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クルマエビ科

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
クルマエビ科 Penaeidae
クルマエビ Marsupenaeus japonicus
分類
: 動物Animalia
: 節足動物Arthropoda
亜門 : 甲殻亜門 Crustacea
: 軟甲綱(エビ綱) Malacostraca
: 十脚目(エビ目) Decapoda
亜目 : 根鰓亜目(クルマエビ亜目) Dendrobranchiata
上科 : クルマエビ上科 Penaeidea
: クルマエビ科 (ウシエビ科) Penaeidae
Rafinesque, 1815
49属(本文参照)

クルマエビ科(クルマエビか、学名 Penaeidae)は、エビの分類群の一つである。ウシエビクルマエビ等の重要産業種を含む。別名(ウシエビ科)。

形態

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体長は数cm程度のものから30cmに達するものまで種類によって異なるが、同種内ではメスの方がオスよりも大きい。体格はやや側扁した円筒形で、頭胸部と腹部はそれほど太さが変わらず連続する。

5対10本の歩脚はよく発達し、このうち前の3対は鋏脚となる。他の十脚類では鋏脚が発達するものもいるが、本科を含むクルマエビ上科 Penaeidea に属すエビは鋏脚3対ともほぼ同じ太さで、強大には発達しない。オスは第1腹脚の内側にペタスマ Petasma、メスは第4・第5歩脚の付け根にセリカム Thelycum という交尾器をもつ。本科は第1触角第1節に葉状突起、歩脚に外肢、腹脚に内肢があることでクルマエビ上科の他科と区別できる[1][2]

2個の複眼は比較的大きくて丸く、両眼の間から側扁した額角が突き出る。額角の上下縁には鋸歯があるが、属によっては下縁に鋸歯がなく上縁だけがギザギザのものもいる。額角から連続した頭胸甲背部には隆起、溝、鋸歯があり、属や種類によって異なる。また眼の後ろには棘はない。サケエビ属 Parapenaeusスベスベエビ属 ParapenaeopsisサルエビTrachysalambria 等では頭胸甲側面を縦走する「縫合線」が見られる。は2列の袋が多く枝分かれした「根鰓」である[1][2]

同定には額角の鋸歯、頭胸甲の溝や隆起、短毛の有無、交尾器の形等が手掛かりとなる[1][2]

生態

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エビの中では温暖な浅砂泥底の環境に適応した部類である。熱帯・温帯海域の波打ち際から水深400mの深海まで多くの種類が知られ、種類によって内湾・海岸・大陸棚等の適した環境に棲み分ける。完全な淡水生の種類はいないが、クルマエビ Marsupenaeus japonicusウシエビ属 Penaeusヨシエビ属 Metapenaeus 等の沿岸生種は汽水域や淡水域にも侵入する。サンゴ礁は現生エビ類の種類が最も豊富な環境の一つだが、サンゴ礁を主な棲息地としているクルマエビ類はカクレクルマエビ Heteropenaeus longimanus くらいである[2][3]

昼は砂泥底に潜り、眼だけを出して休息する。夜に砂泥底を歩き、貝類多毛類等の小動物を捕食する。藻類デトリタスも食べる。敵は魚類頭足類鳥類等で、食物連鎖では低次の消費者として重要な位置にある。

生活史

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本科を含む根鰓亜目は卵を保護せず、メスは交尾後に受精卵を海中に放出する。受精卵は海中を浮遊しながら発生し、孵化する子は親とは形態が異なった幼生で、これもしばらくプランクトンとして浮遊生活を送る。Chace(1960年)はクルマエビ科幼生の変態ノープリウス Nauplius - プロトゾエア(前期ゾエア) Protozoea - ゾエア Zoea(ミシス Mysis) - ポストラーバ Postlarva(後期幼生、マスティゴプス Mastigopus とも)と分類している。

これらの幼生の遊泳脚は前の体節から分化していく。孵化直後のノープリウス期の遊泳脚は後に成体の第1触角・第2触角・大顎、プロトゾエア期の遊泳脚は後の第1顎脚・第2顎脚外肢(大顎周囲の短い脚、さらにその外側の髭状構造)、ゾエア幼生期の遊泳脚は後の歩脚である。なおクルマエビ科のゾエア幼生はアミ類(Mysis)に似ることから特に「ミシス幼生」とも呼ばれる。

ゾエア幼生が成長・変態したポストラーバ幼生は腹部遊泳脚で遊泳し、それぞれの好む海底環境に定着した後に稚エビへ変態する[2]

利用

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大型種・中型種のほぼ全てが食用に利用される。西日本から東南アジアの沿岸地域ではウシエビ Penaeus monodon をはじめとしてバナメイエビ Litopenaeus vannameiクルマエビ Marsupenaeus japonicus 等の大型種の養殖・蓄養が盛んに行われる。小型・中型種でも、まとまった漁獲があるものは重要な漁業資源となる。食用以外には肉食魚の釣り餌飼料にも利用される[2]

下位分類

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49属289種が知られ、このうち現生種25属224種、化石種25属65種である[1][2][4][5]

化石種

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  • 属 †Albertoppelia Schweigert et Garassino, 2004 - 1種
  • 属 †Ambilobeia Garassino et Pasini, 2002 - 1種
  • 属 †Antrimpos Münster, 1839 - 15種
  • 属 †Bombur Münster, 1839 - 2種
  • 属 †Bylgia Münster, 1839 - 4種
  • 属 †Carinacaris Garassino, 1994 - 1種
  • 属 †Cretapenaeus Garassino, Pasini et Dutheil, 2006 - 1種
  • 属 †Drobna Münster, 1839 - 1種
  • 属 †Dusa Münster, 1839 - 5種
  • 属 †Hakelocaris Garassino, 1994 - 1種
  • 属 †Ifasya Garassino et Teruzzi, 1995 - 2種
  • 属 †Koelga Münster, 1839 - 2種
  • 属 †Libanocaris Garassino, 1994 - 1種
  • 属 †Longichela Garassino et Teruzzi, 1993 - 1種
  • 属 †Longitergite Garassino et Teruzzi, 1996 - 1種
  • 属 †Macropenaeus Garassino, 1994 - 1種
  • 属 †Macropetasma Stebbing, 1914 - 1種
  • 属 †Microchela Garassino, 1994 - 1種
  • 属 †Micropenaeus Bravi et Garassino, 1998 - 1種
  • ウシエビ属 Penaeus Fabricius, 1798 - 化石種は18種
  • 属 †Pseudobombur Secretan, 1975 - 1種
  • 属 †Pseudodusa Schweigert et Garassino, 2004 - 1種
  • 属 †Rauna Münster, 1839 - 1種
  • 属 †Rhodanicaris Van Straelen, 1924 - 1種
  • 属 †Satyrocaris Garassino et Teruzzi, 1993 - 1種

参考文献

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  1. ^ a b c d 内海冨士夫・西村三郎・鈴木克美『エコロン自然シリーズ 海岸動物』1971年発行・1996年改訂版 ISBN 4586321059
  2. ^ a b c d e f g 三宅貞祥『原色日本大型甲殻類図鑑 I』1982年 保育社 ISBN 4586300620
  3. ^ 奥谷喬司・楚山勇『山渓フィールドブックス サンゴ礁の生きもの』1994年 山と渓谷社 ISBN 9784635060493
  4. ^ World Register of Marine Species - Penaeidae
  5. ^ Sammy De Grave, N. Dean Pentcheff, Shane T. Ahyong et al. (2009)"A classification of living and fossil genera of decapod crustaceans (PDF) "Raffles Bulletin of Zoology, 2009, Supplement No. 21: 1–109, National University of Singapore