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LM-99

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
LM-99(71-134)
ЛМ-99
LM-99AV(サンクトペテルブルク
2008年撮影)
基本情報
製造所 ペテルブルク路面電車機械工場
製造年 1999年 - 2008年
製造数 325両
主要諸元
編成 単車(ボギー車
軌間 1,524 mm
電気方式 直流550 V
架空電車線方式
最高速度 75.0 km/h
車両定員 130人(LM-99K)
130人(LM-99AV)
118人(LM-99AVH)
車両重量 19.5 t
全長 15,000 mm
全幅 2,550 mm
全高 3,080 mm
車輪径 710 mm
固定軸距 1,940 mm
台車中心間距離 7,500 mm
主電動機 DK-259E3(LM-99K)
TAD-21M(LM-99AV)
ATD-3.2(LM-99AVH)
主電動機出力 50 kw
出力 200 kw
制御方式 サイリスタ位相制御(LM-99)
抵抗制御(LM-99K)
VVVFインバータ制御IGBT素子)(LM-99AV、LM-99AVH)
制動装置 発電ブレーキドラムブレーキ電磁吸着ブレーキ
備考 主要数値は[1][2][3][4][5][6][7]に基づく。
テンプレートを表示

LM-99ロシア語: ЛМ-99)は、かつてロシア連邦に存在した輸送用機器メーカーのペテルブルク路面電車機械工場が旧ソビエト連邦諸国向けに展開していた路面電車車両71-134という形式番号も付けられている[1][2][3][4][5][6]

概要

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1両でも走行可能な、ループ線が存在する路線に対応した片運転台のボギー車(単車)。形式名の「99」は1999年に最初の試作車が製造された事が由来となっている。車体は鋼製で、先頭部分は繊維強化プラスチックによって作られている。車内にはクッションが内蔵された1人掛けの座席が設置されており、配置は1列 + 1列、1列 + 2列から選択可能である。乗降扉は右側面に設置され、仕切りによって客室と区切られた運転室には独自の乗務員扉が存在する[8][5][6]

主電動機は各台車に2基設置され、自在継手や歯車によって車軸に動力が伝えられる直角カルダン駆動方式が用いられる。後述の通り制御装置はサイリスタ位相制御抵抗制御VVVFインバータ制御の3種類が採用されており、VVVFインバータ制御方式以外の車種は連結運転時に前方の車両から一括で全車両の操作が可能な総括制御に対応している。運転席からの速度制御には全車種とも間接自動制御が用いられる。制御装置は電気ブレーキディスクブレーキ、非常用の電磁吸着ブレーキが搭載されており、ディスクブレーキは空気式・電動式双方から選択可能である[8][5][6]

車種

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  • LM-99(ЛМ-99、71-134) - 1999年に1両が製造された試作車。電機子チョッパ制御サイリスタ位相制御に対応した電気機器を搭載していたが、製造当時この仕様を用いた車両の需要が見込めず、量産される事はなかった[9][2]
  • LM-99K(ЛМ-99К、71-134К) - ペテルブルク路面電車機械工場の主要な顧客であったサンクトペテルブルク市サンクトペテルブルク市電)からの要請に伴い、制御装置に旧来の抵抗制御を用いた車種。他にも2段ばねを搭載した台車を搭載した他、側面に3箇所設置された乗降扉[注釈 1]を運転室から個別に開閉可能な機能が設置された。機器が異なる以下の2種類の形式が2007年まで製造された[9]
    • LM-99K(ЛМ-99К) - ディスクブレーキや乗降扉、ワイパーの可動に圧縮空気を用いた形式。2000年から製造が始まり、サンクトペテルブルク市電を始めとしたロシア各地の路面電車に導入された。当初の座席配置は1列 + 1列であったが2001年以降1列 + 2列に変更された他、台車の梁の破損が相次いだため2002年からは改良型の台車が用いられた[9]
    • LM-99KE(ЛМ-99КЭ) - ディスクブレーキや乗降扉、ワイパーが電動式に変更された形式。71-134Kと並行する形で2002年から製造が行われた[9]
  • LM-99A(ЛМ-99А、71-134A) - VVVFインバータ制御方式IGBT素子)に対応した電気機器を採用した形式。乗降扉も前方に1箇所(片開き)追加された。2002年から2008年まで以下の形式が製造された[1][4]
    • LM-99AV(ЛМ-99АВ) - 2004年から2005年まで製造された形式。サンクトペテルブルク市電ではLM-99Kと共に、導入当初は緑色を基調とした塗装だった事から「バッタ(Кузнечик)」と言う愛称で呼ばれている[1][10]
    • LM-99AVN(ЛМ-99АВН) - 2005年から生産が始まった車両は車体設計の見直しが行われ、前面形状はサンクトペテルブルクインダストリアルデザイナーのデニス・ヴィッセルスキー(Денисом Висельским)[注釈 2]が手掛けた近未来的を意識したデザインに変更された他、乗降扉にプラグドアが採用され、後方の扉が両開き式になった。黄色黒色を用いた初期の塗装案にちなみ、「ミツバチ(Пчёлка)」と言う非公式な愛称でも呼ばれる事もある。ロシア各地の路面電車に導入されたが、そのうちサンクトペテルブルク市電に導入された最初の車両は車体下部に赤色の波打つ模様が描かれた独自の塗装を纏っていたものの、市電側の要望に基づき以降の車両は他車と同様のデザインに改められた[11][7][10]
    • LM-99AE(ЛМ-99АЭ) - LM-99AVを基に、ディスクブレーキや乗降扉、ワイパーの可動が全電動式に変更された形式。2003年以降モスクワ市電カザン市電に向けて製造が行われ、2005年以降に製造された車両はLV-99AVNに準じた車体構造に変更された[12][7]
    • LM-99AEH(ЛМ-99АЭН) - LM-99AVNを基に、ディスクブレーキや乗降扉、ワイパーの可動を全電動式とした形式。

導入都市一覧

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LM-99Kサンクトペテルブルク
登場当初の塗装(2007年撮影)
LM-99AVHサンクトペテルブルク
初期車の塗装(2006年撮影)

LM-99が導入された都市は以下の通り。このうちモスクワ市電カザン市電では機器の故障頻発に加えて超低床電車導入によるバリアフリー化の進行から置き換えが進んでおり、前者については他都市への譲渡が積極的に行われている[2][3][4][7][12][13]

形式 都市 導入車両数
LM-99 ロシア連邦 サンクトペテルブルク
(サンクトペテルブルク市電)
1両
LM-99K ロシア連邦 サンクトペテルブルク
(サンクトペテルブルク市電)
77両
カザン
(カザン市電)
15両
コロムナ
(コロムナ市電)
14両
オシンニキロシア語版
(オシンニキ市電)
3両
コムソモリスク・ナ・アムーレ
(コムソモリスク・ナ・アムーレ市電)
2両
スモレンスク
(スモレンスク市電)
2両
ノヴォシビルスク
(ノヴォシビルスク市電)
1両
サラヴァト
(サラヴァト市電)
1両
ハバロフスク
(ハバロフスク市電)
1両
カザフスタン オスケメン
(オスケメン市電)
1両
LM-99E ロシア連邦 ノヴォシビルスク
(ノヴォシビルスク市電)
2両
サンクトペテルブルク
(サンクトペテルブルク市電)
1両
LM-99AV ロシア連邦 サンクトペテルブルク
(サンクトペテルブルク市電)
33両
LM-99AVH ロシア連邦 サンクトペテルブルク
(サンクトペテルブルク市電)
79両
ハバロフスク
(ハバロフスク市電)
10両
オシンニキロシア語版
(オシンニキ市電)
1両
LM-99AE ロシア連邦 モスクワ
(モスクワ市電)
46両
カザン
(カザン市電)
20両
LM-99AEH ロシア連邦 ケメロヴォ
(ケメロヴォ市電)
6両
タガンログ
(タガンログ市電)
6両
トヴェリ
(トヴェリ市電)
2両

脚注

[編集]

注釈

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  1. ^ 中央部の2箇所は両開き、後方の1箇所は片開きである。
  2. ^ LM-99開発時のデザイン入札にも参加していたが、その際には別のデザイナーの設計が採用された。

出典

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  1. ^ a b c d Подвижной состав”. ГЭТ Электротранспорт Санкт-Петербурга. 2020年4月10日閲覧。
  2. ^ a b c d ЛМ-99 (71-134)”. Трамвайные вагоны – Твой Транспорт. 2018年1月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年4月10日閲覧。
  3. ^ a b c ЛМ-99К”. Трамвайные вагоны – Твой Транспорт. 2018年1月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年4月10日閲覧。
  4. ^ a b c d ЛМ-99А”. Трамвайные вагоны – Твой Транспорт. 2018年1月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年4月10日閲覧。
  5. ^ a b c d Модель ЛМ-99К”. ЛенПромОборудование. 2020年4月10日閲覧。
  6. ^ a b c d Модель ЛМ-99АЭ”. ЛенПромОборудование. 2020年4月10日閲覧。
  7. ^ a b c d Игорь Садовников (2019年). “История казанского трамвая ЛМ-99АЭ”. Грузовик Пресс. 2020年4月10日閲覧。
  8. ^ a b ПТМЗ (2004年). “70 лет”. pp. 11. 2020年4月10日閲覧。
  9. ^ a b c d ЛМ-99К (71-134К и 71-134КЭ)”. Трамвайные вагоны – Твой Транспорт. 2018年2月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年4月10日閲覧。
  10. ^ a b «Слон» из трамвайного парка приветствует Всемирный день дикой природы”. Горэлектротранс (2020年3月3日). 2020年4月10日閲覧。
  11. ^ Олег Бодня (2007-9/10). “Как создавалась "Пчёлка"”. Газета "Омнибус". 2017年7月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年4月10日閲覧。
  12. ^ a b Игорь Садовников (2019年7月23日). “"Катится-катится голубой вагон..." о завершении эпохи ЛМ в Москве”. Яндекс Дзен. 2020年4月10日閲覧。
  13. ^ Екатерина Антоненкова (2016年8月12日). “В Орске и Новотроицке появятся 22 трамвая из Москвы”. Урал56.Ру. 2020年4月10日閲覧。