北欧メタル
北欧メタル(ほくおうメタル)は、ヘヴィメタルのジャンル、あるいはカテゴリーのひとつ。主にスウェーデン、フィンランド、ノルウェー、デンマーク、アイスランド出身のヘヴィメタルバンド群の総称である。
概要
[編集]北欧は、現在のヘヴィメタルシーンにおいて世界的な流行の発信地のひとつである。メロディックデスメタルやパワーメタル、ブラックメタルやゴシックメタルやLAメタル系のロックンロールなど、様々なジャンルのバンドを輩出している。そのため、「スカンジナビアン・メタル」や「ノルディック・メタル」等の別の呼称を使ってそれぞれのイメージで語られることも多い。
起源
[編集]1970年代後半までは、北欧はハードロック不毛の地と言われていた。しかし1980年代初頭、ヨーロッパの台頭により日本ではじめて北欧メタルの人気に火がつき、「北欧メタル」という概念が生まれ始めた。1980年代中期にはヨーロッパは最初の本格的北欧メタルバンドとしての初来日を果たしている。
ヨーロッパのみならず外国に進出するミュージシャンは後を絶たない。79年に勃発したNWOBHMの影響はスカンジナヴィア半島全域に飛び火、多くのバンドが登場する。ヨーロッパの台頭によりは、大きな間違いである。
背景
[編集]なぜ、これほどまでに多様なメタルバンドが北欧に誕生したのかについて、Sighの川嶋未来が行ったインタビューによって、多くのミュージシャンが意見を述べている。
スウェーデンのブラックメタルバンドDark Funeralのメンバーであるヘルヤルマドルは、自国でエクストリーム・メタルが発展した理由を聞かれて、「スウェーデンには非常に強力な、国が資金的バックアップをしている教育システムがあるからね。若いバンドは『学習サークル』と呼ばれる、リハーサルの場所などを提供してくれるものを利用してスタートするんだ。つまり借り物のギターと糞みたいなアンプしか持っていないようなリッチでない人間でも、バンドを始められるということさ。スウェーデンという国は、常に創造性、そして文化をサポートしてきた。例えば90年代初期のライヴも国の援助を受けていることが多かったので、ABF(訳注:音楽や言語教育などをサポートする教育機関)などのロゴが掲げられていたものさ。蒔かれた種は育つものだよ。それから第二に、スウェーデンではエクストリームな音楽を作るべき人間が、作るべき時にそれを作ったということだね。第三に、スウェーデン人の自己を律する気質というものもあると思う。スウェーデン人は一度決意すると、もう一日ダラダラとビールを飲んで過ごしたりはしなくなるんだ。もちろんこれらのこともすべて一般化した内容ではあるけど、真実でもあると思うよ。」と答えている[1]。同じくスウェーデン出身のパワーメタルバンドSabatonのメンバーも、国からの色々な補助、地域の音楽学校やコミュニティの充実、きちんとしたバックステージやシャワーがあるライブハウスの存在など、音楽をやる環境がとても充実していることを理由に挙げている[2]。
状況はフィンランドでも同じようである。パワーメタルバンドBattle Beastのノーラ・ノウヒモは、「いくつかの基金があって、フィンランドでは音楽に対する援助というのはとても手厚いわ。」と証言している[3]。
音楽的特徴
[編集]今日では北欧出身のバンドの中にも様々なジャンルのバンドが存在し、活躍するようになったため、従来のように音楽性で北欧メタルをひとくくりにすることは難しくなってきている。代表的な音楽ジャンルは以下のようなものである。
ハード・ロック
[編集]北欧出身のハードロックバンドが1980年代に日本で人気を博した際に、「北欧メタル」という言葉が本来指していた音楽性。ヨーロッパやTNT、グローリー(GLORY)の楽曲に見られるように、時に抒情的、時に煌びやかなメロディや雰囲気を重視し、キーボードを多用する。
パワーメタル
[編集]ストラトヴァリウスをはじめ、メロディアスでスピード感のある楽曲が特徴。パワーメタル系統のバンドの一部には、中世の北欧諸国の戦争をモチーフにした騎士や古城などが登場するものや国王の一生を描くストーリーを題材にした歌詞、さらにドラゴンやナイトといった幻想的な世界観を扱う傾向もある。
イェーテボリ・スタイル
[編集]スウェーデンの一都市であるイェーテボリを中心として、1990年代前半にメロディックデスメタルのムーブメントが勃発した。やがて北欧全域へと広まったそのムーブメントで最初に中心的な役割を果たしたのはアット・ザ・ゲイツ、カーカスらであった。そこに勢いのある若手バンドを加えたメロデス勢は離合集散を繰り返しながら、当初はヨーロッパや日本を主な市場としていた。
しかし、2000年代に入って、米国を中心に彼らのスタイルから大きな影響を受けた若手バンドが多数登場。純粋なヘヴィメタルよりは、ややハードコア寄りなスタイルのバンドが多いが、彼らはメロデスバンドを「イェーテボリ・スタイル (スウェディッシュ・デスメタル)」と呼んでリスペクトしていた。これによってメロデスバンドたちの米国進出の土壌が整い、現在では多くのバンドが活動の比重を米国に移すようになってきている。
北欧ロックンロール
[編集]フィンランドの伝説的なロックンロールバンドであるハノイ・ロックスが、このタイプの元祖的な存在である。1990年代後半以降、スウェーデンからバックヤード・ベイビーズやヘラコプターズ、ハードコア・スーパースター、フィンランドからはネガティヴなど有望な若手バンドが多数登場し、にわかに活況を呈してきた。その多くはパンク・ロックやLAメタルの影響を受けている。
北欧ゴシックメタル
[編集]従来のゴシックメタルは沈うつな雰囲気に終始することが多かったが、北欧ではHIMらによって、叙情的かつキャッチーなメロディを重視したスタイルが発達している。これらのバンドは主にヨーロッパで高い人気を誇っている。
主要アーティスト一覧
[編集]- A.C.T
- アーチ・エネミー
- アット・ザ・ゲイツ
- AMARANTHE
- アモルフィス
- アンベリアン・ドーン(Amberian Dawn)
- イン・フレイムス
- イングヴェイ・マルムスティーン
- エイリアン
- エターナル・ティアーズ・オヴ・ソロウ
- エッジ・オブ・サニティ
- エンシフェルム
- カタメニア
- カルマ
- キャンドルマス
- クラッシュ・ダイエット
- グランド・イリュージョン
- グローリー(GLORY)
- クロックワイズ
- コルピクラーニ
- コンセプション(CONCEPTION)
- サバトン
- シナジー(シナジー)
- ジャッカル
- シルヴァー・マウンテン
- スカイファイヤー
- ストラトヴァリウス
- セリオン
- センテンスト
- ソイルワーク
- ソナタ・アークティカ
- ダーク・トランキュリティ
- ダーク・フューネラル
- TNT
- タリスマン
- チルドレン・オブ・ボドム
- 220 VOLT
- ドラゴンランド
- トリート
- トワイライトニング
- ナイトウィッシュ
- ネイション
- ネガティヴ
- ノーサー
- ノクターナル・ライツ
- パースエーダー(PERSUADER)
- ハードコア・スーパースター
- バトル・ビースト
- バックヤード・ベイビーズ
- ハンマーフォール
- HIM
- フェイト
- フォーチュン
- プリティ・メイズ
- ヘラコプターズ
- ヨーロッパ
- ラーズ・エリック・マットソン
- ザ・ラスマス
- ロイヤル・ハント
- ロスト・ホライズン
- ウィグ・ワム
- ワザリング・ハイツ
- ワルタリ
関連項目
[編集]- メロディックスピードメタル
- メロディックデスメタル
- シンフォニックメタル
- ネオクラシカルメタル
- ゴシックメタル
- メロディアスハードロック
- スパインファーム・レコード
- ヴァイキング・メタル
- ブラックメタル
- スウェディッシュ・デスメタル
脚注
[編集]- ^ 川嶋未来. “【インタビュー】DARK FUNERAL”. Lawson HMV Entertainment, Inc.. 2016年6月12日閲覧。
- ^ 川嶋未来. “【インタビュー】SABATON”. Lawson HMV Entertainment, Inc.. 2016年6月12日閲覧。
- ^ 川嶋未来. “BATTLE BEAST ノーラ・ノウヒモ・インタビュー!”. Lawson HMV Entertainment, Inc.. 2016年6月12日閲覧。