SRI農法
SRI農法(エスアールアイのうほう)とは、イネが成長するのに最善な環境(テロワール)を可能な限り与えた有機農業技術で農家負担の少ない低投入型(種子・肥料・農薬・水)の幼苗一本植え高収量稲作農法である。名称は「System of Rice Intensification(インテンシフィケーション)」(イネ強化法・イネ強化システム)の略称。
概要
[編集]SRIは乳苗・疎植と間断灌漑による土壌水分の制御が基本であるが、国と地域の気候風土によって独自の改良・普及された農法になっている。主な共通点は下記になる。
- SRI主原則(出典)[1][2][3][4]。
- 国内でも食糧増産時代に「米作日本一表彰事業」(朝日新聞農業賞事務局)が、1949年~1968年迄あり1トンの壁を越えた超多収技術が存在した[11][12][13][14][15]。
歴史
[編集]1961年、マダガスカルにイエズス会の神父アンリ・デ・ロラニエ(Henri de Laulanie)が赴任[16][17]。1981年、農村の若者向けの教育機関としてアンツィラベに農学校を設立。1983年、アンリ・デ・ロラニエ(Henri de Laulanie)氏がSRI農法を提案。1990年、NGO「Tefy Saina」を設立。1993年、コーネル大学の国際食料農業開発研究所長のノーマン・アポフ(Norman Uphoff)教授がマダガスカルで、焼畑農業に代わる食料生産手段を見出す。1994年、マダガスカルのラノマファナで導入。1995年、アンリ・デ・ロラニエ氏が死去。1997年、アジアで普及(南京農業大学・インドネシア農業研究開発庁・インドタミル・ナードゥ州)フィリピンからペルーまで二十ヶ国で導入。2001年、ラオスで開始[18]。2007年4月1日、J-SRI 研究会発足(東京大学大学院農学生命科学研究科 農学国際専攻国際情報農学研究室内)(会長 山路永司)[19]。2015年、ベトナムクアンナム省で導入[20][21]。
書籍
[編集]- 『稲作革命SRI―飢餓・貧困・水不足から世界を救う』ISBN 978-4532317287 日本経済新聞出版社 (2011年9月23日)
- 『乳苗稲作の実際―らくらく育苗で安定増収』ISBN 978-4540941276 農山漁村文化協会 (1995年2月1日)
- 『イネつくりの基礎』ISBN 978-4540191732 農山漁村文化協会 (2020年2月13日)[22]。
参考文献
[編集]- 溝口勝「SRIの決め手は間断灌漑-土壌水分の制御-にあり」『熱帯農業研究』第5巻第2号、日本熱帯農業学会、2012年、175-178頁、doi:10.11248/nettai.5.175、2020年7月2日閲覧。
- 鳥山和伸「SRI農法の持つ多収可能性とその科学的評価の試み」『熱帯農業研究』第5巻第2号、日本熱帯農業学会、2012年、170-174頁、doi:10.11248/nettai.5.170、2020年7月2日閲覧。
- 溝口勝 ほか、「低投入持続的稲作技術SRIの信憑性を確認するための土壌物理学的実証研究」KAKENHI-PROJECT-19658087
- 『ポスト緑の革命期のインドネシア・ジャワにおける低投入農法の普及過程―有機SRI(System of Rice Intensification)の普及事例の社会ネットワーク分析―』[23]。
- 『東南アジアにおける農業土木学的視点からのSRI栽培技術の比較と標準化手法の開発』[24]。
- 『栃木県農家水田において乳苗移植栽培した水稲の根系調査事例 -ファイトマーに基づく形態解析と出液速度による機能評価一』[25]。
- 山本由徳, 池尻明彦, 新田洋司「水稲乳苗の苗素質と活着, 初期生育に及ぼす育苗期間の光条件の影響」『日本作物學會紀事』第65巻第3号、日本作物学会、1996年、495-501頁、doi:10.1626/jcs.65.495、2020年7月2日閲覧。
- 星川清親, 佐々木良治, 長谷部幹「育苗条件を異にした水稲乳苗の生育と活着について」『日本作物學會紀事』第64巻第2号、日本作物学会、1995年、328-332頁、doi:10.1626/jcs.64.328、2020年7月2日閲覧。。
- 宮城県古川農業試験場 栽培部作物科,環境科, 宮城県農業センター 農産部 高生産水田科,稲作科「育苗用シートを利用した床土による乳苗育苗」『東北農業試験研究』、農研機構、1994年、2020年7月2日閲覧。
- 白土宏之, 北川寿, 小倉昭男, 中西一泰, 鈴木光則「種子付きマットを用いた水稲「箱なし苗」の作業性」『農作業研究』第44巻第1号、日本農作業学会、2009年3月、21-28頁、doi:10.4035/jsfwr.44.21、ISSN 0389-1763、NAID 130004519366、2020年4月10日閲覧。。
- 『現代の農業指導者-1-片倉権次郎論--「相対的なものの見方」で稲作増収技術を確立 』[26]。
脚注
[編集]- ^ “超稲作技術SRI” (2006年12月10日). 2020年3月25日閲覧。
- ^ “System of Rice Intensification An emerging alternative”. 2020年3月12日閲覧。
- ^ “ベトナムにおけるSRI農法─ 農民組織による有機SRI稲作の実践 ─”. 2020年3月23日閲覧。
- ^ “農家が自力で収穫高を劇的に伸ばす農法”. ウェブマガジンOur World (2013年1月7日). 2020年3月12日閲覧。
- ^ “乳苗(にゅうびょう)”. ルーラル電子図書館. 2020年3月23日閲覧。
- ^ “乳苗でラクラク田植え”. 2020年4月10日閲覧。
- ^ “乳苗移植技術導入の経営的効果”. 農研機構. 2020年4月10日閲覧。
- ^ “耐水紙を用いた乳苗育苗と本田生育”. 東北農業研究 (1993年). 2020年4月10日閲覧。
- ^ “水稲ロングマット水耕苗の育苗初期における保温効果”. 農産部 水田作研究室 生産工学研究室. 2020年4月10日閲覧。
- ^ “筑波・水稲ロングマット水耕苗ー酒々井の岩澤政行さん”. 農を語る 自然にやさしい不耕起栽培. 2020年4月10日閲覧。
- ^ “失われた「10アールあたり1トン」の米作技術 60年前の日本一農家を訪ねて”. 日本経済新聞社 (2014年10月22日). 2020年4月2日閲覧。
- ^ “「米作日本一」農家が教えてくれた〈水のかけひき〉(1)”. 農林水産・食品産業技術振興協会. 2020年4月2日閲覧。
- ^ “「米作日本一」農家が教えてくれた〈水のかけひき〉(2)”. 農林水産・食品産業技術振興協会. 2020年4月2日閲覧。
- ^ “米作日本一20年史 : 1949-1968”. CiNii. 2020年4月2日閲覧。
- ^ “増収こそ稲作経営の王道?経営者よ、現状に甘んじることなかれ?”. 農業技術通信社の農業総合専門サイト (2009年11月1日). 2020年4月2日閲覧。
- ^ “SRI農法の成立とマダガスカルの在来稲作”. マダガスカル研究懇談会. 2020年3月12日閲覧。
- ^ “SRI農法のマダガスカル国内外における普及と展開”. マダガスカル研究懇談会. 2020年3月12日閲覧。
- ^ “ラオスの米作り~SRIに挑戦!”. ADRA Japan (2010年8月12日). 2020年3月24日閲覧。
- ^ “J-SRI 研究会”. 東京大学大学院農学生命科学研究科 農学国際専攻国際情報農学研究室内. 2020年3月25日閲覧。
- ^ “クァンナム省山岳地域における食糧生産支援”. 公益財団法人 国際開発救援財団 FIDR(ファイダー) (2015年4月2日). 2020年3月12日閲覧。
- ^ “(事業申請書)”. 2020年3月24日閲覧。
- ^ “イネつくりの基礎”. 農山漁村文化協会. 2020年4月2日閲覧。
- ^ “ポスト緑の革命期のインドネシア・ジャワにおける低投入農法の普及過程 : 有機SRI (System of Rice Intensification)の普及事例の社会ネットワーク分析”. 国立国会図書館. 2020年4月6日閲覧。
- ^ “東南アジアにおける農業土木学的視点からのSRI栽培技術の比較と標準化手法の開発”. KAKEN. 2020年3月27日閲覧。
- ^ “栃木県農家水田において乳苗移植栽培した水稲の根系調査事例”. 根の研究. 2020年4月1日閲覧。
- ^ “現代の農業指導者-1-片倉権次郎論--「相対的なものの見方」で稲作増収技術を確立”. 国立国会図書館. 2020年4月2日閲覧。