DS2000
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DS2000とは、三菱電機が製造する静止衛星用の標準衛星プラットフォーム(標準衛星バス)である。
宇宙開発事業団 (NASDA) が開発した、データ中継技術衛星こだま (DRTS) と技術試験衛星VIII型きく8号 (ETS-VIII) を原型として開発された。主に商用静止通信衛星や商用静止放送衛星の受注を想定しているが、気象観測衛星等にも使用可能である。他の静止衛星用標準衛星プラットフォームと比較し、リチウムイオン二次電池を標準搭載するなど、電源系機器が小型化されている。
現在の5トン (t) 級以外に派生型として、小型の3.5トン級DS2000Sは開発を終え[1]、大型化した6トン級以上のDS2000Lは開発を検討している[2]。
仕様
[編集]- 発生電力:最大12キロワット (kW)
- 打ち上げ時質量:最大5.8t
- トランスポンダ:60(ノミナル)
- 衛星寿命:15年
- 太陽電池:高効率シリコン太陽電池またはマルチジャンクションGaAs太陽電池
- 二次電池:ニッケル・水素蓄電池またはリチウムイオン二次電池
- 電源バス:100ボルト (V) 安定化電源
- 三軸姿勢安定方式:ゼロモーメンタム方式またはバイアスモーメンタム方式
- リアクションホイール搭載数:4台
- 構造:CFRP製セントラルシリンダー方式
- 熱制御方式:ヒートパイプ
- アポジキックエンジン:R-4D × 1
- 南北制御用イオンエンジン(オプション):XIES × 2 × 2系統
採用実績
[編集]名称 | 打ち上げ機 | 打ち上げ日時(UTC) | 乾燥重量 キログラム (kg) | 打上時質量 (Wet重量)(kg) |
発生電力 キロワット (kW) | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
こだま DRTS |
H-IIA2024 | 2002年9月10日08時20分 | 1,300 | 2,800 | 2.1 | 原型機 |
ひまわり7号 MTSAT-2 |
H-IIA2024 | 2006年2月18日06時27分 | 1,700 | 4,650 | 3.8 | |
きく8号 ETS-VIII |
H-IIA204 | 2006年12月18日06時32分 | 2,800 | 5,800 | 7.5 | 原型機。H-IIA204の開発遅延で ひまわり7号より後の打ち上げとなった。 |
SUPERBIRD C2 SUPERBIRD 7 |
アリアン5 ECA | 2008年8月14日20時44分 | 2,000 | 4,820 | 7.2 | DS2000を採用した初の商業衛星 |
みちびき QZS-1 |
H-IIA202 | 2010年9月11日11時17分 | 1,700 | 4,100 | 5.3 | |
ST-2 | アリアン5 ECA | 2011年5月20日20時38分 | 1,900 | 5,090 | 11 | シンガポール・テレコム/中華電信から受注 |
Turksat 4A | プロトン-M | 2014年2月14日21時09分 | 4,850 | トルコの国営衛星通信会社トルコサット(英語: Türksat_(company))社から受注[3] | ||
ひまわり8号 | H-IIA202 | 2014年10月7日05時16分 | 1,300 | 約3,500 | 約2.6 | |
Turksat 4B | プロトン-M | 2015年10月16日20時40分 | 4,924 | トルコの国営衛星通信会社Türksat社から受注[3] | ||
ひまわり9号 | H-IIA | 2016年11月2日06時20分 | 1,300 | 約3,500 | 約2.6 | |
きらめき2号 | H-IIA204 | 2017年1月24日07時44分 | 製造管理:NEC 防衛省次期Xバンド衛星通信整備事業のうちの1基 | |||
みちびき2号機 QZS-2 |
H-IIA202 | 2017年6月1日09時17分 | 4,000 | |||
みちびき3号機 QZS-3 |
H-IIA204 | 2017年8月19日14時29分 | 4,700 | |||
みちびき4号機 QZS-4 |
H-IIA202 | 2017年10月10日07時01分 | 4,000 | |||
Es'hail-2[4] | ファルコン9 | 2018年11月15日20時46分 | 5,300 | カタールの国営衛星通信事業者エスヘイルサット(英語: Es'hailSat)社から受注 | ||
SUPERBIRD-8[5] きらめき1号 |
アリアン5 ECA | 2018年4月5日21時34分 | 5,348 | 製造管理:NEC 防衛省次期Xバンド衛星通信整備事業のうちの1基 2015年第4四半期に打ち上げ予定が輸送中に損傷して延期 | ||
みちびき初号機後継機 QZS-1R |
H-IIA202 | 2021年10月26日11時19分 | 1,600[6] | 4,000 |
脚注
[編集]- ^ ここではひまわり8号と9号を派生型のDS2000Sとしている。“宇宙産業政策の現状と課題”. 第6回宇宙政策委員会 宇宙産業部会 経済産業省提出資料 (2014年2月28日). 2015年10月19日閲覧。
- ^ “三菱電機、衛星標準バスの機種拡充-小型クラス投入”. 日刊工業新聞. (2013年11月6日) 2013年11月24日閲覧。
- ^ a b “三菱電機|TURKSAT-4A/4B”. 三菱電機. 2015年10月19日閲覧。
- ^ 『カタールの通信衛星「Es'hail 2」を受注』(プレスリリース)三菱電機、2014年9月8日 。2014年9月9日閲覧。
- ^ “Superbird-B2後継機の調達について”. スカパーJSAT株式会社. (2014年4月25日) 2014年5月17日閲覧。
- ^ “みちびき初号機後継機の概要|みちびき初号機後継機特設サイト”. 内閣府. 2023年9月8日閲覧。
関連項目
[編集]- NEXTAR - NEC製の標準衛星バス
外部リンク
[編集]- 衛星プラットフォームDS2000 (三菱電機)
- 商用衛星システム"DS2000" (PDF, 79.1KB) - 三菱電機技報 2003年08月号
- Evolution of DS2000 Platform 2010/11/23 Mitsubishi Electric Corporation(英語版)
- 世界市場で認められた日本の衛星技術~スタートラインに立った海外への挑戦~ (2011年8月30日 JAXA HP)
- 三菱電機の宇宙事業、海外受注の切り札は「衛星バス」 - ウェイバックマシン(2015年4月2日アーカイブ分) 2015年2月26日 SankeiBiz