PROTEUS
PROTEUSはフランスで開発された、小型人工衛星に用いられる共通プラットフォーム(衛星バス)である。 その名称は「Plate-forme Reconfigurable pour l’Observation, les Télécommunications Et les Usages Scientifiques」(観測・通信・科学的な用途のための再構成可能なプラットフォーム)のアクロニムとなっている。
概要
[編集]PROTEUSはフランス国立宇宙研究センター(CNES)が主導してアエロスパシアル社衛星部門と共同開発した500kg~700kgクラスの低軌道用衛星バスであり、低コストかつ短納期で応用範囲の広い小型衛星プラットフォームの実現を目指して1996年に開発が始められた。この事業のパートナー企業契約はアルカテル・スペース社を経て現在はタレス・アレーニア・スペース社へ引き継がれている。衛星の組み立ては同社の生産拠点であるカンヌ・マンドリュー宇宙センターにおいて行われる。
PROTEUSは2001年に打ち上げられた海洋観測衛星JASON-1に最初に使用され、米仏共同のリモートセンシング衛星やヨーロッパ宇宙機関(ESA)の天文衛星COROTなど、科学研究を目的とする6基の衛星に採用された(2013年現在)。またESAが2008年に打ち上げたガリレオ計画の試験衛星2号機GIOVE-BもPROTEUSバスを元に製作された。
これらの衛星で軌道上の運用実績を積んだPROTEUSバスの技術は、さらに商用衛星の分野にも展開されている。2006年にグローバルスター社とタレス・アレーニア・スペースとの間で調達契約が結ばれた48基の通信衛星には、PROTEUSのサブシステムが使用されている[1]。この通信衛星の最初の6基は2010年に打ち上げられた。またトルコ国防省が2015年の軌道投入を計画している地球観測衛星Göktürk-1のプラットフォームにもPROTEUSの派生型が使用される[2]。
仕様
[編集]- 衛星全体
- 寸法:W1000×D1000×H1000(mm)
- 質量:300kg
- ペイロード:300kg
- データ通信系
- 通信周波数帯域:Sバンド
- インタフェース規格:CCSDSプロトコル
- テレメトリデータレート:690kbps
- データ記録量:2Gバイト
- 推進系
- ヒドラジンスラスター(1N) × 4
- 姿勢制御系
- 三軸姿勢制御方式
- 電源系
- ガリウム砒素太陽電池パネル:1100W
- ミッション機器給電能力:300W
- バッテリー:リチウムイオン二次電池
採用実績
[編集]衛星名称 | 打ち上げ機 | 打ち上げ日時(UTC) | 運用終了日時(UTC) | 備考 |
---|---|---|---|---|
JASON-1 | デルタ II | 2001/12/7 | 2013/7/2 | 海洋観測衛星 |
CALIPSO | デルタ II | 2006/4/28 | - | 地球観測衛星 |
COROT | ソユーズ2 | 2006/12/27 | 2012/11/2 | 天文衛星(系外惑星探索) |
GIOVE-B | ソユーズFG | 2008/4/26 | - | 測位衛星試験機 |
JASON-2 | デルタ II | 2008/6/20 | - | 海洋観測衛星 |
SMOS | ロコット | 2009/11/2 | - | 地球観測衛星 |
JASON-3 | - | 2015年予定 | - | 海洋観測衛星 |
関連項目
[編集]- MYRIADE - PROTEUSに引き続いて1998年より開発された小型衛星バス(150kg級)
脚注
[編集]- ^ Frederic Payot, "RECURRING SERVICE MODULES FOR FUTURE SCIENCE MISSIONS A PRELIMINARY REVIEW", 2007, pp.27, ヨーロッパ宇宙機関(ESA)ホームページ
- ^ "Programme kickoff for Turkey’s Göktürk satellite system, supplied by Telespazio and Thales Alenia Space", Thales Alenia Space Press Releases, 2010-9-7