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良全

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
良詮から転送)
涅槃図(福井・本覚寺蔵)

良全(りょうぜん、生没年不詳)は、日本鎌倉南北朝時代東福寺を中心として活躍した画僧良詮とも書かれる。落款に「海西人」と記されていることから、九州もしくは渤海出身とする説もある。

略伝

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古くは可翁仁賀と同一人物とする説もあったが、本覚寺所蔵の良全筆『仏涅槃図』(重要文化財)に嘉暦3年(1328年)の款記が発見され、可翁仁賀よりも前の世代に属する絵仏師と考えられるようになった。東福寺の乾峯士曇による賛が付いた作品が多く、東福寺所蔵絵画の模倣作品も多いことから同寺ゆかりの人物とする説が有力視される。少し後に活躍する東福寺の画僧・明兆の前任者的な画僧だとするのが妥当であろう。

仏画水墨画、共に作品を残すなど幅広く活躍した。李龍眠様などの伝統的な図様に依りながらも、新たに請来された中国仏画や水墨画法を取り入れており、古代的な絵仏師と中世的な画僧への移行期に属する絵師と考えられている。

主な作品

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『禅寺の絵師たち 明兆・霊彩・赤脚子』展図録、p.158の「現存作品リスト」より作成。

作品名 技法 形状・員数 寸法(縦x横cm) 所有者 年代 落款・印章 備考
仏涅槃 絹本著色 1幅 福井本覚寺 1328年(嘉暦3年) 重要文化財
釈迦三尊図 絹本著色 神奈川県立歴史博物館
釈迦三尊 絹本著色 3幅 兵庫清澄寺 重要文化財
白衣観音 絹本墨画 1幅 愛知妙興寺 14世紀中頃 重要文化財。乾峰士曇
十六羅漢 絹本墨画 16幅 京都建仁寺 1348年正平3年)頃 第一尊者に款記「良詮筆」 重要文化財
十六羅漢図 絹本著色金泥 16幅 114.4x59.5(各) ワシントンフリーア美術館 1348年(正平3年)頃 建仁寺本には東福寺、フリーア本には東福寺塔頭格の三聖寺、それぞれの住持の書き込みがあり、元の所蔵がわかる。寺社の格から前者を正本、後者を副本としてほぼ同時に描かれたと考えられる。羅漢は典型的な李龍眠様、背景の樹石は、水墨画的手法で描かれている。フリーア本は柴田是真が東福寺の末寺から16幅全て購入し、その後松木文恭を介して是真の息子からフリーアの手に渡った[1]
達磨図 絹本墨画淡彩 1幅 個人
騎獅文殊図 絹本著色 1幅 大阪正木美術館 14世紀中頃 款記「浮萍散人良詮作」 重要文化財。乾峰士曇賛。算に「南禅乾峰拝賛」とあり、乾峰が南禅寺第20世だった正平2年(1347年)10月4日から同4年(1349年)8月18日までの着賛だとわかる。また落款は左右対称や裏文字で書かれ、当時流行していた。
観音図[2][1] 絹本淡彩 1幅 109.6x44.1 東京国立博物館 款記(金泥)「海西人良全筆」 重要文化財
釈迦図 絹本著色 フリーア美術館
白衣観音図 絹本墨画 ギメ東洋美術館
白衣観音図 絹本墨画淡彩 ネルソン・アトキンス美術館
白鷺図 絹本墨画 1幅 個人 重要文化財

脚注

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  1. ^ 『フリーア美術館 アメリカが出会った日本美術の至宝』 平凡社〈別冊太陽 日本のこころ269〉、2019年1月25日、p.21、ISBN 978-4-582-92269-1
  2. ^ 画題を「如意輪観音図」とする資料もあるが、ここでは重要文化財指定名称にしたがう。

参考文献

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展覧会図録
  • 徳川美術館編集・発行 『秋季特別展 婆娑羅の時代―王朝文化の残照・近世のいぶき―』 1991年10月5日。
  • 山口県立美術館、岩井共二、福島恒徳編集 『禅寺の絵師たち 明兆・霊彩・赤脚子』展図録、1998年10月。