高木
高木に対する用語は低木である。また高さなどに基づき、高木を超高木や亜高木(小高木)などに細分することもある。ただしこれらの区分はおおよそであり、また定義も一定していないため、同一植物が異なる区分に分類されることもある[4][5]。
定義
[編集]生物学における高木
[編集]高木
[編集]生物学においては、一般的に成長した状態で高さ2または3メートル以上であり、また主幹が明瞭である樹木を高木とよぶ[2][5]。狭義には高さ8–30メートルほどのものを指し、森林においては高木層(tree layer)を形成する[1]。高木層がある森林は高木林(forest, woods)とよばれる[6]。日本で見られる高木の例として、アカマツやスギ(下図1a)、イチョウ、クスノキ、ユリノキ(下図1b)、カツラ、アカメガシワ、シダレヤナギ、コナラ(下図1c)、シラカンバ、ヤマザクラ、ケヤキ(下図1d)、ハリエンジュ、イロハモミジ、シナノキ、ミズキ、キリ(下図1e)などがある[7]。
超高木
[編集]高さ30メートル以上になる高木は、超高木(emergent, emergent tree)ともよばれる[1]。東南アジアやアフリカ、南米の熱帯林では、一部の種が超高木として高木層の林冠を突き抜けていることがある[1][8][9](下図1f, g)。またオセアニアにおけるユーカリ属の一部(下図1h)や、北米西海岸のセコイア(下図1i)およびセコイアデンドロンは、超高木からなる純林を形成する[1]。
亜高木
[編集]広義の高木のうち、高さ8メートル以下のものは亜高木または小高木(subarbor)とよばれることがある[1]。亜高木は、森林では亜高木層を形成する[1]。日本で見られる亜高木の例として、シキミ(下図1j)、マンサク、ユズリハ、マサキ、ウメ(下図1k)、ネムノキ、サルスベリ(下図1l)、ミネカエデ、ヌルデ、ハナミズキ、ヤブツバキ(下図1m)、エゴノキ(下図1n)、ヒイラギなどがある[7]。
ラウンケルの生活型
[編集]クリステン・ラウンケル(Christen C. Raunkiær)は、休眠型に基づいて植物の生活型を類別した (Raunkiaer 1908)[10]。その中で、休眠芽を高さ25センチメートル以上につける植物を地上植物(挺空植物、phanerophyte)とし、さらに以下のように細分している。これらに、大高木・中高木・小高木の訳語を充てることがある[10]。
- macrophanerophyte(大型地上植物、大高木)… 休眠芽の位置が高さ30メートル以上。
- mesophanerophyte(中型地上植物、中高木)… 休眠芽の位置が高さ8メートルから30メートル。
- microphanerophyte(小型地上植物、小高木)… 休眠芽の位置が高さ2メートルから8メートル。
- nanophanerophyte(微小型地上植物、矮形地上植物、低木)… 休眠芽の位置が高さ25センチメートルから2メートル。
管理・植栽における高木
[編集]緑地管理などにおける高木の定義は、省庁や自治体によってさまざまなものがある。国土交通省では、高さ3メートル以上の樹木を高木、1から3メートルの樹木を中木、1メートル以下の樹木を低木とすることが多い[11][12]。環境省の「かおりの樹木データ一覧表」では、高さ5メートル以上の樹木を高木、2から5メートルの樹木を中木、2メートル以下の樹木を低木としている[13]。高木の定義として他にも、植栽時に2メートル以上で成木では4メートル以上になるもの[14]、植栽時に3メートル以上で成木では5メートル以上になるもの[15]、植栽時に4メートル以上で大きく成長が見込まれるもの[16]、などがある。
林業では、材が利用可能になる4から5メートル以上のものを高木とよぶことが多い[2][17][18]。
脚注
[編集]出典
[編集]- ^ a b c d e f g 清水建美 (2001). “高さと形状による分類”. 図説 植物用語事典. 八坂書房. pp. 21–22. ISBN 978-4896944792
- ^ a b c 巌佐庸, 倉谷滋, 斎藤成也 & 塚谷裕一 (編) (2013). “高木”. 岩波 生物学辞典 第5版. 岩波書店. pp. 465–466. ISBN 978-4000803144
- ^ 「高木」『デジタル大辞泉』 。コトバンクより2022年4月10日閲覧。
- ^ a b 「高木」『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』 。コトバンクより2022年4月10日閲覧。
- ^ a b IAWA(国際木材解剖学者連合)委員会『広葉樹材の識別 IAWAによる光学顕微鏡的特徴リスト』海青社、1998年、90頁。
- ^ 巌佐庸, 倉谷滋, 斎藤成也 & 塚谷裕一 (編) (2013). “高木林”. 岩波 生物学辞典 第5版. 岩波書店. p. 466. ISBN 978-4000803144
- ^ a b 馬場多久男 (1999). 葉でわかる樹木 625種の検索. 信濃毎日新聞社. pp. 96–385. ISBN 978-4784098507
- ^ 巌佐庸, 倉谷滋, 斎藤成也 & 塚谷裕一 (編) (2013). “熱帯林”. 岩波 生物学辞典 第5版. 岩波書店. p. 1057. ISBN 978-4000803144
- ^ 巌佐庸, 倉谷滋, 斎藤成也 & 塚谷裕一 (編) (2013). “高木層”. 岩波 生物学辞典 第5版. 岩波書店. p. 466. ISBN 978-4000803144
- ^ a b 清水建美 (2001). “休眠型による区分”. 図説 植物用語事典. 八坂書房. pp. 7–8. ISBN 978-4896944792
- ^ “都市公園の樹木の点検・診断に関する指針(案)”. 国土交通省. 2022年4月9日閲覧。
- ^ “公園緑地工事数量算出要領”. 国土交通省. 2022年4月9日閲覧。
- ^ “かおりの樹木データ一覧表”. 環境省. 2020年1月19日閲覧。
- ^ “1-7 敷地内の緑化”. 大津市. 2022年4月9日閲覧。
- ^ “5.用語について”. 大田区. 2022年4月10日閲覧。
- ^ “2)高木・中木・低木”. 世田谷区. 2022年4月9日閲覧。
- ^ 「高木」『日本大百科全書(ニッポニカ)』 。コトバンクより2022年4月10日閲覧。
- ^ 「高木」『百科事典マイペディア』 。コトバンクより2022年4月10日閲覧。