西武E31形電気機関車
西武E31形電気機関車 | |
---|---|
E31形電気機関車 E34 (2007年9月1日 / 南入曽車両基地) | |
基本情報 | |
運用者 | 西武鉄道、大井川鐵道 |
製造所 | 西武所沢車両工場 |
製造年 | 1986年 - 1987年 |
製造数 | 4両 |
引退 | 2010年 |
主要諸元 | |
軸配置 | B-B |
軌間 | 1,067 mm |
電気方式 | 直流1500V(架空電車線方式) |
全長 | 10,950 mm |
全幅 | 2,740 mm |
全高 | 4,200 mm |
機関車重量 | 40.7 t |
台車 | DT20A |
動力伝達方式 | 1段歯車減速、吊り掛け式 |
主電動機 | MB-146D形×4基 |
歯車比 | 19:64=1:3.41 |
制御方式 |
重連総括制御、 抵抗制御、直並列2段組合せ制御 |
制御装置 | 電磁空気単位スイッチ式 |
制動装置 |
EL14AS直通兼自動空気ブレーキ、 手ブレーキ |
定格速度 | 33.0km/h (1時間定格) |
定格出力 | 520kW (1時間定格) |
定格引張力 | 5,300kg (1時間定格) |
西武E31形電気機関車(せいぶE31がたでんききかんしゃ)は、西武鉄道が使用していた車軸配置B-Bの小型直流用電気機関車である。
1986年(昭和61年)から翌1987年(昭和62年)にかけて、自社所沢車両工場で、E31 - E34の4両[注釈 1]が製造された。当時、同社が多く保有していた古典輸入機関車の置き換え用として製造された。
概要
西武鉄道に在籍した電気機関車として本形式は2代目であり、初代は1948年(昭和23年)に東芝で3両が製造された凸型機を模倣して、自社工場である所沢車両工場で1955年(昭和30年)に新製された1両が後年の改番に際してE31形の形式称号を付与されたものであったが、1963年(昭和38年)に他社に譲渡され、形式消滅している。
外観は西武鉄道の在来大型機関車であるE851形のデザインラインを継承して小型化したともいうべき形状で、側面機器室の上部には電気機関車には珍しく大型の窓が4つ並んでおり、その下には大型フィルターが付いている。
台車は1983年(昭和58年)まで国鉄飯田線で運用されていた80系電車の廃車発生品であるDT20A形を履いており、主電動機も351系で使用されていたものを転用した130kWの直流電動機を4基搭載し、吊り掛け式を採用している。釣り合い管の引き通しがあるため、重連総括制御が可能である。
塗装は、クリーム色に朱色の3本の帯というE851形の塗装を反転させたようなデザインになっている。また、電車用台車を使用したことで、ともすれば腰が低すぎ「短足」に見えるのを補う目的で、車体下部を黒く塗りつぶし、外観のバランスをとっている。
-
DT-20A形台車
(2007年9月1日 / 南入曽車両基地) -
E31同士のプッシュプル編成として留置される工事列車
(2007年5月2日) -
拝島線を走るE34牽引の工事列車
(2007年5月2日) -
E33の側面
(2009年10月4日)
運用
西武鉄道時代
E31形は当初から保線用工事列車の牽引を主目的として製造された[1]。理由として、終電と初電の間隔が短く保線基地が郊外にある西武鉄道の線路保守作業において、当時速度が遅いモーターカーで終電後に線路閉鎖して郊外から資材運搬し作業するのは非効率的で不適とされたが、電気機関車は速度が出て営業時間内に本線上を走行可能で工事列車として運行できるなど、効率的な運用面が有用と判断されたからである[1]。運用は多くの場合2両1組のプッシュプル編成で事業用として社線内の車両輸送や工事列車でバラスト散布車の牽引など、他に貨物輸送廃止以前はE851形の代走として貨物列車の牽引も行なっていた。しかし保線車両の急速な進歩により2006年度に西武新宿線、2008年度に西武池袋線の工事列車が相次いで廃止されたことで用途が狭められ、2000年代後半以降は新秋津駅からの車両輸送が主な用途となった[1]。
2008年(平成20年)10月4日、交換時期を迎えた機器類の調達が困難になったことを理由に、2008年度内に西武鉄道での運用を離脱すると、一部メディアで報道されたことがあった[2]。しかし実際には、2009年(平成21年)1月31日付で廃車となったE33[3]を除く3両は、2009年に入ってもそれまで通り車両輸送に使用されていた[4]。
本形式の置き換え用として、車両牽引用は2007年(平成19年)に101系を全電動車化した4両編成 (263編成)が登場し、工事列車(バラスト散布車牽引)は2008年度中にすべてモーターカーとなった。工事用途で使用していた貨車・ホキ81形とトム301形は2008年10月31日付で全車廃車となっている[5]。
運用終了の理由として他に「西武鉄道社内における電気機関車の操縦資格を持つ運転士の減少」[6]や「多数の車種を維持するのは困難」[7]が挙げられていた。
2010年(平成22年)3月15日、E31形全機の運用終了が発表され、同月28日にさよなら運転が横瀬 - 西武秩父間で実施された[8]。同年3月31日付でE31・E32・E34の3両が廃車となり、同社から機関車が消滅した[9]。唯一、E31[10]のみ静態保存されることが報道された[6]。
車両展示事例
本形式は通常横瀬車両基地に留置されていたが、同所で毎年10月上旬に開催される「西武トレインフェスティバル」の他、毎年8月下旬には南入曽車両基地に向かい、そこで開催される「南入曽車両基地 電車夏まつり」で展示車両として使用していた。
- 2008年8月29日の「南入曽車両基地 電車夏まつり」では、本形式の運転台が公開されたほか、公開された車両に「E31 小江戸 KOEDO」の特製ヘッドマークが装着された。
- 2009年10月4日の「西武トレインフェスティバル2009 in 横瀬」では、当時第1会場だった横瀬車両基地ではなく、第2会場の西武秩父駅の2番線側中線で展示された。
大井川鐵道時代
本形式は当初貨物輸送を行う私鉄への譲渡予定が発表されていた[11]が、実際は異なり貨物営業のない大井川鐵道へ2010年9月に3両 (E32 - E34)[10]が譲渡された[6][10][12]。
大井川鐵道向けには、同月10日から13日にかけて横瀬車両基地から新金谷車両区までトレーラーによる陸送で輸送されている[6][10]。大井川鐵道での用途は大井川本線でのSL急行の補助機関車(補機)である[7]。
しかし本機は同社に在籍する既存機より出力が低く、法令手続きや整備などの関係から運用開始時期が未定[7][12]とされ、長い間無車籍の入換用車両として使われるに留まっていた[注釈 2]。
譲渡から6年以上が経過した2017年(平成29年)4月30日のニコニコ超会議にて、同年度内の整備実施と営業運転投入が発表され、同年7月21日にE34が整備を終えて本線試運転を開始した。同10月15日のイベント列車よりE34が営業運転を開始した[13][14]。
E33は2017年11月8日に、E32は2018年(平成30年)3月23日に本線試運転を開始し、2019年(令和元年)6月現在、3両全機が運用に就いている。ただし運用は既存機と共通ではなく、SL急行の補機で6両編成(勾配の緩い新金谷 - 家山間は7両編成の実績あり)、単機では3両、重連では6両編成までを牽引可能としている。イベント時やSLの故障時には客車列車の牽引にも充当される。
-
千頭駅構内に留置中のE31形E33(2014年5月)
-
新金谷駅構内で14系客車と展示されるE31形E34(2016年10月)
脚注
注釈
出典
- ^ a b c “西武鉄道E31形ファイナルランへ。”. 鉄道ホビダス. ネコ・パブリッシング (2010年3月16日). 2010年11月9日閲覧。(インターネットアーカイブ)
- ^ “西武「E31形」年度内に引退へ 5日の横瀬車両基地イベントに登場”. MSN産経ニュース (2008年10月4日). 2008年10月31日閲覧。
- ^ 『鉄道ダイヤ情報』2009年7月号 交通新聞社
- ^ “伊豆箱根鉄道向け101系が回送される”. railf.jp (2009年4月25日). 2009年4月25日閲覧。
“RM NEWS【JR貨+伊豆箱根+西武】西武101系 伊豆箱根鉄道へ譲渡”. 鉄道ホビダス. ネコ・パブリッシング (2009年5月12日). 2009年5月12日閲覧。
“流鉄色となった新101系が出場”. railf.jp (2009年6月18日). 2009年6月25日閲覧。
“白色の西武101系,小手指まで回送される”. railf.jp (2010年2月23日). 2010年2月24日閲覧。 - ^ 『鉄道ダイヤ情報』2009年4月号 交通新聞社
- ^ a b c d “引退の西武機関車、現役復帰へ 大井川鉄道に3両譲渡 - マイタウン埼玉”. asahi.com(朝日新聞社) (2010年9月11日). 2010年9月11日閲覧。
- ^ a b c 電気機関車 第二の舞台へ - YOMIURI ONLINE(読売新聞) 静岡 2010年9月14日
- ^ 3月28日(日)「E31形電気機関車 さよならイベント」を開催します。 (PDF)
- ^ 『鉄道ダイヤ情報』2010年7月号 交通新聞社
- ^ a b c d “E31形3両大井川鐵道へ陸送される”. railf.jp (2010年9月13日). 2010年9月14日閲覧。
- ^ ネコ・パブリッシング『Rail Magazine』2010年4月号
- ^ a b 鉄道ニュース「大井川鐵道 西武鉄道よりE31形電気機関車を導入」 - 鉄道ホビダス(ネコ・パブリッシング)、2010年9月10日
- ^ 西武E31形電気機関車が営業運転デビューします。 大井川鐵道 2017年9月4日
- ^ 【大井川鐵道】もと西武のE34 営業運転開始 - 鉄道ホビダス RMニュース(ネコ・パブリッシング)2017年10月16日
外部リンク
- 編集長敬白:さようならE31。 - 鉄道ホビダス(インターネットアーカイブ)
- 編集長敬白:西武E31形 大井川鐵道へ。 - 鉄道ホビダス(インターネットアーカイブ)