谷川稔
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谷川 稔(たにがわ みのる、1946年12月 - )は、日本の歴史学者。専門は、フランス近代史。京都の近代社会史研究会[1][2]などを拠点にした、社会史研究第二世代の担い手。『十字架と三色旗』で日本のフランス近代史像を刷新し[1][2]、大著ノラ編『記憶の場』の全容紹介で「記憶の歴史学」に寄与した。
来歴
[編集]京都府京都市生まれ。1965年府立洛北高校卒業。1970年京都大学文学部史学科卒業、1975年京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得満期退学。1976年10月から、大阪産業大学専任講師・助教授、奈良教育大学助教授、奈良女子大学教授、同大学院教授、パリ第一大学客員教授などを経て、1998年京都大学大学院文学研究科教授。京都大学文学博士(1988年)。2005年3月31日、頸髄損傷後遺症、心臓病悪化に、国立大独法化への抗議も込めて京都大学教授を辞職。以後、在野の歴史家となる。
高校の同期生に元外務審議官の田中均、西南アジア史の濱田正美(京大名誉教授)、大学同期生に日本近世史の藤井譲治(京大名誉教授)らがいる。日本近代史の谷川穣(京大教授)は長男。
著書
[編集]単著
[編集]- 『フランス社会運動史――アソシアシオンとサンディカリスム』(山川出版社, 1983年)ISBN 4634655705
- 『十字架と三色旗――もうひとつの近代フランス』(山川出版社, 1997年)ISBN 4634481502
- 『国民国家とナショナリズム』(山川出版社, 1999年)ISBN 4634343509
- 『十字架と三色旗―近代フランスの政教分離』(岩波現代文庫、2015年)ISBN 9784006003265
共著
[編集]- (北原敦・鈴木健夫・村岡健次)『世界の歴史 (22) 近代ヨーロッパの情熱と苦悩』(中央公論新社, 1999年/中公文庫, 2009年)
- (谷口健治・田中正人・渡辺和行・常松洋・藤川隆男ほか)『規範としての文化――文化統合の近代史』(平凡社, 1990年/ミネルヴァ書房, 2003年)ISBN 4582427111
- (福井憲彦編、林田伸一、渡辺和行)『フランス史・下』(山川セレクション, 2021年)ISBN 978-4-634-42390-9
編著
[編集]- 『歴史としてのヨーロッパ・アイデンティティ』(山川出版社, 2003年)ISBN 4634649101
共編著
[編集]- (服部春彦)『フランス近代史――ブルボン王朝から第五共和政へ』(ミネルヴァ書房, 1993年)ISBN 4623022099
- (服部春彦)『フランス史からの問い』(山川出版社, 2000年)ISBN 4634673002
- (渡辺和行)『近代フランスの歴史――国民国家形成の彼方に』(ミネルヴァ書房, 2006年)ISBN 4623044955
- (喜安朗・北原敦・岡本充弘)『歴史として、記憶として――「社会運動史」1970-1985』(御茶の水書房, 2013年)ISBN 978-4-275-01032-2
- (金澤周作・川島昭夫・南直人)『越境する歴史家たちへ――「近代社会史研究会」(1085-2018)からのオマージュ』(ミネルヴァ書房, 2019年)ISBN 978-4-623-08566-8
訳書
[編集]- ジョルジュ・ルフラン『フランス労働組合運動史』(白水社, 1974年)ISBN 4806804592
- H・デュビエフ編『サンディカリスムの思想像』(共訳、田中正人・上村祥二・藤本佳子と、鹿砦社、1978年)
- 河野健二編『資料 フランス初期社会主義――二月革命とその思想』(共訳、阪上孝ほかと、平凡社、1979年)
- 河野健二編『資料 フランス革命』 (共訳、文献解題、岩波書店、1989年)
- ミシェル・ヴォヴェル『フランス革命と教会』(共訳、天野知恵子、平野千果子、田中正人と、人文書院, 1992年)ISBN 4409510258
- フランソワ・フュレ、モナ・オズーフ編『フランス革命事典Ⅰ』(河野健二・服部春彦・阪上孝らと共訳、みすず書房、1995年)
- ピーター・バーク編『ニュー・ヒストリーの現在――歴史叙述の新しい展望』(共訳、谷口健治、川島昭夫、太田和子ほかと、人文書院, 1996年)ISBN 440951041X
- アレン・グットマン『スポーツと帝国――近代スポーツと文化帝国主義』(共訳、石井昌幸、池田恵子、石井芳枝と、昭和堂, 1997年)ISBN 4812297125
- ピエール・ノラ編『記憶の場――フランス国民意識の文化=社会史(全3巻)』(共監訳、天野知恵子、上垣豊、長井伸仁、平野千果子ほかと、岩波書店, 2002-2003年)ISBN 4000225197 ISBN 4000225200 ISBN 4000225219
主要論文
[編集]- 「サンディカリスムにおける革命理念」(『現代の理論』150号、1976年)
- 「《産業帝政》下における労働運動の再生」(河野健二編『フランス・ブルジョア社会の成立』岩波書店、1977年)
- 「プル-ドン主義とサンディカリスム」(『思想』647号、1978年)
- 「フランス人民戦線の夢と祭―ヴァカンスと工場占拠」(角山栄ほか編『講座西洋経済史-Ⅵ』同文館、1980年)
- 「シモ-ヌ・ヴェイユとサンディカリスム」(河野健二編『ヨ-ロッパ1930年代』岩波書店1980年)
- 「コルボンと『パリ民衆の秘密』」 (『思想』702号、1982年)
- 「二月革命と『カトリシスム』」(阪上孝編『1848-国家装置と民衆』ミネルヴァ書房、1985年)
- 「コンパニョナージュと職能的共同体」(二宮宏之他編『<世界史への問い>第4巻-社会的結合』岩波書店、1989年)
- 「19世紀フランス農村の知・モラル・ヘゲモニー」(近藤和彦・福井憲彦編『歴史の重さ』日本エディタースクール、1991年)
- 「文化革命としてのフランス革命」(服部・谷川編『フランス近代史―ブルボン王朝から第5共和政へ』ミネルヴァ書房、1993年)
- 「もう一つのフランス近代史のために」、「反省の弁―なぜに去り行かぬ近代」(遅塚忠躬・近藤和彦編『過ぎ去ろうとしない近代』(山川出版社、1993年)
- 「文化=社会史の万華鏡―『記憶の場』の読み方・読まれ方」『思想』911号、2000年
- 「『記憶の場』の彼方に」(P・ノラ編『記憶の場』日本語版序文、2002年)
- 「ノラ編『記憶の場』」(樺山紘一編『新・現代歴史学の名著』2010年、2016年に韓国語版)
- 「全共闘運動の残像と歴史家たち―社会運動史から社会史へ」(共編著『記憶として 歴史として』お茶の水書房、2013年)
- 「「近社研」の軌跡をたどる―情熱の草創から苦渋の終幕へ」(共編著『越境する歴史家たちへ』ミネルヴァ書房、2019年)
脚注
[編集]- ^ a b 谷川稔, 川島昭夫, 南直人, 金澤周作 編著『越境する歴史家たちへ』ミネルヴァ書房、2019年。ISBN 978-4-623-08566-8。
- ^ a b 伊達聖伸 著「第九章 ルソー的フランスからヴォルテール的フランスを経てジョレス的フランスへ――社会史と宗教学の対話の試み」、宇野重規, 伊達聖伸, 髙山裕二 編『フランス知と戦後日本 : 対比思想史の試み』白水社、2024年。ISBN 978-4-560-09277-4。