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スミレサイシン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
スミレサイシン
スミレサイシン、横山岳、滋賀県長浜市にて、2017年5月2日撮影
スミレサイシン、横山岳滋賀県長浜市にて
2017年5月撮影
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : バラ上類 Superrosids
階級なし : バラ類 Rosids
階級なし : マメ類 Fabids
: キントラノオ目 Malpighiales
: スミレ科 Violaceae
: スミレ属 Viola
: スミレサイシン
V. vaginata
学名
Viola vaginata Maxim. (1877)[1]
シノニム
和名
スミレサイシン
品種
  • Viola vaginata Maxim. f. albescens Sugim. ウスジロスミレサイシン[3]
  • Viola vaginata Maxim. f. albiflora Honda シロバナスミレサイシン[4]
  • Viola vaginata Maxim. f. satomii (F.Maek. et T.Hashim.) E.Hama, nom. nud. サンインスミレサイシン[5]

スミレサイシン(菫細辛[6]学名: Viola vaginata)は、スミレ科スミレ属分類される多年草の1[7][8][9]和名後のの形状がウマノスズクサ科ウスバサイシンに似ているスミレであることに由来する[7][10][11]

分布と生育環境

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山地の落葉樹林下に生育するスミレサイシン
分布域の北部のものは葉が大きい(福島県会津地方)

日本の固有種[7]北海道南西部、本州山口県までの日本海側)、北日本では太平洋側にも[9]四国徳島県)に分布する[11]。特に日本海側の多地帯に生育する代表的なスミレ[9]。日本海側にスミレサイシンが分布するのに対して、太平洋側にはナガバノスミレサイシンが分布する[9]

主にあまり標高が高くない山地の半日陰の湿り気のある[12]落葉樹林下に、大小の集団を作って生育する[6][9]

特徴

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多年生草本[6]地下茎ワサビのように太く[13]、横にはい、節が多く[7]、密に接近する[8]。地上が無い無茎性のスミレで、草丈は5 - 15センチメートル (cm) [9]日本のスミレの中では最大で[8]期にはあまり展開していないことが多く[13]、基部が表面に向かって巻き、花より遅れて開き、数枚が叢生する[6][14]。葉は両面とも緑色でやや厚く、ほとんど無毛[9]、三角状広披針形で[6]、花時は長さ3 - 5 cm[15]、果時にはさらに大きくなって長さ15 cmに達する[2]。葉の先は尖り、基部は心形[7]、縁には低い鋸歯がある[8]。分布域の北部では一般に葉は大きく幅広になり、西部ではより小さく狭長になる[16]葉柄は花期に長さ15 cmにもなる[8]。古い托葉[10]は葉柄から離れて根本につき[7]、膜質で褐色[14]

花は淡紫色で[7]花弁は長さ15-20 mm、側弁は無毛、唇弁に紫条が入る[8]は短く太く袋状で長さ4-5 mm[7]雌蕊柱頭くちばし状に長く、花柱の上部はカマキリの頭形[9]片は広披針形で[8]、付属体には鋭い切れ込みがある[9]。花期は3月[11]-6月[7]。果実は蒴果で熟した後に裂開し、種子を飛ばす[10]

利用

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花と葉を食用とする。葉は夏から秋まで利用でき、さっと茹でて水にさらし、おひたし和え物にしたり、生のまま天ぷらにする[6]。花は熱湯にくぐらせて、酢の物、椀種にしたり、生花を料理のあしらいにする[6]

地下茎をすり下ろして[2]、またはにしてとろろのように料理して食用される地方がある[10]。そのため、本種を「トロロスミレ」とよぶ地方がある[2]

分類

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スミレサイシン類に分類される[9]。以下の品種が知られている。

  • ウスジロスミレサイシン(薄白菫細辛、学名:Viola vaginata Maxim. f. albescens Sugim.[3]
白花の品種のシロバナスミレサイシン
  • シロバナスミレサイシン(白花菫細辛、学名:Viola vaginata Maxim. f. albiflora Honda[4]) - 白花の品種[9]
  • サンインスミレサイシン(山陰菫細辛、学名:Viola vaginata Maxim. f. satomii (F.Maek. et T.Hashim.) E.Hama, nom. nud.[5]) - 葉が細長くなるもので[9]、ナガバノスミレサイシンよりも先端がさらに細く尖る[13]北陸より西の[13]山陰地方に多い[9]。山陰地方のものを変種 var. satomii として扱う見解もある[17]が、寺尾 (1977)の研究によれば、スミレサイシンの地理的変異は連続的で、種としては均一なものとしている[16]

種の保全状況評価

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日本では国レベルの環境省によるレッドリストの指定はないが[18]、以下の都道府県でレッドリストの指定を受けている。

脚注

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  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Viola vaginata Maxim. スミレサイシン(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年5月5日閲覧。
  2. ^ a b c d 門田裕一 (2016)「スミレ科」『改訂新版 日本の野生植物 3』p.215
  3. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “ウスジロスミレサイシン”. BG Plants 和名-学名インデックス(YList). 2020年5月5日閲覧。
  4. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “シロバナスミレサイシン”. BG Plants 和名-学名インデックス(YList). 2020年5月5日閲覧。
  5. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “サンインスミレサイシン(シノニム)”. BG Plants 和名-学名インデックス(YList). 2020年5月5日閲覧。
  6. ^ a b c d e f g 高橋監修 (2003), 152頁
  7. ^ a b c d e f g h i 林 (2009)、343頁
  8. ^ a b c d e f g 佐竹 (1982)、249頁
  9. ^ a b c d e f g h i j k l m いがり (2015)、110頁
  10. ^ a b c d 牧野 (1982)、344頁
  11. ^ a b c 林 (2014)、50頁
  12. ^ いがり (2015)、116頁
  13. ^ a b c d いがり (2015)、111頁
  14. ^ a b 小野 (1987)、363頁
  15. ^ 林 (2014)、51頁
  16. ^ a b 寺尾 (1977)、63頁
  17. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “サンインスミレサイシン(標準)”. BG Plants 和名-学名インデックス(YList). 2020年5月6日閲覧。
  18. ^ 環境省レッドリスト2019の公表について”. 環境省. 2020年5月5日閲覧。
  19. ^ 徳島県版レッドデータブック(レッドリスト)”. 徳島県. 2020年5月5日閲覧。
  20. ^ レッドデータブックあいち2020・植物編3” (PDF). 愛知県. pp. 312. 2020年5月5日閲覧。

参考文献

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  • いがりまさし『増補改訂日本のスミレ』山と溪谷社〈山溪ハンディー図鑑〉、2015年1月15日。ISBN 9784635070065 
  • 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 3』、2016年、平凡社
  • 小野幹雄、林弥栄(監修) 編『原色高山植物大図鑑』北隆館、1987年3月30日。ISBN 4832600079 
  • 寺尾博「スミレサイシンとナガバノスミレサイシンの葉形の地理的変異」『植物分類,地理』第28巻、日本植物分類学会、1977年、58-64頁、doi:10.18942/bunruichiri.KJ00003217441NAID 110003763084 
  • 佐竹義輔大井次三郎北村四郎、亘理俊次、冨成忠夫 編『日本の野生植物 草本II離弁花類』平凡社、1982年3月17日。ISBN 458253502X 
  • 高橋秀男監修 田中つとむ・松原渓著『日本の山菜』学習研究社〈フィールドベスト図鑑13〉、2003年4月1日、152頁。ISBN 4-05-401881-5 
  • 林弥栄『日本の野草』山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、2009年10月。ISBN 9784635090421 
  • 林弥栄『野草 見分けのポイント図鑑』(新装)講談社、2014年9月10日。ISBN 978-4062191272 
  • 牧野富太郎、本田正次『原色牧野植物大図鑑北隆館、1982年7月。ASIN B000J6X3ZENCID BN00811290全国書誌番号:85032603https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001728467-00 

関連項目

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外部リンク

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