高田純 (物理学者)
高田 純(たかだ じゅん、1954年〈昭和29年〉4月 - )は、日本の政治活動家、物理学者。専門は放射線防護学。札幌医科大学名誉教授[1]。
概歴
[編集]東京都出身[2]。育英工業高等専門学校(現サレジオ工業高等専門学校)電気工学科卒業[3]。弘前大学理学部物理学科卒業[4]。広島大学大学院理学研究科(核実験)博士課程前期修了、同課程後期退学[4]。平成2年(1990年)に広島大学より酸化物高温超伝導体に関する研究で理学博士の学位を取得[5][6]。
鐘淵化学工業(現カネカ)中央研究所、シカゴ大学ジェイムズ・フランク研究所、京都大学化学研究所・同イオン工学研究所(現「光・電子理工学教育研究センター」)・京都大学原子炉実験所(現京都大学複合原子力科学研究所)、広島大学原爆放射線医科学研究所などを経て、2004年(平成16年)より札幌医科大学医療人育成センター教養教育研究部門教授[4]。2020年(令和2年)札幌医科大学名誉教授。
「放射線防護情報センター」代表、「日本シルクロード科学倶楽部」会長、「放射線防護医療研究会」代表世話人(以上、全て自身が作った任意団体)、日本会議北海道本部副理事長[7]、「真広島長崎平和集会」実行委員長。
人物
[編集]2000年(平成12年)8月以降、中国政府がウイグルで行っている核実験による健康被害についての調査研究を行っている[8]。
2004年(平成16年)に講談社から出版した「東京に核兵器テロ!」で、内閣官房や消防庁国民保護室に注目され、屋内退避による放射性降下物対策を内閣官房に陳情したと称する。
2008年(平成20年)に「中国の核実験」を医療科学社から出版。翌年には同書の英語版・ウイグル語版を出版し、米国サイエンティフィック・アメリカン誌[9]などで新著紹介された。
2009年(平成21年)8月9日と2010年(平成22年)8月6日に、田母神俊雄とのダブル講演を札幌、広島で行う[10]。
2010年(平成22年)8月5日広島にて「第1回真広島長崎平和集会」を開催[11](ただし、「第2回」が開かれた形跡はない)。
受賞歴
[編集]- 1988年(昭和63年)、鐘淵化学工業技術振興特別賞[1]
- 1994年(平成6年)、未踏科学技術協会高木賞[1]
- 2003年(平成15年)、中国電力技術研究財団 原子力防災における緊急被曝医療の研究[1]
- アパグループの主催する「真の近現代史観」懸賞論文で広島平和記念公園の碑文撤去を主張した論文が第3回に優秀賞[12]。第4回で論文「福島は広島にもチェルノブイリにもならなかった〜東日本現地調査から見えた真実と福島復興の道筋」が最優秀賞(賞金300万円)を受賞[13]。
主な研究と活動
[編集]専門分野は、被曝医療[1]、線量評価[1]、放射線防護[1]、核事象調査、核爆発災害、医学物理、環境放射線、“「中国の核実験」による災害”など。
- 大学での医療人育成のための物理学教育研究、放射線防護医療の教育研究
- 国民保護のための核防護研究
- “平和のための原子力”の推進
- シルクロード3民族(チベット人、ウイグル族、中国内モンゴル自治区)への人道科学支援
主張
[編集]中国の核実験による災害
[編集]- 2009年(平成21年)3月18日憲政記念館でシンポジウム「シルクロードにおける中国の核実験災害と日本の役割」を開催し、楼蘭周辺での核実験による環境汚染、健康被害を伝えた[14]。楼蘭周辺での中共が引き起こしたメガトン核爆発災害の科学報告は、最初に「中国の核実験」(医療科学社 平成20年/2008年)で出版され、その英語・ウイグル語翻訳版が翌年に刊行された。さらに、翌年に、日本人の観光リスクの評価研究が、「核の砂漠とシルクロード観光のリスク」(医療科学社 平成21年/2009年)が出版された。それらの研究に基づき、平成21年/2009年の『正論』6月号に「中国共産党が放置するシルクロード核ハザードの恐怖」と題した論文を寄稿し、中華人民共和国が新疆ウイグル自治区で実施した核実験によってウイグル人など19万人が急死するとともに、急性放射線障害などに罹った被害者は129万人に達しているとした研究結果を発表した[8]。高田は「人道的にもこれほどひどい例はない。中国政府の情報の隠蔽も加え国家犯罪にほかならない」と述べている[8]。
- 女優の夏目雅子の死因について、テレビドラマ『西遊記』で放射線汚染された中国ロケの影響で急性白血病を発症したためであると主張した[15][16][17][18][19][20]。しかし、このドラマではそもそもシルクロードで俳優をつかったロケ撮影は行われておらず、夏目は中国ロケに参加もしていなかったので、そういった事実は全くない[注釈 1]。
- 2010年(平成22年)11月、モンゴル自由連盟党(大阪)のホームページで声明を発表した[21]。
福島原発事故
[編集]- 福島第一原子力発電所事故では、2011年(平成23年)4月に浪江町からの避難民に対し内部被曝を調査。同年6月18日にも現地入りし福島駅や飯舘村・南相馬市で残留放射線を調査し、その結果「福島の住民に健康被害は起きない」「警戒区域となっている20km圏内でも危険性が高いとは言えない」と結論づけている[22]。
- 2011年(平成23年)7月末に田母神俊雄等と共に行われた「福島支援シンポジウム」で基調講演で「一部メディアによる福島県の人たちを混乱させ、心配させる報道には腹が立つ。ただ火のないところに煙は立たない。火をたいているのは日本政府だ」「福島県民に放射線による健康被害はない、福島は必ず復興できる、というのが最初に報告したい調査結果です」「原発の門の前まで行ったが、累積被曝線量はたったの0.1ミリシーベルトと意外な結果だった。防護服を着る必要すらなかった」「日本で、自動車産業を訴えたり、車に乗るのを止めようという人はいない。『脱原発』を訴えている人たちも車には乗っているはずだ」などと述べた[23]。
- 2012年10月18日、旧統一教会系の『世界日報』の読者でつくる「世日クラブ」で「今こそ日本の核アレルギーを糺す〜福島は低線量で健康被害なし〜」と題した講演を行う。原発事故後の放射能の影響について、「急性放射線障害がなければ将来のリスクはない」と主張、当時の総理大臣・菅直人を批判した。また、浪江町などでも放射線量は人体に被害のない低線量であり、早く住民を帰還させるべきと語った[24][25]
著書
[編集]- 「世界の放射線被曝地調査 ―自ら測定した渾身のレポート―」 - 講談社 2002年1月[1] ISBN 978-4062573597
- 「東京に核兵器テロ!」 - 講談社 2004年[1]
- 「Nuclear Hazards in the World」- Springer 2005年 ISBN 978-3540252726
- 「核爆発災害 ―そのとき何が起こるのか―」 - 中公新書 2007年
- 「核と刀 ―核の昭和史と平成の闘い―」- 明成社 2010年 ISBN 978-4944219933
- 「放射線から子どもの命を守る」 - 幻冬舎ルネッサンス新社 2011年 ISBN 978-4779060496
- 「放射能・原発、これだけ知れば怖くない!」 - 幸福の科学出版 2012年
- 「原発ゼロで日本は滅ぶ ―“非科学”福島セシウム避難の国家犯罪―」 - オークラ出版 2012年 中川八洋共著 ISBN 978-4775519820
- 「誇りある日本文明 ―中韓が絶対に超えられない、先進と継続の理由―」 - 青林堂 2017年 ISBN 978-4792605957
- 「脱原発は中共の罠」 - ハート出版 2021年 ISBN 978-4802401159
- 「日本が3度目の核攻撃を受けないために」 - ハート出版 2022年 ISBN 978-4802401425
以下は全て医療科学社刊『高田純の放射線防護学入門』シリーズ
- 「核災害からの復興」 - 2005年2月
- 「お母さんのための放射線防護知識 ―チェルノブイリ事故20年間の調査でわかったこと―」 - 2007年
- 「医療人のための放射線防護学」- 2008年
- 「核エネルギーと地震 ―中越沖地震の検証 技術と危機管理―」 - 2008年
- 「中国の核実験 ―シルクロードで発生した地表核爆発災害―」 - 2008年
- 「核と放射線の物理 ―放射線医学と防護のための基礎科学―」 - 2008年
- 「核の砂漠とシルクロード観光のリスク ─NHKが放送しなかった楼蘭遺跡周辺の不都合な真実―」 - 2009年 ISBN 978-4860034023
- 「Chinese Nuclear Tests」 - 英語版
- 「ソ連の核兵器開発に学ぶ放射線防護」 - 2010年
- 「福島 嘘と真実 ―東日本放射線衛生調査からの報告―」 - 2011年 ISBN 978-4860034177
- 「人は放射線なしに生きられない ―生命と放射線を結ぶ3つの法則―」 - 2013年 ISBN 978-4860034320
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b c d e f g h i “高田 純 【研究者】”. J-GLOBAL (2010年3月2日). 2010年12月21日閲覧。
- ^ 高田純『放射線防護の基礎知識』著者紹介
- ^ 育英学院同窓会報2011(75周年報告)サレジオ工業高等専門学校
- ^ a b c 高田純『福島 嘘と真実』p.2
- ^ 博士論文書誌データベース 書誌ID:000000237169
- ^ 国立国会図書館. “博士論文『Lifetime broadening picture in oxide high-temperature superconductors』”. 2023年4月2日閲覧。
- ^ “高田純のプロフィール”. 放射線防護情報センター. 2024年2月7日閲覧。
- ^ a b c “中国核実験で19万人急死、被害は129万人に 札幌医科大教授が推計”. MSN産経ニュース. (2009年4月30日). オリジナルの2009年5月3日時点におけるアーカイブ。 2010年4月27日閲覧。
- ^ Merali, Zeeya (2009年7月8日). “Did China's Nuclear Tests Kill Thousands and Doom Future Generations?”. Scientific American, a Division of Nature America. 2010年12月20日閲覧。
- ^ 中曽千鶴子(副会長) (2010年8月9日). “8.6 広島講演会 再びヒロシマの平和を疑う”. 本人が会長である日本シルクロード科学倶楽部のブログ. 2010年12月20日閲覧。
- ^ “真広島長崎平和集会”. 「真広島長崎平和集会」のホームページ (2010年8月5日). 2010年12月20日閲覧。
- ^ “アパグループ第三回「真の近現代史観」懸賞論文最優秀藤誠志賞を佐波優子氏が受賞!”. APA GROUP (2010年10月25日). 2010年12月20日閲覧。
- ^ “あの田母神氏、渡部氏も激賞 「真の近現代史観」放射線論文が最優秀賞 「福島県民は誰も甲状腺がんにならない」”. 産経新聞 (2012年1月15日). 2012年1月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年1月15日閲覧。
- ^ 侍傑 (2009年3月8日). “中国核実験、32年間で46回も”. 大紀元. 2010年12月20日閲覧。
- ^ 「櫻井よしこが若者に日本の未来を語る」詳報 国家基本問題研究所
- ^ 高田純「中国共産党が放置するシルクロード核ハザードの恐怖」『正論』平成21年(2009年)6月号、産経新聞社
- ^ 高田純「被災害学の専門家が寄稿 被害者100万人以上のシルクロード『核の砂漠』」『宝島』平成21年(2009年)7月号、pp.55-56
- ^ 高田純「シルクロード『核汚染』を隠蔽し続けるNHKの大罪」『週刊新潮』平成21年(2009年)7月16日号、pp.44-47
- ^ 高田純 (2010年9月3日). “かんぺいちゃんが楼蘭核の砂漠に接近”. 本人が会長である日本シルクロード科学倶楽部のブログ. 2010年12月20日閲覧。
- ^ 平成21年(2009年)5月25日発売の月刊宝島でも『シルクロード核の砂漠 「夏目雅子は何故死んだ?」』。中曽千鶴子(副会長) (2009年5月3日). “本日発売の月刊宝島に注目!”. 日本シルクロード科学倶楽部のブログ. 2010年12月20日閲覧。
- ^ 高田純. “中国共産党の非道に抗議する南モンゴルデモへのメッセージ” (PDF). モンゴル自由連盟党. 2010年11月22日閲覧。
- ^ “「福島の住民に 健康被害は 起きない」 原発を救え! もはや危険地帯ではない 放射線量調査 独占レポート”. ザ・リバティ (2011年7月4日). 2011年7月4日閲覧。
- ^ 溝上健良 (2011年8月15日). “放射線の専門家が激白シンポ「一部メディアの過剰反応に異議あり!」”. MSN産経ニュース. オリジナルの2011年8月15日時点におけるアーカイブ。 2011年8月15日閲覧。
- ^ 高田純「今こそ日本の核アレルギーを糺す 福島は帰還可能な低線量」『Viewpoint』世界日報社 2013年1月号 p49~51
- ^ 『世界日報』2012年11月5日号 9面
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- JTakadatop - ウェイバックマシン(2015年5月5日アーカイブ分)(本人のサイト OCNのHPサービス「Page ON」自体が終了したため消滅)
- 放射線防護情報センター(本人が代表を務める任意機関)
- 高田純 理学博士 (@gatapi21) - X(旧Twitter)
- 真広島長崎平和集会
- YouTube 動画
- 平成23年(2011年)4月6-10日 福島は低線量事象で放射線リスクは無視できるくらいに小さい
- 国民保護法における 原子力災害対処について (PDF) 内閣官房原子力安全委員会原子力施設等防災専門部会被ばく医療分科会 緊急被ばく医療のあり方に関する検討会第2回 平成19年9月12日
- 危機管理政策の国際比較 - 危機対応の経済政策論に向けて (PDF) 独立行政法人経済産業研究所