カラーインデックス
カラーインデックス (Colour Index International, 略称 C.I. ) は、英国染料染色学会 (The Society of Dyers and Colourists, SDC) と米国繊維化学技術・染色技術協会 (The American Association of Textile Chemists and Colorists, AATTC) によって共同で存立されているデータベースである。
6000 種類以上の色素・着色材(顔料と染料)および関連化合物について、効用や色合いに基づくカラーインデックス名 (Colour Index Generic Names) と、化学構造に基づくカラーインデックス番号 (Colour Index Constitution Numbers) が与えられ、それらの商品名・化学的性質・製造法などが掲載されている。なお、色素メーカーなどの刊行物やウェブサイトを見ても分かるように、正式な英語表記が日本語圏でも多く用いられる。
ほぼ同一の物質であるが、対イオンや結晶構造などが異なるものが採録されている場合は、Colour Index Generic Name の後ろにコロンと数字をつけて区別する。例えば、Colour Index Generic Name、Pigment Blue 15(銅フタロシアニン)には、他に 15:1 から 15:6 までの6種類[注 1]がある[1]。
歴史
[編集]1924年に SDC より第 1 版が発行されたが、この版では化合物に対してカラーインデックス番号のみが与えられていた。1956年の第 2 版より AATCC が参加し、化合物にカラーインデックス名が付与されるようになった[2][3]。1971年に第3版が発行され、2008年時点では第4版がオンライン利用可能となっている[4]。
カラーインデックス名
[編集]カラーインデックス名は Colour Index Generic Name の日本語の通称で、効用・色合い・番号で構成されている。例えば、「C.I. ピグメントホワイト1」のように、C.I. の後に効用と色合いを続け、末尾に番号が綴られる。
効用 (Application class) には、フード(食用色素)・ナチュラル(天然染料)など数種類がある。同じ化合物であっても、複数の効用がある場合は、複数のカラーインデックス名を持つ。例えば、インディゴは「C.I. バットブルー1」および「C.I. ピグメントブルー66」の 2 つに登録されている。
色合いは、イエロー・オレンジ・レッド・バイオレット・ブルー・グリーン・ブラウン・ブラック・ホワイト・メタルの計 10 種類に分類されている。ただしホワイトとメタルはピグメント(顔料)のみである。またこのうち、原色はイエロー・オレンジ・レッド・バイオレット・ブルー・グリーンの 6 つのみである。効用のうち、フルオレッセントブライトナー(蛍光増白剤)やデベロッパー(顕色剤)などには色合いは指定されていない。
カラーインデックス名の番号は登録された順序に従うため、基本的には小さい数字のものが古いことになる。「C.I. ピグメントホワイト1」は鉛白、「C.I. バットブルー1」はインディゴであり、伝統的なものに小さい数字が宛てがわれている。ただしこれは、形式的なものに過ぎず、実際には厳格に登録順に番号が宛てがわれる訳ではない。
Application class | 和名(意味) | 物質例 |
---|---|---|
Acid | アシッド(酸性染料) | C.I. アシッドレッド2 (メチルレッド) |
Azoic Coupling Component (A.C.C.) | アゾイックカップリングコンポーネント(アゾ染料のうち、ジアゾカップリングの基質となる側の化合物) | C.I. アゾイックカップリングコンポーネント1 (2-ナフトール) |
Azoic Diazo Component (A.D.C) | アゾイックジアゾコンポーネント(アゾ染料のうち、ジアゾニウムを有するまたは生成元となる化合物) | C.I. アゾイックジアゾコンポーネント112 (ベンジジン) |
Basic | ベーシック(塩基性染料) | C.I. ベーシックバイオレット14 (フクシン) |
Developer | デベロッパー(顕色剤) | C.I. デベロッパー5 (2-ナフトール) |
Direct | ダイレクト(直接染料) | C.I. ダイレクトレッド28 (コンゴーレッド) |
Disperse | ジスパース または ディスパース(分散染料) | C.I. ジスパースブルー1 (1,4,5,8- テトラアミノ-9,10-アントラキノン) |
Fluorescent Brightener | フルオレッセントブライトナー(蛍光増白剤) | C.I. フルオレッセントブライトナー41 (2-スチリルベンゾチアゾール) |
Food | フード(食用色素) | C.I. フードオレンジ5 (β-カロテン) |
Ingrain | イングレイン(先染染料) | C.I. イングレインイエロー1 (アルシアンイエロー) |
Leather | レザー(皮革染料) | |
Mordant | モルダント(媒染染料) | C.I. モルダントレッド11 (アリザリン) |
Natural | ナチュラル(天然染料) | C.I. ナチュラルイエロー10 (ルチン) |
Oxidation Base | オキシデーションベース(酸化染料) | C.I. オキシデーションベース31 (レゾルシノール) |
Pigment | ピグメント(顔料) | C.I. ピグメントメタル2 (銅) |
Reactive | リアクティブ(反応染料) | C.I. リアクティブレッド36 (ローズベンガルB) |
Reducing agent | レジューシングエージェント(還元剤) | C.I. レジューシングエージェント6(サホリン) |
Solvent | ソルベント(溶剤染料) | C.I. ソルベントイエロー34 (オーラミン) |
Sulphur | サルファー(硫化染料) | C.I. サルファーブラック1 |
Vat | バット(建染染料) | C.I. バットブルー1 (インディゴ) |
カラーインデックス番号
[編集]カラーインデックス番号は Colour Index Constitution Number の日本語の通称で、化学構造によって区分されている[4][5]。
番号 | 化学構造 |
---|---|
10000-10299 | ニトロソ |
10300-10999 | ニトロ |
11000-19999 | モノアゾ |
20000-29999 | ジアゾ |
30000-34999 | トリアゾ |
35000-36999 | ポリアゾ |
37000-37275 | アゾイック(ジアゾコンポーネント) |
37500-37625 | アゾイック(カップリングコンポーネント) |
40000-40799 | スチルベン |
40800-40999 | カロテノイド |
41000-41999 | ジアリールメタン |
42000-44999 | トリアリールメタン |
45000-45999 | キサンテン |
46000-46999 | アクリジン |
47000-47999 | キノリン |
48000-48999 | メチン |
49000-49399 | チアゾール |
49400-49699 | インダミン |
49700-49999 | インドフェノール |
50000-50999 | アジン |
51000-51999 | オキサジン |
52000-52999 | チアジン |
53000-53999 | 硫化染料 |
54000-54999 | ラクトン |
55000-55999 | ヒドロキシケトン |
56000-56999 | アミノケトン |
58000-72999 | アントラキノン |
73000-73999 | インジゴイド |
74000-74999 | フタロシアニン |
75000-75999 | 天然染料 |
76000-76999 | 酸化染料 |
77000-77999 | 無機顔料 |
採録されている物質の化学構造式のギャラリー
[編集]-
アゾイックジアゾコンポーネント
(2-クロロアニリン、C.I. 37000) -
アゾイックカップリングコンポーネント
(2-ナフトール、C.I. 37500) -
スチルベン誘導体
C.I.40000- -
メチン誘導体
C.I. 48000- -
インドフェノール誘導体
C.I. 49700- -
硫化染料
C.I. 53000- -
ラクトン誘導体
C.I. 54000- -
フタロシアニン誘導体
(銅フタロシアニン、C.I. 74160) -
無機顔料
C.I.77000-
脚注
[編集]注釈
- ^ つまり、「Pigment Blue 15」という文字列を含むものは、合計7種類ということである。
出典
- ^ “微細化顔料の製造方法および顔料着色剤 - 特開2008-50588”. www.j-tokkyo.com. 2012年1月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年11月17日閲覧。
- ^ A Abel, "The new colour index international of pigments and solvent dyes", Journal Surface Coatings International Part B: Coatings Transactions, 81, 77-85 (1998). doi:10.1007/BF02692335
- ^ Colour Index Heritage Edition
- ^ a b Colour Index International, Fourth Edition Online
- ^ CREPY M.N., "Dermatoses professionnelles aux colorants", Document pour le médecin du travail TA71 (2004). [1]