清涼飲料水
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清涼飲料水(せいりょういんりょうすい)は、乳酸菌飲料、乳及び乳製品を除いたアルコール分を含まない(アルコール分1%未満)飲用の液体物のことである。
定義
[編集]食品衛生法に基づく通知(昭和32年9月18日厚発衛第413号の2)の第3の一(2)では、
とされる。
「食品衛生法質疑応答ハンドブック」(第一法規)[1]では、「トマトジュース、濃縮ジュース、凍結ジュース、ソーダ水、タンサン水、コーラ類、ジンジャエール、ミネラルウォーター、豆乳、ガラナ飲料等々およそ飲料はすべて清涼飲料水に該当する」と例示される。
一般的な意味では、水以外のソフトドリンク全般を指すが、通常以下のものは含めない。
人体などへの影響
[編集]コーラなどの炭酸飲料やスポーツドリンクには、砂糖、異性化糖(高果糖液糖・果糖ブドウ糖液糖・ブドウ糖果糖液糖)、果糖などの糖分が多く含まれているものがある。他の食品と同様に過剰摂取は健康への害があり、適正な量の摂取が望まれる。また、安易に代替品として人工甘味料を用いることにも別の問題があり、既に使用が禁止されている人工甘味料もあるため注意が必要である。
2016年10月、世界保健機関は、清涼飲料水に課税することで、同飲料水の消費を削減でき、肥満を減らし、2型糖尿病を減らし、虫歯も減らせるようになると発表した[2](肥満税も参照のこと)。カリフォルニア州バークレーでは「ソーダ税」を導入し、ソフトドリンクの消費は半減、水の消費量が増加してきた[3]。
おもなリスク上昇に関わる報道及び研究発表は、以下のとおり。
- 急激な大量摂取により糖尿病性ケトアシドーシス(通称ペットボトル症候群)を発症することがある[4][5]。
- 2000年代初めの報告によると女性ではコーラや果汁飲料(果汁100%未満)などの清涼飲料水の飲用量が多いほど糖尿病の発症リスクが高いとの報告がある。多量の清涼飲料水の摂取は、急激な血糖・インスリン濃度の上昇をもたらし、耐糖能異常、インスリン抵抗性にもつながる可能性が指摘されている[6]。
- 2001年ハーバード大学での研究はソフトドリンク1本ごとに肥満の危険率が1.6倍になると報告した[7]。
- 2003年の世界保健機関(WHO)発表によれば酢や炭酸、クエン酸やアスコルビン酸の消費量に比例して歯が侵食され酸蝕歯になると報告している[8]。
- 2003年健康日本21の発表では、甘味飲料の摂取頻度が多ければ虫歯のリスクを上げるので、特に砂糖が虫歯のリスクを高めるという知識を普及させ、摂取頻度を減らすことを国策として掲げている[9]。砂糖の多いソフトドリンクはWHO/FAOの2003年のレポートで肥満と虫歯が増加することとの関連が報告されている[10]。
- 2004年の厚生労働科学研究による診療ガイドラインによれば、砂糖の摂りすぎはカルシウムの排泄量を増やす[11]。
- 2011年の報道記事によればスイス・チューリッヒ大学病院のM.Hochuli氏らにより、糖入り甘味飲料の常用により心臓冠動脈疾患リスクを高める事が報告されている[12]。
- 2011年研究者の御堂による報告によれば、加糖された飲料を食事と共に摂取することの多い生活習慣の場合、結果的に摂取カロリーがオーバーし肥満を誘発する要因となる[13]。
- 2019年の報道によるとハーバード大学の研究者がアメリカの男女約12万人のデータを分析した結果では、砂糖の入った清涼飲料の消費が増えるほど心臓疾患による死亡リスクが高まり、乳がんと大腸がんのリスクも少し高まったことが分かった[3]。がんでは増加はなく、人工甘味料では1日4杯以上に限り心臓疾患のリスクが高まった[3]
過去の措置
[編集]- 1969年11月、日本では人工甘味料のチクロの使用が禁止された。チクロを使用した食品は市中から回収されることとなったが、一般の食品の回収期限が1970年2月であったのに比べ、清涼飲料水は健康への影響を考慮して同年1月と早められた[14]。
種類
[編集]以下のような種類に分類される[15]。
- 炭酸飲料
- 果実飲料
- コーヒー飲料
- コーヒー - 生豆換算で、コーヒー豆を5g以上使用したもの
- コーヒー飲料 - 生豆換算で、コーヒー豆を2.5g以上5g未満使用したもの
- コーヒー入り清涼飲料 - 生豆換算で、コーヒー豆を1g以上2.5g未満使用したもの
- 茶系飲料
- ミネラルウォーター
- ナチュラルウォーター - 特定水源から採取した地下水
- ナチュラルミネラルウォーター - 上記のうち、無機塩類が溶解した地下水
- ミネラルウォーター - ナチュラルミネラルウォーターを原水とし、ミネラルの調整等を行ったもの
- ボトルドウォーター - 上記以外のもの
- 豆乳類
- 野菜飲料
- トマトジュース - 絞り汁100%のもの
- トマトミックスジュース
- トマト果汁飲料 - 絞り汁50%以上100%未満のもの
- にんじんジュース - 絞り汁100%のもの
- にんじんミックスジュース
- 野菜ジュース - 野菜汁100%のもの
- 野菜果汁ミックスジュース - 野菜汁と果汁の含有量が、果汁よりも多いもの
- その他野菜飲料 - 上記以外で、野菜汁の含有量が果汁よりも多いもの
- スポーツ飲料
- 乳性飲料
- 乳性飲料 - 希釈しないストレートのもの
- き釈用乳性飲料
- その他清涼飲料
メーカー例
[編集]- アサヒ飲料
- キリンビバレッジ
- 日本コカ・コーラ
- サントリーフーズ
- 伊藤園
- 大塚製薬
- ポッカサッポロフード&ビバレッジ
- サンガリア
- ダイドードリンコ
- チェリオコーポレーション
- 神戸居留地
- ニットービバレッジ
以上の他にも多数の企業がある。
出典
[編集]- ^ 食品衛生法質疑応答ハンドブック(第一法規)
- ^ WHO urges global action to curtail consumption and health impacts of sugary drinks、2016年10月11日世界保健機関発表、2016年10月11日閲覧
- ^ a b c 松丸さとみ「加糖ジュース、「飲めば飲むほど死亡リスク高まる」米研究で」『ニューズウィーク日本版』2019年3月29日。2019年4月6日閲覧。
- ^ 大槻一博, 「若年肥満者の糖尿病性ケトアシドーシス昏睡-1.5Lペットボトル症候群-」『糖尿病』 35, 368, 1992, NAID 10004924283
- ^ 大濱俊彦、金城一志、知念希和 ほか、「みかん缶詰・アイスクリームの大量摂取を契機に清涼飲料水ケトーシスと同様の病態を来たした1例」『糖尿病』 52巻 3号 2009年 p.255-258, doi:10.11213/tonyobyo.52.255
- ^ 清涼飲料水(ソフトドリンク)と糖尿病発症との関連について| 現在までの成果 | 多目的コホート研究 | 独立行政法人 国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 予防研究部
- ^ Ludwig DS, Peterson KE, Gortmaker SL. "Relation between consumption of sugar-sweetened drinks and childhood obesity: a prospective, observational analysis." Lancet. 357(9255), 2001 Feb 17, pp505-8. PMID 11229668
- ^ Report of a Joint WHO/FAO Expert Consultation Diet, Nutrition and the Prevention of Chronic Diseases 2003
- ^ 健康日本21
- ^ Report of a Joint WHO/FAO Expert Consultation Diet, Nutrition and the Prevention of Chronic Diseases 2003
- ^ [ 尿路結石症 再発予防ガイドライン 厚生科学研究班編] (Minds 医療情報サービス)
- ^ 糖入り甘味飲料の常用で冠疾患リスク因子に悪影響 日経メディカルオンライン 記事:2011年9月4日 閲覧:2011年9月20日
- ^ 御堂直樹, 「日本に肥満者が少ないのは加糖飲料の摂取量が少ないためか?」『日本調理科学会誌』 44巻 1号 2011年 p.79-84, doi:10.11402/cookeryscience.44.79
- ^ 「まず清涼飲料水から 悪質者は営業停止も」『中國新聞』昭和45年1月15日 10面
- ^ 最新 ソフトドリンクス編集委員会・社団法人日本清涼飲料工業会・社団法人日本炭酸飲料検査協会 編『新版 ソフトドリンクス』光琳、東京、2003年。ISBN 4-7712-0022-X。