楽死に関して感じ方の大きな違いがあり、日本は安楽死を避ける(英国は安楽死を行いやすい)結果が得られている[135][注釈 81]

法と運動

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「動物の権利」が念頭にある動物権利団体などのズーチェック運動は、野生下を“最善”と考え、動物園を“悪”と誤解している上、論理よりも感情が優先されるため、動物園に求める価値観のハードルが高くなり、動物園がその国の法により定められた基準に沿っていても意味を成さない場合がある[要出典]。例えば、英国の気候[注釈 82]ではホッキョクグマの飼育には向かないという理由で、ホッキョクグマの飼育をやめた[136]。同様に、メキシコではホッキョクグマの飼育は向かないと、北米の動物愛護団体が主張し、メキシコからカナダかアメリカの動物園に搬出するよう求めたこともある[137]。動物保護運動は「環境帝国主義」(梅崎義人1999)とも呼ばれ、もともと他国の国内法は無視する傾向がある[注釈 83]

アニミズム

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これはロマンチストが語る感情論であるが、現代文明を批判する際に先住民の特異な価値観の都合の良い部分を“つまみ食い”することがあり、この手法で動物園を批判する場合がある[要出典]。曰く「先住民は動物園を持たずとも動物を理解していた」[52]、「先住民は動物や自然に畏敬の念を払っていた」[138]など、自然を畏れ敬うこと(自然への畏敬)を、論理性も無く啓蒙する。古来における自然への畏敬は、自然から糧を得ることが前提である上、そもそも自然信仰は古代人を取り巻く状況によって生じた文化に過ぎず、過度な自然信仰は人間の生産活動を制限する方向に働き、動物への過剰な配慮は地球上の人類を養えなくし、人権の問題が発生する。この自然信仰は狩猟文化の智慧であり、人間が自然(動物)を普遍的に利用するために用いる価値観で、日本はこれに「不殺生戒」「輪廻転生」という仏教的な動物観も加味された文化である[25][139]

日本での“動物園への曲解”は『新明解国語辞典 第四版』であり、その「動物園」の定義は「生態を公衆に見せ、かたわら保護を加えるためと称し、捕えて来た多くの鳥獣・魚虫などに対し、狭い空間での生活を余儀無くし、飼い殺しにする、人間中心の施設」[140]と文明批判(人間中心主義批判)を記したが、これは DeGrazia (2002) のいう野生下での動物の過酷な暮らしが視野に無く非現実主義的な解釈である。動物園側は謙虚に「自然を支配するのではなく、人が自然を畏れ敬う自然観に基づく動物園を発展させることが、課題であろう」とした[140]が、必要とされているのは「動物本位の動物園」である[104]。21世紀になると人間中心主義の批判が行われるが[141]、そもそも生命倫理と環境倫理とで人間の価値(特に人間の弱者の価値)が大きく異なっている[142][143]。動物解放論(動物権利論)の父ピーター・シンガーは動物の消費に反対するが、貧困者(弱者)の救済も説く。しかし弱者救済の根本は援助だけではなく経済成長にあり、それは自然破壊を伴いがちである。

人気動物

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ホッキョクグマ[19]やゾウ[48][49]、チンパンジーなど大型霊長類、イルカ・シャチなどの鯨類、大型猛獣、ジャイアントパンダなど人気動物にズーチェック運動が集中する傾向があり[136]、そのため環境エンリッチメントも集中する傾向がある。

頭のよい動物

動物権利論の DeGrazia (2002) によると、チンパンジーとイルカは頭が良いので、ほかの動物よりも倫理的に特別扱いが必要だとしている[2]

パンダ外交

中国大陸のパンダ外交は歴史が古く、685年、則天武后と日本の天武天皇の治世に2頭のジャイアントパンダが渡日した記録がある[144]。中国からのパンダの貸与[145]が、動物権利団体のズーチェック運動により批判されることがある[85][146][147][148]。また、政治的な立場からも批判がある[144]。一方、マーケティング会社によると、2010年の日本では女性に、また年齢が高いほど、パンダに関心があることがうかがえた[149]

論点

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※ここでいう「動物園等」とは環境省(日本)が把握する展示飼養施設[150]である。

閉鎖した動物園等

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スタンレーパーク動物園 (Stanley Park Zoo)(加・バンクーバー:1993年)[151]定山渓熊牧場(2004年)、秋田八幡平クマ牧場(2012年)、小田原動物園(閉鎖予定)

論点となった動物・事故

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クヌート (Knut)(しろくま:独・ベルリン)[152]ウメ子(ゾウ)、ピコ(ゾウ)[153]、ルーシー (Lucy)(ゾウ:加)[154]キリン親子急死事故(ひまわり、リリカ)、リゴ (Rigo)(ゴリラ:豪・メルボルン[155]チカちゃん(オランウータン)、パンくん(チンパンジー)、ゴメス・チェンバリン(チンパンジー)、ティリクム (Tilikum)(シャチ:米・フロリダ州オーランド)[101]

エンリッチメント大賞の動物園等

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日立市かみね動物園のチンパンジー舎
旭山動物園のゴマフアザラシ
旭山動物園のオランウータン
  • 2002年、長崎鼻パーキングガーデン(飼育担当者部門大賞・飼育動物にあった定期的な植栽の工夫と情熱)[173]旭川市旭山動物園(飼育施設部門大賞・オランウータン舎の17mタワー・樹上生活者であるオランウータンの能力を引き出す展示)[173]東京都恩賜上野動物園(来園者施設部門大賞・モリー画伯の個展・50歳のオランウータンのモリーのクレヨン画を独創的に展示)[173]旭川市旭山動物園(市民ZOOネットワーク最優秀動物園賞・園全体で幅広くエンリッチメントに取り組んでいるため)[174]オホーツクとっかりセンター(市民ZOOネットワーク最優秀飼育員賞・アザラシ救護活動の基礎を築き、「研究」「保護」「教育」の整備に力を注いだ功績)[174]京都大学霊長類研究所(市民ZOOネットワーク特別賞・チンパンジー野外放飼場・日本における環境エンリッチメントの発祥地であり日本に影響を与えた功績)[173][174]

※掲載順は主催者発表による。※人名は非掲載とした。

脚注

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注釈

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  1. ^ ケージや獣舎が「狭すぎる」、「頭数が多すぎる」、「動物が落ち着けない」などの、いわゆる“時代遅れ”の展示。「わびしい」及び「貧弱」(どちらも DeGrazia, 2002)、「ミゼラブル(みじめな)」(中川志郎, 1996)、「劣悪」(野上ふさ子, 1996)などとも表現される。英語「poor」。飼育への形容に「beastly」(残忍な)、「cruel」(残酷な)を使う場合もある。※ペタでの使用例( Many zoos still use cruel and outdated circus-style training. )
  2. ^ この運動で日本において著名な人物は、元アイヌ活動家(著作家)で、「日本みどりの連合」や「みどりといのちのネットワーク」の元参院議員選候補者の「野上ふさ子(筆名ポン・フチ)」である。野上は北海道で開拓反対運動を行ったのち、動物実験反対活動を始め、次いで地球生物会議ALIVEを立ち上げズーチェック運動を始めた。詳細は野上ふさ子も参照。
  3. ^ 思想的にはピーター・シンガーの『動物の解放』があるが、1970年代の東西の冷戦下に書かれ、梅﨑1999によれば、動物権とは保護したい動物を保護したことによって満足感に浸る[要説明]とする。
  4. ^ ズーチェックの結果、わびしい展示とされたスタンレーパークは、バンクーバーの住民投票が行われ、過半数で閉鎖が決まった。詳しくはスタンレーパークを参照。
  5. ^ 一般的に自然減とは寿命まで飼育すること(終生飼育)を意味するが、個人や零細企業が営利事業を伴わずに多数の動物を飼育するのは難しい上、資金不足で閉鎖したケースではなおさら困難となる。しばしば、日本の動物権利団体はよく「自然減」を用いる(薦める)が、問題の先延ばしに陥る場合がある。また稀に、飼育していた動物が逸走したり、野生化するケースもでる[要出典]
  6. ^ 市民が動物園でボランティアしたり、エンリッチメント推奨活動を行う。一般的な動物園ボランティアには「動物ガイド(動物の説明係)」や「サービスガイド(園内の手伝い)」などがある。
  7. ^ 「ズーチェック団体」について:この種の市民団体を、動物権利団体、動物愛護団体動物保護団体、動物福祉団体など様々に呼称し、時には自然保護団体環境保護団体消費者団体 (PDF) (平成23年度消費者団体名簿,消費者庁地方協力課, 142頁)とも称されるだが、他者への中傷が伴う調査活動を行うのはその団体の性格(団体の設置目的や思想)による上に、“おちこぼれ”と見なした動物園を閉鎖させ、そこの動物を殺さねばならない局面が出るため、「動物を殺したくない」と考える一般的な福祉団体はズーチェック運動を行い難い。[要出典][誰?]
  8. ^ 「独自の調査法」について:英国発祥の、主に飼育の環境を考察する調査[1](実際の動物の“異常行動”の有無は考慮しにくい)。
  9. ^ 「改善点」について:動物福祉の先進国の基準・規則・飼育法・展示法などと比べ、劣っている部分を「改善点」「問題点」とする。先進国に倣って調査を行うため、多くの動物園は劣る結果となる[要出典]。例えば、ホッキョクグマについて、カナダの「マニトバ基準」を起用すると、2000年代の上野動物園は劣った施設[要出典]とされ、2011年までに改修が行われた。また、ズーチェック団体は話題性のある動物園には改善を求めるが目立たない動物園には求めない場合がある。例えば、2005年にカドリー・ドミニオンのチンパンジー舎は改善を求められたが、そのチンパンジー舎は比較的大きなものであった上、他の幾つかの動物園に狭いチンパンジー舎(箱型ケージだけで構成)が存在しており、先にそれらの動物園に強く改善を求めなければならない矛盾を生じさせた。そもそも阿蘇のチンパンジー舎は前年の2004年には新築予定を公表しており、その上に飼育舎の改善を求めることは意味が乏しいものだった。一方、神戸市王子動物園元飼育員・亀井一成(2002)によると、エンリッチメントで作られた近代飼育舎は、オランウータンやマンドリルにとって独房的であり、チンパンジーを含めたサル類には昔風の狭い格子の長屋で隣に異種のサルが見える環境がよいと別の視点を示している。
  10. ^ 動物園への調査(並びに抗議)は日本では20世紀初頭(1905年)に行われた。それは上野動物園のゾウ飼育についての苦情であったが、同じように、21世紀に日本や欧米で動物園調査を行うズーチェック団体もゾウ飼育の改善点を考えている。また、様々な価値観をもつ市民が動物園に様々な注文を見つけるが、それは人間と動物の関係(在り方)を問うているのとみなすことができ、広義の動物園調査である[要出典][誰?]。更には、動物園のバリアフリー化のための調査なども広義の動物園調査であり、例えば、車いす利用者や盲導犬利用者などの人たちと動物との関係について動物園調査が行われている。
  11. ^ 例えば、「ゴリラが遊びで物を柵の外に投げる」という件がある場合、その件(改善点)を見つけるのが「広義のズーチェック(動物園調査)」であり、その苦情や要望の申し立てが「ズーチェック運動」(消費者運動・市民運動)であり、対策として柵をゴリラ放飼場から離したのならそれは「施設の改善」(消費者運動の成果)であり、この措置によって遊びができなくなったゴリラにストレスが溜まったのなら「動物福祉の低下」であり、その対処に運動場を広げてアスレチックを造るのは「展示の向上」であり、ゴリラがアスレチックで遊ぶのは「行動展示」であり、ゴリラにストレス解消の効果がでたのなら「環境エンリッチメントの効果」であり、それは「動物福祉の向上」である。(「旭山動物園革命」など)
  12. ^ 動物園の内部調査の例(札幌市)。
  13. ^ 小田原動物園では特にゾウの展示スペースが狭いことが判り、東京の動物権利団体の抗議活動などにより閉園する方針となり、2012年現在はニホンザルのみ飼育している。もともと小田原動物園は文化財である小田原城の中に設置されており、これ以上の拡充ができない事情があった。※小田原動物園のゾウについては「ウメ子」も参照。
  14. ^ 猫は柱で爪を研ぐものであるし、鼠は硬い物を齧って歯を磨り減らす習性がある。動物園の猛獣が寝てばかりいる場合も通常は異常ではなく習性である。「動物の赤ちゃんを育てる」76頁では、夕食の準備の気配を感じたゴリラが三時頃から“そわそわ行動”をする。シロクマは野生下でも動物園でも毛の生え代わりがうまくいかない個体は出現し、野生下でもシロクマの毛は緑色になる。また、動物園の熊が狩りが下手であっても病的ではない。ホッキョクグマは野生下であっても学習(自習ではなく母親からの教え:仔熊は親の真似をして学習する)してないと「高度な狩り」はできない。逆に病気のため、うずくまっておとなしい場合もある。
  15. ^ 日本のテレビ番組に主演していたゴメス・チェンバリンというチンパンジーが、動物保護団体の抗議活動で、突然テレビに出演できなくなった際に毛をむしる行動をしたと、市原ぞうの国園長が明らかにした。逆に、東京の動物権利団体の代表が[2]が、同動物園・元園長の中川志郎に“たまたまの病気”や毛替わりがうまくいかないことは動物園でも野生化でもあり得ることを指摘され、適正で公正な調査(資料提出)を求められた(朝日ニュースター ザ・ディベート 1996年8月31日放映)。
  16. ^ 「動物の赤ちゃんを育てる」153-156, 161頁に、指しゃぶりの代わりに、丸太をしゃぶるゾウ「ズセ」(1990年産雌:神戸市立王子動物園)が紹介される。この個体は1998年まで丸太が手放せなかった。
  17. ^ 「キリンが笑う動物園」78-79頁によると、伊豆シャボテン公園では人工飼育のチンパンジーに飼育員が指示を与えて群れに復帰させる方法がとられている。また現代の技術では人工繁殖も可能である。
  18. ^ ここでいう「従来」とは、動物権が主張される以前のことである。動物福祉とは「人類の益ある動物利用は受容し、その動物の被害を最小限に抑えるという考え方」で、“従来の動物福祉”とは、この動物福祉(アニマルウェルフェア)に基いた価値観を持つ立場又は団体のこと。これは動物権利論からは「動物の“搾取”(利用)を許容している」と批判された。動物権とは、「動物にも道徳的な地位があり、生きる自由があるという考え方」であるが、階級闘争的な価値観や暴力的な行いが嫌がられ、21世紀になると、動物権利団体も「動物福祉団体」を称するようになり混同されるようになった。同じ様に、「動物保護団体」、「自然保護団体」なども称する場合がでてきた(「いま動物園がおもしろい」39頁、「一冊でわかる 動物の権利」などより)。
  19. ^ 動物園の存在は animal welfare では受容されるが、 animal rights では認められない場合が多い。これらの「言葉の定義が曖昧になっており、違いをはっきりしておく必要がある」と市民ZOOネットワークは主張する(「いま動物園がおもしろい」39頁より)。
  20. ^ 例えば、インドのマハトマ・ガンディーは「国の偉大さやモラルの程度はその国の動物の扱い方で判断できる」とした(「キリンが笑う動物園」103頁より)。
  21. ^ 農林水産ジャーナリストの梅崎義人によれば、アニマル・ライトとは「保護したい動物を保護したことによって、満足感に浸る人びとの精神的支柱」(12頁)、「動物権の主張は、野生動物を利用せざるをえない人たちの人権を否定することによって、成り立っている」(266頁)と批評される(「動物保護運動の虚像」より)。
  22. ^ 「殺処分」を「安楽死」と言い換えを行う場合があるが、「安楽死」について、ここでいう適切な方法とは、「ガス室」「薬殺」「電気ショック」「頭を打ち抜く銃殺」などのことである。動物の殺処分は、「未来の可能性のある命」への最大の“搾取”行為で本来の動物権では否定されるが、やむをえない経済的理由や、“余剰”の“搾取される動物”を減らすための動物権利論者の方便である。そもそも“余剰の命”という価値観は「優生思想」に似ており、終生飼育であっても去勢を行って頭数調整をすれば動物は動物らしく扱われていない。(「一冊でわかる 動物の権利」,87-92頁など参照)
  23. ^ 展示動物にも、なるべくより善く、より豊かに一生を過ごしてもらうこと。この価値観においては、なるべく殺さない、なるべく苦痛を取り除く、なるべく不自由をさせないなどの慈善・慈悲行為が主となる。また人類も弱肉強食の生態系の一員であるので、人類による動物の利用を現実的に妥協する。この価値観は、例えば西洋の宗教において、ノアの方舟に多種の動物が積載されたのは大洪水の後に人類が困らないためであるという価値観がそれである。更に、東洋には人間が動物に生まれ変わる輪廻転生不殺生アヒンサー)、熊や狼などに畏敬の念を払う文化(アメリカ・インディアンにもある)など、動物を尊重する独自の価値観がある。(「一冊でわかる 動物の権利」など)
  24. ^ 動物権と、従来の意味の動物福祉とでは価値観が違うため、招かれる結果が違う場合がでるためである。※動物権利宣言は「動物の権利」も参照。
  25. ^ アウストラロピテクスは動物の肉を食べていた。チンパンジーも肉を食す
  26. ^ [3] 動物権と捕鯨問題 (日本鯨類研究所 1996年 3月発行「鯨研通信」第 389号より) ※主旨「動物権は階級闘争に似る」または「資本家が労働者を“搾取”している」というマルクス主義と似ていると、日本捕鯨研究所は考えている。
  27. ^ 「動物保護運動の虚像」256-258頁には、毛皮消費者と動物実験への暴力の例示があり、殺人も示されている。同12頁では、殺人と共にファーストフード店が暴力を受けた。「一冊でわかる 動物の権利」1-2頁には、鶏の畜産場に不法侵入して場内をビデオ撮影する活動家の写真や、これが後に営業妨害キャンペーンに発展した例がある。動物が可哀想と感じても、犯罪や暴力は非難され刑罰を受けるべきであり、またいわゆる英雄気取りの告発や断罪を行っても、その結果は、鶏の飼育面積がほんの少し大きくなるか、あるいは、競争原理で規制が緩く安く生産できる他国に市場を奪われる。
  28. ^ いわゆる「動物園への敵対視」とは、生息地で暮らす野生動物を遠くに運び、残酷な行為を強いるのが「搾取」であり「権利」を侵害している(倫理上問題がある)という意味であるが、哲学倫理学の DeGrazia (2002)などにより、野生下と動物園の現実主義的な比較をしていないと批判されている。
  29. ^ 動物園批判論には「(路上の)見世物小屋は廃止」「個人経営は廃止」「私立動物園は廃止(公立動物園のみ残す)」「大きな動物園だけ残す」「動物園は全廃」など幅広く意見が分かれている。この理由は、例えばニューヨークのブロンクス動物園(野生生物保全センター)だけでも3000頭もの動物が飼養され、ロンドン動物園には1万頭以上の動物がおり、また、先進国を中心に世界各地に1000以上の動物園が存在し(「世界動物園保全戦略」より)、またこれの数倍以上の展示飼育施設(”road side zoo”、観光牧場、移動動物園など)があり、それらの大量の飼育動物の動物福祉や動物権をどの様に考えるかにより、立場が異なるからである。過激な動物権理論や過激な動物解放運動は動物園の全廃を求め、哲学・倫理学の上ではせめて見世物小屋は廃止と考えられるが、思想上、動物園を全廃にする論理が無い。動物権利論の DeGrazia (2002) でさえ"最良の動物園"を選んでいる。
  30. ^ 誤解とは「間違い」という意味でもある。“動物園の最も厳しい批判者に共通した間違い”は、「野生について(ロマンを廃して)現実主義的に考察しないため」に、(1)あらゆる捕獲は危害を与え動物を軽視するものであると主張する。(2)野生での生活の不利益を見過ごす。ことである(「一冊でわかる 動物の権利」,136-137頁より)。
  31. ^ ソ連邦の崩壊により、資本主義陣営の市民の社会主義論にも変更があった。
  32. ^ 「キリンが笑う動物園」35頁によると、獣(ホラグマ)の飼育の“檻”は3万年前の石器時代の洞窟の遺跡に発見される。檻が使われたのは簡単で安全だからである。同78頁では檻の事を“独房”と表現している。
  33. ^ a b 野生下では、怪我と病気(野生下で怪我をすれば致死率が高く、疫病の蔓延もある)、厳しい天候(異常気象、酷暑、冷夏、暖冬、長雨、干ばつなど)、飢餓(水と食糧不足が慢性的に起こる地域まである)、長距離の移動、不慮の事故(樹木からの滑落死。例えば崖に棲むヤギ類の転落死はよくある。)、肉食動物・危険生物、冬眠・夏眠、縄張り争い・序列・共食い、仔の低い生存率、狩猟・駆除、環境汚染・生息地減少などがあり、人為が得られる動物園に比べ遙かに過酷である。動物園のほうが野生下の生死をかけた“苦しみ”から解放され平均寿命が延びる場合もあれば、種ごとの適切な飼育法を見つければ動物園が繁殖基地にもなる。そもそも、はじめから明白な動物虐待の目的で展示動物を飼養する動物園は現代の先進国に存在しない。多くは、“やむを得ず現在の展示に至っている”と解釈すべきである。例外もあるが、悪意の動物虐待を目的とする展示を大衆に周知公開するはずもなく、仮に存在したとしても早々に問題施設と扱われるからである。
  34. ^ 新おとな総研 動物たちのヒミツ箱 「ホッキョクグマとアザラシの海」OPEN!!(2011年12月7日 読売新聞)※上野動物園が「マニトバ基準」の日本初の適用例とされる。
  35. ^ その後、オーストラリアの技術者を招き、再調整した結果、ロシアからホッキョクグマの受け入れに成功した。
  36. ^ “動物園の最も厳しい批判者に共通した間違い”は、「野生について(ロマンを廃して)現実主義的に考察しないため」に、(1)あらゆる捕獲は危害を与え動物を軽視するものであると主張する。(2)野生での生活の不利益を見過ごす。ことである(「一冊でわかる 動物の権利」, 136-137頁より)。また、有名な“動物園への曲解”は『新明解国語辞典 第四版』であり、その「動物園」の定義は「生態を公衆に見せ、かたわら保護を加えるためと称し、捕えて来た多くの鳥獣・魚虫などに対し、狭い空間での生活を余儀無くし、飼い殺しにする、人間中心の施設」と、野生下での過酷な暮らしが視野に無い非現実主義的な解釈であるが、動物園側も「自然を支配するのではなく、人が自然を畏れ敬う自然観に基づく動物園を発展させることが、課題」と自然崇拝を語る。(「今、なぜ動物園なのか」, 成島悦雄(多摩動物公園)著, 養賢堂2006, 『畜産の研究』60(1), 特集動物園, 1-5頁)。「戦う動物園」63頁より。
  37. ^ 例えば、東京の動物権利団体は「ズーチェック(動物園調査)」という括りの中で、日本の動物園へのアジアゾウの輸入反対を唱えたが、これは「動物園又は動物行政への抗議活動」であり、厳密には「ズーチェック運動」の範疇であり、カナダのズーチェック団体が動物園のゾウの飼育が問題視した際には、その行動を「campaign」(運動)と表しており、区別している。
  38. ^ 例えば、リタイヤした元飼育員が元職場の動物園で、動物園協会の会員が自宅近くの動物園で、それぞれ善意で動物園の改善点を見つける場合や、動物園を支援するボランティアやファンクラブ会員が善意で改善点を見つける場合、などである。「亀井一成の動物ばなし」(大阪朝日放送)の亀井一成(天王寺動物園元飼育員)は著書 (2002) の中で、「生態展示への改造は、デザインは世界的にすぐれていても、飼育員に使い勝手が悪い動物舎では人身事故が起こりかねず、飼育舎の建設に際し、職人飼育員の意見を取り入れる必要がある」とし、旭山動物園の元園長と到津の森公園の園長らは「各地の動物園は役割分担すべき」と意見を述べている。また、日本にも「国立動物園」を設営すべきという“日本の動物園のあり方”を考える団体もある。
  39. ^ カナダ・バンクーバーのスタンレーパーク動物園 (Stanley Park Zoo) に対し、動物権利団体のズーチェック運動が行われ、住民投票で閉鎖が決まった
  40. ^ 環境エンリッチメントの定義は様々に行われるが、ここではアメリカ動物園水族館協会 (AZA) を例示した。他に、日本動物園水族館協会の『異常行動等を解決するために飼育環境の質の向上を図ることであり、動物が心身ともに健康的で十分にその能力を発揮した生活をおくることや動物の福祉について強く意識したもの』(「新飼育ハンドブック動物園編」より)、環境省(日本)の『動物福祉の立場から飼育動物の精神面に配慮し、飼養環境(施設、食物、遊具、社会など)を豊かにするように工夫を加えること (PDF) 』、或いは『動物園等における物理的環境(ケージや運動場、玩具といった施設等そのものの側面)及び社会的環境(同種の他個体や飼育者(ひと)との関わり)を、動物本来の生活に近づけることにより、飼育動物の生活の質の向上を図ろうとするもの (PDF) 』(同省)や、『動物福祉の立場から、飼育動物の“幸福な暮らし”を実現するための具体的な方策』(「NPO法人市民ZOOネットワーク」による説明)、『動物福祉という理念のもとに、心理学的幸福(という客観的に測定可能な目標)を実現するためにおこなう、飼育環境を豊かにする試み』(「どうぶつと動物園」より 動物福祉と環境エンリッチメント, 松沢哲郎, 京都大学霊長類研究所)などがある。
  41. ^ 端的に言えば、1992年から始まった動物園の入園者減少 (PDF) への対処である。バブルの崩壊とレジャーの多様化、価値観の多様化から消費者の質が変化、或いは消費しなくなった(来なくなった)ことへの対策であり、“動物が幸せそうにしていること”が顧客満足度を向上させるようにもなった。動物園への入場者は1983年から1991年までは増加し続け6,500万人に達したが、1991年をピークにその後は減少し、1997年には80年代の最低ライン5,000万人を下回った(「動物園水族館年報」(JAZA) より)。この消費者の質の変化で、1980-90年代の北海道旭川市の旭山動物園も入園者数が低迷したが、それまでの日本の常識を打ち破る斬新な「行動展示」を行い、来園者に大人気となり、日本有数の動物園に成長した。なお、「行動展示」と「環境エンリッチメント」はやや異なる発想であり、どちらかというと行動展示は顧客満足度の向上が狙いである(『戦う動物園』や『<旭山動物園>革命』では、「見せる」から「魅せる」への改変、見せ方の工夫と論じている)。同様に、「生態的展示」、「生息地体感型展示」(ランドスケープイマージョン[要曖昧さ回避])、動物園デザイナーのジョン・コーの「動物の行動にもとづく展示」 (active based exhibition) もどちらかというと顧客満足度の向上からきた発想(展示手法)で、環境エンリッチメントとはやや異なる発想であり(「キリンが笑う動物園」40-50頁など)、その評価法は(端的に言えば)動物園利用者数が目安となり、行動展示やランドスケープの手法を取り入れたことによって入場者数が増加したなどと評される。なお「顧客満足度」を公営の動物園では「利用満足度」と称している (PDF) (京都市)。
  42. ^ 例として、神戸市立王子動物園のクマ舎がある(「世界で一番のクマ舎をめざして-飼育技師・川上博司さん」(神戸市)を参照)。
  43. ^ 列記は文献だけの印象と断り書きがある(「一冊でわかる 動物の権利」130頁)。
  44. ^ エゾヒグマの生息できる自然環境をヒグマ専用の森とした「サホロリゾート ベア・マウンテン」は広さ約15ha(約15万平方メートル)で、双眼鏡を用いないと観察が難しく、また林も深く、優れた展示と飼育環境であるが、通常の動物園では予算の都合上行い難い。2013年、秋田県の観光牧場「阿仁熊牧場」も新たにヒグマを21頭飼育するに際し、小規模なベアマウンテン方式(読売)を用い、「行動展示」の発想で自然の山林を用い造園される予定(読売)である。※ベア・マウンテンは、現在はヒグマ保全活動をしている前田菜穂子元学芸員などが日本国外の事例を調査研究した結果、選択された展示施設である。※動物権利団体の世界動物保護協会WSPA(及びALIVE)によると、トルコ国の飼育クマの“サンクチュアリ”は約12エーカーで48頭のヒグマが飼育され喧嘩もせず、約15エーカーで74頭飼育可能としている(東京ドームは約11.5エーカーである)。また、ゾウ専用の自然の森「勝浦ぞうの楽園」(「市原ゾウの国」の姉妹施設)も広さ約13haの自然の山林がベースであり、優れた展示と飼育環境である。
  45. ^ 「日本の動物園」210頁にはアメリカの "road side zoo" を紹介している。 "road side zoo" はアメリカ動物園協会 (AZA) に非加盟で、AZA加盟法人の数倍は存在するが、これも多くは路上の見世物小屋とは違うものである。同5-10頁では、日本の歴史として、江戸期の孔雀茶屋、花鳥茶屋、明治期の浅草花屋敷が動物園ではなく見世物小屋と解釈されている(「日本の動物園」193頁、「キリンが笑う動物園」38,74頁なども参照)。※"road side zoo"の表記例
  46. ^ 主にクマを飼養する観光牧場のクマ牧場の場合、クマの博物館や資料室を持つ牧場もあれば、大学などの研究者がクマの研究(「<旭山動物園>革命」150-152頁にはヒグマの人工授精の研究。)を幾度と無く行い(サンプリング調査も多く行われる)、ほぼ毎年繁殖して仔が育ち、クマの生態についてマスメディアから質問やインタビューがあれば専門家として回答し社会に還元していた。牧場の学芸員がクマの著作を著すこともあった。例えば前田菜穂子がそうである。
  47. ^ NPO法人市民ZOOネットワークの「いま動物園がおもしろい」(62頁)では「市民は無自覚を反省するべき」とある。
  48. ^ 京都大学霊長類研究所については「いま動物園がおもしろい」32頁参照。一般意見募集は、例えば2006年エンリッチメント大賞の名古屋港水族館のシャチ飼育の例がある。
  49. ^ 1996年に英国の著名なズーチェック団体が日本で行った動物園調査でさえ、高度な専門家(博士号取得者の英国動物園査察官)が行い、なるべく客観性を持たせようとした。
  50. ^ 環境エンリッチメントの評価においては、「生理学的方法:ストレス・ホルモンの測定など。生物学的方法:怪我や病気の頻度など。獣医学的方法:発育、繁殖率など。行動学的方法:異常行動の頻度や1日の行動など。」(京都大学霊長類研究所より)が科学的に行われている。
  51. ^ 2011年の秋田八幡平クマ牧場のこと。この様な検証性の低い動物園調査により長年非難された秋田八幡平クマ牧場は、経営難から翌12年秋に閉園予定となった。閉園前の12年4月に逸走噛殺事故が起こり、予定より早く6月に閉園した。詳しくは秋田八幡平クマ牧場を参照。
  52. ^ これは旧定山渓熊牧場での出来事であるが、もともと定山渓熊牧場は博物館法に基づいた“狭義”の動物園ではなく、また、閉園した2004年以降は立入禁止の私有地での“個人の飼育”に過ぎず“広義”の動物園でもないため、厳密にいえば「本項目で扱うべきズーチェック(動物園調査)」ではないことをお断りする。また、1950-90年代までに幾つか開設された日本の観光牧場は、牧場であるため少種多頭飼育が一般的であり、過去にはクマ類の飼育頭数の多さを競っていた。そもそも、野生の熊を家畜、害獣、使役動物として見るか、展示動物、保護動物として見るかは、その国の文化的背景や時代背景、個々人の価値観により大きく異なる上に(日本には野生の猪や鹿を家畜として飼養する例もあるが、同じく野生の熊の“家畜化”、“ペット化”に拒絶感を持つ人も存在する)、観光牧場と動物園とでは開設目的が異なるため、他国の動物園の規則や外国の一般論に照らしても意味が乏しく、寧ろ畜産の一般論を用いるべき施設ともいえる。※定山渓熊牧場については「定山渓熊牧場」も参照。※野生動物の家畜化の例は「トラ農場」も参照。※クマ類の家畜化の例は「熊使い」も参照。
  53. ^ そもそも市民団体とは他者と違う特別の言動を有するが故に団体を結成しておりそれゆえ公権力足りえず、また動物園を不要とする立場の市民団体の調査員がその対象を客観公平公正に取り締まることはそもそも期待できず、更に動物園調査を行う対象も機会も研究も乏しく、また適切な人材がない。そのため、公権力に似た法による職務の代行(警察権などいわゆる法の番人)を期待できない。また、山本七平や水産ジャーナリストの梅崎義人は、人権の上に動物権が来ることを批判している(「動物保護運動の虚像」より)。
  54. ^ 日本では東京の動物権利団体がホッキョクグマの輸入反対の際にインターネット上にこの考えを示した。しかし、バーチャルやIT技術が幾ら進歩し、視聴覚資料が幾ら充実しても、実物の動物により人間が人間性を回復すること(旭山動物園の小菅正夫元園長など)や、人間と自然とがひとつになることの価値、人類と自然環境との関係を再び調和させること (PDF) 、動物を正しく識る(学ぶ・探究する・研究する)ことは不可能なのも様々な書籍で指摘される(これらについて人間中心主義と批判がなされる場合もある)。一方、多数の観光客が野生動物の生息地に入ること(エゾヒグマのいる知床には年間200万人が訪れる)に反対する研究者もいる(「ヒグマが育てる森」など)。
  55. ^ ショーや芸よりも難易度の高い技を特に「曲芸」という。例えば火の輪くぐり、高所での綱渡りの様な、失敗すると大怪我・死亡するものが含まれる。哲学や倫理学として動物権や動物福祉を考えると、日常的な曲芸によって死亡することは、現実主義的に考察して、その動物が野生下にいた場合よりも利益を与えていない(死亡により未来の可能性を閉ざす不利益を被る)わけだから、死亡する可能性のやや高い曲芸は動物園では極力行わないことが倫理として望ましくなる。見せ物としての“動物どうしの殺し合い”(例えばベア・ベイティング、熊いじめ、熊攻め)が、動物が死亡する可能性が高い為に倫理上好ましくないとされるのと同じ理由である。また曲芸よりも比較的穏やかなショーや芸は「動物を尊敬の対象にしていない」と批判されるが、そもそも自然崇拝に回顧することは異論もある。そして別の方法、例えば「行動展示」で動物の能力を引き出しても、それをも「見せ物」として消費していく(各所で模倣され陳腐化する)のが大衆社会であり、展示に普遍性は無い(中川志郎、「朝日ニュースター ザ・ディベート 1996年8月31日放映 動物園の是非を問うディベート」などより)。
  56. ^ 例えば、猿山、熊牧場。これらは野生下よりも善い環境である。
  57. ^ 「動物とのふれあい」は人間側の情操教育の効果 (PDF) が知られているが、人は癒されても動物にはストレスになると主張する場合は、科学的にホルモン測定を行う (PDF) などの適切な指標が必要である。
  58. ^ 熱帯雨林は樹高15mほどあるが、動物園は手狭の為、森林のごとく多数の塔は建てられず一箇所だけの見晴台の状態となる。そして熱帯雨林に見晴台の様な巨木が一本だけあることはない上に転落事故もある。これは動物園の内情を理解してない学問的な根拠の薄いロマンチストの主張である(「闘う動物園」158頁などより)。
  59. ^ 人工飼育のチンパンジーの群れ復帰の方法(伊豆シャボテン公園などの例)があるにもかかわらず、東京の動物権利団体などにより繁殖に影響があるかのような非科学(感情論)が語られる。なお、「物語 上野動物園の歴史」では、服を着るチンパンジーとして、1950年代の恩賜上野動物園に飼育されたスージーの例があり、スージーは自転車に乗り、お金で買い物もし、昭和天皇と握手をした。「キリンが笑う動物園」75-76頁では、着衣し喫煙するチンパンジーとしてマンチェスター動物園の例があり、大阪市天王寺動物園ではリタとロイドがお茶会を披露し、東山動植物園 (1959-1971) ではゴリラのショー(オキ・2008年に52歳で世界一の高齢)が行われた。
  60. ^ 3万前の石器時代の遺跡にホラアナグマの飼育跡(洞窟の檻)が見つかり、オオカミ(イヌ)の家畜化が3万年 - 1万5千年前から行われ、以下、トナカイ、ヒツジ、イノシシ(ブタ)、ヤギ、ウシ、ニワトリ、ハト、ウマ、ラクダと続き、愛玩動物も5000年前の古代エジプト(ピューマ)に始まり、南米のインディオ(インコやサル)にもあった。動物園の起源の“野生動物の収集”は4000年前のメソポタミアでの宗教上の理由から始まる(「キリンが笑う動物園」16-19頁より)。
  61. ^ クマに関しては、インドや東南アジアなどで、大道芸や胆汁採取のクマ類の野生復帰を行う慈善団体があり成功している。クマのサンクチュアリとは野生復帰を目指す施設でもある。※大道芸(ダンシングベア)は「熊使い」を、胆汁採取のクマは「熊農場」も参照。
  62. ^ この「人権と動物権の関係」は山本七平や梅崎義人などが主張する。
  63. ^ 動物園によっては、餌やり体験用に専用の投入口を設ける場合や、来園者に代わり飼育員が一日に複数回の給餌を行い観察させる場合などの対策をしているが、動物園で来園者がクマなどに餌やりできる(している)欧米で、同時に野生のクマなど危険獣の見学ツアーも行われ、その際にはレンジャーによるレクチャーを受けるなど安全策が図られる。そもそも一般市民が野生のクマ類など危険獣に餌やりを行うのは「クマが危険獣である」と理解していないためであり、一般常識でしかない(「ヒグマが育てる森」など)。
  64. ^ ここでいう「楽しむ」とは "知を楽しむ" こと。それはブロンクス動物園のゴリラの展示にも現され、来園者が知を得やすい展示となっている(「いま動物園がおもしろい」、「私の動物園勉強法」など)。
  65. ^ 動物愛護団体には「動物が寝てばかりいるのは異常だ」とする見解を示す場合があるが、往々にして、野生下での動物の暮らしを理解せずイメージ(ロマン)で語ってしまう場合がある。しかし、例えばライオンが寝てばかりいるのは消費カロリーを抑える習性から当然の行動であり、暑い時期のニホンツキノワグマが水辺や冷んやりした場所で昼寝をするのも野生下の習性である。動物行動学は未知の部分が多い分野で専門家でもわからないことがあるため、一般人が無知なのは仕方がないことである。
  66. ^ 動物園批判からここまでのくだりは、「戦う動物園」82-83, 86頁、「<旭山動物園>革命」38-39, 85頁、「私の動物園勉強法」11-12頁などより。
  67. ^ 中国の動物園(サファリパーク)ではトラに餌として生きた牛を与えていた(生餌の値段表を記した記事)が、非難を浴びたことがある。同じことは大蛇の展示でも行われる。
  68. ^ アイヌでは鹿、イヌイットではアザラシ、アフリカではゾウ・シマウマ、オーストラリアではカンガルー肉は食用である(カンガルーは個体数激増のため、その肉は輸出もされる)。キツネ、アザラシ、ミンク、ワニは皮、トラは皮と骨、ゾウやサイは牙と角、ウミガメは甲羅が製品となる。またクマは熊肉、熊脂(熊油)と熊胆(ユウタン、クマノイ)になる。※漢方薬(生薬)の熊胆は日本では薬事法により規制を受け、その理由から動物園で熊胆の展示や販売は難しいが、一部の地域を除き日本のクマは減っていない。
  69. ^ 総務省(当時)が定める展示動物に関する基準では、傷病中の動物を見せて残酷な印象を与えることを避けるように定めている。たとえ交通事故や人為的な原因で障害を追った動物でも不可。
  70. ^ 「一冊でわかる 動物の権利」123頁では、動物園批判者のいう“自由を制約する囚われの身”と、動物権利学者のいう“能力を著しく阻害する監禁”の違いが書かれ、同137頁では“動物をロマンチックに描く誘惑”が書かれる。「物語 上野動物園の歴史」265-271頁では、ツキノワグマの“クー”の冬眠(冬ごもり)の理由(動機)は「寒くなると動きが鈍くなる」「冬眠させないほうが残酷」「冬眠させないクマはメタボクマ」などと書かれる。なお、冬眠開けのクーは軽快に動き回り、「筋力の衰えを感じさせなかった」とも書かれる。※動物園での冬ごもりの実例は、13頭全頭冬ごもりを実現した北海道のサホロリゾート ベア・マウンテンでの実施も参照。なお、ベア・マウンテンではクマの体調を鑑みながら冬ごもりをさせている。
  71. ^ 「一冊でわかる 動物の権利」140頁では私立動物園の禁止が説かれ、日本ツキノワグマ研究所2012年4月25日は「個人の猛獣飼育に反対」と主張する。
  72. ^ 伊豆バイオパークの例では、鉄道会社から観光会社へ譲渡された。鉄道会社には不採算部門の整理であるが、観光会社は数年で動物園を再生した。再生後はナショナルジオグラフィックに取り上げられる動物園の一つになった(※伊豆バイオパークは伊豆アニマルキングダムも参照)。不採算部門の整理で鉄道会社から自治体に譲渡された例は北九州の到津の森公園(旧・到津遊園)がある。到津は地元市民の強い要望で自治体運営となった(「戦う動物園」より)。
  73. ^ 例として、ニホンザルや大型霊長類に高いタワーや長い橋などの構築で、住環境を高層化・複雑化する工夫や、クマ舎を二階建てにするなどの工夫
  74. ^ 例として、一年を通じて植栽を取り替える工夫や、動物が退屈しないために日替わりで複数のエンリッチメントを行う工夫
  75. ^ 最大の使役動物は象である。東南アジアでは耕作にも使われる。ほか牛、馬、豚、羊、熊、虎などが家畜や使役に用いられる。3万年前の石器時代に巨大なホラグマ(ホラアナグマ)が洞窟を利用した檻の中で飼育されていた(「キリンが笑う動物園」35頁)。
  76. ^ 例として、先進国で環境エンリッチメントされているクマ飼養場(例として、北海道のサホロリゾート ベア・マウンテンは約15ha、東京ドーム3個分以上の敷地に羆12-18頭)と、東及び東南アジアで畜産としての「熊農場」(熊1頭につき貨物コンテナ無いし小獣用のケージが用いられる)との格差である。一般に経営効率と作業性を優先して、漢方薬(熊胆)生産のためのクマのケージは小さなものが選択される。※クマの農場 (bear farm, bear bile farm) については熊農場も参照。
  77. ^ ホッキョクグマなどのクマ類、ゾウ、カバ、大型類人猿(チンパンジー、ボノボ、ゴリラ、オランウータン)、イルカ、シャチなど。
  78. ^ その動物園は2012年現在、日本動物園水族館協会に非加盟である。そもそも、動物園への過剰な非難が倫理上好ましくないのは、その結果、動物園の閉鎖が決まり、閉鎖が徐々になされる場合、新たな投資が行い難いため待遇改善(動物福祉の向上)は行われず、或いは動物は繁殖すらさせてもらえず頭数の削減が行われ、また動物園の閉鎖が急になされる場合、動物の大量虐殺をも視野に入れた経済行為が行われ、そこの動物が「ますます」不幸な境遇に陥ることに倫理上の大きな問題が発生する。これは、動物福祉の向上でも、動物福祉に配慮した社会でもなく、「おちこぼれ」の排除・排斥でしかない。
  79. ^ 動物園を最も激しく批判する人物は、得てして犬猫の里親探しの慈善活動家の場合があり、動物園の動物とペット動物を同一視して問題を語りたがるが、現実的には犬猫は桁違いに頭数が多いため、その里親探しは難航し、犬猫は境遇改善が難しいのである。なお、動物園の動物も“不人気”、“難飼育”の動物は里親探しが難航する場合があり、元秋田八幡平クマ牧場や元定山渓熊牧場はヒグマの里親探しが難航した。ヒグマは21世紀の日本では人気はそれほど高くない動物種であるが、適正な飼育のためには広い飼育面積を必要とする上に、八幡平のヒグマはハイブリッド(交雑種)で動物園にとっては種の保存の意味を成さないためである。
  80. ^ ドイツのホッキョクグマのクヌートは、人工哺育であるために殺処分を主張したと報じられ、のちには著名な動物愛護団体が去勢を主張したことがあるが、いずれも実現はしなかった。
  81. ^ 端的に言えば、死の床についた動物の取り扱い方に差が現れ、日本は動物を生かす傾向があるが、欧米では違う。勿論、例外もあり、日本でも競走馬の予後不良は行われる。
  82. ^ 温帯に位置する気候だと、もともと北極圏に棲むホッキョクグマの体毛密度が減少することがしられている(上野動物園園長)。
  83. ^ 環境帝国主義は「エコファシズム」と理解されている。
  84. ^ 「直接飼育」とは飼育者が直接触れ合って飼育すること。「間接飼育」とは柵越しの触れ合いで飼育すること。「キリンが笑う動物園」,11-13頁より。
  85. ^ QOLとは「生活の質」のこと。
  86. ^ SPIDERモデルとは、目標設定 (Setting goal)、計画 (Planning, Plan)、実施と記録 (Implication and Description, Implementing and Doing)、評価 (Evaluation, Evaluating)、再調整 (Readjustment, Readjusting) の一連の流れを繰り返し、環境エンリッチメントの客観的で科学的な実践法。PDCAサイクルと似る(「キリンが笑う動物園」67-68頁、アメリカ動物園水族館協会AZAなど)。

脚注

[編集]
  1. ^ a b 動物愛護団体PETA、マニラの動物園で抗議パフォーマンス AFP, 2007年9月14日03:33
  2. ^ a b c d e f g h i 「一冊でわかる 動物の権利」より。動物飼育の条件は120-121頁。「最良の動物園」、「刑務所」、「わびしい」、「貧弱な展示」については130頁。「見世物業者」は130頁及び138-140頁。「正当化できる動物園」と「動物の道徳的地位」は140頁。
  3. ^ a b c d e f g h 「日本の動物園」, 131-132頁はエンリッチメントの発祥。131頁に異常行動の例示。132頁はアメリカ動物園水族館協会 (AZA) の環境エンリッチメントの定義。103, 120頁は来園者による動物の死亡例。96頁にカンガルーの放牧。203-204頁は動物園廃止運動から動物園を評価し勧告する運動が生まれ、合理性のあることは動物園が対処したこと。209, 212頁にブロンクス動物園の評価と「あるべき動物園」の方向性の呈示。
  4. ^ a b c d e 動物園チェック資料ALIVE
  5. ^ a b c d ズーチェック団体による中国での動物園調査報告の例「中国の動物園で深刻な虐待、動物保護の法律は野生動物のみに適用―米紙」recordchina,2010年9月3日8時56分。※但し13か所の施設を調べたもの。
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  7. ^ a b TV朝日「週刊地球テレビ」で、ズーチェック(小田原動物園と江ノ島水族館)放映ALIVE
  8. ^ 「天王寺動物園を市民のオアシスに!」おんなの目で街を創る会 ※市民が「動物園調査」を行い要望をまとめた例。
  9. ^ 提案書「大阪市民のオアシスはZOOっとここ!-市民から動物園への提案-」詳細おんなの目で街を創る会 ※市民が「動物園調査」を行い要望をまとめた例。
  10. ^ 大学の動物園調査の例東海大学
  11. ^ a b c 京都市動物園アンケート調査 (PDF) 京都市 ※ゴリラ舎とカバ舎、猛獣舎の不満理由も参照。
  12. ^ 「横浜市立動物園の改革に向けて」及び付随資料 (PDF) 慶応大学 ※慶応大上山信一教授(公共経営学)などの「あり方懇談会」による動物園への提言。
  13. ^ a b 「物語 上野動物園の歴史」などによると、20世紀初頭の上野動物園でゾウの足鎖による飼育について、英国動物虐待防止協会から抗議を受けたとある。詳細は「浅草花やしきの象」を参照。しかしゾウは危険で、仔であっても事故(特にオス)が起き、鎖は有効であると、神戸市王子動物園元飼育員・亀井一成 (2002) は記す。
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  25. ^ a b c d e f g h i j 「戦う動物園」より。70頁に立つレッサーパンダの“見せ物”批判。67頁に買い物するチンパンジー批判。65頁にアザラシのジャンプの餌付けをやめた理由(芸だから)。68頁に京都大学霊長類研究所のチンパンジーのタワーの模倣について。63-64頁に動物園嫌いと仏教的禁忌について。62-63頁に“野生の動物への配慮のない動物園”がきらい。大人の動物園ファン批判。80-81頁に1980年代から始まった都市型動物園の入場者減少と原因(レジャーの多様化・テレビの普及)。205頁にチンパンジーの交尾不能と育児不能、人工哺育への批判。
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  27. ^ a b c d 「動物の赤ちゃんを育てる」75-79頁に、ゴリラの糞投げ、プールの水かけ。149-178頁に、ゾウのしつけと飼育、指吸い、ムスト(マスト)、護身用フックについて。183-184頁に、動物園の改装の計画立案の段階で現場の意見が届き難いこと。207-208頁に、人止柵を越えた親子がヒョウに襲われる。204頁にエンリッチメントの巨額の費用、209-221頁に、エンリッチメントの説明、及び、鉄格子や長屋飼育も工夫で広がる環境として、隣同士の八室でサル数種を飼育するエンリッチメント。格子の檻によるナマケグマの吹きとばし食事法。
  28. ^ a b c d e f g h i j 「キリンが笑う動物園」より。2-4頁はキリンの餌場についての見解。28-29頁は日本の動物園は娯楽施設とする見解。75-77頁はお茶会、パイプを吸うチンパンジーの例。77-78頁はテレビのチンパンジーの裏側とその後の生涯と伊豆シャボテン公園の取組み。79頁はチンパンジーの人工繁殖に反対。94頁に全ての人がアフリカには行けない。94頁に動物園は動物の犠牲を強いる。
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  106. ^ a b c 「物語 上野動物園の歴史」265頁にカナダヤマアラシの木登り展示、ナマケモノの脱走展示がエンリッチメント大賞の特別賞。244頁に BRONX ZOO は通称・俗称で正式名称は野生生物保全センターとある。265-268頁はツキノワグマの“クー”の冬眠について。187頁には1956年4月20日に昭和天皇と握手したチンパンジーのスージー(雌)の洋服、自転車、買い物、喫煙について。
  107. ^ a b 人間性回復させる動物園 旭山動物園前園長・小菅正夫さん 2012年11月2日 10:00
  108. ^ [このURLはスパムとして扱われてます 2006/01/23 日本クマネットワーク2006年度総会が開催 outback] ※自然保護の財団法人の関係者から、その動物園のクマの餌やりは人と野生クマとの共生に対する挑戦であると感情論が示されたが、動物への餌やり体験は日本をはじめ世界中の動物園でしばし行われ、日本だけの特殊な環境でもない。
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  156. ^ a b c エンリッチメント大賞2012 市民ZOOネットワーク
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  158. ^ エンリッチメント大賞:日立・かみね動物園が受賞 チンパンジー舎、市民の「森作り」評価 毎日新聞茨城 2012年10月12日
  159. ^ こども動物自然公園「シカとカモシカの谷」がエンリッチメント大賞 埼玉 産経新聞 2012.10.12 12:00
  160. ^ エンリッチメント大賞、2年連続受賞 県こども動物自然公園 東京新聞 2012/10/12 00:00
  161. ^ ハゲコウ飛行トレ 秋吉台サファリ「飼育環境」大賞に 山口新聞 2012/10/13 00:00
  162. ^ a b c エンリッチメント大賞2011 市民ZOOネットワーク
  163. ^ 「動物園ライター」って何?(Excite Bit コネタ)2011年11月2日10時00分 エキサイトニュース。※記事中の児童書は『ひめちゃんとふたりのおかあさん 〜人間に育てられた子ゾウ〜』(森 由民・著) フレベール館 ISBN 9784577039366
  164. ^ a b エンリッチメント大賞2010 市民ZOOネットワーク
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  167. ^ クマのいろんな行動を引き出す“しかけ” 読売新聞 ※クマたちの丘についての紹介記事。
  168. ^ a b c エンリッチメント大賞2007 市民ZOOネットワーク
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  171. ^ a b c d e f エンリッチメント大賞2004 市民ZOOネットワーク
  172. ^ a b c d エンリッチメント大賞2003 市民ZOOネットワーク
  173. ^ a b c d エンリッチメント大賞2002 市民ZOOネットワーク
  174. ^ a b c エンリッチメント大賞2002 特別賞!! 市民ZOOネットワーク

参考文献

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  • 『一冊でわかる 動物の権利』デヴィッド・ドゥグラツィア著、戸田清訳、岩波書店 2003年9月5日発行、ISBN 4000268651。(原題『ANIMAL RIGHTS』(A Very Short Introduction)、by David DeGrazia、Oxford University Press、2002)。
  • 『いま動物園がおもしろい』 市民ZOOネットワーク著、岩波ブックレットNo.623、岩波書店 2004年5月7日発行、ISBN 4000093231
  • 『キリンが笑う動物園 環境エンリッチメント入門』 上野吉一著、岩波科学ライブラリー154、岩波書店 2009年1月27日発行、ISBN 9784000074940
  • 『動物園のデザイン Designing a Zoo』、INAXギャラリー、INAX BOOKLET、執筆者:菅谷博、小宮輝之、蓮見智幸、若生謙二小菅正夫、撮影:大西成明、INAX出版 2003年12月15日発行、ISBN 4872758269
  • 『全国動物園アンケート調査2003日本の動物園の現状と意識調査』、地球主物会議 (ALIVE) 2003年12月10日発行。
  • 『動物保護運動の虚像 -その源流と真の狙い-』、梅崎義人著、296頁、成山堂書店 1999年5月8日発行、ISBN 4425980913
  • 『世界動物園保全戦略 世界の動物園と水族館が地球環境保全に果たす役割』、著者:世界動物園機構 (IUDZG-WZO) 及びIUCN/SSC/CBSG(保全繁殖専門家集団)共著、(社)日本動物園水族館協会 1996年7月発行・翻訳。(原題『THE WOLRD ZOO CONSERVATION STRATEGY』1993年9月著)日本語版。
  • 『日本の動物園』、石田戢(おさむ)著、東京大学出版会 2010年7月5日発行、ISBN 9784130601917
  • 『動物園革命』、若生謙二著、岩波書店 2010年12月22日発行、ISBN 9784000257954
  • 『戦う動物園 旭山動物園と到津の森公園の物語』、中公新書 1855、小菅正夫、岩野俊郎著、島泰三編、中央公論新社 2006年7月25日発行、ISBN 4121018559
  • 『物語 上野動物園の歴史 園長が語る動物たちの140年』、中公新書 2063、小宮輝之著、中央公論新社 2010年6月25日発行、ISBN 9784121020635
  • 『<旭山動物園>革命 -夢を実現した復活プロジェクト』、角川ONEテーマ21 A-46、小菅正夫著、角川書店 2006年2月10日発行、ISBN 4047100374
  • 『私の動物園勉強法』、青山健一(日本動物園水族館教育研究会会員)著、文芸社 2002年11月15日発行、ISBN 4835545605
  • 『動物の赤ちゃんを育てる 動物園飼育員50年』、朝日選書711、亀井一成著、朝日新聞社 2002年9月25日発行、ISBN 4022598115
  • 『未来のスケッチ 経営で大切なことは旭山動物園にぜんぶある』、遠藤功著、あさ出版 2010年4月16日発行、ISBN 9784860633820
  • 『動物園にできること 『種の方舟』のゆくえ』、川端裕人著、文藝春秋 1999年3月20日発行、ISBN 416354920X
  • 『ヒグマが育てる森』、前田菜穂子著、岩波書店 2005年12月22日発行、ISBN 4000019384

参考リンク

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関連項目

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外部リンク

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