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AIM連合

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

AIM連合: AIM alliance、AIM同盟とも訳される)とは、1991年10月にApple ComputerIBMモトローラの3社間で結ばれた企業提携で、PowerPCアーキテクチャによる、コンピュータの新しい標準を作ることを目的とした。名称は3社の頭文字(Apple-IBM -Motrola)からである。

PowerPC連合と呼ばれることもあるが、新しいオペレーティングシステムマルチメディア記述言語の開発も含んでいた。

概要

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AIM連合の目標は、新しいコンピュータ設計と次世代のオペレーティングシステムにより、支配的なウィンテルのコンピューティングプラットフォームに挑戦することであった。それは、マイクロプロセッサの設計としてインテルx86が採用しているCISCプロセッサには将来が無く、他方RISCには未来があり、今後の数年が大きな機会のある期間となる、との考えでPowerPC構想が開始された。

当初のCPUはIBMのPOWER1のシングルチップバージョンであるPowerPC 601であった。IBMとモトローラはPowerPCシリーズをこの新しいプラットフォーム用に設計・製造した。PowerPCベースのコンピュータアーキテクチャはPRePと呼ばれ、後にCHRPとなった。PRePとCHRPは、PowerPCやPCIを採用し、RS/6000でも採用された。

AppleとIBMは提携の一環として、タリジェント(Taligent)とカライダ (Kaleida) と呼ばれる2つの新しい合弁会社を設立した。タリジェントは、PowerPCプラットフォーム上で稼働する、コードネーム「ピンク」(Pink、後にTaligentOS)と呼ばれる次世代のオペレーティングシステムを開発するため、Appleのソフトウェアエンジニアの中核チームから形成された。カライダの目的は、オブジェクト指向クロスプラットフォームマルチメディアスクリプト言語 (Script X) の開発で、それは開発者に、プラットフォームのPowerPC用の全く新しい種類のアプリケーションを作る事を可能にするものとされた。

IBMはPRePのハードウェアとして、1995年にAIXWindows NT 3.5.1をサポートしたThinkPad Power Seriesを発売し[1][2]、1996年にはRS/6000 Notebook 860を発売した[3]

しかし、PRePやCHRPの普及というモトローラやIBMの努力は失敗し、その上で稼働するオペレーティングシステムの供給というApple・IBM・タリジェントの試みも失敗した。そしてAppleとIBMはリファレンスデザインでパラレルポートが必須か必須では無いか合意できなかった[要出典]。新しいプラットフォームでは最終的には、いくつかのUNIXに加え、Windows NTやOS/2などのオペレーティングシステムがサポートされる予定だったが、ユーザーにはインテルベースのプラットフォームではなくPRePシステムを使用する理由は少なかった。BeOSを稼働させるために設計されたBeBoxは、いくつかのPRePハードウェアを使用したが、標準との互換性は完全では無かった。またインターネット技術の急速な台頭により、クロスプラットフォームのマルチメディアを含んだ記述言語はHTMLなどが普及した。カライダは1995年に解消された。タリジェントは1998年に解消しIBMに吸収された。

AIM連合による成果のうち、PowerPC計画は一定の成果をあげる。Appleは1994年に、PowerPCチップをMacintoshに搭載したPower Macintoshラインを開始した。後の2004年にモトローラはPowerPCを含む半導体部門を分社化しフリースケール・セミコンダクタを設立した。

Appleの脱退と連合の終焉

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2005年頃にAppleはPowerPCの開発の方向性と性能に失望した(IBMとフリースケールはサーバと組み込み向けプロセッサに重点を置き、高性能なポータブルコンピュータに適したチップがなくなった)ため、2006年までにはほぼ全てのMacintoshは、インテルのx86プロセッサに移行しAIM連合は終焉に至った。

その後

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連合解体後の各陣営の様相を記す。

AppleはサーバXserve(2009年モデルまで)やハイエンドのMac Proのラインナップは残しつつも、Macintoshについてはコンシューマ市場重視の方針をとり、さらにiPodからiPhoneiPadといったポストPCの分野を拡充した。Macintoshについては2021年までインテルプロセッサの使用が続いていたが、iPhone等ではARMを採用しており、元々StrongARMを設計していた開発陣の技術(旧en:P.A. Semi)と買収した高速なARMチップを設計していた開発陣の技術(旧en:Intrinsity)により自社用プロセッサAppleシリコンを設計し、Apple製品に広く採用している。

IBMはハイエンドのサーバと組み込み市場に特化し、ローエンドのサーバ事業とPC事業はレノボへ売却された[4][5]

モトローラはAppleと初のiTunes搭載携帯電話端末Motorola ROKR E1を共同開発するもAppleがiPhoneを販売したことで同盟は決裂し、携帯事業会社のモトローラ・モビリティは2011年にGoogleに買収されたのち、2014年に大部分の特許を除いた事業がレノボへ売却されている[6]

IBMとモトローラについては、Power.orgにおいてIBMとフリースケール・セミコンダクタ(2015年12月に消滅・買収したNXPセミコンダクターはメンバーではない)の協業が2015年現在継続している。

AppleとIBMは、2014年にモバイル分野での企業導入に関して提携し、2015年にはIBMへのMacintosh採用と共にIBMが企業へのMacintosh導入を支援すると発表している[7]

POWERプロセッサは、IBMのハイエンドでの使用の他、組み込み市場で一時的ながら成功している。また、コンシューマゲーム専用機(据置型ゲームコンソール)でも200x年代中期(いわゆる第7世代とも)に多く採用され、発売順に、Xbox 360Xenon、2005年発売)・PlayStation 3Cell Broadband Engine、2006年発売)・WiiBroadway、2006年発売)と、一時はマイクロソフト・ソニー任天堂の3陣営の機種全てでPowerPCが使われていた(しかし、その次の世代にも続いたのはWii UEspresso)だけであった)。

脚注

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関連項目

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外部リンク

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