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ツルアジサイ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ゴトウヅルから転送)
ツルアジサイ
福島県会津地方 2008年6月
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
階級なし : キク類 Asterids
: ミズキ目 Cornales
: アジサイ科 Hydrangeaceae
: アジサイ属 Hydrangea
: ツルアジサイ H. petiolaris
学名
Hydrangea petiolaris Siebold et Zucc. (1839)[1]
シノニム
和名
ツルアジサイ(蔓紫陽花)
英名
Climbing Hydrangea

ツルアジサイ(蔓紫陽花[5]学名: Hydrangea petiolaris)は、アジサイ科[注 1]アジサイ属落葉つる性木本。和名の由来は、つる性のアジサイの意味である[6]。別名で、ゴトウヅル[1][7][6]、ツルデマリ[1][6]、アジサイヅタ[8]、ウリヅル[6]、ウリツタ[6]、ユキカズラ[8]ともいう。アジサイの仲間としては珍しく、つる性のアジサイであるところから、アメリカでは Climbing Hydrangea (クライミング・ハイドランジア)とよばれている[8]アイヌ名はユック・プンカル(「鹿・つる」の意)という[9]

分布と生育環境

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日本北海道本州四国九州、および南千島に分布し[10][7]、山野の湿った場所で、岩崖や林縁に自生する。林の中で、つるが大きな樹上や岩にからみながら伸びる[11][6]

特徴

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落葉つる性の木本[7]、幹や枝から気根を出して高木や岩崖に付着し、絡みながら這い登り、高さ5 - 20メートル (m) くらいになる[9][7]。気根は、もっぱら空中の水分を吸収する働きをする[9]樹皮は淡褐色から赤褐色で、幹は縦に裂けて剥がれるが、枝は明褐色で皮目は少ない[5]。枝は短枝もよく出る[5]。気根は2年枝から出始める[5]

には長い葉柄がついて枝に対生し、葉身は10 - 15センチメートル (cm) 、幅5 - 10 cmほどある卵円形から広卵形で、先端は尖り、葉脚は浅いハート形か円形である[9]。表面は濃い緑色で裏面はやや淡い緑色[9]葉縁には細かくて鋭い鋸歯がある[9][11][6]

花期は初夏(6 - 7月ごろ)で[7]。枝の先に白い小花が多数集まった直径20 - 25 cmほどの散房状集散花序をつくる[9][11]姿はガクアジサイに似ており[6]、直径5ミリメートル (mm) ほどのクリーム色をした両性花が多数集まり、そのまわりに白色で3 - 4枚の花弁状の大きな萼片を持つ装飾花が縁どる[9][7][11]。花序は密につるの各所に付くので、開花したときには見応えがある[9]。冬になっても装飾花の萼片が、枯れ残っていることもある[5]果実は9 - 10月の褐色に熟し、種子には翼がある[7]。冬芽は枝先の頂芽は長卵形で大きく、枝に対生する側芽は小さい[5]。芽鱗は4枚あるが見えるのは外側の2枚だけで、その表面は滑らかである[5]

利用

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枝のあちこちから萌え出た若芽が食用になり、キュウリに似た爽やかな香りがある[6]。採取時期は暖地が3 - 4月、寒冷地で5 - 6月が適期とされる[6]灰汁がなく、茹ですぎるとキュウリのような消えてしまうため、熱湯にくぐらす程度にして水にさらし、おひたしサラダ和え物酢の物煮びたし炒め物などにする[11][6]。また、生のまま天ぷらや汁の実にする[11][6]

つる性で開花したときの花の見応えがあることから、壁面の装飾に使われる。ノルウェーの首都オスロにあるムンク美術館の中庭に面する壁面がツルアジサイで一面覆われていて、花期には全面が花で埋め尽くされる[9]

よく似た植物

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姿がよく似ているイワガラミ(アジサイ科)は、ツルアジサイとともに若葉が山菜として食べられる[7][6]。双方とも蔓になり、アジサイ様の花序が出る点で共通するが、イワガラミは装飾花に発達する萼片が1枚だけである点で見分けられる[10][5]。また、イワガラミは概して地上を這っているのでこの名がある[10]

同じようなところに、触れるとかぶれてしまうツタウルシ(ウルシ科)が生えている[12]。間違えやすい有毒植物として知られるが、ツルアジサイやイワガラミは葉が2枚ずつ向き合ってつく対生であるのに対して、ツタウルシでは3枚ずつ出て、葉縁には鋸歯がない全縁である点で見分けられる[12]

近縁種

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脚注

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注釈

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  1. ^ APG体系クロンキスト体系ではアジサイ科 (Hydrangeaceae) に分類されるが、古い新エングラー体系ではユキノシタ科 (Saxifragaceae) に分類されていた[1]

出典

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参考文献

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  • 金田初代、金田洋一郎(写真)『ひと目でわかる! おいしい「山菜・野草」の見分け方・食べ方』PHP研究所、2010年9月24日、100 - 101頁。ISBN 978-4-569-79145-6 
  • 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、89頁。ISBN 978-4-416-61438-9 
  • 高橋秀男監修 田中つとむ・松原渓著『日本の山菜』学習研究社〈フィールドベスト図鑑13〉、2003年4月1日、107頁。ISBN 4-05-401881-5 
  • 辻井達一『日本の樹木』中央公論社〈中公新書〉、1995年4月25日、171 - 175頁。ISBN 4-12-101238-0 
  • 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、205頁。ISBN 4-522-21557-6