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遮断 (水文学)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

遮断(しゃだん、英語: interception)とは、森林において無機質土壌層に達する前に降水林冠または林床英語版に付着したのち蒸発したり、一部は植物体内に吸収されたりすることである[1]。遮断は、森林地域における蒸発散の原因として、蒸散の次に主要なものである[2]

林冠における遮断を林冠遮断英語版、林床における遮断を林床遮断英語版という[1]

降雨遮断

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降雨遮断rainfall interception)とは、森林において降雨の一部が樹冠やリター層に捕捉されることである[3]。このうち、樹冠における降雨遮断は樹冠遮断、リター層における降雨遮断はリター遮断という[3]

森林への降雨(林外雨)は、樹冠通過雨英語版[注釈 1]樹幹流英語版[注釈 2]として林床に到達するものもあれば、樹冠から蒸発する(遮断損失[注釈 3])ものもある[6]。林外雨量を、樹幹通過雨量を、樹幹流量を、遮断損失量をとするとき、

が成立する[7]

ここで、林外雨量に対して、樹幹通過雨量の割合は70 - 80%程度、樹幹流量の割合は概して10%以下、遮断損失量の割合は、温帯林や熱帯林では10 - 20%程度である[8]

遮断損失量は、林外雨量から樹幹通過雨量、樹幹流量を減算することで求められる[9]。また、遮断損失量は降雨強度の増大に伴い大きくなる[10]

降雪遮断

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降雪遮断とは、森林において降雪の一部が樹冠に付着し、消失することである[11]

降雪遮断は、降雪遮断と比較して、降雪の貯留容量が大きく、貯留期間が長い[12]。また、降雪遮断は、樹冠のアルベドにも影響を及ぼす[12]

日本では、樹木の雪害対策として降雪遮断の研究が進められてきた[13]。一方、日本国外では遮断損失およびエネルギー収支の観点から研究が進められてきた[13]

脚注

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注釈

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  1. ^ 樹冠通過雨throughfall)とは、滴下雨と直達雨をあわせたものである[2]。なお、滴下雨は、林冠に捕捉された降水のうち、枝葉や樹皮表面から滴下したもののこと、直達雨は、林冠の間を通過し林床に達する降水のことである[2]
  2. ^ 樹幹流stemflow)とは、樹幹から林床への水の流れのことである[4]
  3. ^ 遮断損失interception loss)は、狭義には林冠における蒸発のことをいうが、広義にはリター英語版による遮断や、樹幹の着生植物による遮断なども含めることがある[5]

出典

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  1. ^ a b 野口 2000, p. 58.
  2. ^ a b c 飯田・濱田 2009, p. 104.
  3. ^ a b 佐藤 2007, p. 14.
  4. ^ 飯田・濱田 2009, p. 105.
  5. ^ 飯田・濱田 2009, p. 106.
  6. ^ 飯田・濱田 2009, p. 103.
  7. ^ 飯田・濱田 2009, pp. 103–104.
  8. ^ 飯田・濱田 2009, pp. 105–106.
  9. ^ 村上 2012, p. 86.
  10. ^ 村上 2012, p. 88.
  11. ^ 鈴木ほか 2006, p. 590.
  12. ^ a b Lundberg and Halldin 2001, p. 121.
  13. ^ a b 鈴木ほか 2006, p. 591.

参考文献

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  • 飯田真一・濱田洋平 著「地表面を介した降雨の分配」、田中正・杉田倫明 編『水文科学』共立出版、2009年、103-131頁。ISBN 978-4-320-04704-4 
  • 佐藤嘉展 著「樹冠遮断」、森林水文学編集委員会 編『森林水文学』森北出版、2007年、14-39頁。ISBN 978-4-627-29091-4 
  • 鈴木和良・山崎剛・太田岳史「森林帯での積雪過程」『雪氷』第68巻、2006年、589-598頁、doi:10.5331/seppyo.68.589 
  • 野口陽一「森林水文学についての再考察と水収支基本式の連続的適用」『水利科学』第44巻第4号、2000年、49-71頁、doi:10.20820/suirikagaku.44.4_49 
  • 村上茂樹「樹冠遮断のメカニズムと森林の増雨効果」『水利科学』第56巻第1号、2012年、82-99頁、doi:10.20820/suirikagaku.56.1_82 
  • Lundberg, A.; Halldin, S (2001). “Snow interception evaporation. Review of measurement techniques, processes, and models”. Theoretical and Applied Climatology 70: 117–133. doi:10.1007/s007040170010.