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遠山茂樹 (ロボット研究者)

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遠山 茂樹とおやま しげき
人物情報
生誕 (1953-04-08) 1953年4月8日(71歳)[1]
岐阜県[2]
出身校 東京大学
学問
研究分野 機構学ロボット工学
研究機関 東京大学
カリフォルニア大学サンタバーバラ校[3]
東京農工大学
東京国際工科専門職大学
博士課程指導教員 高野政晴[4]
博士課程指導学生 Paulus Eko Purwanto[5]、波多江茂樹[6]深谷直樹[7]、Apiwat Reungwetwattana[8]、米竹淳一郎[9]、青代敏行[10]、真下智昭[11]
学位 工学博士(東京大学)[4]
主な業績 A1motion、球面超音波モータ、農作業用アグリスーツ
学会 精密工学会、ライフサポート学会、日本機械学会日本ロボット学会[12][13][注 1]
主な受賞歴 市村学術賞貢献賞[14]ロボット大賞優秀賞[15]
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遠山 茂樹(とおやま しげき、1953年昭和28年〉4月8日[1] - )は、日本ロボット研究者東京大学工学博士[1][16]東京農工大学名誉教授[17]。球面超音波モータやその応用製品[18][19][15]、農作業用動作支援スーツ[20]などを開発。ロボットの動力学シミュレータや設計支援ソフトでも実績がある[21][22]。東京大学助手、東京農工大学助教授、同教授、同大学発ベンチャーの株式会社オーケー・ロボティクス代表取締役[23][注 2]東京国際工科専門職大学教授を歴任[25][17]

来歴・人物

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東京大学時代

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1974年東京大学工学部精密機械工学科を卒業[1]。同大学大学院工学系研究科に進学し、1978年修士課程修了[1]1981年博士課程を修了し、工学博士の学位を取得する[1][16]高野政晴のもとでロボットの高速化に取り組み、平行クランク機構や最短時間制御を導入した[4]。大学院修了後、工学部助手に就任[1]。引き続き高野のもとでロボットや機構のシミュレータ開発や運動学・動力学解析に取り組む[26][27][28]

東京農工大学時代

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1985年より東京農工大学工学部機械システム工学科助教授[16]1986年から1987年にかけてカリフォルニア大学サンタバーバラ校客員教授[3][16]。遠山はロボットに限らない汎用機構シミュレータの開発も進め、「A1 MOTION」と名付けている[29]また、この頃ロボット用アクチュエータとして超音波モータの多自由度化の研究を開始し、3軸の回転運動が可能な球面超音波モータを初めて実現させた[30][31][32]。球体を超音波リニアアクチュエータで3次元駆動させる取り組みは前例があるが[30]、球体自体をロータとし、ステータで直接駆動させる球面超音波モータは遠山が初めてであった[31]

1995年教授昇進[33]。遠山は球面超音波モータを用いた動力義手をダブル技研株式会社と共同開発[18][19]。同社とは深谷直樹と人間型のフレキシブルハンドも開発している[34]。また、球面超音波モータは株式会社キュー・アイにより管内検査ロボットに応用された[15][35]。さらに遠山は超音波モータと電動モータを併用して軽量化した農作業用パワーアシストスーツも開発していく[20][36][33]。また、2000年に深谷やダブル技研株式会社と協調リンク機構による簡易型のロボットハンドを特許出願している[37](特許成立は2007年[38])。

科学技術振興機構の支援も受けて2011年に大学発ベンチャーとして株式会社オーケー・ロボティクスを設立し、同社代表取締役に就任する[23][39]。球面超音波モータや硬性内視鏡、農作業用パワーアシストスーツを販売しており、パワーアシストスーツはリンゴ収穫に重きを置き、モータでなくバネを基本にしている[40][41]。なお、2017年には株式会社豆蔵で遠山のシミュレーション技術が活用され、ロボット開発の短時間化が実現している[22][42]

東京国際工科専門職大学時代

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2022年現在、東京農工大学名誉教授、および東京国際工科専門職大学情報工学科教授[25][17]

著作

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学位論文

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  • 『ロボットの運動の高速化に関する研究』東京大学〈博士論文(甲第5448号)〉、1981年3月30日、NAID 500000260863

単著

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  • 『インテリジェントソリッドモデル入門』、オーム社、1988年12月、ISBN 4274086003
  • 『機械系のためのロボティクス』、総合電子出版社、1989年5月、ISBN 4915449556
  • 『機械のダイナミクス ―マルチボディ・ダイナミクスー』、コロナ社、1993年12月、ISBN 4339043141
  • 『ロボット工学』、コロナ社〈メカトロニクス教科書シリーズ 8〉、1994年2月、ISBN 4339043974

共著

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  • 高野政晴、遠山茂樹 共著『演習機械運動学』、サイエンス社〈セミナーライブラリ機械工学 5〉、1984年6月、ISBN 4781903622
  • K.S.フー、C.S.G.リー、R.C.ゴンザレス 共著『ロボティクス―そのメカニズム、制御、センシング、視覚、プログラミング言語、そして知能化』、本多庸悟、古屋信幸、遠山茂樹、金子俊一 共訳、日刊工業新聞社、1989年2月、ISBN 4526024767

解説

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主な受賞歴

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特許

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(発明者)

(特許権者)

脚注

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注釈

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  1. ^ 以前はIEEE計測自動制御学会に所属していたこともある[1]
  2. ^ 法人番号9012401021697[24]
  3. ^ 受賞対象開発テーマ - 「球面超音波モータの開発と応用」[14]
  4. ^ 受賞論文 - 深谷直樹、和田博、遠山茂樹「球面超音波モータ用ステータの開発(第1報)ステータ形状の検討」『精密工学会誌』第66巻第5号、2000年、769-774頁[18]
  5. ^ 受賞論文 - 深谷直樹、沢田潔、奥秀明、和田博、遠山茂樹「球面超音波モータを用いた動力義手の開発」『精密工学会誌』第67巻第4号、2001年、654-659頁[19]

出典

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  1. ^ a b c d e f g h 遠山 1990, p. 95.
  2. ^ 遠山 1991, 著者紹介.
  3. ^ a b 遠山 1991, 緒論.
  4. ^ a b c 遠山 1981.
  5. ^ Paulus Eko Purwanto『Research in dynamics analysis for human body model』、東京農工大学〈博士論文(甲第157号)〉、1997年3月25日、NAID 500000146749
  6. ^ 波多江茂樹『空気圧を用いた移乗移載ロボットに関する研究』東京農工大学〈博士論文(甲第259号)〉、2000年3月24日、NAID 500000200030
  7. ^ 深谷直樹『球面超音波モータを用いた人工義手に関する研究』、東京農工大学〈博士論文(甲第287号)〉、2001年3月26日、NAID 500000210002
  8. ^ Apiwat Reungwetwattana『An efficient forward dynamics analysis method with constraint violation treatment for multibody systems]』、東京農工大学〈博士論文(甲第308号)〉2002年3月25日、NAID 500000225165
  9. ^ 米竹淳一郎『超音波モータを用いたパワーアシストスーツシステムに関する研究]』、東京農工大学〈博士論文(甲第505号)〉、2007年3月26日、NAID 500000408179
  10. ^ 青代敏行『ヒト上肢運動のためのMRI対応マニピュランダムの開発』、東京農工大学〈博士論文(甲第558号)〉、2008年3月25日、NAID 500000439430
  11. ^ 真下智昭『脳外科手術支援ロボットのための多自由度圧電アクチュエータに関する研究』、東京農工大学〈博士論文(甲第560号)〉、2008年3月25日、NAID 500000439432
  12. ^ 遠山 2006, p. 190.
  13. ^ 遠山 2010, p. 109.
  14. ^ a b c 市村学術賞 過去の受賞一覧 第32回”. 市村賞. 新技術開発財団. 2017年4月2日閲覧。
  15. ^ a b c d 優秀賞(産業用ロボット部門)球面モータを使用した「管内検査ロボット」”. ロボット大賞. 2017年4月2日閲覧。
  16. ^ a b c d 遠山 1995, p. 1227.
  17. ^ a b c 遠山 茂樹 TOYAMA Shigeki”. KAKEN. 国立情報学研究所. 2022年4月22日(UTC)閲覧。
  18. ^ a b c d 精密工学会論文賞受賞論文一覧表”(PDF). 精密工学会. 2017年4月2日閲覧。
  19. ^ a b c d 過去の「 論文賞(含む特別賞)」一覧(平成14年から平成27年財団の事業)”(PDF). 財団の事業. 一般財団法人FA財団. 2023年12月16日(UTC)閲覧。
  20. ^ a b 農作業を楽にするアグリスーツ」、『ロボコンマガジン』第64号、2009年7月、pp.18-
  21. ^ 周藤瞳美 (2016年2月25日). “豆蔵、産業用ロボットアームの開発期間短縮に向け農工大と共同研究を開始”. マイナビニュース. 2017年4月2日閲覧。
  22. ^ a b 森山和道 (2017年3月14日). “豆蔵+東京農工大、産業用ロボットの短期間設計手法を実現 ―誰でも高精度ロボットアームが作れる時代が到来―”. Tech Note. iPROS. 2017年9月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月16日(UTC)閲覧。
  23. ^ a b 会社概要”. 株式会社オーケー・ロボティクス. 2017年4月8日閲覧。
  24. ^ 株式会社オーケー・ロボティクスの情報”. 法人番号公表サイト. 国税庁. 2022年4月22日(UTC)閲覧。
  25. ^ a b 教員紹介”. 東京国際工科専門職大学. 2022年4月22日(UTC)閲覧。
  26. ^ 遠山 1990, p. 94.
  27. ^ 遠山 1991, p. 194.
  28. ^ 遠山 1992.
  29. ^ 遠山茂樹『機械系のためのロボティクス』総合電子出版社、1989年5月 (1991年5月30日発行第2版)、ISBN 4915449556
  30. ^ a b 矢野智昭「多自由度アクチュエータ」、『日本ロボット学会誌』第15巻第3号、1997年、330-333頁。
  31. ^ a b 矢野智昭、前野隆司「球面モータ」、『日本ロボット学会誌』第21巻第7号、2003年、740-743頁。
  32. ^ 前野隆司超音波モータ」、『日本ロボット学会誌』第21巻第1号、2003年、10-14頁。
  33. ^ a b 遠山 2010.
  34. ^ フレキシブルハンド”. ダブル技研株式会社. 2017年4月4日閲覧。
  35. ^ ロボットイノベーション2012 イベント報告”. 産業バンクかわさき. 2023年12月16日(UTC)閲覧。
  36. ^ 遠山 2006.
  37. ^ 特開2002-103269 簡潔構造の人間型ハンド”. 特許情報プラットフォーム. 特許庁. 2023年12月16日(UTC)閲覧。
  38. ^ 特許第4462742号 簡潔構造の人間型ハンド”. 特許情報プラットフォーム. 特許庁. 2023年12月16日(UTC)閲覧。
  39. ^ ベンチャー企業一覧”. ベンチャー独創的シーズ展開事業 大学発ベンチャー創出推進. 科学技術振興機構(2012年10月1日) 2017年4月8日閲覧。
  40. ^ オーケー・ロボティクスの技術”. 株式会社オーケー・ロボティクス. 2017年4月9日閲覧。
  41. ^ 農作業用パワーアシストスーツ Power Assist Suite (PAS)”. オーケーロボティクスの技術. 株式会社オーケー・ロボティクス. 2017年4月9日
  42. ^ 豆蔵と東京農工大学、産業用ロボットアームの開発期間を短縮する設計手法を実用化”. IoT NEWS. (2017年3月10日) 2023年12月16日(UTC)閲覧。
  43. ^ a b 教授 遠山茂樹”. 東京農工大学工学府機械システム系遠山研究室. 東京農工大学. 2017年4月2日閲覧。
  44. ^ ニュースレター22. 日本機械学会機素潤滑設計部門. 2017年4月2日閲覧。

外部リンク

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(関連組織)