類似中線
類似中線(るいじちゅうせん、Symmedian)は任意の三角形に対して定義される3本の直線である。
類似中線は、三角形の角の二等分線を対称軸として、中線と対称の位置にある直線である(すなわち、中線と等角共役である)。三角形における3本の類似中線は1点で交わる。この点は重心の等角共役点であり、特に類似重心またはルモワーヌ点と呼ばれる。
歴史
[編集]フランスのエミール・ルモワーヌは、1873年に3本の類似中線が1点に交わることを証明した。それよりも前にエルンスト・ヴィルヘルム・グリーブが1847年に論文を発表している。スイスのサイモン・アントワーヌ・ジャン・リュイリエは1809年にこの点について言及している。
性質
[編集]- 円ABCの点B,Cにおける接線の交点をXとすると、AXは三角形ABCの角A内の類似中線である。Y,ZをB,Cに対してXと同様に定義する。△XYZは接線三角形で△ABCと△XYZは類似重心を中心に配景的である(AX,BY,CZは類似重心で交わる)。
- 三角形ABCの角A内の類似中線と辺BCの交点をS(≠A)とすると が成り立つ。
- 三角形ABCの角A内の類似中線と円ABCの交点をK(≠A)とし、辺BCの中点をMとする。このとき以下が成り立つ。
- 三角形ABKと三角形AMCは同じ向きに相似である。
- KAは三角形KBCの角K内の類似中線である。
- 四角形ABKCはAB×KC=BK×CAをみたす(調和四角形である)。
類似重心
[編集]3本の類似中線の交点は類似重心またはルモワーヌ点と呼ばれる。ドイツではグリーブ点とも呼ばれる。
三角形の3辺の長さを a, b, c とすると類似重心の三線座標は a : b : c 、重心座標は a2 : b2 : c2 となる。
内接円と辺の接点を D, E, F としたとき、三角形 DEF の類似重心は元の三角形のジェルゴンヌ点になる。
ルモワーヌ点を通り、各辺に平行に引いた直線と辺との6つの交点は同一円周上にある。この円のことを第一ルモワーヌ円と呼ぶ。また、ルモワーヌ点を通り、各辺に逆平行に引いた直線と辺との6つの交点は同一円周上にある。この円のことを第ニルモワーヌ円と呼ぶ。それぞれの中心はブロカール円の中心、ルモワーヌ点である。
他の図形との関係
[編集]2つのブロカール点を焦点とし、3辺に接する楕円をブロカール楕円という。この楕円が辺と接する点は、辺と類似中線の交点である[1]。
重心とルモワーヌ点を焦点に持つ内接円錐曲線をルモワーヌ内接楕円と言う。また、ルモワーヌ内接楕円のPolar triangle、Polar triangleの外接円はそれぞれルモワーヌ三角形、第三ルモワーヌ円と呼ばれる[2]。
脚注
[編集]- ^ 岩田至康『幾何学大辞典』(1971年初版)II P.497
- ^ Weisstein, Eric W.. “Lemoine Inellipse” (英語). mathworld.wolfram.com. 2024年4月6日閲覧。
参考文献
[編集]- Ross Honsberger, "The Symmedian Point," Chapter 7 in Episodes in Nineteenth and Twentieth Century Euclidean Geometry, The Mathematical Association of America, Washington, D.C., 1995.