GameStopのショートスクイズ
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GameStop(ゲームストップ)のショートスクイズは、2021年1月に、個人投資家たちがコンピュータゲーム小売店・GameStop(ゲームストップ)の株価をつり上げた(ショートスクイズ)現象を示す。
内容
[編集]2021年1月、アメリカの株式市場で、ロビンフッドの利用者(ロビンフッダー)の個人投資家たちがオンライン掲示板「Reddit」を通じて互いにGameStopの株価のつり上げを呼びかけたことにより、大量のGameStop(ゲームストップ)の株が買い占められ、2021年1月の間にGameStopの株価は190倍にまで上昇する事態となった[2]。
これにより、GameStop株の空売りを仕掛けた大手ヘッジファンドの「メルビン・キャピタル・マネジメント」は多額の買戻しに迫られ、大損害を被った[3]。また、空売りを仕掛けた投資家の中には、誹謗中傷や殺害予告を受けた者もいた[4]。このSNSの呼びかけに応じてゲームストップ株を買った個人投資家の一部は、米メディアに「自分の金もうけではなく金持ちを破綻させてやりたい」などと語った。長年、大手金融機関が牛耳る「ウォール街」で個人投資家がヘッジファンドを打ち負かした今回の株式相場は、「金融界のフランス革命」(米ブルームバーグ通信)と呼ぶ声が業界関係者から出た[5]。
その後、ロビンフッド側は1月28日にGameStopの株の新規購入を停止し、個人投資家たちから反発を招き、世界中の株価に悪影響を及ぼした。民主党のアレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員は個人投資家の売買だけ止められたのは「許されない」とロビンフッドを批判した[5]。事態を重く見たホワイトハウスが監視、調査に乗り出した[3]。
この騒動において、個人投資家のキース・ギルがゲームストップ株の相場を操縦したとみなされ、証券詐欺で訴えられた[6]。 2021年2月18日(現地時間)、本件に関する公聴会がオンラインで開かれた[7]。
キース・ギルは「株式市場はゲームストップの事業を過小評価しており、今回のゲームストップ株の投資は自分の分析に自信があったからだ」と説明。「SNSを使って、ゲームストップ株を何も知らない投資家に宣伝したという考えはばかげている」と悪意を否定した。
一方、今回の株価の急騰で大きな損失が発生したメルビン・キャピタル・マネジメント創業者のゲイブ・プロトキンは「前代未聞の出来事は教訓になった」、「人為的に株価を下げるために空売りをしているわけではない」と述べた。
また、株取引アプリ「ロビンフッド・マーケッツ」のブラッド・テネフ最高経営責任者(CEO)は、ゲームストップ株の急騰時に個人投資家たちの取引を制限し、損失が膨らんでいくヘッジファンドを密かに救済しようとしたのではないか?という疑いについて、「ヘッジファンドを助けるためではない」と明言し、ゲームストップ株の取引が急増したことで、ロビンフッドが取引を続けるための必要な資金が足りなくなったからだと説明し、個人投資家の利用者たちに「申し訳ありませんでした」と謝罪した。公聴会では、この他にも議員たちから、取引制限の経緯をただす質問が相次いだ[8]。
今回のゲームストップ株の相場は、多くのヘッジファンドに大打撃を与えた。そのうちの1つ、メルビン・キャピタル・マネジメントは2021年1月現在、年初時点の運用資産の53%に当たる約66億ドル(約6930億円)もの巨額の損失を被ったとされる[9]。
2021年10月18日、米国証券取引委員会(SEC)はゲームストップ株について検証報告書を公表した。今回のゲームストップ株の高騰は株式市場の基本的な機能であり、その健全さは維持されたと結論付けた。さらにゲームストップ株を押し上げた一番の要因は、空売りの買い戻しではなく、同社に対する肯定的な市場心理だったとの見解を示した。また、SEC高官は、今回のゲームストップ株の相場で、何らかの行政処分につながるかどうかの不正行為に関しては、報告書で議論できなかったと述べた[10]。
メルビン・キャピタル・マネジメントの閉鎖
[編集]2022年5月18日、メルビン・キャピタル・マネジメントがファンドを閉鎖することが明らかになった。ファンドの代表のゲイブ・プロトキンは投資家への書簡の中で「過去17カ月は当社と投資家の皆さんにとって信じられないほど試練の時だった。今後、ファンドの資産と口座を全て換金することでファンドを清算し、全投資家に資金を返還するのが適切である」と表明した。
メルビン・キャピタル・マネジメントの2022年4月末時点の資産は78億ドル。関係筋によると、メルビン・キャピタル・マネジメントの2022年1月 - 4月の運用成績はハイテク株の下落でマイナス23%だった。また、2021年のメルビン・キャピタル・マネジメントの運用成績は、ゲームストップ株に絡む損失などでマイナス39%だった[11][12]。
関連項目
[編集]- 個人投資家
- ヘッジファンド
- 株式市場
- 空売り
- ショートスクイズ
- デイトレード
- ウォール街を占拠せよ
- 米国証券取引委員会
- 仕手
- ダム・マネー ウォール街を狙え! - 本件の映画化作品。
脚注
[編集]- ^ Data from Yahoo! Finance
- ^ Prentice, Chris (2021年1月28日). “アングル:SNS主導のゲームストップ株急騰、当局の懸念の理由”. ロイター通信 2021年1月31日閲覧。
- ^ a b Sato, Daisuke (2021年1月28日). “米小売大手GameStopの株価が異常な急騰、ホワイトハウスが監視する事態に―Redditユーザーが大きく関与【UPDATE】”. Game*Spark (イード) 2021年1月31日閲覧。
- ^ Herbst-Bayliss, Svea (2021年1月29日). “焦点:空売り投資家に強まる風圧、中傷・殺害予告も”. ロイター通信 2021年1月31日閲覧。
- ^ a b INC, SANKEI DIGITAL (2021年1月31日). “SNSで連携「個人投資家の乱」 米でファンド敗走”. 産経ニュース. 2023年1月22日閲覧。
- ^ “ゲームストップ相場仕掛け人、自称アマチュア投資家提訴-株価操縦で”. Bloomberg.com (2021年2月18日). 2021年2月22日閲覧。
- ^ “株乱高下で米公聴会 ロビンフッドCEO、取引制限を謝罪(写真=ロイター)”. 日本経済新聞 (2021年2月19日). 2021年2月22日閲覧。
- ^ “米ゲームストップ株急騰、主導投資家「分析に自信」…ヘッジファンド「前代未聞の出来事」 : 経済 : ニュース”. 読売新聞オンライン (2021年2月19日). 2022年1月29日閲覧。
- ^ “米ゲームストップ株騒動 日本のカリスマ個人はこう見た(写真=ロイター)”. 日本経済新聞 (2021年2月5日). 2022年1月29日閲覧。
- ^ “米SECがゲームストップ株騒動検証、市場機能は「健全さ」維持と結論 - ロイターニュース - 経済:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 2022年1月29日閲覧。
- ^ 「メルビン・キャピタル閉鎖へ、ミーム株や今年の株安で多額損失」『Reuters』2022年5月19日。2022年6月18日閲覧。
- ^ “ゲームストップ騒動の米メルビン、テック株安打撃で閉鎖”. 日本経済新聞 (2022年5月19日). 2022年6月18日閲覧。
外部リンク
[編集]- 【米国株】ロビンフッダーが「ゲームストップ(GME)」の株価を急騰させた事件の裏側を解説! - ZAi ONLINE
- 投資アプリ「ロビンフッド」がゲームストップ株購入を規制 ⇒「許されることではない」政治家や専門家も批判 - Huffington Post
- 素人投資家たちが巨大ヘッジファンドに2兆円の損失を与えて大撃破! 米ゲームストップ株騒動を専門家が解説
- 「ゲームストップ騒動」の本質とは 西田明弘(マネースクエア) - マイナビニュース
- 「ゲームストップ騒動」示す侮れない社会の変化 エリートへの反乱が起こりやすくなっている - 東洋経済ONLINE
- 米ゲームストップ株騒動 日本のカリスマ個人はこう見た - 日本経済新聞 日経マネー特集
- 個人投資家が結託、巨大ファンドに反乱... 米市場を揺るがした「ゲームストップ騒動」を解説する - J-CASTニュース
- 個人が機関投資家を打ち負かす ゲームストップ事件は日本でも起こるのか? - ITmedia ビジネスオンライン
- 素人投資家の反乱、ウォール街揺るがす 格差拡大に憤り - 朝日新聞デジタル(2021年1月30日)
- ヘッジファンドの損失2兆円、SNSが株式市場で起こした「革命」 - 日経ビジネス(2021年2月1日)
- 素人投資家 vs 巨大ヘッジファンド GME株保有熱狂の行方は? - 日刊ゲンダイ(2021年02月03日)
- 個人投資家 vs ヘッジファンド、米で勃発した新手の仕手戦を巡る大きな懸念 - マネーポストWEB(2021年02月03日)
- 米SNS投資家の乱 ウォール街不信も背景に - 毎日新聞 社説(2021年2月12日)
- 米ゲームストップ株急騰、主導投資家「分析に自信」…ヘッジファンド「前代未聞の出来事」 - 読売新聞オンライン(2021年02月19日)