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音声記号拡張補助

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
音声記号拡張補助
Phonetic Extensions Supplement
範囲 U+1D80..U+1DBF
(64 個の符号位置)
基本多言語面
用字 ラテン文字
ギリシャ文字
主な言語・文字体系
割当済 64 個の符号位置
未使用 0 個の保留
Unicodeのバージョン履歴
4.1 64 (+64)
公式ページ
コード表 ∣ ウェブページ
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音声記号拡張補助(おんせいきごうかくちょうほじょ、英語: Phonetic Extensions Supplement)は、Unicodeの69個目のブロック

解説

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IPA(国際音声記号)でかつて用いられていた口蓋化した子音を表すための文字(現在のIPAではU+02B2 ʲ MODIFIER LETTER SMALL Jを用いる)や、かつて母音のR音性または反舌音の子音を表すのに用いられたフック付きの文字(現在のIPAでは母音のR音性にはU+02DE ˞ MODIFIER LETTER RHOTIC HOOKを用いる[1])、非常に短い発音や二重母音において軽く読まれる側の母音を表すための上付き文字など、音声記号としての用途の文字のうち基本ラテン文字ラテン1補助ラテン文字拡張Aラテン文字拡張BIPA拡張前進を伴う修飾文字ギリシア文字及びコプト文字音声記号拡張のいずれのブロックにも含まれていないものが収録されている。

Unicodeのバージョン4.1において初めて追加された。

収録文字

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特に注記が無ければ「用例・説明」の欄の記載はIPA(国際音声記号)での用例を指している。

コード 文字 文字名(英語) 用例・説明
口蓋化フック付きラテン文字
U+1D80 LATIN SMALL LETTER B WITH PALATAL HOOK [bʲ]を表していた。
U+1D81 LATIN SMALL LETTER D WITH PALATAL HOOK [dʲ]を表していた。
U+1D82 LATIN SMALL LETTER F WITH PALATAL HOOK [fʲ]を表していた。
U+1D83 LATIN SMALL LETTER G WITH PALATAL HOOK [ɡʲ]を表していた。
U+1D84 LATIN SMALL LETTER K WITH PALATAL HOOK [kʲ]を表していた。
U+1D85 LATIN SMALL LETTER L WITH PALATAL HOOK [lʲ]を表していた。
U+1D86 LATIN SMALL LETTER M WITH PALATAL HOOK [mʲ]を表していた。
U+1D87 LATIN SMALL LETTER N WITH PALATAL HOOK [nʲ]を表していた。
U+1D88 LATIN SMALL LETTER P WITH PALATAL HOOK [pʲ]を表していた。
U+1D89 LATIN SMALL LETTER R WITH PALATAL HOOK [rʲ]を表していた。
U+1D8A LATIN SMALL LETTER S WITH PALATAL HOOK [sʲ]を表していた。
U+1D8B LATIN SMALL LETTER ESH WITH PALATAL HOOK [ʃʲ]を表していた。
U+1D8C LATIN SMALL LETTER V WITH PALATAL HOOK [vʲ]を表していた。
U+1D8D LATIN SMALL LETTER X WITH PALATAL HOOK [xʲ]を表していた。
U+1D8E LATIN SMALL LETTER Z WITH PALATAL HOOK [zʲ]を表していた。
反舌フック付きラテン文字
U+1D8F LATIN SMALL LETTER A WITH RETROFLEX HOOK [a˞]を表していた。
U+1D90 LATIN SMALL LETTER ALPHA WITH RETROFLEX HOOK [ɑ˞]を表していた。
U+1D91 LATIN SMALL LETTER D WITH HOOK AND TAIL 反舌入破音を表す。

現在のIPAでも用いられる。

U+1D92 LATIN SMALL LETTER E WITH RETROFLEX HOOK [e˞]を表していた。
U+1D93 LATIN SMALL LETTER OPEN E WITH RETROFLEX HOOK [ɛ˞]を表していた。
U+1D94 LATIN SMALL LETTER REVERSED OPEN E WITH RETROFLEX HOOK [ɜ˞]を表していた。
U+1D95 LATIN SMALL LETTER SCHWA WITH RETROFLEX HOOK [ə˞]を表していた。
U+1D96 LATIN SMALL LETTER I WITH RETROFLEX HOOK [i˞]を表していた。
U+1D97 LATIN SMALL LETTER OPEN O WITH RETROFLEX HOOK [ɔ˞]を表していた。
U+1D98 LATIN SMALL LETTER ESH WITH RETROFLEX HOOK [ʂ]を表していた。
U+1D99 LATIN SMALL LETTER U WITH RETROFLEX HOOK [u˞]を表していた。
U+1D9A LATIN SMALL LETTER EZH WITH RETROFLEX HOOK [ʐ]を表していた。
修飾文字
U+1D9B MODIFIER LETTER SMALL TURNED ALPHA 非常に短い[ɒ]を表す。

以下に続く修飾文字は現在のIPAでも用いられる。

U+1D9C MODIFIER LETTER SMALL C 非常に短い[c]を表す。
U+1D9D MODIFIER LETTER SMALL C WITH CURL 非常に短い[ɕ]を表す。
U+1D9E MODIFIER LETTER SMALL ETH 非常に短い[ð]を表す。
U+1D9F MODIFIER LETTER SMALL REVERSED OPEN E 非常に短い[ɜ]を表す。
U+1DA0 MODIFIER LETTER SMALL F 非常に短い[f]を表す。
U+1DA1 MODIFIER LETTER SMALL DOTLESS J WITH STROKE 非常に短い[ɟ]を表す。
U+1DA2 MODIFIER LETTER SMALL SCRIPT G 非常に短い[ɡ]を表す。
U+1DA3 MODIFIER LETTER SMALL TURNED H 非常に短い[ɥ]を表す。
U+1DA4 MODIFIER LETTER SMALL I WITH STROKE 非常に短い[ɨ]を表す。
U+1DA5 MODIFIER LETTER SMALL IOTA 非常に短い[ɪ]を表す。

かつて[ɪ]はU+0269 ɩで書かれていた。

U+1DA6 MODIFIER LETTER SMALL CAPITAL I 非常に短い[ɪ]を表す。

ウラル音声記号英語版(UPA)で用いられるU+1D35 ᴵ MODIFIER LETTER CAPITAL Iとは別字[1]。上付き文字同士を並べた際に文字の高さが異なる。

U+1DA7 MODIFIER LETTER SMALL CAPITAL I WITH STROKE IPAでは使われず、アメリカの音声記号で非常に短い[ɪ̈]を表すのに用いられる。
U+1DA8 MODIFIER LETTER SMALL J WITH CROSSED-TAIL 非常に短い[ʝ]を表す。
U+1DA9 MODIFIER LETTER SMALL L WITH RETROFLEX HOOK 非常に短い[ɭ]を表す。
U+1DAA MODIFIER LETTER SMALL L WITH PALATAL HOOK 非常に短い[lʲ]を表す。

かつて[lʲ]はU+1D85 ᶅで書かれていた。

U+1DAB MODIFIER LETTER SMALL CAPITAL L 非常に短い[ʟ]を表す。

UPAで用いられるU+1D38 ᴸ MODIFIER LETTER CAPITAL Lとは別字[1]。上付き文字同士を並べた際に文字の高さが異なる。

U+1DAC MODIFIER LETTER SMALL M WITH HOOK 非常に短い[ɱ]を表す。
U+1DAD MODIFIER LETTER SMALL TURNED M WITH LONG LEG 非常に短い[ɰ]を表す。
U+1DAE MODIFIER LETTER SMALL N WITH LEFT HOOK 非常に短い[ɲ]を表す。
U+1DAF MODIFIER LETTER SMALL N WITH RETROFLEX HOOK 非常に短い[ɳ]を表す。
U+1DB0 MODIFIER LETTER SMALL CAPITAL N 非常に短い[ɴ]を表す。

UPAで用いられるU+1D3A ᴺ MODIFIER LETTER CAPITAL Nとは別字[1]。上付き文字同士を並べた際に文字の高さが異なる。

U+1DB1 MODIFIER LETTER SMALL BARRED O 非常に短い[ɵ]を表す。
U+1DB2 MODIFIER LETTER SMALL PHI 非常に短い[ɸ]を表す。

しばしば[ɸ]を伴う開放、すなわち無声音のホイッスル化を表すことがある。

U+1DB3 MODIFIER LETTER SMALL S WITH HOOK 非常に短い[ʂ]を表す。
U+1DB4 MODIFIER LETTER SMALL ESH 非常に短い[ʃ]を表す。
U+1DB5 MODIFIER LETTER SMALL T WITH PALATAL HOOK 非常に短い[tʲ]を表す。

かつて[tʲ]はU+01AB ƫで書かれていた。

U+1DB6 MODIFIER LETTER SMALL U BAR 非常に短い[ʉ]を表す。
U+1DB7 MODIFIER LETTER SMALL UPSILON 非常に短い[ʊ]を表す。
U+1DB8 MODIFIER LETTER SMALL CAPITAL U IPAでは使われず、アメリカの音声記号で非常に短い[ʊ]を表すのに用いられる。

UPAで用いられるU+1D41 ᵁ MODIFIER LETTER CAPITAL Uとは別字[1]。上付き文字同士を並べた際に文字の高さが異なる。

U+1DB9 MODIFIER LETTER SMALL V WITH HOOK 非常に短い[ʋ]を表す。
U+1DBA MODIFIER LETTER SMALL TURNED V 非常に短い[ʌ]を表す。
U+1DBB MODIFIER LETTER SMALL Z 非常に短い[z]を表す。
U+1DBC MODIFIER LETTER SMALL Z WITH RETROFLEX HOOK 非常に短い[ʐ]を表す。
U+1DBD MODIFIER LETTER SMALL Z WITH CURL 非常に短い[ʑ]を表す。
U+1DBE MODIFIER LETTER SMALL EZH 非常に短い[ʒ]を表す。
U+1DBF ᶿ MODIFIER LETTER SMALL THETA 非常に短い[θ]を表す。

小分類

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このブロックの小分類は「口蓋化フック付きラテン文字」(Latin letters with palatal hook)、「反舌フック付きラテン文字」(Latin letters with retroflex hook)、「修飾文字」(Modifier letters)の3つとなっている[1]

口蓋化フック付きラテン文字(Latin letters with palatal hook

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この小分類にはIPA(国際音声記号)でかつて用いられていた口蓋化した子音を表すためのフック付きの文字が収録されている。

口蓋化フックの付いた文字は他にもラテン文字拡張Bブロックに含まれるU+01AB ƫ LATIN SMALL LETTER T WITH PALATAL HOOKがある[1]

反舌フック付きラテン文字(Latin letters with retroflex hook

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この小分類にはIPA(国際音声記号)でかつて用いられていた母音のR音性または反舌音の子音を表すのに用いられたフック付きの文字が収録されている。

現在のIPAでは、R音性母音をU+02DE ˞ MODIFIER LETTER RHOTIC HOOKで転記することを推奨している[1]

反舌フックの付いた文字は他のブロックにも存在する。U+0256 ɖ, U+026D ɭ, U+0273 ɳ, U+027B ɻ, U+027D ɽ, U+0282 ʂ, U+0285 ʅ, U+0288 ʈ, U+0290 ʐ, U+02AF ʯがIPA拡張ブロックに、U+01AE Ʈがラテン文字拡張Bブロックに含まれている[1]

修飾文字(Modifier letters

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この小分類には主に非常に短い発音や二重母音において軽く読まれる側の母音を表すための上付き文字が収録されている。

ただし、U+1DA7 ᶧ MODIFIER LETTER SMALL CAPITAL I WITH STROKEU+1DB8 ᶸ MODIFIER LETTER SMALL CAPITAL UはIPAでは使われず、アメリカの音声記号で使われる。

その他の修飾文字(modifier)は前進を伴う修飾文字音声記号拡張上付き・下付きブロックに含まれている[1]

文字コード

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音声記号拡張補助(Phonetic Extensions Supplement)[1]
Official Unicode Consortium code chart (PDF)
  0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 A B C D E F
U+1D8x
U+1D9x
U+1DAx
U+1DBx ᶿ
注釈
1.^バージョン16.0時点


履歴

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以下の表に挙げられているUnicode関連のドキュメントには、このブロックの特定の文字を定義する目的とプロセスが記録されている。

バージョン コードポイント[a] 文字数 L2 ID ドキュメント
4.1 U+1D80..1D8E 15 L2/03-169 Peter Constable (30 May 2003), Proposal to Encode Phonetic Symbols with Palatal Hook (英語)
L2/04-044 Peter Constable (1 February 2004), Revised Proposal to Encode Phonetic Symbols with Palatal Hook (replaces L2/03-169) (英語)
U+1D8F..1D9A 12 L2/03-170 Peter Constable (30 May 2003), Proposal to Encode Phonetic Symbols with Retroflex Hook (英語)
L2/04-045 Peter Constable (1 February 2004), Revised Proposal to Encode Phonetic Symbols with Retroflex Hook (replaces L2/03-170) (英語)
U+1D9B..1DBF 37 L2/03-180 Peter Constable (8 June 2003), Proposal to Encode Additional Phonetic Modifier Letters (英語)
L2/04-046 Peter Constable (1 February 2004), Revised Proposal to Encode Additional Phonetic Modifier Letters (replaces L2/03-180) (英語)
  1. ^ 提案されたコードポイントと文字の名前は、最終決定と異なる場合がある。

出典

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  1. ^ a b c d e f g h i j "The Unicode Standard, Version 15.1 - U1D80.pdf" (PDF). The Unicode Standard (英語). 2024年11月6日閲覧

関連項目

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