イソクロトン酸
表示
イソクロトン酸 Isocrotonic acid | |
---|---|
(2Z)-But-2-enoic acid | |
別称 (Z)-But-2-enoic acid (Z)-2-Butenoic acid cis-2-Butenoic acid cis-β-Methylacryllic acid (Z)-β-Methylacryllic acid | |
識別情報 | |
CAS登録番号 | 503-64-0 |
PubChem | 643792 |
ChemSpider | 558890 |
EC番号 | 207-973-2 |
ChEBI | |
| |
| |
特性 | |
化学式 | C4H6O2 |
モル質量 | 86.09 g mol−1 |
外観 | 無色の液体 |
匂い | 特異な刺激臭 |
密度 | 1,03 g·cm−3 [1] |
融点 |
15 °C, 288 K, 59 °F [2] |
沸点 |
169 °C, 442 K, 336 °F [2] |
水への溶解度 | 可溶 |
有機溶媒への溶解度 | アルコール及びエーテルに易溶[2] |
関連する物質 | |
関連するカルボン酸 | クロトン酸 (trans 異性体) アンゲリカ酸 (2-メチルイソクロトン酸) セネシオ酸 (3-メチルクロトン酸) |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
イソクロトン酸とは、(Z)-2-ブテン酸のことである。不飽和カルボン酸の1種であり、クロトン酸のシス型の幾何異性体に当たる。
性質
[編集]イソクロトン酸は、常温常圧において、ブラウン・シュガーのような香りを持つ油状の液体である。171.9 ℃で沸騰すると共に、構造が変化してクロトン酸へと変換する。封管中でイソクロトン酸を170〜180 ℃に加熱すると、クロトン酸への異性化が完了する。また、分子内に存在するC=C二重結合とC=O二重結合は共役二重結合であり、重合反応を起こしやすいため、市販品には重合禁止剤としてメキノールが添加される。
危険性
[編集]人体に有害であり、刺激性を持ち、咳などを引き起こす他、皮膚からも吸収され、皮膚に薬傷を生ずる場合もある[2]。
法規制
[編集]上記のように、イソクロトン酸はやや不安定な化合物である上に、日本の消防法では危険物第4類 第三石油類(非水溶性)に区分される[2]。
用途
[編集]イソクロトン酸は、メタクリル樹脂や医薬品原料の中間体となる。
誘導体について
[編集]ヴィルヘルム・ルドルフ・フィッティッヒとヒューゴ・エルトマンは、イソクロトン酸の二重結合の位置に関する構造異性体である3-ブテン酸のγ-フェニル置換体((Z)-スチリル酢酸)が脱水すると1-ナフトールを形成することを示した。これはナフタレンの性質を理解する上で重要である[3]。
- (Z)-(C6H5)CH=CHCH2COOH → 1-naphthol + H2O
出典
[編集]- ^ The Merck Index. An Encyclopaedia of Chemicals, Drugs and Biologicals. 14. Auflage, 2006, S. 894, ISBN 978-0-911910-00-1.
- ^ a b c d e “イソクロトン酸” (PDF). 神戸海難防止研究会. 2019年2月24日閲覧。
- ^ Fittig, Rudolph; Erdmann, Hugo (1883). “Synthese des α-Naphtols [Synthesis of α-Naphtol]” (German). Ber. Dtsch. Chem. Ges. 16 (1): 43-44. doi:10.1002/cber.18830160115.