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電磁場テンソル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
電磁テンソルから転送)

電磁場テンソル(でんじばテンソル)とは、電磁場相対性理論に基づいた4次元時空の形式で記述した2階の反対称テンソル場である。以後、相対論と言えば、特に断りがなければ特殊相対性理論を指す。

定義

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電磁場の強度(field strengthF は二階のテンソル

と定義される[1]。 ここで A は相対論的な4元ベクトル電磁ポテンシャル

である[註 1]。 また、微分も相対論的な4元ベクトル

である。

定義から電磁場テンソルは明らかに反対称テンソルである。従って独立成分は6つある。 これは3次元空間のベクトル場である電場の強度 E磁束密度 B の各成分に対応する。 電場の強度と磁束密度は3次元空間の電磁ポテンシャルによって

と表される。 あるいは各成分毎に

と書くことが出来る[註 1]。 具体的には

である[註 1]。上付きの

となる[註 1]。それぞれ行列の形で表せば

となる。

双対テンソル

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完全反対称テンソル ε を用いれば、電磁場の強度 F に双対なテンソル

が定義される[2]。 具体的には

であり、行列の形で表せば

となる。

媒質中の電磁場

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媒質中での電磁場を表す電束密度 D磁場の強度 H は、電磁場の強度と同様に二階のテンソル G によって相対論的な形式で記述される。 それぞれの成分は具体的には

である[3]。このテンソル G はサブ電磁テンソルとも呼ばれる。 サブ電磁テンソル G は電磁場の強度 F

で関係付けられる。ここで P は分極テンソルであり、その成分は誘電分極 P磁化 M である。 具体的には

である。 サブ電磁テンソル G と分極テンソル P をそれぞれ行列の形で表せば

である。

球座標表示

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球面座標系 (ct, r, θ, φ) による4元ポテンシャルの成分表示は

であり、電磁場強度 F として

が得られる。 平坦な時空のミンコフスキー計量とその逆行列は球座標において

であり、電磁場強度の添え字を上げると

となる。

例えば、原点に点電荷 q が存在するときの電磁場テンソルは

で表される。

マクスウェルの方程式

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電磁場テンソルによって、相対論的な形でマクスウェルの方程式を記述することができる。 定義からビアンキ恒等式

が成り立つ[4]。 双対テンソルを用いれば

と表すことも出来る[4]。 この式は添え字 ν = 0,1,2,3 についての4つの方程式であり、それぞれ

と対応する。

自由空間における電磁場の運動方程式は

と表される。 ここで j4元電流密度である。 この式は添え字 ν = 0,1,2,3 についての4つの方程式であり、それぞれ

と対応する。

媒質中の運動方程式

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媒質中の運動方程式は

と表される。 成分ごとにそれぞれ

である。

ローレンツ力

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電磁場テンソルは荷電粒子に作用するローレンツ力を相対論的に記述する際に現れる。 相対論的な粒子の位置を X = (ct, r) で表すとき、電荷 q を帯びた荷電粒子に作用するローレンツ力は

となる[1]。 ここで p は粒子の4元運動量である。ドットは運動のパラメータによる微分である。

一般相対論

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時空の曲率、すなわち重力場がある場合に、偏微分はテンソルとはならず、レヴィ・チヴィタ接続を導入して共変微分への置き換えが必要となる。しかし、電磁場強度 F は偏微分による定義を変更することなくテンソルである。反対称性により共変微分の接続が相殺されるため

となる[5]。ビアンキ恒等式は定義から成り立つので変更を要しないが、運動方程式は

であり[5]、共変微分への置き換えが必要となる。

脚注

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注釈

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  1. ^ a b c d ここではミンコフスキー計量の符号を η=diag(-1,+1,+1,+1) に選んでいる。

出典

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  1. ^ a b ランダウ, リフシッツ pp.67-69, §23.電磁場テンソル
  2. ^ ジャクソン 819頁
  3. ^ ジャクソン 820頁
  4. ^ a b ランダウ, リフシッツ pp.74-75, §26.マクスウェル方程式の第1の組
  5. ^ a b ランダウ, リフシッツ pp.285-287, §90.

参考文献

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  • L.D.ランダウE.M.リフシッツ『場の古典論』東京図書理論物理学教程〉、1978年。ISBN 4-489-01161-X 
  • J.D.ジャクソン『電磁気学』吉岡書店〈物理学叢書〉、2003年。ISBN 4-8427-0308-3 

関連項目

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