Rapidus
種類 | 株式会社 |
---|---|
略称 | ラピダス |
本社所在地 |
日本 〒102-0083 東京都千代田区麹町4丁目1番地 麹町ダイヤモンドビル11階 北緯35度41分1.14秒 東経139度44分16.28秒 / 北緯35.6836500度 東経139.7378556度座標: 北緯35度41分1.14秒 東経139度44分16.28秒 / 北緯35.6836500度 東経139.7378556度 |
設立 | 2022年(令和4年)8月10日 |
業種 | 電気機器 |
法人番号 | 6010001228815 |
代表者 |
東哲郎(代表取締役会長) 小池淳義(代表取締役社長) |
資本金 | 73億4,600万円(2022年11月時点) |
決算期 | 12月31日 |
主要子会社 | Rapidus Design Solutions |
外部リンク | https://www.rapidus.inc |
Rapidus株式会社(ラピダス、英語: Rapidus Corporation)は、日本の東京都千代田区に本社を置く半導体メーカー[1]
2022年(令和4年)8月10日に個人株主12人により設立され[1]、設立時の代表取締役社長はウエスタンデジタル日本法人の社長を務めた小池淳義、取締役会長に東京エレクトロン前社長の東哲郎が就任した[2]。同年10月31日に日本の大手企業8社から73億円の出資を受けた[1]。工場は北海道千歳市に建設中であり、2027年3月にプロセス・ルールが2nm以下の先端ロジック半導体の開発・量産を行うことを目指しており、そのための経済産業省の研究開発委託先として同年11月11日に採択されている[2]。
社名はラテン語で「速い」を意味し、社長の小池淳義が命名した[3]。ロゴマークは富士山をイメージしている[4]。
概要
[編集]日本の半導体産業は1990年代以降に凋落したが、半導体が経済・社会のデジタル化を支え、安全保障上も重要であるとの認識が2020年代にかけて高まり、各国は性能向上と自国および友好国内での生産を重視するようになった[5]。第2次岸田内閣が2022年(令和4年)6月7日に発表した骨太の方針の中で、次世代先端技術の開発を行う民間企業への支援を検討することや、2020年代後半に次世代半導体の設計・製造基盤を確立することなどが盛り込まれた。
また、ラピダス設立の後、10月3日の第210回国会における岸田文雄首相の所信表明演説の中で、デジタルトランスフォーメーション(DX)に対して官民の投資を促し、日米連携による次世代半導体の技術開発・量産化を進めていくと表明していた。経済産業省は、5月に合意した日米の半導体協力基本原則に基づいた両国間での共同研究を見据え、次世代半導体研究を行う組織として「最先端半導体技術センター(LSTC)」を設立することを決定している。これにより研究開発拠点としてのLSTC、将来的な量産製造拠点としてのRapidus、両輪での日本の次世代半導体量産基盤の構築を目指すとしている[6]。
2022年の半導体不足に伴う補正予算によって、経済産業省および新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募を行ったポスト5G通信システムの基盤強化に関する先端半導体開発委託事業に応募し、11月8日に採択された。これにより、政府から700億円の支援を受けることとなった[7]。
2022年(令和4年)12月13日、IBMとの提携を発表。この時点では大量生産技術の確立していないGAAトランジスタプロセス(2nm世代プロセス)製品の製造技術をライセンス購入することとなった[8]。IBMは前年2nm製品の開発に成功していたが、自社では半導体の大規模生産は行っておらず、技術のライセンス供与先を探していた[9]。微細化技術を生かした製品開発では、韓国のサムスン電子が2022年にGAAトランジスタプロセス(3nm世代プロセス)で量産を開始、台湾の最大手台湾積体電路製造(TSMC)は2025年にGAAトランジスタプロセス(2nm世代プロセス)の量産化を発表しており、先行企業を追いかけることとなった[10]。
2023年(令和5年)に入ると、工場設立に向けた動きを開始し、2023年(令和5年)2月21日には、北海道千歳市の工業団地「千歳美々ワールド」に65ha(ヘクタール)の用地を借り受け第一工場設置を決定。そして、9月1日に当地において第一工場の起工式が行われ、工事が開始された。当面の目標は、2025年4月までに工場の建設を完了し、試作プロセスの稼働が目標であるとされている[11]。
歴史
[編集]2020年代
[編集]- 2022年
- 8月10日:創業個人株主12人で設立[1]。
- 10月31日:大手企業8社(トヨタ自動車、デンソー、ソニーグループ、日本電信電話、NEC、ソフトバンクグループ、キオクシア、三菱UFJ銀行)が合計73億円を出資[1]。
- 12月6日:Interuniversity Microelectronics Centre(imec)と協力覚書(MOC)を締結[12][13][14]。
- 12月13日:IBMと共同開発パートナーシップを締結[15][16]。
- 2023年
- 2月28日:第一工場の建設地を北海道千歳市に決定[17]。
- 4月25日:政府が2022年度第2次補正予算から2600億円の補助を決定[18]
- 9月1日:第一工場(IIM-1)の起工式を開催[19][20][21]。
2024年
[編集]- 1月22日:北海道千歳市に千歳事務所を開所[22]。
- 2月27日:ジム・ケラーが社長を務めるテンストレントとの協業を発表[23][24]。テンストレントはRapidusが公表した初の顧客となった[25]。また、テンストレントとは2024年2月に日本政府がラピダスの最先端半導体の設計や先端装置・素材技術の研究開発を担う技術研究組合最先端半導体技術センター[26](LSTC)に最大450億円を支援すると発表しており、その枠組みの中での協業となる。そして、テンストレントはRISC-Vでの次世代AIチップの生産開発を委託することを発表した[27]。
- 4月2日:経済産業省はラピダスに最大5900億円を追加支援すると発表。既に決まっている3300億円の補助をあわせると、支援額は累計1兆円近くに達する[28]。
- 4月11日:アメリカ合衆国カリフォルニア州シリコンバレーで新会社ラピダス・デザイン・ソリューションズを設立したと発表。アンリ・リシャールが社長に就任した。アメリカIT大手への売り込みのほか、顧客の要望に合わせた半導体をつくるためのソフトウェアやデザインの技術者の確保をめざす[29]。
- 6月5日:北海道大学と包括連携協定を締結[30]。
- 10月3日:セイコーエプソン株式会社千歳事業所内に後工程の研究開発機能を設置[31]
脚注
[編集]- ^ a b c d e 会社概要 ラピダス公式サイト(2024年6月10日閲覧)
- ^ a b 「10年の遅れを取り戻す」2nm世代の国産化へ、国内8社出資の製造会社 EE Times Japan(2022年11月11日)2024年6月10日閲覧
- ^ 「最先端半導体、スピードにこだわり続ける ラピダスの小池淳義社長」朝日新聞デジタル(2023年10月14日)2024年6月10日閲覧
- ^ 「“日の丸半導体”巻き返しへ日米でタッグ…5年後『2ナノ』量産化へ」テレ朝news(2022年12月13日)2024年6月10日閲覧
- ^ 経済産業省『半導体戦略(概略)』2021年6月
- ^ “次世代半導体の設計・製造基盤確立に向けて” (PDF). 経済産業省 (2022年11月11日). 2022年11月11日閲覧。
- ^ “【独自】「次世代半導体」の新会社を設立 NTT・キオクシアなどが出資へ”. テレ東BIZ. (2022年11月10日) 2022年11月11日閲覧。
- ^ “ラピダス、IBMと次世代半導体で提携 「2ナノ」へ一歩”. 日本経済新聞 (2022年12月13日). 2022年12月15日閲覧。
- ^ “米IBM、2ナノ半導体を開発 世界で最も小さく強力”. CNN (2021年5月7日). 2022年12月15日閲覧。
- ^ “TSMCもついにGAAへ、2nm世代プロセスで2025年に生産”. 日経クロステック (2022年6月23日). 2022年12月15日閲覧。
- ^ “ラピダス、千歳市に初の道内拠点=次世代半導体、準備本格化―来年1月にも”. 時事通信ニュース (2024年2月24日). 2024年2月24日閲覧。
- ^ 欧州研究機関と連携 国内8社出資「ラピダス」『朝日新聞』朝刊2022年12月7日(第13版)
- ^ 『西村経済産業大臣は、ベルギー王国フランダース政府ヤン・ヤンボン首相とimec及びRapidus(株)とのMOC署名式に出席しました』(プレスリリース)経済産業省、2022年12月6日 。2022年12月13日閲覧。
- ^ "Imec and Rapidus sign Memorandum of Cooperation to collaborate on advanced semiconductor technologies" (Press release) (英語). imec. 6 December 2022. 2022年12月13日閲覧。
- ^ 『IBMとRapidus、戦略的パートナーシップを締結、日本における先端半導体技術とエコシステムの共創を目指す』(プレスリリース)Rapidus、2022年12月13日 。2022年12月13日閲覧。
- ^ (英語)『IBM and Rapidus Form Strategic Partnership to Build Advanced Semiconductor Technology and Ecosystem in Japan』(プレスリリース)IBM、2022年12月13日 。2022年12月13日閲覧。
- ^ Rapidus株式会社の千歳市への立地決定に関する市長コメント 千歳市役所(2024年2月28日)2024年6月10日閲覧
- ^ “ラピダスに2600億円追加補助発表 半導体の国産化目指す”. 毎日新聞. (2023年4月25日) 2023年4月25日閲覧。
- ^ “酪農王国から半導体王国へ、Rapidusは北海道をどう変えるか”. EE Times Japan. 2024年2月29日閲覧。
- ^ “千歳でラピダス工場に着工 次世代半導体、本道から世界へ”. 北海道建設新聞社 - e-kensin (2023年9月1日). 2024年2月29日閲覧。
- ^ “Rapidus、最先端半導体工場「IIM-1」の起工式を北海道千歳市にて開催”. TECH+(テックプラス) (2023年9月4日). 2024年2月29日閲覧。
- ^ “Rapidus、千歳事務所を開所”. Rapidus株式会社. 2024年2月24日閲覧。
- ^ 日本放送協会 (2024年2月27日). “Rapidus AI半導体量産へ米スタートアップ企業と共同開発推進”. NHKニュース. 2024年2月27日閲覧。
- ^ “ラピダス、ケラー氏率いるテンストレントとAIアクセラレータで協業”. Bloomberg.com (2024年2月27日). 2024年2月27日閲覧。
- ^ 浦中美穂 (2024年2月27日). “ラピダス、テンストレント設計のAI半導体で製造受託へ”. Reuters. 2024年2月27日閲覧。
- ^ “技術研究組合最先端半導体技術センター”. www.lstc.jp. 2024年3月8日閲覧。
- ^ “Tenstorrent RISC-V and Chiplet Technology Selected to Build the Future of AI in Japan” (英語). Tenstorrent (2024年2月27日). 2024年3月8日閲覧。
- ^ “経産省、ラピダス追加支援 次世代半導体、最大5900億円”. 朝日新聞デジタル (2024年4月2日). 2024年4月2日閲覧。
- ^ “ラピダス、米に新会社設立 半導体、IT大手に売り込みへ”. 朝日新聞デジタル (2024年4月13日). 2024年4月14日閲覧。
- ^ 「大学内で最先端半導体の分析へ ラピダスと北海道大学が包括連携協定」朝日新聞デジタル(2024年6月5日)2024年6月10日閲覧
- ^ “Rapidus、最先端半導体(後工程)の研究開発機能をセイコーエプソン千歳事業所内に設置~パイロットライン工事安全祈願祭を開催~”. Rapidus株式会社. 2024年10月5日閲覧。
関連項目
[編集]- 最先端半導体技術センター
- プロセスルール
- Japan Advanced Semiconductor Manufacturing
- キオクシア
- マイクロンメモリジャパン
- 超LSI技術研究組合
- 垂直統合型デバイスメーカー