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HD 74423

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
HD 74423
HD 74423
TESSのデータによるHD 74423の光度曲線
TESSのデータによるHD 74423の光度曲線
星座 とびうお座
見かけの等級 (mv) 8.61[1]
分類 ACV[2]またはDSCT[3]
位置
元期:J2000.0[1]
赤経 (RA, α)  08h 40m 17.9854378935s[4]
赤緯 (Dec, δ) −64° 50′ 16.841318788″[4]
固有運動 (μ) 赤経 -9.719±0.020 ミリ秒/年[4]
赤緯 11.732±0.016 ミリ秒/年[4]
年周視差 (π) 2.1018 ± 0.0150ミリ秒[4]
(誤差0.7%)
距離 1550 ± 10 光年[注 1]
(476 ± 3 パーセク[注 1]
HD 74423の位置(赤丸)
物理的性質
半径 (主星)3.3±0.1 R
(伴星)3.2±0.1 R[5]
質量 (主星)2.1±0.1 M
(伴星)2.0±0.1 M[5]
スペクトル分類 A1V[2]
A7VkA0mA0[6]
有効温度 (Teff) (主星)7900±150 K
(伴星)7600±200 K[5]
年齢 8000万 歳[3]
他のカタログでの名称
CD -64 342[1], TYC 8934-1662-1[1], Gaia DR3 5273389197113086080[1]


Template (ノート 解説) ■Project

HD 74423は、太陽系から見てとびうお座の方向約1,550 光年の距離にある恒星9等星。2020年に「伴星による潮汐相互作用によって主星の形状が涙滴のように変形し、変形した片側の部分だけが大きく脈動している」とする説が発表されたことで注目された[7][8]

特徴

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これまでほとんど研究されていなかった[3]A型主系列星で、2017年のGrayらの研究ではスペクトル分類はA7VkA0mA0とされた。これは「これは「高速自転による幅の広い吸収線が見られる、A0のCaIIのK線、H線とその他の金属線を持つA7型の主系列星」であることを示している。そのスペクトルの特徴から、化学特異星の一種「うしかい座ラムダ型星 (Lambda Boötis star)」に分類されている[6]。うしかい座ラムダ型星は「炭素、窒素、酸素、硫黄の存在量は太陽とあまり変わらないが、難揮発性元素の存在量が最大2桁少ない種族IのA型星のグループ」とされる[6]

高分解能分光観測データで吸収線のほとんどが二重になっていたことから、HD 74423は単独星ではなく近接連星系であり、主星も伴星もほぼ同じ大きさのうしかい座ラムダ型星であるとされている[3]。公転周期は約1.6日、公転軌道の軌道長半径は主星の半径の約2.8倍とされる[5]

変光

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2015年、チリラスカンパナス天文台に設置されたASAS-3 (All Sky Automated Survey) を用いた観測で、0.79037日(約18.969時間)の周期で8.58等から8.66等まで0.08等の振幅で変光していることがされ、回転変光星の一種「りょうけん座アルファ2型変光星」である可能性が示唆された[2]

2020年、G. Handlerらの研究グループは「HD 74423は単独星ではなく近接連星系で、変光している主星は回転変光星ではなく脈動変光星の一種「たて座デルタ型変光星」であり、伴星との潮汐相互作用で主星の形状が涙滴型に引き伸ばされ、ほとんど片側だけで脈動している」とする研究結果を発表した。脈動しているのが伴星を向いた面か伴星の反対の面かは定かではないとされた[3][注 2]。研究グループは「近接連星系で片方の星が脈動変光星の場合、潮汐の影響で脈動軸の向きが変えられる可能性はこれまでも指摘されてきたが、実際に発見されたのは初めてである」としている[3]

脚注

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注釈

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  1. ^ a b パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算
  2. ^ 研究グループの解説動画では黄色で大きな主星と赤色で小さな伴星が描かれているが、主星も伴星もほぼ同じ大きさの白いA型主系列星と考えられている[3][5]。また伴星の側が膨らんでいるように描かれているが、Handlerらは「どの面が膨らんでいるかはこの研究では判明しなかった」としている[3]

出典

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  1. ^ a b c d e "HD 74423". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2022年9月19日閲覧
  2. ^ a b c Bernhard, K.; Hümmerich, S.; Otero, S.; Paunzen, E. (2015). “A search for photometric variability in magnetic chemically peculiar stars using ASAS-3 data”. Astronomy & Astrophysics (EDP Sciences) 581: A138. arXiv:1507.01112. Bibcode2015A&A...581A.138B. doi:10.1051/0004-6361/201526424. ISSN 0004-6361. 
  3. ^ a b c d e f g h Handler, G.; Kurtz, D. W.; Rappaport, S. A.; Saio, H.; Fuller, J.; Jones, D.; Guo, Z.; Chowdhury, S. et al. (2020-03-09). “Tidally trapped pulsations in a close binary star system discovered by TESS”. Nature Astronomy (Springer Science and Business Media LLC) 4 (7): 684–689. arXiv:2003.04071. Bibcode2020NatAs...4..684H. doi:10.1038/s41550-020-1035-1. ISSN 2397-3366. 
  4. ^ a b c d e Gaia Collaboration. “Gaia DR3 Part 1. Main source”. VizieR On-line Data Catalog: I/355/gaiadr3. Bibcode2022yCat.1355....0G. http://vizier.idia.ac.za/viz-bin/VizieR-5?-ref=VIZ6327b780180a60&-out.add=.&-source=I/355/gaiadr3&-c=130.07483773341%20-64.83795933510,eq=ICRS,rs=2&-out.orig=o. 
  5. ^ a b c d e Fuller, J; Kurtz, D W; Handler, G; Rappaport, S (2020-09-22). “Tidally trapped pulsations in binary stars”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society (Oxford University Press (OUP)) 498 (4): 5730-5744. arXiv:2008.02836. Bibcode2020MNRAS.498.5730F. doi:10.1093/mnras/staa2376. ISSN 0035-8711. 
  6. ^ a b c Gray, R. O.; Riggs, Q. S.; Koen, C.; Murphy, S. J.; Newsome, I. M.; Corbally, C. J.; Cheng, K.-P.; Neff, J. E. (2017-06-29). “The Discovery ofλBootis Stars: The Southern Survey I”. The Astronomical Journal (American Astronomical Society) 154 (1): 31-42. doi:10.3847/1538-3881/aa6d5e. ISSN 1538-3881. 
  7. ^ 松村武宏 (2020年3月14日). “「しずく型」に歪んでいる変光星が見つかる”. sorae 宇宙へのポータルサイト. 2022年9月19日閲覧。
  8. ^ 大石航樹 (2020年3月11日). “仮説上の存在だった「涙のしずく型」のニュータイプ星がついに発見される”. ナゾロジー. 2022年9月19日閲覧。

外部リンク

[編集]

これらの解説動画では、主星・伴星の大小やスペクトルは全く考慮されていないので注意。また脈動しているのが伴星側かその反対側かも判明していない。