4-ビニルグアイアコール
4-ビニルグアイアコール 4-Vinylguaiacol | |
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4-エテニル-2-メトキシフェノール | |
別称 2-メトキシ-4-ビニルフェノール 4-ヒドロキシ-3-メトキシスチレン p-ビニルグアイアコール | |
識別情報 | |
CAS登録番号 | 7786-61-0 |
PubChem | 332 |
ChemSpider | 325 |
UNII | DA069CTH0O |
DrugBank | DB03514 |
KEGG | C17883 |
ChEBI | |
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特性 | |
化学式 | C9H10O2 |
モル質量 | 150.17 g mol−1 |
沸点 |
224 °C, 497 K, 435 °F |
危険性 | |
引火点 | 113 °C (235 °F; 386 K) |
関連する物質 | |
関連する、酒類のフェノール類 | 3-エチルフェノール 4-ビニルフェノール 4-エチルグアイアコール |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
4-ビニルグアイアコールは化学式C9H10O2で表されるフェノール類の一種である。4-VGとも略記される。フェノールの2位にメトキシ基、4位にビニル基を持つ構造から、2-メトキシ-4-ビニルフェノールとも呼ばれる。グアイアコールには「グアイヤコール」「グアヤコール」の表記ゆれが見られる。
生成
[編集]ワインの醸造において、ブドウの果汁に含まれる無臭のフェルラ酸を出発点とし、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)中の脱炭酸酵素4-ヒドロキシケイ皮酸デカルボキシラーゼにより4-ビニルグアイアコールが生成される。白ワインでの反応はここまでであるが、赤ワインでは4-VGがさらに酸化還元酵素のビニルフェノールレダクターゼにより4-エチルグアイアコールに変換される。フェルラ酸の代わりにp-クマル酸を出発点とする場合には、同様の経路で4-ビニルフェノール(4-VP)を経て4-エチルフェノール(4-EP)となる[1]。
ワイン酵母やビール酵母には4-VGの生成活性を持つが、焼酎酵母や清酒酵母にはこの活性を持たないことが酒類総合研究所の向井伸彦らにより報告されている[2]。焼酎やビールの製造においては加熱工程でフェルラ酸が脱炭酸し、4-VGが生じる[3]。清酒では、麹やもろみから採取されたバチルス・チューリンゲンシスおよびブドウ球菌のStaphylococcus gallinarumにフェルラ酸から4-VG、p-クマル酸から4-VPへの変換能を持つ株が発見された[4]。泡盛の古酒香の1つであるバニリンは、フェルラ酸の脱炭酸反応によって生じた4-VGの酸化によって生成されることが知られている[5]。焼酎および泡盛醸造におけるフェルラ酸の脱炭酸反応は,蒸留時の加熱が1つの要因であるが[5]、泡盛実用菌株においては黒麹菌の持つフェノール酸脱炭酸酵素が主要因であることが示されている[6][7]。
香りの表現
[編集]特異臭を持ち、「クローブ」[8]、「カーネーションの花」[9]などと表現される。清酒では「煙臭」「薬品臭」「香辛料臭」と呼ばれるオフフレーバーとなる[2]
関連項目
[編集]脚注
[編集]- ^ (恩田 2013, pp. 883–884)
- ^ a b (金桶 2014, pp. 320)
- ^ (金桶 2014, pp. 321)
- ^ (金桶 2014, pp. 323)
- ^ a b Koseki, Takuya; Ito, Yasurou; Furuse, Shinji; Ito, Kiyoshi; Iwano, Kimio (1996-01-01). “Conversion of ferulic acid into 4-vinylguaiacol, vanillin and vanillic acid in model solutions of shochu” (英語). Journal of Fermentation and Bioengineering 82 (1): 46–50. doi:10.1016/0922-338X(96)89453-0. ISSN 0922-338X .
- ^ Maeda, Mayumi; Tokashiki, Masashi; Tokashiki, Midori; Uechi, Keiko; Ito, Susumu; Taira, Toki (2018-08-01). “Characterization and induction of phenolic acid decarboxylase from Aspergillus luchuensis” (英語). Journal of Bioscience and Bioengineering 126 (2): 162–168. doi:10.1016/j.jbiosc.2018.02.009. ISSN 1389-1723 .
- ^ Maeda, Mayumi; Motosoko, Marin; Tokashiki, Tatsunori; Tokashiki, Jikian; Mizutani, Osamu; Uechi, Keiko; Goto, Masatoshi; Taira, Toki (2020-10-01). “Phenolic acid decarboxylase of Aspergillus luchuensis plays a crucial role in 4-vinylguaiacol production during awamori brewing” (英語). Journal of Bioscience and Bioengineering 130 (4): 352–359. doi:10.1016/j.jbiosc.2020.05.004. ISSN 1389-1723 .
- ^ (酒類総合研究所 2016)
- ^ (恩田 2013, pp. 883)
参考文献
[編集]- 恩田匠「国産ワインにおけるフェノール系オフフレーバー「フェノレ」について」『日本醸造協会誌』第108巻第12号、日本醸造協会、2013年、881-889頁、2020年6月24日閲覧。
- 金桶光起「清酒中の4-ビニルグアイアコール生成要因」『日本醸造協会誌』第109巻第5号、日本醸造協会、2013年、320-326頁、2020年6月24日閲覧。
- 「微生物が作る酒類の香り」(PDF)『エヌリブ』第29巻、酒類総合研究所、2016年3月31日、2020年3月3日閲覧。