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ジャコウネコ科

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ジャコウネコ科
インドジャコウネコ
インドジャコウネコ Viverra zibetha
地質時代
始新世 - 現代
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 食肉目 Carnivora
亜目 : ネコ型亜目 Feliformia
: ジャコウネコ科 Viverridae
学名
Viverridae Gray, 1821[1][2]
タイプ属
Viverra Linnaeus, 1758[1]
和名
ジャコウネコ科[3][4][5]
亜科

麝香猫科(ジャコウネコか、Viverridae)は、哺乳綱食肉目に含まれる科。

分布

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アフリカ大陸ユーラシア大陸インドネシアスリランカフィリピン[3]

形態

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体型は細長く、吻も細長く尖る[4]

耳介の後縁に袋状の器官(耳嚢)がある[4]。歯列は門歯上下6本ずつ、犬歯上下2本ずつ、臼歯上顎8本・下顎6 - 8本、大臼歯上顎2 - 4本・下顎4本の計38 - 40本[4]。多くの種には肛門周辺に臭腺(肛門腺)がある[3][4]。四肢は短い[4]上腕骨下部の内側に、神経や動脈が通る孔(内側上髁孔)がある[4]。指趾は5本[4]。爪を引っ込めることができるが、爪を保護する襞(さや)のない種もいる[4]

分類

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始新世に出現し、現生の食肉目内では起源が古く原始的な特徴を残した分類群だと考えられている[4]

ジェネット亜科(ジャコウネコ亜科から分割)・ジャコウネコ亜科・タイガーシベット亜科(ヘミガルス亜科)・パームシベット亜科に区別される[1][6][7][8]

以前はコバマングースフォッサマダガスカルジャコウネコといったマダガスカルに分布する種が含まれ、フォッサ亜科やコバマングース亜科を構成する説もあった[4]。2003年に発表されたIRBPのエクソン・TTF遺伝子のイントロン・ミトコンドリアDNAシトクロムb・ND2遺伝子の塩基配列を決定した最大節約法最尤法ベイズ法などによる系統解析では、マングース科のワオマングース亜科も含めたマダガスカルの食肉類のみで単系統群を形成することが強く示唆されマダガスカルマングース科Eupleridaeを構成する説が有力とされる[9]。これらの系統解析によりキノボリジャコウネコがネコ型亜目Feliformia内でも初期に分化したことも示唆されたため、1属1種でキノボリジャコウネコ科Nandiniidaeを構成する説が有力とされる[9]

オビリンサン属Prionodonはジャコウネコ亜科に含める説があったが、臭腺がない・爪がひっこめられるなどの特徴から1属でオビリンサン亜科Prionodontinaeを構成する説も提唱されていた[4]。2003年に発表されたTTF遺伝子のイントロン・ミトコンドリアDNAのシトクロムbの塩基配列を用いた最尤法による系統解析では、オビリンサン属とネコ科で単系統群を形成することが示唆されたことから独立した科Prionodontidaeを構成する説が提唱されている[10]

現生種の分類はVeron (2010) に従う[1]。GenettinaeおよびGenetta felinaを除いて和名は川田ら (2018)[5]、英名はMSW3 (Wozencraft, 2005) に従う[2]

絶滅した分類群

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ステノプレシクティス亜科

生態

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森林草原などに生息する。樹上棲の種が多いが、ジャコウネコ亜科は半樹上棲ないし地表棲の種が多い。夜行性の種が多い[3][4]。単独もしくはペアで生活する[3][4]

食性は多くの種で雑食で、昆虫、鳥類、小型哺乳類、果実などを食べるが、魚類を食べたり動物食の種もいる。

人間との関係

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生息地では食用とされることもある[4]。一部の種の性器の周辺にある臭腺(会陰腺)から分泌される液は、香水の補強剤や持続剤として利用されている[4]。この液は制汗剤や催淫剤・皮膚病の薬として用いられることもあった[3]。英語圏で本科の多くの構成種に対して用いられる呼称civet(シベット)は、アラビア語で会陰腺から分泌される液およびその臭いを指すzabādに由来する[3][4]

農作物や家禽を食害する害獣とみなされることもある[3]。ネズミの駆除を目的に移入された種もいる[16]

森林伐採や農地開発・採掘などによる生息地の破壊、麝香目的も含む狩猟などにより生息数が減少している種もいる[14][15][11]

インドネシアなどのコーヒー農園において、パームシベットの糞から得られるコーヒー豆が利用されている[16]。希少な高級コーヒーであるコピ・ルアクは、ジャコウネコ科の動物に一旦コーヒー果実を食べさせ、排泄物の中から未消化のを利用したものである。

出典

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  1. ^ a b c d Geraldine Veron (2010). “Phylogeny of the Viverridae and ‘viverrid-like’ feliforms”. In Anjali Goswami & Anthony Friscia, (eds.). Carnivoran Evolution. New Views on Phylogeny, Form and Function. Cambridge University Press. pp. 64-91. https://doi.org/10.1017/CBO9781139193436.004 
  2. ^ a b c W. Christopher Wozencraft, "Viverridae". Mammal Species of the World, (3rd ed.), Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (ed.), Johns Hopkins University Press, 2005, pp. 548-559.
  3. ^ a b c d e f g h 今泉吉典監修 D.W.マクドナルド編『動物大百科1 食肉類』、平凡社、1986年、152-161頁。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v 祖谷勝紀・伊東員義 「ジャコウネコ科の分類」『世界の動物 分類と飼育2(食肉目)』今泉吉典監修、東京動物園協会、1991年、16-18、78-118頁。
  5. ^ a b 川田伸一郎・岩佐真宏・福井大・新宅勇太・天野雅男・下稲葉さやか・樽創・姉崎智子・横畑泰志 「世界哺乳類標準和名目録」『哺乳類科学』第58巻 別冊、日本哺乳類学会、2018年、1-53頁。
  6. ^ a b 江木直子・荻野慎諧・高井正成 「ミャンマー中部の新第三系イラワジ動物相:食肉目」『化石』第104巻、日本古生物学会、2018年、21-33頁。
  7. ^ Philippe Gaubert and Pedro Cordeiro-Estrela, “Phylogenetic systematics and tempo of evolution of the Viverrinae (Mammalia, Carnivora, Viverridae) within feliformians: Implications for faunal exchanges between Asia and Africa”, Molecular Phylogenetics and Evolution, Volume 41, Issue 2, 2006, Pages 266–278.
  8. ^ Marie-Lilith Patou, Régis Debruyne, Andrew P. Jennings, Akbar Zubaid, Jeffrine Japning Rovie-Ryan, and Géraldine Veron, “Phylogenetic relationships of the Asian palm civets (Hemigalinae & Paradoxurinae, Viverridae, Carnivora)”, Molecular Phylogenetics and Evolution, Volume 47, Issue 3, 2008, Pages 883-892.
  9. ^ a b Annie D. Yoder, Melissa M. Burns, Sarah Zehr, Thomas Delefosse, Geraldine Veron, Steven M. Goodman, John J. Flynn, “Single origin of Malagasy Carnivora from an African ancestor", Nature, Vol. 421, Nature Publishing Group, 2003, pp. 734-737
  10. ^ Philippe Gaubert and Géraldine Veron, “Exhaustive sample set among Viverridae reveals the sister-group of felids: The linsangs as a case of extreme morphological convergence within Feliformia”,  Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences, Volume 270, Issue 1532, 2003, Pages 2523-2530.
  11. ^ a b c 小原秀雄 「タテガミジェネット」『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ6 アフリカ』小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著、講談社、2000年、153頁。
  12. ^ 今泉吉典監修「ジェネット属」『世界哺乳類和名辞典』平凡社、1988年、293-295頁。
  13. ^ a b Philippe Gaubert, Peter J. Taylor & Geraldine Veron, “Integrative Taxonomy and Phylogenetic Systematics of the Genets (Carnivora, Viverridae, Genetta): A New Classification of the Most Speciose Carnivoran Genus in Africa,” In: Bernhard A. Huber, Bradley J. Sinclair & Karl-Heinz Lampe (eds.), African Biodiversity, Springer, 2005, Pages 371–383.
  14. ^ a b 小原秀雄 「オーストンヘミガルス」「ジャードンパームシベット」「マラバルジャコウネコ」『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ4 インド、インドシナ』小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著、講談社、2000年、146-147頁。
  15. ^ a b c d 小原秀雄 「キノガーレ」「クロヘミガルス」「セレベスパームシベット」『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ5 東南アジアの島々』小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著、講談社、2000年、26、132-133頁。
  16. ^ a b Pat Morris and Amy-Jane Beer 「ジャコウネコ科(ジャコウネコ類やジェネット類)」鈴木聡訳『知られざる動物の世界 8 小型肉食獣のなかま』 本川雅治監訳、朝倉書店、2013年、82-91頁。

関連項目

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