カップ式自動販売機
カップ式自動販売機(カップしきどうはんばいき)とは、単独の機械の中で飲料の原液をパイプからカップに注いで提供する[1][2]自動販売機である。
概要
[編集]自動販売機の中でも清涼飲料水を販売するものを飲料自販機[注 1]という。日本自動販売システム工業会[3]によると2022年12月末現在、飲料自動販売機の中で「コーヒー・ココア (カップ)」とされているものは128,000台設置されている。飲料自販機はカップ式とボトル、缶、紙パックを販売する容器入りに大別[注 2]される[4]。カップ式の中でも作り方によって、後に混ぜるか先に混ぜるかでポストミックスとプリミックスに種類が分かれ、プリミックス方式は現代のカップ式自動販売機ではあまり用いられていない[4]。ポストミックス、プリミックスは炭酸飲料を作る際にも用いられる[5]用語で、飲料の注出方式[6]を表す。取り扱いには、HACCP[7]やルートセールス[8]やQC(クオリティコントロール)クルー[8]による、食品衛生についての品質管理が必要とされる[9]。なお、カップ式自販機の正式名称がカップミキシング方式カップ飲料自販機であるとするものもあり[10]、この形式の自動販売機を指す名称は定まっていない。また他の自動販売機同様[11]、カップ式自動販売機を設置する場合、食品衛生法第52条第1条に基づいて喫茶店営業許可が必要となるが、屋内に設置され高度な機能[注 3]を有するものは届出が不要となる[12]。
歴史
[編集]紙コップ式の清涼飲料自動販売機が1926年のアメリカで誕生している[13]。日本では、カップ式自販機が喫茶店営業許可業種となる法規制が1972年に行われたこと[14]と、1972年時点で17,312台のカップ式自販機が普及していた。最古のカップ式自販機は、紀元前215年に寺院(神殿)[15][13]に設置されていた最古の自販機ともされる[4]古代エジプトの、てこの原理を応用したヘロンの聖水自販機である[4][16][15]。しかし、ヘロンが発明したものか、その師とされる紀元前エジプトの発明家クテシビオス(クテーシビオス、テシビアス[17][4])によるものかは正確にはわかっていない[4]。
1957年にはホシザキからジュース自動販売機が登場した[18]。1960年代初頭、「オアシス」などの噴水型ジュース自販機は人気を博したが衛生面が問題視された。
1963年に、日本コカ・コーラによってカップ部門の認定オペレーターの運営のために[19]日本自動販売株式会社が設立された。その頃の主力機種として主なメーカーはコーヒーのカップ式飲料自販機を用いた[4]。その背景には1961年の電気用品取締法の制定[4]、食品衛生法第7条、第10条の告示[4]、新三菱重工(現・三菱重工業)の米国のベンド社(The Vendo co.)との提携[4]があり、その翌年の1962年に製造された、スラントシェルフ型の半自動式販売機、V-63型が後の自販機大国日本に繋がったと国立科学博物館・産業技術史資料センターはしている[20]。
その後のカップ式自動販売機としての技術進歩としては、1981年のホット&コールド機[19]やカップミキシングシステム(CMS)[19]の導入が挙げられる。
現在では、高齢者の嚥下補助用のためにとろみ付きボタンを有した機種[21][22]や味調節ボタンでクリームや砂糖、コーヒーの濃さを指定できるものがある[22]。SDGsや食品ロスへの取り組みとも関係があるカップを用いたスマートジューサー[23]も登場している[24]。このように、現在に至るまで消費者に対する工夫がなされている[25]。
文化
[編集]ゴキブリなどの害虫がカップ式自販機の内部にいるとの噂があるが、対策のためにARテープ[26]やカップ式ベンダー[注 4]には、ゴキブリを寄せ付けないサニータという防虫鋼板[27]が使われており、前述のHACCPなどの取り組みによるオートサニテーション機能の導入[8]も行われている。また、長距離(約100キロメートル以上[28])のドライブにおいて高速道路が使用されることから、休憩の際に眠気を感じた際にサービスエリア・パーキングエリアなどでカフェインや糖分の摂取のためにコーヒー飲料を購入することがある[29]。
販売
[編集]日本国内
[編集]カップドリンクとしてコーヒー[22]、ココア[22]、紅茶[22]、各種ソフトドリンク[22]、フローズンドリンク[22]などが販売されている。
種類
[編集]メーカー | 機種 | 備考 |
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アペックス[30] | ||
APEX 85QVR | ※公式サイトに「カップ式自動販売機」として記載されている機種 | |
APEX 100RS | ||
APEX 100QRC | ||
APEX 120QREC | ||
APEX 120QVR/100QVR/80Q | ||
トーヨーベンディング [31] | ||
アドマイヤ | ミル挽き珈琲 本格派アドマイヤシリーズ | |
アドマイヤブルー | ||
The Rising Sun coffee × ミル挽き珈琲 | ミル挽き珈琲 コラボ機 | |
ミル挽き珈琲 フロアサイドカフェ | バラエティ自販機 | |
ミル挽き珈琲 アドスリム | ||
富士電機[32] | FXA2 | ※公式サイトにとして「カップ式飲料自動販売機」として記載されている機種 |
FX12 | ||
FX22 | ||
FR2AM コーヒー専用機 | ||
菊池ベンディングサービス[33] | ||
FX12 | 省エネに対応 | |
FR2AM | 簡単なメンテナンス | |
BHK480R | 粉末自動給茶機 | |
ジャパンビバレッジ[34] | ||
CST-B700MW | ※公式サイトの「カップ」に記載されている機種のみ | |
プレミアムバール | ||
Smart Cafés® | ||
コカ・コーラボトラーズジャパン[35] | ジョージアカフェ自販機 | |
その他 | 「高度な機能」の条件を満たす自動販売機の機種のリストについて(リストの更新) (PDF) も参照のこと。 |
日本国外
[編集]-
アメリカの職場に設置されたVeryfineの自動販売機
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ドイツのスーパーマーケットの入り口に設置されたカップ式コーヒー自動販売機
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カップ式コーヒー自動販売機
「カップ式自動販売機」などの用語そのものは、日本語である。主に職場用に使い捨て(複数回利用可能な)ベンディングカップが[注 5]自動販売機用に売られている[36][37]。Lavazza(伊:ラバッツア、ラバッツァ)の自動販売機部門[38]であるフラビア[39]やKLIX[38]といったオフィスコーヒーマシンでは、コーヒー、紅茶、緑茶の販売がされている[38]。
出典
[編集]注釈
[編集]脚注
[編集]- ^ “カップ式自販機ビジネスとは?特徴・メリット・デメリット!”. アポロ株式会社 (2014年9月5日). 2023年9月24日閲覧。
- ^ 富士電機リテイルシステムズ株式会社
- ^ “インフォメーション館”. 2023年9月25日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j 産業技術史歴史センター (PDF)
- ^ 全国飲料連合会 つくり方 p. 1 (PDF)
- ^ “用語解説”. hayakawa-sanki.co.jp. 2023年9月28日閲覧。
- ^ JAMA 2020年1月 (PDF)
- ^ a b c “品質へのこだわり”. 株式会社アペックス. 2023年9月25日閲覧。
- ^ JAMA (PDF)
- ^ “カップ式自販機ビジネス?特徴・メリット・デメリット!”. s-landusage.jp. 2023年9月29日閲覧。
- ^ 青森県庁 (PDF)
- ^ “安全対策”. vma.or.jp. 2023年9月29日閲覧。
- ^ a b サンデン
- ^ 日本自動販売協会 カップ式自販機に係る説明資料(2018年10月)
- ^ a b “自販機の歴史 自販機進化の歴史から、世界と日本が見えてくる”. 2023年9月25日閲覧。
- ^ 「世界最古の自販機は古代エジプト、神殿で聖水を売っていた?現存する日本最古は?」『朝日新聞』朝日新聞GLOBE+、2023年3月28日。2023年9月21日閲覧。
- ^ “フルードパワーの概要”. jfpa.biz. 2023年9月29日閲覧。
- ^ “ジュース自動販売機時代 1957”. 2023年10月4日閲覧。
- ^ a b c アペックス 開発のあゆみ
- ^ “56年前の「コカ・コーラ」半自動式自販機が未来技術遺産に選出 瓶コーラは今も健在”. デイリー新潮. (2018年9月2日) 2023年9月27日閲覧。
- ^ 林先生の初耳学
- ^ a b c d e f g “カップドリンク ラインナップ”. 2023年9月24日閲覧。
- ^ “Smart Juicer” (2018年9月2日). 2023年10月13日閲覧。
- ^ 「SDGsに取り組む自動販売機が「ジ アウトレット湘南平塚」で稼働開始!生搾りオレンジジュースに行列も」『川崎経済新聞』2023年9月24日。2023年10月13日閲覧。
- ^ シースルー小型カップ自販機
- ^ ニックス
- ^ アース製薬
- ^ “長距離運転のコツと疲れない運転の方法。ロングドライブ症候群の治し方”. チューリッヒ保険会社 (2019年4月4日). 2020年5月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年9月25日閲覧。
- ^ “ドライブの際には休憩をしよう!運転中の休憩タイミング”. applenet.co.jp. 2023年9月25日閲覧。
- ^ “カップ式自動販売機について”. 2023年9月28日閲覧。
- ^ “自販機ラインナップ”. トーヨーベンディング株式会社. 2023年9月28日閲覧。
- ^ “カップ式飲料自動販売機”. fujielectric.co.jp. 2023年9月28日閲覧。
- ^ “カップ式飲料自動販売機”. 菊池ベンディングサービス. 2023年9月29日閲覧。
- ^ “自動販売機一覧”. jbinc.co.jp. 2023年9月28日閲覧。
- ^ “ジョージアカフェ自販機”. ccbji.co.jp. 2023年9月28日閲覧。
- ^ “Vending cups”. huhtamaki.com. 2023年10月15日閲覧。
- ^ “Vending Cups”. benders.co.uk. 2023年10月15日閲覧。
- ^ a b c “ラバッツァがマース インコーポレイテッドからマースのドリンク事業(Flavia・Klixシステム)を買収することに合意”. マース インコーポレイテッド. 2023年9月25日閲覧。
- ^ “aboutFLAVIA”. lavazzapro.jp. 2023年9月25日閲覧。