LW (レーダー)
LWシリーズは、オランダのシグナール社(現在のタレス・ネーデルラント社)が開発した2次元レーダーのシリーズ。長距離での対空警戒を目的としたLバンドレーダーであり、「L」は空を意味する"Lucht"、「W」は警戒を意味する"wacht"に由来する[1]。
概要
[編集]第1世代としては、巡洋艦向けのLW-01と駆逐艦向けのLW-02が開発された。LW-01は、メーカー呼称ではSGR-114/06と称されており、11メートル×4.88メートルという巨大なアンテナによって、幅1度という鋭いビームを生成することができた。LW-02は、メーカー呼称ではSGR-114/12と称されており、アンテナは7.8メートル×4.25メートルに小型化されて、ビーム幅は2.2度となった。また、LW-02を元にアンテナ回転速度を変更した派生型としてLW-03も開発されたほか、カナダでは、LW-03のアンテナとAN/SPS-12の送信機を組み合わせたSPS-501が開発された[1][2]。
LW-02/03の後継とされたのがLW-04である。楕円形アンテナを採用しており、また、デジタル式の移動目標表示(MTI)技術が導入されている。最大探知距離は、レーダー断面積2m²の目標に対して222km(高度16,764m)であった[1]。
LW-05は発表されておらず、LW-06およびLW-07は地上用である[1]。
第3世代機として発表されたのがLW-08である。LW-07と同じパルス圧縮技術が適用されており、35,69マイクロ秒のパルスから、短距離分解能を重視して、長いチャープを伴う1マイクロ秒のパルスに圧縮されている。また、本機のピーク出力は150キロワットと比較的低いにもかかわらず、平均出力は5.1キロワットとかなり高い部類に属する。この平均出力は、パルス幅1マイクロ秒、PRF 1,000ppsの通常のレーダーであれば、ピーク出力5.1メガワットに相当するものである。最大探知距離は、レーダー断面積2m²の目標に対して269km(高度25,900m)、最低探知距離は2kmであった。また、探知可能な目標の最大速度はマッハ5である[1][2]。
なお、カナダ海軍ではSPQ-502として制式化されているほか、民生用の航空交通管制レーダーとしてはLAR-2と称されている。インドの国営軍需メーカーであるバーラト・エレクトロニクスにおいてもRAWL-02の名称でライセンス生産され、インド海軍の艦船にも広く採用されている[3][4]。また、イギリスの1022型レーダーは、本機の送信機と、マルコーニ社製のより鋭いビームを形成できるアンテナを組み合わせたものである[2]。
LW-02 | LW-08 | |
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周波数 | Lバンド | |
ビーム幅 | 2.2度 | |
ピーク出力 | 500kW | 150kW |
ゲイン | 31dB | 30dB |
パルス幅 | (a) 2マイクロ秒 (b) 5マイクロ秒 |
(a) 35マイクロ秒 (b) 69マイクロ秒 |
PRF | (a) 500pps/(b) 250pps | (a) 1,000pps/(b) 500pps |
最大探知距離/高度 | 185km/18,000m (航空機に対して) |
269km/25,900m (RCS 2m²の場合) |
精度 | n/a | 測角:2.2度 測距:91m |
アンテナ回転速度 | 1-10rpm | 7.5/15rpm |
アンテナ寸法 | 7.8×4.25m | 7.9×4.85m |
アンテナ重量 | 953kg | 1,500kg |
採用国と搭載艦
[編集]- コルテノール級フリゲート(LW-08)
- インヴィンシブル級航空母艦(1022型)
- 82型駆逐艦(1022型; 965型から換装)
- 42型駆逐艦(1022型; 965型から換装)
- 空母「ヴィラート」(RAWL-02)
- ラージプート級駆逐艦(RAWL-02)
(「ラーナ」「ランジート」のみ) - デリー級駆逐艦(RAWL-02)
- コルカタ級駆逐艦(RAWL-02)
- ニルギリ級フリゲート(RAWL-02)
- ゴーダーヴァリ級フリゲート(RAWL-02)
- ブラマプトラ級フリゲート(RAWL-02)
- カモルタ級コルベット(RAWL-02)
- アフマド・ヤニ級フリゲート(LW-03)
- リバー級護衛駆逐艦(LW-02)
- 空母「カレル・ドールマン」(LW-01)
- デ・ロイテル級巡洋艦(LW-01)
- ホラント級駆逐艦(LW-02)
- フリースラント級駆逐艦(LW-02)
- ファン・スペイク級フリゲート(LW-02→03)
- コルテノール級フリゲート(LW-08)
- カレル・ドールマン級フリゲート(LW-08)
- ヤコブ・ファン・ヘームスケルク級フリゲート(LW-08)
- 空母「ボナヴェンチャー」(AN/SPS-12→SPS-501)
- イロクォイ級ミサイル駆逐艦(SPS-501→SPQ-502)
- エリ級フリゲート(LW-08)
- ハッランド級駆逐艦(LW-03)
- ナレースワン級フリゲート(LW-08)
- カレル・ドールマン級フリゲート(LW-08)
- ヤコブ・ファン・ヘームスケルク級フリゲート(LW-08)
- ハンブルク級駆逐艦(LW-04)
- ブランデンブルク級フリゲート(LW-08)
- リアンダー級フリゲート「カンタベリー」(LW-08)
- デ・ロイテル級巡洋艦
- 「アギーレ」(LW-02)
- 「アルミランテ・グラウ」(LW-08)
- カレル・ドールマン級フリゲート(LW-08)
- カレル・ドールマン級フリゲート(LW-08)
- フリゲート「アウンゼーヤ」(RAWL-02)
- チャンシッター級フリゲート(RAWL-02)
参考文献
[編集]- ^ a b c d e f Norman Friedman (1981). Naval Radar. Naval Institute Press. pp. 212-213. ISBN 9780870219672
- ^ a b c d Norman Friedman (1997). The Naval Institute guide to world naval weapon systems 1997-1998. Naval Institute Press. pp. 313-315. ISBN 9781557502681
- ^ タレス・ネーデルラント社公式サイト(フランス語)
- ^ Defenseworld.net(英語)