カボット環
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カボット環(カボットかん、(英)Cabot rings)とは、赤紫色の、細い環状ないし8の字型を呈する赤血球の封入体である。
カボット環は、細胞分裂の際の有糸分裂紡錘体の残存とされている[1][2]。
カボット環の生理的意義は不明であるが赤血球形成の障害(骨髄障害や骨髄へのストレスを含む)を反映すると考えられている。 [2][1]
関連する病態
[編集]カボット環は、様々な、赤血球形成が障害される病態でみられる[2]。
形態
[編集]末梢血塗抹検査では、カボット環は、赤血球内の、赤紫色に染まる細い糸からなる、輪状ないし8の字状の封入体として観察される。一つの赤血球に複数存在することがある[1]。
多染性赤血球[※ 2](網赤血球)にみられることが多い[2]。 また、赤芽球にみられることもある[1]。
歴史
[編集]カボット環は、1903年に米国の医師、リチャード・クラーク・カボット(Richard Clarke Cabot, 1868-1939)により初めて記載された [5] [6]。
脚注
[編集]- ^ 脾臓の異常な赤血球を除去する能力が失われるためと推測される。
- ^ 多染性赤血球とは、青みがかった色に染まる幼若な赤血球(網赤血球)であり、多染性赤血球の増加は赤血球形成の亢進や髄外造血を示唆する。なお、青みがかった色に染まるのは、幼若な赤血球はリボソームを多く含むためである。
出典
[編集]- ^ a b c d Marcel Bessis (2012). Blood Smears Reinterpreted. Springer Berlin Heidelberg. pp. 60,61. ISBN 9783642660948 2023年3月30日閲覧。
- ^ a b c d e Neslihan Erdem, et al. A hundred years after the first article, a recollection: Cabot ring. Korean J Intern Med. 2016 Jan; 31(1): 199. Published online 2015 Dec 28. doi: 10.3904/kjim.2016.31.1.199
- ^ Omar Raslan, Cyrus C. Hsia. Cabot rings in acute myeloid leukemia. Blood (2021) 137 (11): 1560. https://doi.org/10.1182/blood.2020009744
- ^ Teresa Scordino. Cabot ring. (2023年3月21日閲覧)
- ^ a b Greg Hapgood, Sukanya Roy. A mysterious case of Dr Cabot. British Journal of Haemotology. Volume162, Issue6 September 2013 Pages 719-719
- ^ Andrew Robbins and Mike Cadogan. Mar 7, 2022. Richard Clarke Cabot(2023年3月26日閲覧)
関連項目
[編集]- 末梢血塗抹検査
- 赤血球・網赤血球
- 骨髄・赤血球形成
- ハウエルジョリー小体
- 好塩基性斑点赤血球
- パッペンハイマー小体
- 脾臓
- 巨赤芽球性貧血
- 鉛中毒
- サラセミア
- 骨髄線維症
- 慢性骨髄性白血病
- 急性骨髄性白血病
- 骨髄異形成症候群