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Getting Over It with Bennett Foddy

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Getting Over It with Bennett Foddy
ジャンル プラットフォーム・ゲーム[1]
対応機種 Microsoft Windows
macOS
iOS
開発元 ベネット・フォディ英語版[2]
発売元 Humble Bundle(Humble Monthly版)
ベネット・フォディ(Steam版)
人数 シングルプレイヤー
発売日
  • WW 2017年10月6日
(Humble Monthly版)
エンジン Unity
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映像外部リンク
Getting Over It with Bennett Foddy Trailer

Getting Over It with Bennett Foddy』(公式での略称:"Getting Over It")は、ベネット・フォディが開発・発表したコンピュータゲーム(プラットフォーム・ゲーム)である[2]

システム

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本作は、ディオゲネスという、一言もしゃべらず下半身が何らかの水が詰まった釜にはまった男性を操作し、登山用ハンマー英語版を振るってものにひっかけたり、地面などに振りおろして持ち上げたりジャンプしながら山を登っていくコンピュータゲームである。プレイヤーはマウスまたはタッチパッドを使って、男性の上半身を動かし、ハンマーをどこかに引っ掛けながら急な山道を進んでいく[3]。 ハンマーの力加減は、マウスを動かす回数と速度に左右されており、マウスの感度を低く設定した場合は大きく動かす必要がある一方、マウスの感度を高く設定しすぎるとと少しマウスを動かしただけでもハンマーが大きく動いてしまう。 コントローラでも遊べるが、ジョイスティックの精度の都合上、さらに難易度が上がる。また、iOS版は、画面フリックでハンマーを操作することができる[4]。 プレイ中、フォディ本人の声で哲学的な話題のナレーションが入り、特にプレイヤーが失敗したときは、失望や忍耐に関する名言が引用される[5]

ゲームが進むにつれて難易度は上昇する。チェックポイントがないため、一度落ちると場合によっては最初からやり直す羽目になる[6]

頂上に上るとゲーム終了となり、現在ゲームプレイを録画しているか否かを問うメッセージが表示される。録画していないことを確認して進むと、登頂者のみが見られるコンテンツにアクセスすることができる。

制作

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背景

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QWOP』の作者として知られるベネット・フォディは、子どものころから難しいゲームについて興味を抱いていた。フォディがオーストラリアに住んでいた1980年代から90年代の間は、『ジェットセットウィリー英語版』などの国外から輸入されたゲームしか遊べなかった。これらのゲームの多くは、セーブシステムが不十分だったため、キャラクターが死亡した場合は最初からやり直す必要があった。

1990年代、アメリカおよび日本製のゲームはセーブシステムやチェックポイントを導入するようになり、キャラクターが途中で死亡しても最初からやり直す必要がなくなった。フォディはセーブシステム等の導入について、「ある地点まで送り戻しが少しずつ減っていく要素は、いまやこのブティックのものになってしまった。ある世代の人はその感覚を持っているし、すべての人にそれがあてはまるだろう。しかし、このようなシステムは正統からはずれたものである」とGamasutraとのインタビュー述べている[7]

その後、フォディは『DARK SOULS』シリーズといった高難易度ゲームの再来を目の当たりにした。 さらに2017年8月に発売された『Hellblade: Senua's Sacrifice英語版』というセーブシステムがあるゲームにおいても、プレイヤーが何度も死亡した場合はセーブデータを消去されるシステムが導入されたことで他のプレイヤーが挑戦しやすくなり、あえて難しいゲームデザインにすることで新たな興味を引き寄せることが証明された。 フォディは「強い支持を受けているデザインの正統性の誤りが証明されたときに、新たなる道が開けるため、とてつもなく興奮させられます」と述べ、本作もまた新しいゲーム開発への道を開ける作品だと考えている[7]。 そして、フォディは、2002年にチェコのゲームデザイナーJazzuoが発表した『Sexy Hiking』にインスピレーションを受け、ある種の人を悶えさせるために本作を開発した[8]

開発

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題名に自らの名を冠した理由について、フォディは作り手である自分を人間として感じてほしいと同時に、プレイヤーのことを人間として感じたいという想いがあったと、2019年に行われたGame Developers Conferenceの中で述べている[2]

前述の意図もあり、本作はフォディが直接プレイヤーに語りかける内容に仕上げられた[2]。 最初、フォディは開発したときの気持ちを話していたが、次第にプレイヤーに向かって語りかける形に変化し、終盤ではプレイヤーに対する謝意も語られた[2]。 また、当初のクリア報酬はフォディ自身がWebカメラを通じてプレイヤーに話しかけるということが予定されていたが、それでは出過ぎているというため、別の形に改められた[2]

配信

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フォディはHumble Bundleとパートナー契約を結び、2017年10月6日に、その月のHumble Monthly[注 1]の一環として本作を発表した。

2017年12月6日、本作はフォディの手によってSteamでの配信が行われたと同時に[9][3]iOS版も配信された[10]

反響

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本作はHumble Monthlyで配信された時点から反響を集め、2017年12月6日の時点で、Humble Monthly版は270万人以上のプレイヤーがプレイした[11]。 動画投稿サイトには本作のプレイに苦戦するユーザーの動画が多数投稿された[12]。 2017年12月22日時点のSteam版のレビューには「悪意の塊」「人にプレゼントして相手の発狂っぷりを楽しむゲーム」といった言葉が並んだと同時に、全体的な評価は非常に良好とされた[13]。 また、その難易度の高さから、 PC Gamer のオースティン・ウッドをはじめとする批評家たちの支持も集めた[8]Rock, Paper, Shotgunは2017年のベストPCゲームの一つとして本作を挙げたほか[14]GameSpotは2017年に発売されたゲームの中で一番奇怪なものになるだろうと評した[15]

本作は日本でも反響を呼んでおり、日本のゲーム実況者の間では「」と呼ばれているほか[4]、IGNは本作の主人公を「壺おじさん」と呼び[16]、ファミ通は本作を「壺男ゲー」と紹介した[17][2]。2023年時点では「壺おじ」の通称名が複数のウェブメディアで使用されるようになっている[18][19][20][21]。 ねとらぼのRitsuko Kawaiは「操作説明もなく始まり、失敗を重ねながらも前に進み続ける様子が人生のようだ」と述べ、本作の本質を「不可能と思える苦難を乗り越える喜び」とした[13]4Gamer.netのgingerは、クリア不可能ではないものの操作性が難しいうえに道のりが理不尽なまでに険しいため、かなり人を選びそうなゲームとしつつも、ただのクソゲーではなく、不思議とやめられない魅力があると評した[22]

電撃オンラインの豊臣和孝は、本作には小さい針の穴に糸を通すようなもどかしさがあるとしつつも、本作の操作性が『Sexy Hiking』への敬愛によるものであり、自己都合によるルールのねじ曲げではなく明確なルールと物理法則に基づいている分、非常にまじめに作られたゲームであると感じたと述べている[23]。また、豊臣は主人公のシュールで奇怪な姿から、インスタ映えならぬ配信映えすると評価している[23]

フィクションにおける言及およびパロディ

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日本の漫画『ゲーミングお嬢様』にて、本作に酷似したゲーム「杯おじ」が登場しており、ライターの福山幸司は電ファミニコゲーマーに寄せた記事の中で、「[前略]この凶悪な難易度からゲームにおける『成長への渇望』、『成功体験』を(同漫画の主要人物である)祥龍院隆子が説く内容となっており、はからずも『壺おじ』とeスポーツに共通点があることに気付かされる内容となっている。」と指摘している[24]

受賞歴

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Independent Games Festivalにてトロフィーを手にするフォディ
部門 結果 出典
2018 National Academy of Video Game Trade Reviewers Awards Control Design, 2D or Limited 3D ノミネート [25][26]
Game, Special Class ノミネート
SXSWゲーム賞 トレンディング・ゲーム・オブ・ザ・イヤー(Trending Game of the Year) ノミネート [27][28]
モバイル・ゲーム・オブ・ザ・イヤー( Mobile Game of the Year) ノミネート
Independent Games Festival Competition Awards Seumas McNally Grand Prize ノミネート [29][30]
最優秀デザイン賞( Excellence in Design) ノミネート
Nuovo Award 受賞

脚注

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注釈

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  1. ^ Humble Bundleの月額購入サービスで、スタッフが選んだゲームが複数収録されている

出典

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  1. ^ Usher, William (2017年12月31日). “5 Biggest Breakout Hits Of 2017”. Cinema Blend. 2018年1月14日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g 『Getting Over It』の開発者がゲームの最後に仕掛けた秘密とは?「作り手である自分を人間だと感じてほしい」<ネタバレ注意>【GDC 2019】”. ファミ通. エンターブレイン (2019年3月19日). 2019年3月20日閲覧。
  3. ^ a b Rogers, Tim (October 6, 2017). “Getting Over It Is A Game About Using A Sledgehammer To Climb A Mountain”. Kotaku. https://kotaku.com/getting-over-it-is-a-game-about-using-a-sledgehammer-to-1819219469 October 9, 2017閲覧。 
  4. ^ a b KiDD (2017年12月31日). “【新作アプリレビュー】壺で話題のゲームがiPhoneで遊べるぞ『Getting Over It』!”. App Bank. 2018年1月14日閲覧。
  5. ^ Purchese, Robert (2017年12月7日). “The new game from the creator of QWOP is as brutal as it is brilliant”. EuroGamer. 2017年12月28日閲覧。
  6. ^ Frank, Allegra (2017年12月8日). “Getting Over It is frustrating the hell out of streamers”. Polygon. 2017年12月24日閲覧。
  7. ^ a b Wiltshire, Alex (January 5, 2018). “Designer Interview: The aesthetics of frustration in Getting Over It”. Gamasutra. January 6, 2018閲覧。
  8. ^ a b Wood, Austin (September 27, 2017). “Getting Over It is a brutal new game from the maker of QWOP” (英語). PC Gamer. http://www.pcgamer.com/getting-over-it-is-a-hellacious-new-game-from-the-maker-of-qwop/ October 14, 2017閲覧。 
  9. ^ Hester, Blake (September 28, 2017). “'Getting Over It' is the Next Ultra-Hard Game From 'QWOP' Creator Bennett Foddy”. Rolling Stone. https://www.rollingstone.com/glixel/news/next-game-from-gwop-creator-exclusive-to-humble-bundle-w506014 October 9, 2017閲覧。 
  10. ^ Nelson, Jared (December 6, 2017). “'QWOP' Developer's New Game 'Getting Over It with Bennett Foddy' Arrives on iOS thanks in Part to Zach Gage | TouchArcade”. Touch Arcade. http://toucharcade.com/2017/12/06/getting-over-it-with-bennett-foddy-released-on-ios/ December 8, 2017閲覧。 
  11. ^ Wood, Austin (December 6, 2017). “QWOP successor Getting Over It is now available on Steam”. PC Gamer. 29 December 2017閲覧。
  12. ^ Minoru Umise (2017年11月14日). “下半身が釜の男が山を登るアクション『Getting Over It with Bennett Foddy』すでにSteam版発売前から海外をイライラの渦に巻き込む”. AUTOMATON. アクティブゲーミングメディア. 2018年1月14日閲覧。
  13. ^ a b Ritsuko Kawai (2017年12月22日). “「悪意の塊」「人にプレゼントして相手の発狂っぷりを楽しむゲーム」 “世界一難しいゲーム”作者の新作がもはや哲学の域”. ねとらぼ. ITMedia. 2018年1月12日閲覧。
  14. ^ RPS (25 December 2017). “Best PC games of 2017”. Rock, Paper, Shotgun. 2 January 2018閲覧。
  15. ^ Pereira, Chris (14 November 2017). “Naked Man In A Pot Climbs Mountain With Sledgehammer In What Might Be 2017's Weirdest Game”. GameSpot. 2 January 2018閲覧。
  16. ^ 千葉芳樹 (2018年1月4日). “IGF 2018のファイナリストが発表!壺おじさんのゲームが3部門に名を連ねる”. IGN. 2018年1月14日閲覧。
  17. ^ ミル☆吉村 (2018年1月4日). “あの壺男ゲーの快進撃もありうる? インディーゲーム賞IGFの今年度ファイナリスト作品を全紹介”. ファミ通. エンターブレイン. 2018年1月14日閲覧。
  18. ^ 司破ダンプ (2023年6月9日). “「壺おじ」こと『Getting Over It』のスタッフが開発する新作よちよち歩きアクションゲーム『BABY STEPS』が2024年に発売へ。バイオレンスゴリラアクションゲーム『Ape Out』のスタッフとともに共同開発”. 電ファミニコゲーマー. マレ. 2023年8月14日閲覧。
  19. ^ またゲーマーをかき立てるのか。『Getting Over It』(壺おじ)などの開発者たちが手掛ける高難易度っぽい歩きゲー『BABY STEPS』が2024年発売【Devolver Direct】”. ファミ通.com. KADOKAWA Game Linkage (2023年6月9日). 2023年8月14日閲覧。
  20. ^ 屋敷悠太 (2023年6月9日). “「壺おじ」開発者による“35歳ニート”ウォーキングシム「Baby Steps」発表!小太りの中年男性が必死に歩くPV公開”. Game WATCH. インプレス. 2023年8月14日閲覧。
  21. ^ とんこつ (2023年8月13日). “【特集】世界記録が59秒台に突入した『Getting Over It(壺おじ)』RTA。14歳、若き日本人プレイヤーの挑戦”. Game*Spark. イード. 2023年8月14日閲覧。
  22. ^ ginger. “インディーズゲームの小部屋:Room#514「Getting Over It with Bennett Foddy」”. 4Gamer.net. Aetas. 2018年1月13日閲覧。
  23. ^ a b 豊臣和孝 (2018年2月13日). “【おすすめDLゲーム】とにかく難しいアクションゲーム『Getting Over It with Bennett Foddy』の魅力を分析”. 電撃オンライン. アスキーメディアワークス. 2019年3月21日閲覧。
  24. ^ 福山幸司 (2021年5月25日). “格闘ゲームマンガ『ゲーミングお嬢様』で『ウマ娘』に続いて『壺おじ』回。その凶悪な難易度からeスポーツに共通する「成長への渇望」、「成功体験」を説く”. 電ファミニコゲーマー. マレ. 2021年6月13日閲覧。
  25. ^ Nominee List for 2017”. National Academy of Video Game Trade Reviewers (9 February 2018). 15 February 2018閲覧。
  26. ^ Horizon wins 7; Mario GOTY”. National Academy of Video Game Trade Reviewers (13 March 2018). 14 March 2018閲覧。
  27. ^ McNeill, Andrew (31 January 2018). “Here Are Your 2018 SXSW Gaming Awards Finalists!”. SXSW. 2 February 2018閲覧。
  28. ^ IGN Studios (17 March 2018). “2018 SXSW Gaming Awards Winners Revealed”. IGN. 18 March 2018閲覧。
  29. ^ Faller, Patrick (5 January 2018). “Independent Games Festival Awards Nominees Announced”. GameSpot. 6 January 2018閲覧。
  30. ^ Whitney, Kayla (22 March 2018). “Complete list of 2018 Independent Games Festival Awards Winners”. AXS. 22 March 2018閲覧。

外部リンク

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