Extensible Messaging and Presence Protocol
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Extensible Messaging and Presence Protocol (XMPP) (旧称 Jabber[1])は、オープンソースのインスタントメッセンジャーのプロトコルおよび、クライアント、サーバの総称である。
特徴
[編集]Jabber は Jabber 社が開発した XML ベースのプロトコルである XMPP を採用している。他のメジャーなインスタントメッセンジャーはその仕様もプロトコルも非公開となっているのが普通だが、Jabber はサーバもクライアントもオープンソースであり、その仕様は全て公開されている(オープン標準)。そのため、たとえばメールサーバと同じように、ドメイン名とサーバさえあれば自分専用の XMPP サーバを立ち上げることができる。この点でほかのインスタントメッセージと異なる。
他のインスタントメッセージングサービスのゲートウェイとなる機能も持つ。この機能を利用し、Jabber クライアントから AOL Instant Messenger、MSN Messenger(.NET Messenger Service)、Yahoo!メッセンジャー、IRC、ICQ などのネットワークにメッセージを送ることができる。ただしサービスを提供しているサーバによっては、日本語が通らないこともある。
Google Talk は、Jabber を核にしたものである。
歴史
[編集]ジェリミー・ミラーは1998年に Jabber テクノロジーに取り組み始め、1999年1月4日に jabberd の最初のバージョンをリリースした[2]。初期の Jabber コミュニティはオープンソースソフトウェアに焦点を当てており、主に jabberd の開発をしていた(2000年5月にバージョン1.0、2000年10月にバージョン1.2、2001年2月にバージョン1.4を発表)が、一番の成果は XMPP プロトコルを作ったことである。
1999年から2000年に開発された初期の Jabber プロトコルは XMPP の基礎となり、XMPP は RFC 3920 と RFC 3921 として公表されている。(IETF の XMPP Working Group による規格化の際に主に変わった部分は、伝送路の暗号化用に TLS の追加と認証用に SASL が追加されたところである。)XMPPはよく SIMPLE (インスタントメッセージングプロトコル) の競合相手とみなされる。SIMPLE は Session Initiation Protocol (SIP) プロトコルを基礎とする、インスタントメッセージングとプレゼンス通知の標準プロトコルである[3][4]。
XMPP をベースにした最初の IM サービスは Jabber.org であり、1999年以降連続稼動していて XMPP のアカウントをフリーで提供している[5]。1999年から2006年2月まではサービスに jabberd を使用していたが、それ以降は ejabberd に移行した。(どちらもフリーソフトウェアのサーバアプリケーションである。)2010年1月には Isode Ltd. によるプロプライエタリの M-Link へ移行する予定である[6]。
2005年8月に Google は Google Talk を発表した。これは VoIP と IM システムをあわせ持ち、インスタントメッセージングの機能に XMPP を使用していて、音声とファイル転送のシグナリングプロトコルのベースに XMPP を使用している。(最初のリリースにはサーバ間通信は含まれていなかったが、2006年1月17日にこの機能は有効になった。)[7]
2008年9月にシスコシステムズは Jabber, Inc. と商用プロダクトである Jabber XCP の開発者を買収した[8]。
2010年2月、ソーシャルネットワーキングサイトの Facebook は XMPP を通してチャット機能をサードパーティのアプリに開放した[9]。Facebook の開発者のサイトでは、次のように注意を呼びかけている。Facebook のチャットは内部で実際に XMPP サーバを稼働させているわけではなく、単にクライアントに XMPP のインターフェースを提供しているだけである。したがって、ユーザリストの編集など、サーバサイドの機能は XMPP 経由ではできないことがある[10]。
Google Talk だけでなく、多くの公共 IM サービスが XMPP を採用しており、Live Journal の LJ Talk[11] や Nokia の Ovi[12] などがそうである。さらに、企業の IM ソフトウェアプロダクトには、ネイティヴでは XMPP を使用できなくても XMPP へのゲートウェイを含むものがある。例えば、IBM Lotus Sametime[13][14]やMicrosoft Office Communications Server (OCS)[15]などである。
長所
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- 中央サーバを持たない : XMPP ネットワークの構造は電子メールに似ており、誰でも自分の XMPP サーバを立てることができるので、中央サーバが存在しない。
- オープン標準 : XMPP はインスタントメッセージングサービスとプレゼンス技術として XMPP という名前で IETF により承認された。XMPP の仕様は RFC 3920 と RFC 3921 として公表されている。これらを実装するのにロイヤルティーは一切かからず、特定のベンダーに縛られることがない。
- 歴史 : XMPP は1998年から利用されている。XMPP 標準のクライアント、サーバ、コンポーネント、ライブラリの実装は数多くあり、サン・マイクロシステムズや Google などの大きな企業に支えられている。
- セキュリティ : XMPP サーバは公共の XMPP ネットワークから切り離してもよく(例えば、会社でのイントラネットなど)、強固なセキュリティ(SASL や TLS を使用)が XMPP のコアに組み込まれている。伝送路の暗号化を促進するために、2009年10月30日まではXMPP Standards Foundationはxmpp.netに中間認証局の設置も行っており、XMPP サーバの管理者にフリーのデジタル証明書を提供していた。また、PGPによるエンドツーエンドの暗号化にも対応している。
- 柔軟性 : XMPP に加えてカスタムの機能を実装できる。相互運用性を保つために、一般的な拡張は XMPP Software Foundation により管理されている。IM 以上の機能を持つ XMPP アプリケーションとして、ネットワークマネージメント、コンテンツ配信、グループウェア、ファイル共有、ゲーム、リモートシステムの監視などがある。
短所
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- プレゼンスデータのオーバーヘッド : 一般にサーバ間通信の70パーセントがプレゼンスデータで[16]、そのうちの60パーセント近くが冗長であるので[17]、現在 XMPP はプレゼンスデータを複数のレシピエントへ転送する際に大きなオーバーヘッドがある。この問題を緩和する新しいプロトコルが考えられている[要出典]。
- インバンドによるバイナリデータの転送は非効率 : XMPP は単一の長い XML ドキュメントとして符号化されるので、バイナリデータはインバンドで転送する前にまず Base64 でエンコードしなければならない。このため巨大なバイナリデータ(例えば、ファイル転送など)はアウトオブバンドで転送するのがもっとも良く、インバンドによる通信は制御用に用いる。最も良い例は XMPP の拡張プロトコルであるJingle(XEP-0166)である。
サーバの分散とアドレッシング
[編集]XMPP ネットワークはクライアントサーバアーキテクチャを採用している(クライアントは直接通信しない)が、中央サーバを持たない。権威ある中央サーバが存在しないように設計されており、これはAOL Instant Messenger や Windows Live メッセンジャーとは対照的である。jabber.org で動作している公共の XMPP サーバが存在しており、ここに多くのユーザが登録されているので、この点などでよく混乱されるが、誰でも自分のドメインで自分の XMPP サーバを立てることができる。XMPP の標準のTCP ポートは5222である。
ネットワーク上のすべてのユーザはユニークな Jabber ID(よく省略され JID と呼ばれる)を持つ。ID のリストを持つ中央サーバを不要にするため、JID はメールアドレスのような構造を持っている。ユーザ名と、ユーザの存在するサーバのあるドメイン名があり、アットマーク(@)で仕切られる。例えば、username@example.com のようになる。
ひとりのユーザは複数の場所からログインするかも知れないので、クライアントでは更に追加でストリングを指定する。例えば、home、work、mobile など。このリソースで、ユーザのどのクライアントなのかを特定する。そしてこのリソースは、JID のあとにスラッシュに続けてリソース名を指定することで JID に含めることができる。リソースには優先度という数値を指定しても良い。例えば、あるユーザのモバイルアカウントの完全な JID は、username@example.com/mobile である。単に username@example.com に対して送られたメッセージはもっとも優先度の高いクライアントへ行くが、username@example.com/mobile に対して送られたものはモバイルクライアントのみへ行く。
メッセージ転送の仕組み
[編集]juliet@capulet.com が romeo@montague.net へチャットをしたいとする。Juliet と Romeo はそれぞれ capulet.com と montague.net にアカウントを持っている。Juliet がタイプしてメッセージを送ると、一連のイベントが以下のように続く。
- Juliet のクライアントがメッセージを capulet.com のサーバへ送る。
- capulet.com で montague.net がブロックされていると、メッセージは破棄される。
- capulet.comの サーバは montague.net へ向けてコネクションを張る。
- montague.net で capulet.com がブロックされていると、メッセージは破棄される。
- このとき Romeo が接続していなかったら、メッセージは後で送るために保存される。
- montague.net のサーバは Romeo にメッセージを送る。
Juliet | → | capulet.com | → | montague.net | → | Romeo |
他のプロトコルへの接続
[編集]XMPP の他の便利な特徴はトランスポートである。ゲートウェイという名前でも知られていて、他のプロトコルを使うネットワークにアクセスすることが可能になる。インスタントメッセージングのプロトコルだけでなく、SMS や電子メールなどのプロトコルでも可能である。マルチプロトコル対応のクライアントと違って、リモートコンピュータで動作する特別なゲートウェイサービスを通して通信することで、サーバレベルでアクセス出来るようにしている。ユーザは、これらのゲートウェイのひとつにネットワークのログインに必要な情報を提供して「登録」する。すると、そのユーザは、XMPP のユーザと同じようにそのネットワークのユーザと通信できる。つまり、XMPP を完全にサポートしたクライアントであれば、ゲートウェイが存在するどんなネットワークのアクセスにも使えるということである。クライアントに一切コードを追加する必要がなく、クライアントが直接インターネットに接続できる必要もない。こういった機能は、使っているプロトコルの利用規約に違反する可能性があるが、国によって何カ国かでは、そのような利用規約は法的拘束力を持たない。
関連項目
[編集]脚注
[編集]- ^ Jabber Inc. - About Us
- ^ Open Real Time Messaging System
- ^ "XMPP rises to face SIMPLE standard", Infoworld magazine, April 17, 2003 XMPP rises to face SIMPLE standard
- ^ "XMPP vs SIMPLE: The race for messaging standards", Infoworld magazine, May 23, 2003 Infoworld.com
- ^ Chatting Up the Chef Linux Journal March 1, 2003 by Marcel Gagné
- ^ “Jabber.org - XMPP Server Migration” (2009年8月12日). 2009年12月14日閲覧。
- ^ Burd, Gary (2006年1月17日). “XMPP Federation”. 2007年11月30日閲覧。
- ^ “Cisco Announces Definitive Agreement to Acquire Jabber”. 2010年1月2日閲覧。
- ^ “Facebook Chat Now Available Everywhere”. 2010年2月11日閲覧。
- ^ “Integrating with Facebook Chat”. 2010年2月21日閲覧。
- ^ Question FAQ #270
- ^ Ovi Contacts
- ^ "Lotus Sametime 7.5 Interoperates with AIM, Google Talk", eWeek, December 6, 2006 Eweek.com
- ^ "Lotus ships gateway to integrate IM with AOL, Yahoo, Google", Network World, December 6, 2006 Networkworld.com
- ^ "Unified Communications: Uniting Communication Across Different Networks", Microsoft Press Release, October 1, 2009 Microsoft.com
- ^ [Standards-JIG] Distribution of stanza types
- ^ [Standards-JIG] proto-JEP: Smart Presence Distribution
外部リンク
[編集]- RFC 3920 - Extensible Messaging and Presence Protocol (XMPP): Core
- RFC 3921 - Extensible Messaging and Presence Protocol (XMPP): Instant Messaging and Presence
- RFC 3922 - Mapping the Extensible Messaging and Presence Protocol (XMPP) to Common Presence and Instant Messaging (CPIM)
- RFC 3923 - End-to-End Signing and Object Encryption for the Extensible Messaging and Presence Protocol (XMPP)
- XMPP Standards Foundation
- Jabber User Guide - End user introduction to XMPP (archive)
- XMPP Case Studies
- Jabber.org (Free XMPP server of the XSF
- XMPP.JP