論理記号の一覧
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論理記号の一覧(ろんりきごうのいちらん)では、論理学における記号について解説する。論理記号は、当学問分野で広く論理的表現を表すのに用いられている。
以下の表は多くの一般的な記号について、それらの名称と読み方、数学における関連分野について記している。加えて、非形式的な定義と単純な例を示す。そしてUnicodeにおける符号位置や文字参照、LaTeXで使用可能なコマンドを記している。
基礎的な論理記号
[編集]記号 | 名称 / 読み方 | Unicode | 文字参照 | 実体参照 | LaTeXコマンド | |
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説明 | ||||||
例 | ||||||
⇒ | 実質含意 | 含む; もし~ならば | U+21D2 | ⇒ | ⇒ | \Rightarrow \implies |
古典論理においては、A が偽または B が真であるとき、A ⇒ B を真とする。
直観主義論理においては、A を前提として B が証明できるとき、A ⇒ B を真とする。 どの記号を使うかは文献による。 | ||||||
→ | U+2192 | → | → | \to | ||
例:x = 2 ⇒ x2 = 4 は真である。
ただし x2 = 4 ⇒ x = 2 は一般に偽である(ここで x は -2 の可能性もある)。 | ||||||
⊃ | U+2283 | ⊃ | ⊃ | \supset | ||
⇔ | 実質等値 | ~のとき、かつそのときに限り; iff; | U+21D4 | ⇔ | ⇔ | \Leftrightarrow \iff |
「A ⇔ B」は、A と B が共に真、または共に偽のときのみ真となる。 | ||||||
≡ | U+2261 | ≡ | ≡ | \equiv | ||
例:x + 5 = y + 2 ⇔ x + 3 = y | ||||||
↔ | U+2194 | ↔ | ↔ | \leftrightarrow | ||
¬ | 否定 | ~ではない | U+00AC | ¬ | ¬ | \lnot \neg |
言明「¬A」は A が偽のときのみ真となる。
演算子の上に置かれたスラッシュは、否定記号 ¬ が演算子の前に置かれているのと同じく、その演算子の否定を意味する。 | ||||||
˜ | U+02DC | ˜ | ˜ | \tilde{} | ||
例:¬(¬A) ⇔ A, x ≠ y ⇔ ¬(x = y) | ||||||
! | U+0021 | ! | ! | |||
記号 | 名称 / 読み方 | Unicode | 文字参照 | 実体参照 | LaTeXコマンド | |
説明 | ||||||
例 | ||||||
∧ | 論理積 | かつ (and) | U+2227 | ∧ | ∧ | \land \wedge |
言明「A ∧ B」は、A と B が共に真であるときのみ、真である、他の場合は偽。 | ||||||
· | U+00B7 | · | · | \cdot | ||
⋅ | U+22C5 | ⋅ | ⋅ | |||
例:n < 4 ∧ n > 2 ⇔ n = 3(n が自然数であるとき) | ||||||
& | U+0026 | & | & | \& | ||
∨ | 論理和 | または (or) | U+2228 | ∨ | ∨ | \lor \vee |
言明「A ∨ B」は、A または B のいずれか(または両方)が真のとき、真である; そして両方が偽のときは、偽。 | ||||||
+ | U+002B | + | - | |||
例:n ≥ 4 ∨ n ≤ 2 ⇔ n ≠ 3 (n が自然数であるとき) | ||||||
∥ | U+2225 | ∥ | - | \parallel | ||
⊕ | 排他的論理和 | xor | U+2295 | ⊕ | ⊕ | \oplus |
言明「A ⊕ B」は、A または B のいずれか(両方ではない)が真のとき、真となる。
「A ⊻ B」も意味は同じ。 | ||||||
⊻ | U+22BB | ⊻ | - | \veebar | ||
例:(¬A) ⊕ A は常に真である。A ⊕ A は常に偽である。 | ||||||
⊤ | トートロジー | トップ | U+22A4 | ⊤ | - | \top |
言明「⊤」は無条件に真である。 | ||||||
T | U+0054 | T | - | |||
例:A ⇒ ⊤ は常に真。 | ||||||
1 | U+0031 | 1 | - | |||
⊥ | 矛盾 | ボトム | U+22A5 | ⊥ | - | \bot |
言明「⊥」は無条件に偽である。 | ||||||
F | U+0046 | F | - | |||
例:⊥ ⇒ A は常に真。 | ||||||
0 | U+0030 | 0 | - | |||
記号 | 名称 / 読み方 | Unicode | 文字参照 | 実体参照 | LaTeXコマンド | |
説明 | ||||||
例 | ||||||
∀ | 全称量化 | すべての; 任意の; それぞれについて | U+2200 | ∀ | ∀ | \forall |
「∀ x: P(x)」は、すべての x について P(x) が真であることを意味する。 | ||||||
例:∀ n. n2 ≥ n. (算術の言語および公理系において) | ||||||
∃ | 存在量化 | ~が存在する | U+2203 | ∃ | ∃ | \exists |
「∃ x: P(x)」は、P(x) を満たす x が少なくとも1つは存在することを意味する。 | ||||||
例:∃ n. n が偶数. | ||||||
∃! | 唯一存在量化 | ~がただ1つ存在する | U+2203 U+0021 | ∃ |
- | \exists! |
「∃! x: P(x)」は、P(x) を満たす x がただ1つ存在することを意味する。 | ||||||
例:∃! n. n + 5 = 2n. | ||||||
記号 | 名称 / 読み方 | Unicode | 文字参照 | 実体参照 | LaTeXコマンド | |
説明 | ||||||
例 | ||||||
≔ | 定義 | ~として定義される | U+2254 | ≔ | - | \coloneqq[注釈 1] |
「x ≔ y」や「x ≡ y」は、x は y の別名として定義されることを意味する。 (ただし「≡」は、単なる一致も意味する)
「P :⇔ Q」は、P が Q と論理的に等価に定義されることを意味する。 | ||||||
≡ | U+2261 | ≡ | ≡ | \equiv | ||
例:
cosh x ≔ (1/2)(exp x + exp (−x)) A XOR B :⇔ (A ∨ B) ∧ ¬(A ∧ B) | ||||||
:⇔ | U+003A U+229C | : |
:⇔ | :\Leftrightarrow | ||
( ) | 優先順位 | 括弧 | U+0028 U+0029 | ( ) | ∃ | () |
括弧内の操作を優先して実行する。 | ||||||
例:(8 ÷ 4) ÷ 2 = 2 ÷ 2 = 1, 一方で 8 ÷ (4 ÷ 2) = 8 ÷ 2 = 4. | ||||||
⊢ | ターンスタイル | ~を証明する | U+22A2 | ⊢ | - | \vdash |
「x ⊢ y」は x から y が形式的に証明されることを意味する。 | ||||||
例:A → B ⊢ ¬B → ¬A | ||||||
⊨ | ダブル・ターンスタイル | ~を含意する | U+22A8 | ⊨ | - | \vDash |
「x ⊨ y」は x が y を含意することを意味する。 | ||||||
例:A → B ⊨ ¬B → ¬A | ||||||
記号 | 名称 / 読み方 | Unicode | 文字参照 | 実体参照 | LaTeXコマンド | |
説明 | ||||||
例 |
その他の論理記号
[編集]以下では、発展的または稀に用いられる論理記号について述べる。
- ⋅
- オーバーラインの引かれた中点は否定論理積 NAND を表す。A · B は ¬ (A & B) と等価。
- オーバーライン
- 数式の上に引かれたオーバーラインは、ゲーデル数を表すことがある。例えば A ∨ B は、論理式 A ∨ B のゲーデル数を意味する。
- またオーバーラインで否定を表すこともある。例えば A ∨ B は、¬(A ∨ B) と等価。
- U+007C | vertical line
- U+2191 ↑ upwards arrow
- U+22BC ⊼ nand
- シェファーの棒記号 (Sheffer stroke) とも呼ばれ、否定論理積 NAND 演算子である。
- U+2193 ↓ downwards arrow
- U+22BD ⊽ nor
- パースの矢印 (Peirce arrow) とも呼ばれ、否定論理和 NOR 演算子である。
- U+2201 ∁ complement
- 集合論において補集合を表す。例えば、全体集合が了解されている集合 A について、その補集合は と表される。
- U+2204 ∄ there does not exist
- 斜線の引かれた存在量化子は、¬∃ と等価である。すなわち存在の否定を意味する。
- U+2234 ∴ therefore
- 「故に、従って (therefore)」を意味する。
- U+2235 ∵ because
- 「なぜならば (because)」を意味する。
- U+22A7 ⊧ models
- 左辺が右辺のモデルであることを意味する2項演算子。例えば理論 T について「M ⊧ T」は、M が T のモデルであることを意味する[1]。
- U+22A8 ⊨ true
- 右辺が左辺の論理的帰結であることを意味する2項演算子。例えば理論 T と論理式 φ について「T ⊨ φ」は、φ が T の論理的帰結である、すなわち φ が T の定理であることを意味する。
- また「論理的に正しい」ことを意味する前置演算子。「∅ ⊧ φ」を「⊧ φ」と略記する、ここで ∅ は空集合[1]。
- U+22AC ⊬ does not prove
- 「証明不可能」を意味する。例えば理論 T と論理式 φ について「T ⊬ φ」は、T から φ が証明不可能である、すなわち φ は T の定理ではないことを意味する。
- U+22AD ⊭ not true
- U+22A8 ⊨ true の否定。
- U+22C6 ⋆ star operator
- アドホックな演算子について用いられる。
- U+231C ⌜ top left corner
- U+231D ⌝ top right corner
- 角引用符 (corner quotes) は「クワインの引用符」または「疑似引用符」(quasi-quotation) と呼ばれ、ゲーデル数を意味する。例えば論理式 φ について「⌜φ⌝」は、ゲーデル数化された φ を意味する[2]。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]参考文献
[編集]- 新井敏康『数学基礎論』岩波書店、2011年5月19日。ISBN 978-4-00-005536-9。
- 田中一之 編『ゲーデルと20世紀の論理学 3 不完全性定理と算術の体系』東京大学出版会、2007年3月1日。ISBN 978-4-13-064097-8。