コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

イギリス王室

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
英王室から転送)
イギリス王室
British royal family


当主称号 国王イギリスの君主
当主敬称 陛下
現当主 チャールズ3世
(在位:2022年9月8日 - )
民族 男系ではゲルマン人
公式サイト イギリス王室公式サイト
イギリス王室



イギリス王室(イギリスおうしつ、: British Royal Family)は、イギリス(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)ならびにイギリス連邦王国君主および王族の総称。

王室

[編集]

王室[注 1]の範囲に関する明確な定義は存在しないが、少なくとも His/Her Majesty(HM, 陛下)や His/Her Royal Highness(HRH, 殿下)の敬称を持つ人物は、一般的に王室であると考えられている。そこで有力な指針のひとつとされているのが、1917年11月にジョージ5世により発表された、王子・王女の身分と陛下・殿下の敬称の運用方針を定めた勅許状[1]である。これによると、王子・王女の身分と陛下・殿下の敬称は、国王、国王の子供、国王の息子の子、プリンス・オブ・ウェールズ(国王の長男:王太子)の長男の長男に与えられるものとされている。

ただし、出生時に王族と認められなくても、王位の継承など時が経てば国王またはその近親になることが確実である人物が存在しうる場合などには、必要に応じて王族の範囲が広げられる場合がある。

たとえば、1948年エリザベス王女(当時)の第一子で長男チャールズが誕生した時、チャールズは国王ジョージ6世の女系の孫なので本来ならば王族とはならないが、状況からしてチャールズが将来即位して次期国王に成ることは確実なので勅令に基づきチャールズは王子となった。

1952年から2022年までの女王エリザベス2世在位下でいえば、プリンス・オブ・ウェールズの長男の全ての子が王子・王女の身分と殿下の敬称を与えるように勅許が与えられた。これは、エリザベス2世の孫の一人で王位継承権第2位(当時)のウィリアム王子が結婚し、女王在位中の曾孫たる第3王位継承者の誕生(ジョージ王子2013年生)が現実味を帯び、またそれと同時期に王位継承法が改正され(2013年王位継承法)、「兄弟姉妹間男子優先制」から「長子優先制」に変わったことから、プリンス・オブ・ウェールズの長男の第一子が女子であっても、自動的に王位を継承することになったためである。

なお、女王在位中において当時のプリンス・オブ・ウェールズの次男サセックス公爵ヘンリー王子の子女は、「女王在位中は王子・王女の身分を有さない立場」にあり、「プリンス・オブ・ウェールズであるチャールズ王太子が新国王に即位した際には王子・王女の身分を与えられる」という特異な立場にあったが、女王が崩御するまでプリンス・オブ・ウェールズの長男の子女以外の、女王の曾孫に身分・敬称を与える旨の勅許や法改正案は出ることは無かった。新たな勅許等が出ない限り、慣例によりサセックス公爵の長男アーチー2019年生)は「ダンバートン伯爵」の儀礼称号で呼ばれ、女子や次男以下の男子はロード(Lord)、レディー(Lady)の儀礼敬称をつけて呼ばれる形となっていた。なお、両親の意向により、アーチーも儀礼称号は使用せず、「マスター (master)」の敬称を使用していた。チャールズの即位後も権利は発生するものの自動的には王子・王女の称号は与えられず、2023年3月にチャールズ新国王からその称号が与えられた。

また、これらの敬称を持つ男性王族と結婚した女性は、夫の爵位称号に対応するまたは夫人としての称号を与えられ、陛下や殿下の敬称を冠して呼ばれる。一方、女性王族と結婚した男性は、特別に爵位・称号を賜らない限り、称号や王族特有の敬称を名乗ることができない。エリザベス2世の夫であるフィリップ王配は、結婚時にエディンバラ公爵位と殿下の敬称をエリザベス2世の父ジョージ6世から賜り、エリザベス2世から「プリンス (prince)」の称号を授けられたため、His Royal Highness The Prince Philip, The Duke of Edinburgh(エディンバラ公爵フィリップ王子殿下)と呼ばれる。しかし、アン王女の夫であるティモシー・ローレンスは、結婚時に特別の爵位や敬称を賜っていないため、結婚後も軍人としての肩書きであるVice-Admiral(海軍中将)で呼ばれている。

(敬称)呼び掛ける場合は「your majesty」等だが・呼び掛けない場合は以下の通り

  • His Majesty - 男王(男性国王)
  • Her Majesty - 女王(女性国王)、王妃及び王后(男王の妃)、王太后(先代男王の妃及び母后)
  • His Royal Highness - 王配(女王の夫)、王子(国王の息子、国王の息子の息子、ウェールズ公の長男の息子)、
  • Her Royal Highness - 王女(国王の娘、国王の息子の娘、ウェールズ公の長男の娘)、王太子(ウェールズ公)及び王子の王太子妃ウェールズ公妃)及び(妃殿下)または高位王族ではない場合は夫人(公爵夫人殿下等)となる。

公務

[編集]

イギリス王室が抱えている公務は、毎年3000件以上にのぼる[2]

2016年現在、イギリス王室で公務を分担する王族は20人を数える。王室で生まれた王子や王女はもとより、男性王族に嫁いできた女性たちもすぐに公務に携わるようになる。この20人の王族のうち、実にその半数の10人が女性王族で、彼女たちだけで900に近い団体の長を務めている[2]

イギリス王族の人物一覧

[編集]
バッキンガム宮殿のバルコニーに姿を現したウィンザー家の人々(2023年6月)

イギリスと他の英連邦王国14ヶ国の国家元首の地位にあるのは、国王チャールズ3世である。チャールズは王室の当主である。彼はエリザベス2世の長男であり、ジョージ6世の初孫息子である。2023年現在、彼には2人の子供(2男)と5人の孫(3男2女)がいる。

狭義の王族のリスト

[編集]

英国で現在、陛下または殿下の敬称を名乗っている、もしくは名乗る権利がある人々は、次の通りである。国王、王妃のみが His/Her Majesty を冠して呼ばれ、その他はエディンバラ公爵(エリザベス2世第3王子)ならびにサセックス公爵(チャールズ3世第2王子)の子供を除き His/Her Royal Highness の敬称を冠して呼ばれている。

エディンバラ公爵夫妻の長女ルイーズ及び長男ジェームズは、1917年の勅許状によると、王子・王女の身分と殿下の敬称を名乗る権利を持っているが、ウェセックス伯爵(当時)夫妻の結婚時に、夫妻の希望を汲む形で、エリザベス2世が「ウェセックス伯爵夫妻の子供は、王子・王女の身分と殿下の敬称を名乗らない」と宣言したため、この身分と敬称を用いない。ルイーズは、The Lady Louise Windsor(ルイーズ・ウィンザー令嬢)という一般的な伯爵の娘としての名称を呼ばれている。ジェームズは、父がエディンバラ公爵位を授爵したことから継嗣として「ウェセックス伯爵」の儀礼称号を称しており、敬称はLord()を用いる。

サセックス公爵夫妻の長男アーチー及び長女リリベットは、生誕時に曾祖母の女王エリザベス2世が存命であったため、1917年の勅許状によると、王子・王女の身分と殿下の敬称を名乗る権利を持っていない状態にあった。2022年9月8日現在、「国王の孫」となったため王子・王女の身分と殿下の敬称を名乗る権利を有することとなり、2023年3月9日に正式に王子・王女の身分を名乗ることとなった(ただし、殿下の敬称は使用していない)。

国王

[編集]
歴代 肖像 誕生 即位 在位期間 続柄
ウィンザー朝
第5代
チャールズ3世 Charles III 1948年11月14日(76歳) 2022年9月8日 2年105日 女王エリザベス2世第1王子

王妃、国王の子女とその家族

[編集]
現年齢 現国王から
見た続柄
王位継承
順位
カミラ 77歳 王妃
ウィリアム(プリンス・オブ・ウェールズ) 42歳 第1王子
/ 生母はダイアナ妃
1位
キャサリン(プリンセス・オブ・ウェールズ) 42歳
ジョージ・オブ・ウェールズ 11歳 孫/ ウィリアム王子の長男 2位
シャーロット・オブ・ウェールズ 9歳 孫/ ウィリアム王子の長女 3位
ルイ・オブ・ウェールズ 6歳 孫/ ウィリアム王子の次男 4位
ヘンリー (サセックス公) 40歳 第2王子
/ 生母はダイアナ妃
5位
メーガン (サセックス公爵夫人) 43歳
アーチー 5歳 孫/ ヘンリー王子の長男
/ 生誕時は「王の嫡男系以外の曾孫」のため殿下の称号無し
6位
リリベット 3歳 孫/ ヘンリー王子の長女
/ 生誕時は「王の嫡男系以外の曾孫」のため殿下の称号無し
7位

国王の兄弟とその家族

[編集]
現年齢 現国王から
見た続柄
王位継承
順位
アンドルー王子 (ヨーク公) 64歳 国王の長弟
/エリザベス2世の第2王子
8位
ベアトリス王女 36歳 姪/ アンドルー王子の長女
/ 生母はセーラ元妃
9位
ユージェニー王女 34歳 姪/ アンドルー王子の次女
/ 生母はセーラ元妃
11位
エドワード王子 (エディンバラ公爵) 60歳 国王の末弟
/エリザベス2世の第3王子
14位
ソフィー (エディンバラ公爵夫人) 59歳
ジェームズ (ウェセックス伯爵) 17歳 甥/ エドワード王子の長男 15位
ルイーズ・ウィンザー 21歳 姪/ エドワード王子の長女 16位
アンプリンセス・ロイヤル 74歳 国王の妹
/エリザベス2世の第1王女
17位

エリザベス2世の従兄弟とその妻

[編集]
現年齢 現国王から
見た続柄
リチャード (グロスター公) 80歳 従叔父 / ジョージ5世の三男の次男(孫)
バージット (グロスター公爵夫人) 78歳
エドワード (ケント公) 89歳 従叔父 / ジョージ5世の四男の長男(孫)
キャサリン (ケント公爵夫人) 91歳
マイケル・オブ・ケント王子 82歳 従叔父 / ジョージ5世の四男の次男(孫)、ケント公爵の弟
マリー=クリスティーヌ (マイケル王子夫人) 79歳
アレクサンドラ王女 87歳 従叔母 / ジョージ5世の四男の長女(孫)、ケント公爵の妹

元王族

[編集]

王子と結婚し、プリンセス (princess) の身分とHer Royal Highnessの敬称を得たが、その後離婚した人物は、以下の通り(存命のみ)。

なお、チャールズ(ウェールズ大公)の最初の妻で1996年に離婚したダイアナ・スペンサーは、離婚後もイギリス王室の一員であると見なされ、王族としての責務を果たした。王室は、彼女が「ウェールズ大公妃」(プリンセス・オヴ・ウェールズ)を名乗り続けること、そしてケンジントン宮殿に住み続けること (Grace and Favour)に同意した。[要出典]これは一般に女性が離婚後も前夫の名字を名乗り続ける慣行による。

広義の王族のリスト

[編集]

次の人物は、1917年の勅許状によると王子・王女の身分が与えられず、殿下の敬称を名乗る権利がなく、実際に名乗っていないが、王族として扱われることがある。

王女と結婚したが、その後離婚した人々は、以下の通り(存命のみ)。

家系図

[編集]
  • 赤枠の人物は、存命中。
  • 黒枠の人物は、故人。
  • 太枠の人物は、イギリス君主の子女。
注釈
  1. ^ 国王エドワード8世1936年の退位後、ウィンザー公爵となった。


王位継承順位

[編集]
イギリスの旗 イギリス王位継承順位上位(2022年9月8日現在)
順位 肖像 継承資格者 爵位称号 性別 生年月日/現年齢 現在のチャールズ3世国王から見た続柄
1位 ウィリアム William プリンス・オブ・ウェールズ 男性 1982年06月21日 42歳 親等2.1/第一王子/チャールズの第1子
2位 ジョージ George 男性 2013年07月22日 11歳 親等3/王孫/ウィリアムの第1子
3位 シャーロット Charlotte 女性 2015年05月02日 9歳 親等3/王孫/ウィリアムの第2子
4位 ルイ Louis 男性 2018年04月23日 6歳 親等3/王孫/ウィリアムの第3子
5位 ヘンリー Henry サセックス公爵 男性 1984年09月15日 40歳 親等2.2/第二王子/チャールズの第2子
6位 アーチー Archie 男性 2019年05月06日 05歳 親等3/王孫/ヘンリーの第1子
7位 リリベット Lilibet 女性 2021年06月04日 03歳 親等3/王孫/ヘンリーの第2子
8位 アンドルー Andrew ヨーク公爵 男性 1960年02月19日 64歳 親等1/王弟
9位 ベアトリス Beatrice 女性 1988年08月08日 36歳 親等2.3/王姪/アンドルーの第1子
10位 シエナ Sienna 女性 2021年09月18日 03歳 親等2.3/王大姪/ベアトリスの第1子


イギリス王室の財産

[編集]

米国フォーブス誌によると、バッキンガム宮殿や王冠などの国有財産を除く、エリザベス女王の個人資産は、5億ドルと推計されている。また、イギリスの国有財産であるバッキンガム宮殿の資産価値は50億ドル、王室が所有する不動産の価値は100億ドルと推計されている[8]

イギリス王室はランカスター公領Duchy of Lancaster)とコーンウォール公領Duchy of Cornwall)の二つの王族公領を所有している。

Duchy of Lancasterは462km²の広さがあり、2011年においてその価値は3億8319万ポンドと推計されている。また、2011年においてDuchy of Lancasterの利益は1338万ポンドであった[9]

Duchy of Cornwallは540.9 km²の広さがあり、2010年においてその価値は6億7700万ポンドと推計されている。また、2010年においてDuchy of Cornwall利益は1720万ポンドであった[10]

1997年トニー・ブレア労働党政権のコスト削減により王室専用ヨットのブリタニア号 (HMY Britannia)を退役させ、エリザベス女王が公衆の面前で涙を見せる場面があった。


結婚

[編集]

イギリス王室の場合には、(日本の皇室とは異なり)女性王族が結婚により「臣籍降嫁」し、それ以降は基本的に公務に携わらないということはない。

現国王の妹であるアン王女は、英国オリンピック委員会総裁など340もの団体の長を務め、年間の公務も600件を超える。これは兄チャールズ3世に次ぐ多忙さを意味する[2]

王朝の系譜

[編集]

ウェセックス王国、ノルマン朝プランタジネット朝ランカスター朝ヨーク朝テューダー朝ステュアート朝ハノーヴァー朝サクス=コバーグ=ゴータ朝ウィンザー朝イングランドとの合併前のスコットランド王国ウェールズ、その他フランスドイツ等の血筋が脈打っている。

イギリス王ジョージ1世以前のイングランドとドイツ、フランスの婚族関係については、1114年に神聖ローマ皇帝ハインリヒ5世の妃となったイングランドのマティルダ(王皇帝死後は、エルサレム王国の第4代夫婦両王フルク5世らの息子ジョフロワ4世の妃)、また、その孫のマティルダ・オブ・イングランドザクセンバイエルンハインリヒ獅子公の妃)がいる。

ジョージ1世からエドワード7世まで[注 2]

[1] キャロライン・オブ・アーンズバック

[2] オーガスタ・オブ・サクス=ゴータ

[3] マグダレーナ・アウグスタ・フォン・アンハルト=ツェルプスト

[4] ヴィクトリア・オブ・サクス=コバーグ=ザールフィールド、ザクセン=コーブルク=ゴータ公子アルバート

[5] ルイーゼ・フォン・ザクセン=ゴータ=アルテンブルク

その他

[編集]

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ 「天皇+皇族=皇室」と同様に「国王+王族=王室」である
  2. ^ 字下げ(インデント)は子の世代を表す。

出典

[編集]
  1. ^ The London Gazette” (1917年11月14日). 2024年11月15日閲覧。 (イギリスの官報)
  2. ^ a b c 君塚直隆「ヨーロッパ王室における「譲位」の現状」『中央公論』2016年9月号 p.46
  3. ^ Succession”. royal.uk. 4 August 2021閲覧。
  4. ^ a b “Who's who in the House of Windsor: Queen Elizabeth II's line of succession”. CNN. (7 June 2021). https://edition.cnn.com/2020/02/14/world/royal-family-line-of-succession-whos-who/index.html 4 August 2020閲覧。 
  5. ^ The Line Of Succession”. www.debretts.com. 4 August 2021閲覧。
  6. ^ The Royal Family”. royal.uk. 3 August 2021閲覧。
  7. ^ Lord Chamberlain's Diamond Jubilee Guidelines”. 16 January 2013時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年10月11日閲覧。
  8. ^ “Just How Rich Are Queen Elizabeth And Her Family?”, Forbes , (2011年4月22日), http://www.forbes.com/sites/luisakroll/2011/04/22/just-how-rich-is-queen-elizabeth-and-her-family/ 2011年9月3日閲覧。 
  9. ^ Annual Reports of Duchy of Lancaster, Duchy of Lancaster, http://www.duchyoflancaster.com/management-and-finance-2/accounts-annual-reports-and-investments/ 2011年8月14日閲覧。 
  10. ^ Annual Reports of Duchy of Cornwall, Duchy of Cornwall, http://www.duchyofcornwall.org/managementandfinances_finances_analysis.htm 2011年8月14日閲覧。 
  11. ^ Cassell Bryan-Low, Alistair MacDonald, Jeanne Whalen (2011年4月29日). “結婚式で節目迎える英国「王室株式会社」”. WSJ日本版. オリジナルの2011年5月1日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20110501234225/http://jp.wsj.com/Life-Style/node_230012 2020年3月11日閲覧。 

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]