鉄人28号 (架空のロボット)
鉄人28号(てつじんにじゅうはちごう)は、日本の漫画家の横山光輝の『鉄人28号』およびその派生作に登場する日本の架空のロボットである。28号なのはB-29が由来。
機体解説
[編集]太平洋戦争末期、大日本帝国が起死回生を目的として乗鞍岳の研究所において極秘裏に建造していたロボット兵器、その28番目の設計機。 原作では敷島博士が中心となって完成を見るはずであったが、起動実験の失敗を最後に計画は中止となり、研究班は特攻機開発のため南海の孤島にある秘密研究所へと配属された。しかし研究所の存在がアメリカ軍の知るところとなり島が爆撃を受け、研究員の大半が失われた事によって鉄人計画そのものも忘れられていた。戦後になり、計画に携わったと思われる謎の覆面の男によって乗鞍岳にて完成をみる。 その後、コミックスの改訂版やアニメ化に合わせた再編集等で、正太郎の父親で科学者「金田博士」の設定が加わり、鉄人28号は金田博士が中心として戦時中に設計が行なわれ、先の爆撃で計画が頓挫したものの、戦後に戦争とは無関係に「科学者として素晴らしいロボットを完成させたい」という理由で金田博士と敷島博士の協力のもとで誕生した事になった。これによって鉄人の所有権と操縦者としての正当性を正太郎に付加したと考えられる。 現在、「原作完全版」では上記の「謎の覆面の男」、「カッパコミックス版(再編集版)」では後記の「金田博士・敷島博士」になっている。
内蔵武器や固定兵装を持たず、特殊鉄鋼による頑健さを武器とし、動力を手足等にも内蔵した補助装置(独立連動装置)により、不測の事態で手や足など各部が破損しても、出力は常に安定して稼働する事ができる。また、体格以上の怪力は連動装置の出力を練り合わせた結果であると推察されている。背部ロケットは初期設計には存在せず、ニコポンスキー率いるS国スパイが鉄人を手に入れた際に独自設計して取り付けた。ロケットの出力は戦艦を動かす程強力だが、たいてい壊れるのはロケットからである事から、鉄人本体ほどの強度や頑健さは無いものと見られる。破損に追記するならば、右腕関節が多く目立つ。手足が破壊され、もぎ取られても稼働には支障は出なかったが、さすがに片手片足では戦闘継続自体は無理だった。ロビーの怪ロボットとの戦いでは熱線が腹部装甲を貫通して内部に直撃、完全に機能を停止したこともあるが、鉄人を流用しようとしたロビーによって修理された末、奪回されている。後のファイア三世戦においては熱線に耐性を見せており、ビッグファイア博士は「特殊鉄鋼を使っているな」と分析している。
大きさは連載当初は身長3メートル程度で描かれていた。しかし、しばしば人間を手のひらに乗せて運んだりするシーンや、連載後半にはビル5〜6階相当の立ちシーンが現れるようになる。
鉄人が実現するには複数のアクチュエータと関節をフレキシブルに結合し、複数のアクチュエータが必要に応じて協調し大出力や高速動作を実現する多自由度干渉駆動技術が必要。現実にこの技術は筋電義手の研究開発を行なっている電気通信大学の横井浩史教授が研究している。
なお、後年になるに連れて、鉄人以上の優れた強力なロボットが現れ始め、これらに対して鉄人自体のパワーや性能の優位性だけで対抗する事が叶わなくなっていき、力を受け流す等の戦法や敵ロボットの弱点を推測し攻める等、敷島博士に指示を受けたり、操縦者の技術や知恵を駆使して戦うようになり、より正太郎の操縦者としての判断力や行動力が鉄人に加味されていく事になる。
操縦器
[編集]鉄人は小型の操縦器(リモコン)によって操縦される。ある程度の命令の範囲内での独立稼働が可能な自律思考回路も備えてはいるが、格闘戦や災害救助活動時等の精密で多様な判断が必要な場面では目視操縦が基本である。小型で簡素な割に多彩で幅広い操縦方法と、強力な操縦電波と大きな有効範囲、操縦の精密性と正確性は鉄人本体以上に価値があり、後年では鉄人本体より操縦装置の仕組みをほしがったスパイ団も登場する(にせ鉄人事件)。負傷した大塚署長やニコポンスキーでも片手で操縦できる簡易な操縦性は便利な反面、操縦機が盗まれた際は敵が鉄人を簡単に悪用できる危機を生む事になった、不乱拳博士に至っては、ものの数分で奪った鉄人の操縦方法を調べてみせ、レクチャーされた黒覆面団の首領は、すぐに鉄人を使って正太郎に追い打ちをかけた(ブラックオックス)。
つまるところ、この操縦器さえあえば「誰でも強力な鉄人の力を運用できる」ので、鉄人自体が犯罪の中心になる場合が多く、誕生初期は鉄人の強力な力を狙った犯罪者の事件が二重三重で複雑な絡み合いをみせる事になる。これは鉄人自体が犯罪を呼び込んでいる状態で、大塚署長のもと警察の管理下に置かれる結果に繋がったと考えられる。(これらの構図は魔人や精霊付きの魔法のランプ、魔法の壷の争奪戦に近しい) 後年は科学技術が進んだ所為で鉄人以上のロボットが作られるようになった為か、鉄人自体が犯罪の元凶になることが激減し、警察が対処できない武装した犯罪者あるいは、ロボット犯罪や特殊な事例(巨大アリ事件・光る物体事件)等に対する切り札として用いられる事が多くなる。 実働は金田正太郎への協力要請という形らしく、自衛隊や政府からは警視庁の大塚署長経由で正太郎宛に鉄人出動要請が来る場合が多い。これはなぜか?(連載中、アニメ化にあたって金田博士等の設定が加味された為か)鉄人の所有権が正太郎に移っており、リモコンと鉄人は正太郎邸に置かれ、正太郎が個人で鉄人を運用するようになった為と見られる。ただし原作完全版では明確な設定に至る描写は見られず、他の再編集ないしアニメ版の設定と混同、踏襲されていると思われる。
原作版ではリモコンのダイアルを回して操縦するが、白黒アニメ版では原作ではアンテナにあたる操縦レバーを動かして操縦するように変更された[1]。海外版では、ダイヤルの方を鉄人側に向ける描写がある。
原作の初期には覆面の男製のリモコンと、復員した敷島博士製のリモコンが存在し、敷島製のリモコンの方が優れており誘導電波が強い。 この二つを同時に使用すると鉄人本体が混乱して制御不能の状態で暴走する。(この時は本体の受信装置が未完成のまま) 覆面の男のリモコンはジャネル・ファイヴが鉄人を盗む際に利用したが、奇岩城にて鉄人自身の手によって破壊されている。 その後もモンスター事件(不乱拳博士の銃撃)、ロビーのロボット事件(正太郎により撃ち壊される)、にせ鉄人事件(誘導妨害で狂った鉄人の体当たりで)などで、リモコンは幾度も破壊されており、その都度、敷島博士に修理されている。 このリモコンも少しずつ改良されており、アンテナが折りたたみのループアンテナから二本の棒状のアンテナに、スイッチも小型の複合スイッチが、少し大きめのTVの電源と音声調整つまみのような、押すスイッチとボリュームダイヤルチックなものに変わっていき、後年では前後にスイッチが増設されている。
弱点
[編集]鉄人の弱点は、まず第一に操縦電波が比較的容易に乱される事である。雷などの自然災害による電波妨害を受けると普段の10分の1位しか力を発揮できないらしく、自然災害の場合、全く運用できない訳ではないが、太陽黒点異常によるデリンジャー現象など予想外の事態で操縦を受け付けず暴れ出してしまった事例もある。初期には受信装置が未完成で混信しやすい所為か、雷に反応し暴れたりした為にジャネル・ファイヴには「狂人ロボットめ」と悪態を突かれている。後年では敷島博士が改良したのか、雷で暴れる事は無くなったが機能不全(ロケットが止まったり、動きがぎくしゃくした)を起こす程度になっていた。 この弱点を的確に突いたブラックオックスの電波妨害装置は鉄人にとって天敵であり、逆に鉄人が盗まれ悪事に走ったり暴れたりした際は電波妨害装置で機能不全を起こさせることで、鉄人を取り戻したりしている。
第二の弱点に運用の範囲が、目視操縦できる範囲に制限される事が挙げられる。高度な判断や状況の対応ができない場合、命令の優先順位に従って行動するらしく、大雑把な誘導や破壊行動くらいしかできない(熱源か移動物体を追いかけて破壊)。強力な敵に対しては細かい戦闘指示が必要であり、不測の事態に有効な対処を行えない。その為に操縦者の目視有効範囲外での運用がおのずと制限される。実際、目視範囲外の戦闘ではオックスやVL2号、ファイア二世に敵わず遅れを取っており、自律性の高いロボットや犯罪者が逃げ去る際も、状況が目視できない場合は追跡を断念している。カニロボットが登場した沈没船引上げの時は海底カメラで状況を見ながら操縦し勝利している。 逆に見えない敵が目視できない状況で空や海底に殺到する時、正太郎や敷島博士は容赦なく鉄人を敵がいるあたりに適当に暴れ込ませる、「暴れ回れ!」戦法に出る事が多いので、見えないからと侮ると痛い目に遭う事もある。
第三の弱点は操縦者がおおよそ無防備なことである。正太郎自身も遠隔操縦ロボット戦において「ロボットより、操縦者を倒す方がはやい」と発言している。これは外部内部問わず、人が操縦するロボット全般の弱点と言えなくもないが、鉄人の物語ではリモコン操縦者は先の目視範囲内に留まっている場合が多いために操縦するロボットの近くにいる事が多く、内部操縦のように装甲の中に守られている訳ではないので(内部操縦の場合は、ロボットの動きや敵の攻撃等の衝撃を緩和する機構も必要になるなど、また別の問題が生じる)、強靭なロボット本体より生身の人間の方が攻撃しやすいためである。
この「ロボットより、操縦者を倒す方がはやい」戦法は手を変え品を変え、敵も味方も問わず用いられるが、砂漠の国王軍に相対した正太郎の鉄人の操縦者被弾擬態作戦など、操縦者の対処次第で戦術的に補う事も可能で、このような駆け引きが作品の面白さでもある。例外として身体能力が強化された超人間ケリーの存在がある。彼は銃弾やロボットの格闘戦に恐れる事無く、近距離から事細かな指示をギルバートに与えて、ロボット戦や操縦経験豊かな正太郎の操縦技術を、自身の能力を利用した操縦で、正太郎を上回る事で鉄人を追い詰めた。
派生作品における鉄人28号
[編集]実写ドラマ版
[編集]旧日本軍の軍部命令を受けて法師が岳の研究所において敷島博士を中心とする技術陣が数か月の努力の末に建造していたロボット兵器、その28番目の設計機。身長はわずか2メートル程度で胴体は樽型、頭部が太い。両手は動かすことはできない。両耳にアンテナが付いており、フランケンシュタインのごとく両手を上げながらのろく歩行する。目から怪光線を出す。第7話からは胴体が伸び、両腕が大きくなり、頭部も原作に近いデザインに変更、怪光線も胸から出すようになる。第13話で仮面団のロケットを取り付け、飛行可能になる。
太陽の使者 鉄人28号
[編集]『太陽の使者 鉄人28号』では金田正太郎の父・金田賢太郎博士が開発し、敷島大二郎博士によって完成された巨大ロボット。全高20メートル、重量25.8トン。リモコンで操縦され、直接搭乗するパイロットはいない。動力源は太陽エネルギー転換システム。独立連動システムが搭載され、機体の一部が破壊されても持続的な稼働が可能。必殺技はハンマーパンチ、フライングキック、ローリングアタックなど。普段は敷島博士宅のテニスコートの下にある格納庫に収納されている。
リモコンはアタッシュケースにアンテナが付いた形で、ビジョンコントローラーと呼称される(略称は敷島牧子の命名で「Vコン」)。中には鉄人のアイカメラ(暗部での視界確保用の照明装置「センサーライト」を併設)に接続されたモニターと、2本の操縦桿がある。操縦電波はレインボーウェーブ[2]と呼ばれる特殊な電波で妨害されにくくなっている。
超電動ロボ 鉄人28号FX
[編集]『超電動ロボ 鉄人28号FX』に登場。
- 金田正太郎の妻で榊財団の社長令嬢の科学者・金田陽子が財団の財力を後ろ盾に新たなる時代の鉄人計画のフラッグシップモデルとして開発。
- 「FX」とは「Future X(未知なる未来)」の意味。
- 当初は夏樹三郎が主操縦者として予定されていたが、正太郎の息子、金田正人はFXの性能をスペック以上に引き出す事が出来た為、彼が主操縦者となる。
- 機体内部のエネルギーを一か所に集中する超電動システムによって、強大な超電動パワーを発揮する能力を持つ。
- 超電動パワーをONにして放たれる超電動パンチ、超電動キックなど数多くの必殺技を持ち、超電動空手チョップなどの突飛な命令に対しても的確な行動を執る。
- 鳥形メカ・鉄人17号フェニックスと超電動合体すれば空中や宇宙を飛行する事が可能になるほか、鉄人10号-Xレイ-との超電動合体で水中戦にも対応できる。
- 機体制御は光線銃型の操縦機グリッドランサーに音声入力する事で行われる。コントロールパネルにパスワードを入力後、音声で命令し、引き金を引くと光線が発射[3]、FXの額に位置するセンサーがそれを受信する事で実行される。この光線は出力を調整する事が出来、最大出力では遠隔地(かつ位置が特定できていない状況)でFXに命令する事も可能なうえ、熱線を発射して敵を攻撃することも可能。
- グリッドランサーにはディスプレイも装備されており、FXの視線が捉えた映像を表示、それを利用しての操縦も可能。
- 作品に登場するロボットの多くはグリッドランサーと同タイプのリモコンで操作される。このリモコンに関する技術は鉄人計画の初頭に確立されていたらしい。
- 初代・鉄人28号
- 正太郎の父と敷島博士が共同開発したロボット。作中でも現役で稼働しており、主に正太郎(エピソードによっては正人や三郎も)が操縦する。
- パワーでは新型ロボットに劣るが、操縦者の技量次第である程度なら渡り合うことが出来、鉄人28号FXとブラックオックスの二体を圧倒したメタルサタンを単機で押さえ込む活躍を見せたこともある。リモコンは上のレバー(アンテナ)ではなく、本体の両脇にある取っ手を握り、正面にある3つのダイヤルと裏側にある2つの大きな丸いボタン型ジョイスティックで操縦する。
2004年版アニメ
[編集]『鉄人28号 (2004年版アニメ)』では旧日本軍が連合軍に対して起死回生の切り札として立ち上げた「鉄人計画」によって生み出された人型兵器。身長18メートル[4]。 開発者である金田博士が東京大空襲によって死んでしまったと思い込んでいた息子の正太郎の名前が付けられており[5]、金田博士は我が子を育てるかのように鉄人を作り上げた。 だが、鉄人の力に危機感を覚えた金田博士は、敵国に鉄人の開発場所である南方の秘密基地の所在地を漏洩。爆撃によって金田博士と共に葬られた。 しかしそれから10年後。敷島博士が自身の作り上げた鉄人27号の機動実験の際に、28号のリモートコントロール回路を使った事によって覚醒。巨大砲弾によって東京に飛来し、そこで金田正太郎と出会う。
ロボット草創期に開発されたロボットであるが、その完成度は高く最新型のロボットとも互角に戦える性能を持っている。武装は一切装備していないが鉄筋コンクリートのビルや敵ロボットを砕く怪力(ゲーム版のスタッフが100万馬力のパワーと発言した事もある)を持ち、このパワーを生かした肉弾戦を得意とする。また、銃弾やダイナマイトの爆発でも装甲には傷一つ付かない頑健さも鉄人の武器である。さらに、起動時等の大パワーを発揮する際に、全身から副作用として強力な放電をする描写があり、鉄人のそばに不用意に近づくと感電死する危険性がある[6]。
原作とは異なり設計段階から背中に取り付けられたビッグファイア博士が制作したロケットエンジンにより音速を超えた速度での飛行が可能。ロケットの推進力とパンチ力を合わせた突進技は鉄人の技の中でも最大級の破壊力で、鉄人と同クラスの装甲を持ったロボットであるバッカスを一撃で破壊した。 制御系には独立連動機構が採用されており、胴体と四肢で制御系が各々独立している。そのため片腕が破損する程度であれば全体の動作に影響は出ない。
優れたロボットであるが、量産機の試作先行型である。つまり鉄人28号を元にした量産機を多数製造し、敵国に巨大砲弾で撃ち込む事が鉄人計画の真の目的であった。 また劇中では苦戦することが多く、パワー負けや装甲の損壊も多かった。
ファイア3世との戦闘時、体内に太陽爆弾という旧日本軍の最終兵器が内蔵されている事が明らかになる。 太陽爆弾とは新元素バギュームを搭載する事により、地球上の全生命体が以後60年間生息不能となる環境を作り上げる事が出来る最悪の兵器で、鉄人はこの太陽爆弾を通常動力として使用していた事が判明する。 ただし通常時の鉄人のエネルギーにはバギューム以外のエネルギーが使われており、兵器としての鉄人28号はバギュームを搭載して初めて完成すると言える。 バギュームをエネルギー源とした鉄人は、黒部ダムを襲った数百機のブラックオックス相手に対等に戦える圧倒的なパワーを得ていた。 太陽爆弾として完成した鉄人は、いずれは爆発してしまうため役目が終われば溶鉱炉で溶かさねばならず、正太郎は最後まで鉄人にバギュームを搭載する事を拒んでいたが、日本の危機と村雨健次の説得によって正太郎は太陽爆弾を完成させる決意をする。ブラックオックス軍団の殲滅後、黒部ダム内に建造されていたブラックオックス製造工場の溶鉱炉から漏れ出した溶鉄によって鉄人を溶かそうとする正太郎だが、太陽爆弾の力に魅了されたベラネードが操縦機を破壊してしまう。人との繋がりを断たれ、制御不能に陥った鉄人は進路上にいたベラネードを踏み潰し、更に正太郎をもその手にかけようとする。正太郎は鉄人の手で殺されることが自らの受けるべき罰と悟るが、鉄人はまるで意志を持っているかのように崩壊する溶鉱炉から正太郎を庇い、溶鉄を浴びて融解する。その赤く、黒い残骸は、平成と呼ばれる今も黒部ダムの湖底から日本を見つめ続けているという。
資料によっては「今川版鉄人」と称されることもある[7]。
鉄人28号 白昼の残月
[編集]『鉄人28号 白昼の残月』に登場。全高、重量等は2004年版アニメと同じ。 金田博士が戦時中、養子のショウタロウと共に南方の島国で開発した旧日本軍の最終兵器。 『白昼の残月』のストーリーは他の派生作品と独立しているのだが、鉄人が東京に飛来した理由や黒部ダムの湖底に沈むという末路などの基本設定は2004年版に準じている。ただし、設定資料集には”太陽爆弾は内蔵されていない”とも記載されている為、どのような経緯で黒部ダムに沈んだかは不明。
敵ロボットの装甲を一撃で破壊する馬力と、核爆弾に相当する威力を持つ廃墟弾の余波に耐える装甲を持ち、背中のロケットで空を縦横無尽に飛ぶ事が出来る。 廃墟弾の余波で徐々に溶融し、包帯で応急処置を施されたり、片目が潰れるなどしたが、動作に支障をきたす事は無かった。 作中のロボットの中では間違いなくトップクラスの性能を持っているのだが、本編中で正太郎は鉄人を完全には使いこなせておらず、廃墟弾を守るために3体のB-89と戦った時には苦戦を強いられ、モンスターとの戦いでは小型モンスターの連携により動きを封じられて廃墟弾を奪われている。
「兵器としての鉄人」の操縦士として正規の訓練を受けていたショウタロウによって操られた時は、B-89を3体まとめて瞬殺し、原作では鉄人を圧倒する性能を持つバッカス、ギルバート、サターン、VL-2号を廃墟弾の影響で機体が半ば溶融した状態であるにもかかわらず破壊し、圧倒的な強さを見せた。
劇中ではショウタロウの「廃墟弾の在処は鉄人が知っている」という言葉通り、制御不能になり、都内地下に秘匿された廃墟弾を掘りだすという行動を続けていたが、実際には暴走していたわけではなく、ショウタロウの持つもう一つの操縦機によって操られていた。
武装は一切持たないのだが、ショウタロウは初撃の右ストレートで敵をぶち抜き、二撃目の左アッパーで突き上げてとどめを刺す連続技を披露しており、これが本編中における鉄人の必殺技のような扱いになっている。また、この動作でサターンを破壊する様子を観た正太郎は、鉄人が暴走しているのではなくショウタロウが操縦している事を看破した。
物語の終盤では再び正太郎が操縦。大鉄人への潜入を図るショウタロウを援護すべく、自らより遥かに巨大な大鉄人の腕を押さえる活躍を見せた。その後、自爆装置が起動した大鉄人からショウタロウを救出すべく艦橋へ突撃したが、自らの死を選んだショウタロウに操縦機を破壊され、救出を果たす事は出来なかった。物語の結末では操縦機が修理され、一連の事件で破壊された東京の復興に励んでいた。
実写映画版
[編集]『鉄人28号 (実写映画版)』に登場した鉄人は第2次大戦中、極秘裏に開発が進められていた「鉄人1号」を、主人公金田正太郎の父である金田博士が平和利用のために改良を重ねたものである。2 - 27号は全て失敗に終わり、28号でようやく完成を見たが、金田博士は開発中の事故によって命を落とす事となる。
登場時は塗装されておらず淡いグレーのようなボディカラーだったが、対ブラックオックス戦に向け大改修が行われた際、青いカラーとなり背中にロケットが取り付けられて飛行も出来るようになる。
操縦器は当初ラジコンのコントローラーのような形をしていたが、改修の際に小型化され、更に鉄人の目に当たるカメラの映像を操縦者がヘッドマウントディスプレイを通して見られるようになり、正に鉄人と一身となって戦う事が可能となった。
原作同様非常に堅固なつくりで、ブラックオックスの自爆にも耐え無事帰還した。
鉄人28号 皇帝の紋章
[編集]『鉄人28号 皇帝の紋章』では原作同様旧日本軍の秘密兵器として作られるが、日本の敗戦を予測していた金田博士によってあえて武装を搭載されず、巨大な「人」として建造された。 動力部及び電子頭脳は敷島博士にも解析できないブラックボックスとなっている。後世にて「松井一郎」なる人物が鉄人の研究を行っており、彼の分析によれば「鉄人に燃料が補給された記録は無く、落雷によって起動した」、「金田博士は謎の”石版”を作っていた」という証言から、動力には常温超伝導、電子頭脳にはダイオードが使用されており、双方を金田博士が独自に発明した可能性が高いとされる[8]。
リモコンの形は原作に近いが、2本のレバーは明確に「操縦捍」としてデザインされており、半自動モードでは前後のみ、完全手動モードでは四方に動く。複数のモード切り替え等(作中の時代背景と比較して)複雑な操縦体系を有するため、使いこなせるのはほぼ正太郎のみ。モニターがないにもかかわらず本体からレバーに帰ってくるフィードバックを元に操縦したり、水中モード時のクロールの動きを投擲に応用する等の「裏技」すら披露している。また、妨害電波発生装置を搭載したブラックオックスとの戦いでは操縦機と鉄人をコードで接続、操縦機を搭載したジープ上から有線操縦を行えるように改造が施され、有線と無線を切り替えるトリッキーな戦術でオックスを翻弄している[9]。
「皇帝の紋章」の謎を解き明かすために、紋章を狙って世界各国から差し向けられたロボットと交戦。その後全面核戦争を引き起こそうとする人工知能ロビー操る核弾頭搭載型ロボット「溶鉱炉」(シュメルツ・オーフェン)と戦うも、圧倒的なパワーの前に窮地に陥った。シュメルツ・オーフェンが巨大な核ミサイルとなって宇宙空間に打ち上げられようとするに及び、万策尽きた正太郎は両足をもぎ取って軽量化した鉄人をシュメルツ・オーフェンにしがみ付かせ、操縦機と大破したブラックオックスの電波発信装置と組み合わせることで、宇宙空間で核を爆破させるという捨て身の戦法を取る。しかし、宇宙空間に辿り着いた鉄人は沈黙。ロビーは「もう操縦電波は届かない」と嘲笑いながら鉄人を引き剥がそうとしたが、鉄人はまるで意思を持っているかのごとく再起動、頭上で輝く地球に向けて手を伸ばし拳を固める。そのまま拳をシュメルツ・オーフェンに打ち込んで核を爆破させた(この行動が正太郎の操作によるものなのかは不明)。地上で核の爆発が観測された直後、操縦機は機能を停止している。
鉄人奪還作戦
[編集]『鉄人奪還作戦』では戦時中に旧日本軍が計画していた、鉄人計画を再利用した21世紀の鉄人計画で作られた。実写映画版同様に平和利用目的で作られた、作業用ロボットだが、Dr.Tの開発した「無限動力」が組み込まれ、機動力は本来の20倍に増加、エネルギー切れの心配を解消している。PX団が技術者達を拉致し、完成させたが、正太郎等の活躍で技術者達諸共奪還され、以降は正太郎が操縦する事になる。リモコンは原作のものとは大きく異なり、ポータブルオーディオプレイヤーの様な薄型である。
なお、当初はロケットブースターは装備されていなかったが、第2巻以降は装備される。ただし、ロケットには無限動力の恩恵を受けられないため、飛行は時間制限がある。これが本作での鉄人の弱点となっている。
脚注
[編集]- ^ ただし、初期のオープニングでは原作同様ダイアルを回して操縦している。
- ^ 名前は電波の周波数帯域(チャンネル)を7つ用いている事に由来する。この7チャンネルの電波は動的に変動し、お互いが干渉をしないように工夫されているので、ジャミングが出来ない。
- ^ このコマンドの送受信にはレインボーチャンネル(7帯域周波数)が採用されているが、こちらは一段階進化していて各々の周波数が更に別の周波数のパスコードになっている。暗号解析や傍受を完全に防ぐ事を考えた超高度セキュリティを備えている為、グリッドランサー等のコントローラー争奪戦が行われる事が幾度かあった。
- ^ ちなみにこれは「機動戦士ガンダム」に登場するモビルスーツ各機種の全高と全く同じ
- ^ “鉄人28号 WEB SITE”. king-cr.jp. 2020年6月9日閲覧。
- ^ 劇中ではそれを逆手にとって敵を倒したことがある。原作でも同様の放電を視覚効果として行っているが、感電等の物理的効果があったのは2004年版独自の特徴である。
- ^ “「鉄人28号」が抱える脆弱性とは? ロボット悪用を防ぐ”認証”を考える”. ITmedia NEWS. 2020年6月9日閲覧。
- ^ これらの分析は単行本巻末の「鋼鉄人間28号資料館」に掲載されている。
- ^ しかし、有線操縦には鉄人の付近で操縦しなければならないというリスクが伴う上、加速度や戦闘の衝撃で正太郎やジープの操縦者は多大な苦痛・消耗を強いられる。
関連項目
[編集]- 衣笠祥雄 - 入団からしばらくは背番号が「28」であったため「鉄人」と呼ばれた。