キブシ
キブシ | ||||||||||||||||||||||||
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キブシ(山梨県山中湖村・2007年4月)
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分類 | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
標準: Stachyurus praecox Siebold et Zucc. (1836)[1] 標準: Stachyurus praecox Siebold et Zucc. f. rotundifolius (Tuyama) Tuyama ex H.Hara (1954) [2] | ||||||||||||||||||||||||
シノニム | ||||||||||||||||||||||||
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和名 | ||||||||||||||||||||||||
キブシ(木五倍子)、 キフジ[1]、エノシマキブシ[1]、 ナンバンキブシ[1]、 ハチジョウキブシ[1]、マルバキブシ[2] |
キブシ(木倍子[8]・木五倍子[9]、学名: Stachyurus praecox または Stachyurus praecox f. rotundifolius)は、キブシ科キブシ属に属する雌雄異株の落葉低木。山地に生える。別名、キフジ、コメブシ[10]ともいう。和名は果実をヌルデの虫えいでつくる五倍子(ふし)の代用品として、黒色の染料(お歯黒)に用いたことから名付けられている[11][9]。また、花穂がフジの花に似ていることから「藤」となり、転訛したという説もある[10]。庭木や花材などに使われる。
分布と生育環境
[編集]日本固有種で、北海道西南部(渡島半島)、本州、四国、九州[9]、小笠原[要出典]に分布する。山地や丘陵、低地の明るい場所にふつうに生える[11][8][9]。先駆植物的な木本で、荒れ地にもよく出現する。生育環境は幅広く、海岸線から内陸の川沿いまで見られる。
特徴
[編集]落葉広葉樹の低木で[11]、樹高は3 - 5メートル (m) になる[9]。成長が早く、一年で2 mくらいは伸びる。樹皮は褐色から暗褐色で、若木は紫褐色で皮目が多く、生長すると皮目が筋状になる[9][12]。一年枝は、明褐色で無毛、稜がありややねじれる[12]。
花期は早春(3 - 4月)[11][9]。雌雄異株[9]。葉が芽吹く前に淡黄色の総状花序に、スズランの花をクリーム色にしたような可憐な花を密に垂れ下げてつける[9][10]。長さ4 - 10センチメートル (cm) になる花序は前年枝の葉腋から出て垂れ下がり、それに一面に花がつくので、まだ花の少ない時期だけによく目立つ[9]。花には長さ0.5ミリメートル (mm) の短い花柄があり、花は長さ7 - 9 mmの鐘形になり、雌花は雄花よりもやや小さい[9]。萼片は4個で内側の2個は大きく花弁状、花弁は4個[9]で花時にも開出せず直立する。雄花は淡黄色、雌花はやや緑色を帯びる。雌花、雄花とも雄蕊は8個、雌蕊は1個あるが、雌花の雄蕊は小さく退化している。
葉には長さ1 - 3 cmの葉柄があり、互生する[9]。葉身は長さ5 - 13 cm、幅3 - 5 cm、長楕円形から卵状楕円形で[11][9]、先端は鋭形または鋭尖形、基部は円形、切形または浅心形になり、葉縁には鋸歯がある。葉は大小変異が多く[8]、形にも変異があり、サクラのような形から、より細くて先細りになった葉までさまざまなものがある[10]。秋には葉の色が、クリーム色から黄色、赤色、赤褐色に変化させて紅葉するが、色が濁る傾向が強い[8][10]。
果期は6 - 7月[9]。果実は径8 mm前後になる広楕円形で[9]、緑色から熟すと黄褐色になる[11]。紅葉のころには、雌株には茶色になりかけた果実を見ることができる[10]。
葉が散ったあとには、来春花が開くための小さな花芽ができている[10]。冬芽は鱗芽で、芽鱗2 - 6枚に包まれる[12]。側芽が枝に互生し、葉芽は広卵形で枝と同色である[12]。花芽は穂になって垂れるのが特徴で、枝に多数つく[12]。葉痕の両側に托葉痕があり、維管束痕が3個ある[12]。
下位分類
[編集]葉や果実の形や大きさに変異が多く、多くの変種、品種がある。花がやや大きいものにハチジョウキブシがある[9]。
- ニシキキブシ Stachyurus praecox Siebold et Zucc. f. bicolor Sakata
- フクリンキブシ Stachyurus praecox Siebold et Zucc. f. marginatus Hiyama -栽培種。
- コバノキブシ Stachyurus praecox Siebold et Zucc. f. microphyllus (Nakai) H.Hara -本州の東海地方に分布する、葉が小型のもの。
- マルバキブシ Stachyurus praecox Siebold et Zucc. f. rotundifolius (Tuyama) Tuyama ex H.Hara -九州に分布する、葉が卵形の傾向のもの。
- ケキブシ Stachyurus praecox Siebold et Zucc. var. leucotrichus Hayashi -本州の東北地方の日本海側、北陸地方に分布する。日本海側の多雪地帯にのみ産する地方型で、葉の裏面の脈上や脈沿いに白色の軟毛が密生する。
- ハチジョウキブシ(エノシマキブシ) Stachyurus praecox Siebold et Zucc. var. matsuzakii (Nakai) Makino ex H.Hara -本州の関東地方南部、東海地方、伊豆諸島に分布する。海岸近くに生え、枝が太く花序と葉が長く、果実も大きい。
- ヒメキブシ Stachyurus praecox Siebold et Zucc. var. parviflorus Makino ex H.Hara -本州、四国、九州に稀に産する。葉がコバノキブシより小型のもの。
- ナンバンキブシ Stachyurus praecox Siebold et Zucc. var. lancifolius (Koidz.) H.Hara -本州の山口県、四国の南岸、九州、奄美大島、徳之島に分布する。ハチジョウキブシに似、葉は3角形で厚く、果実は大型になる。
- ナガバキブシ Stachyurus praecox Siebold et Zucc. var. macrocarpus (Koidz.) Tuyama ex H.Ohba (シノニム Stachyurus macrocarpus Koidz.) -小笠原に分布する。ハチジョウキブシより葉が厚く、果実はナンバンキブシくらいに大型になる。絶滅危惧IA類(CR)。
- ハザクラキブシ (シノニム Stachyurus macrocarpus Koidz. var. prunifolius Tuyama) -小笠原に稀に生育する。ナガバキブシと比べ、葉は薄く長楕円形になる。絶滅危惧IA類(CR)。
利用
[編集]植栽として、庭木や公園樹にして植えられる[11]。また花材などにも使われる[11]。
脚注
[編集]- ^ a b c d e 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Stachyurus praecox Siebold et Zucc. キブシ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月25日閲覧。
- ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Stachyurus praecox Siebold et Zucc. f. rotundifolius (Tuyama) Tuyama ex H.Hara キブシ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月25日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Stachyurus lancifolius Koidz. キブシ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月25日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Stachyurus praecox Siebold et Zucc. var. ovalifolius (Nakai) Ohba, comb. nud. キブシ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月25日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Stachyurus praecox Siebold et Zucc. var. matsuzakii (Nakai) Makino ex H.Hara キブシ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月25日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Stachyurus praecox Siebold et Zucc. var. lancifolius (Koidz.) H.Hara キブシ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月25日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Stachyurus matsuzakii Nakai キブシ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月25日閲覧。
- ^ a b c d 林将之 2008, p. 65.
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 西田尚道監修 学習研究社編 2009, p. 46.
- ^ a b c d e f g 亀田龍吉 2014, p. 23.
- ^ a b c d e f g h 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 42.
- ^ a b c d e f 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 122
参考文献
[編集]- 亀田龍吉『落ち葉の呼び名事典』世界文化社、2014年10月5日。ISBN 978-4-418-14424-2。
- 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、122頁。ISBN 978-4-416-61438-9。
- 西田尚道監修 学習研究社編『日本の樹木』 5巻、学習研究社〈増補改訂 ベストフィールド図鑑〉、2009年8月4日、46頁。ISBN 978-4-05-403844-8。
- 林将之『紅葉ハンドブック』文一総合出版、2008年9月2日。ISBN 978-4-8299-0187-8。
- 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、43頁。ISBN 4-522-21557-6。
- 佐竹義輔ほか 編『日本の野生植物 木本Ⅱ』平凡社、1989年2月。ISBN 4582535054。
- 茂木透 写真、高橋秀男・勝山輝男 監修『樹に咲く花:離弁花 2』山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑 4〉、2000年10月。ISBN 4-635-07004-2。