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迷走神経

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
血管迷走神経反射から転送)
迷走神経 Nervus vagus の腹部内臓へ至る分布
脳神経
第I脳神経 – 嗅神経
第II脳神経 – 視神経
第III脳神経 – 動眼神経
第IV脳神経 – 滑車神経
第V脳神経 – 三叉神経
第VI脳神経 – 外転神経
第VII脳神経 – 顔面神経
第VIII脳神経 – 内耳神経
第IX脳神経 – 舌咽神経
第X脳神経 – 迷走神経
第XI脳神経 – 副神経
第XII脳神経 – 舌下神経

迷走神経(めいそうしんけい、英:vagus nerve、羅:nervus vagus)は、12対ある脳神経の一つであり、第X脳神経とも呼ばれる。副交感神経の代表的な神経。複雑な走行を示し、頸部胸部内臓、さらには腹部内臓にまで分布する。脳神経中最大の分布領域を持ち、主として副交感神経繊維からなるが、交感神経とも拮抗し、声帯心臓胃腸消化腺の運動、分泌を支配する。多数に枝分れしてきわめて複雑な経路を示すのでこの名がある[1]

概要

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延髄における迷走神経の起始部。迷走神経背側核、疑核孤束核を含む。

迷走神経は脳神経の中で唯一腹部にまで到達する神経である。迷走神経(Nervus Vagus)の「Vagus」とは中世ラテン語で、放浪している事を意味する。

迷走神経は下部延髄に起こり(終わり)、各臓器に広く分布する多数の枝を延ばす。から腹(消化器における下端は横行結腸右1/3)までのほとんど全ての内臓の運動神経副交感性知覚神経が迷走神経の支配である。機能的には心拍数の調整、胃腸蠕動運動発汗発話大動脈小体における血中ガス分圧の感知、外耳道の体性感覚等に関与する。

主に副交感神経線維であるが、関与する線維の神経核は迷走神経背側核、疑核 nucleus ambiguus、孤束核 solitary nucleus など多彩である。

また、胸腔内で遠心性繊維を含む反回神経を分岐する。反回神経は反転して上行し、口蓋帆挙筋耳管咽頭筋茎突咽頭筋口蓋舌筋口蓋咽頭筋上咽頭収縮筋中咽頭収縮筋下咽頭収縮筋鰓弓筋等を支配している。このことは、でも迷走神経が多くの筋肉を支配し、発話咽頭を開くことにきわめて重大な役割を担っていることを示す。

直接の枝としては、硬膜枝上神経節下神経節鰓弓神経腸骨枝耳介枝咽頭枝咽頭神経叢喉頭神経上頚心臓枝下頚心臓枝気管枝食道枝胸心臓神経気管支枝肺神経叢食道神経叢前迷走神経幹前胃枝胃小弯前神経肝枝幽門枝後迷走神経幹後胃枝胃小弯後神経腹腔枝腹腔神経叢腎枝に分枝する。

知覚枝は外耳道後下壁、鼓膜の後半部、および耳介乳様突起それぞれの付け根の間の小部分、後頭蓋窩の脳硬膜食道気管気管支咽頭からの表在知覚を伝える。また胸部臓器、腹部臓器からの内臓知覚の一部を伝え、孤束もしくは孤束核へ至る。

運動枝は軟口蓋、咽頭、咽頭筋のほとんどを支配し、その神経細胞体は延髄被蓋の疑核にある。

遠心性副交感神経枝はほとんどが背側運動核 dorsal motor nucleus に始まり、内臓運動枝 general visceral efferent fiber として骨盤臓器以外の全臓器に分岐する。

迷走・迷走神経反射

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迷走・迷走神経反射(英:vagovagal reflex、独:parasympathischer Reflex)、もしくは単に迷走神経反射は、外界刺激が迷走神経の求心性線維により中枢に伝わり、遠心性線維が生命維持のために末梢各臓器もしくは効果器に防衛反応を形成する反射である。

血管迷走神経反射性失神は、迷走神経反射の過剰のために徐脈と脳血流不足を来たし意識を失う発作である。また、息をこらえることで意図的に動悸を鎮めるValsalva法は迷走神経反射を利用したものである。

神経原性ショック

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神経原性ショック(英:neurogenic shock、独:neurogener Schock)は神経系障害もしくは刺激により血圧が低下した状態である。

狭義の神経原性ショックは疼痛精神的衝撃などによるもので、三叉・迷走神経反射により全身の血管拡張、徐脈、血圧低下が起こる脈管性減圧性失神 vasodepressor syncope に含まれるものが多く、外傷直後の1次ショックもこれに属する。

広義の神経原性ショックには循環調節に関与する神経機構が損なわれて起こる急性循環障害を含む。これは頭部外傷脳出血などの障害によるショック、急性脊髄損傷から起こる脊髄性ショック、脊髄麻酔によるショック、神経節遮断薬や交感神経抑制薬によるショックの他、起立性低血圧や頸動脈洞症候群などに見られるショックに類するものなどである。本態は多くの場合、急激な末梢血管床拡張に伴う血圧低下と心拍出量減少であり、治療は末梢血管の緊張回復を主とする。

歯科治療における血管迷走神経反射

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歯科治療現場では、治療に対する不安恐怖、極度の緊張痛み刺激が加わることで、迷走神経が緊張状態となり発症する全身的偶発症があることが知られており、過去にはデンタル・ショック、神経原性ショック、疼痛性ショック、脳貧血発作、三叉迷走神経反射などと呼ばれていた。本病態は一過性の血圧低下と徐脈の頻度が高い。ショックは「急性循環不全により組織灌流が著明に減少し、細胞機能が障害を受け、最終的には多臓器不全に陥る」と定義される。適切な局所麻酔を行う処置において最も多く発生し、アメリカ合衆国では局所麻酔を行った患者のうち、0.65%に発生したと報告されている。発症頻度は男性に比べて女性の方が高く、若年者でより発症頻度が高い[2]


脚注

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参考文献

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関連項目

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外部リンク

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