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緑簾石グループ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
緑簾石グループ
分類 ケイ酸塩鉱物
ソロケイ酸塩鉱物
シュツルンツ分類 50.02.01a
化学式 [A2][M3](Si2O7)(SiO4)O(OH)
結晶系 単斜晶系
文献 [1][2]
プロジェクト:鉱物Portal:地球科学
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緑簾石グループ (Epidote Group) とは、ソロケイ酸塩鉱物単斜晶系結晶系を持つ鉱物グループの1つである。最新の定義は2006年にThomas Armbrusterを座長とする国際鉱物学連合・新鉱物命名分類委員会のチームにより造られたものである[1][3](日本からは赤坂正秀が参加している)。ただし、この時改称された三種については、ハンコック石の改名を巡り問題が発生し、従来の命名を尊重するガイドラインが設けられたことにより2015年から2016年にかけて元に戻された。また、灰簾石(Zoisite, [Ca2][Al3](Si2O7)(SiO4)O(OH))は直方晶系であるため緑簾石グループには含まれないことが確認された(多形単斜灰簾石はグループに含まれる)。

基本的な組成は [A2][M3](Si2O7)(SiO4)O(OH) である。AにはCaSrMn2+YLaCeNdPbが入る。MにはAlFe2+、Fe3+、Mn2+、Mn3+MgV3+が入る。Aには2つ、Mには3つの原子が入るが、複数が全て同じ原子の場合もあれば、全て違う原子の場合もある[1]

なお、組成中の O(OH) は鉱物によっては違う場合がある。アスカゲン石 (Askagenite-(Nd)) は O2ドレイス石 (Dollaseite-(Ce)) とフリストフ石 (Khristovite-(Ce)) は (OH)F となっている。

鉱物と下位分類

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2022年現在では、33種類の鉱物種が緑簾石グループに属している。また、まだ承認されていない名前のない鉱物が16種類属している[1]

天然で存在する原子の組み合わせだけでも、鉱物種は理論上21952種類存在する。元素の組成が少し変わるだけで種類が変わることが多く、特に褐簾石グループの場合は一つの結晶に複数の鉱物が累帯構造することも多い。このため、上記の命名規約が確立される前の緑簾石グループの同定は困難であった。

緑簾石 (Epidote) が代表的な鉱物である。また、単斜灰簾石 (Clinozoisite) を代表して単斜灰簾石サブグループ (Clinozoisite subgroup) という下位の分類が存在する場合もある。

主な一覧

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緑簾石グループの鉱物[1]
英名 和名 組成 備考・注釈
Allanite-(Ce) 褐簾石 [CaCe][Al2Fe2+](Si2O7)(SiO4)O(OH)
Allanite-(La) ランタン褐簾石 [CaLa][Al2Fe2+](Si2O7)(SiO4)O(OH)
Allanite-(Nd) ネオジム褐簾石 [CaNd][Al2Fe2+](Si2O7)(SiO4)O(OH)
Allanite-(Y) イットリウム褐簾石 [CaY][Al2Fe2+](Si2O7)(SiO4)O(OH)
Manganiandrosite-(La) ランタンマンガニアンドロス石 [Mn2+La][Mn3+AlMn2+](Si2O7)(SiO4)O(OH) 2006年までの旧称は「ランタンアンドロス石 androsite-(La)」[4]
Askagenite-(Nd) アスカゲン石 [Mn2+Nd][Al2Fe2+](Si2O7)(SiO4)O2
Clinozoisite 単斜灰簾石 [Ca2][Al3](Si2O7)(SiO4)O(OH) 灰簾石多形
Dissakisite-(Ce) ディサキス石 [CaCe][Al2Mg](Si2O7)(SiO4)O(OH)
Dissakisite-(La) ランタンディサキス石 [CaLa][Al2Mg](Si2O7)(SiO4)O(OH)
Dollaseite-(Ce) ドレイス石 [CaCe][MgAlMg](Si2O7)(SiO4)(OH)F
Epidote 緑簾石 [Ca2][Al2Fe3+](Si2O7)(SiO4)O(OH) 1801年に発見された、緑簾石グループの中で最も古い鉱物。[5]
Hancockite ハンコック石 [CaPb][Al2Fe3+](Si2O7)(SiO4)O(OH) 1899年に命名されたアメリカ合衆国原産の鉱物で、風景画家・鉱物コレクターのElwood P. Hancockにちなむ。2006年に鉛緑簾石 (Epidote-(Pb)) と改称したが、鉱物ファンからの批判が多く2015年に戻された[6]
Epidote-(Sr) ストロンチウム緑簾石 [CaSr][Al2Fe3+](Si2O7)(SiO4)O(OH) 日本産新鉱物[7]。赤褐色のため、紅簾石と間違われやすい。
Ferriakasakaite-(La) ランタンフェリ赤坂石 [CaLa][Fe3+AlMn2+](Si2O7)(SiO4)O(OH) 日本産新鉱物。赤坂正秀にちなむ。
Ferriallanite-(Ce) フェリ褐簾石 [CaCe][Fe3+AlFe2+](Si2O7)(SiO4)O(OH)
Ferriallanite-(La) ランタンフェリ褐簾石 [CaLa][Fe3+AlFe2+](Si2O7)(SiO4)O(OH)
Khristovite-(Ce) フリストフ石 [CaCe][MgAlMn2+](Si2O7)(SiO4)(OH)F
Manganiandrosite-(Ce) セリウムマンガンアンドロス石 [Mn2+Ce][Mn3+AlMn2+](Si2O7)(SiO4)O(OH)
Manganiandrosite-(La) マンガンアンドロス石 [Mn2+La][Mn3+AlMn2+](Si2O7)(SiO4)O(OH)
Tweddillite トウェディル石 [CaSr][Mn3+AlMn3+](Si2O7)(SiO4)O(OH) 南アフリカで発見され、Thomas Armbrusterにより2002年に命名。2006年にArmbrusterらによりストロンチウムマンガニ紅簾石(Manganipiemontite-(Sr))と変更されたが、2016年に戻された[8]。  
Mukhinite ムキーナ石 [Ca2][Al2V3+](Si2O7)(SiO4)O(OH)
Niigataite 新潟石 [CaSr][Al3](Si2O7)(SiO4)O(OH) 日本産新鉱物。2006年にストロンチウム単斜灰簾石(Clinozoisite-(Sr))と変更されたが[9]、2016年に復活した[10]
Piemontite 紅簾石 [Ca2][Al2Mn3+](Si2O7)(SiO4)O(OH)
Piemontite-(Pb) 鉛紅簾石 [CaPb][Al2Mn3+](Si2O7)(SiO4)O(OH)
Piemontite-(Sr) ストロンチウム紅簾石 [CaSr][Al2Mn3+](Si2O7)(SiO4)O(OH) 2006年までは Strontiopiemontite と呼ばれていた。[11]
Uedaite-(Ce) 上田石 [Mn2+Ce][Al2Fe2+](Si2O7)(SiO4)O(OH) 日本産新鉱物。[12]
Vanadoakasakaite-(Ce) セリウムバナジウム赤坂石 [CaCe][V3+AlMn2+](Si2O7)(SiO4)O(OH) 日本産新鉱物[13]
Vanadoallanite-(La) ランタンバナジウム褐簾石 [CaLa][V3+AlFe2+](Si2O7)(SiO4)O(OH) 日本産新鉱物。
Vanadoandrosite-(Ce) バナジウムアンドロス石 [Mn2+Ce][V3+AlFe2+](Si2O7)(SiO4)O(OH)
Ferriandorosite-(La) ランタンフェリアンドロス石 [Mn2+La][Fe3+AlMn2+](Si2O7)(SiO4)O(OH) 日本産新鉱物。
名称がない緑簾石グループの鉱物[1]
組成 備考・注釈
[(Ca,La,REE,Mn2+)2][(Mn3+,Fe3+,Al)Al(Mn2+,Mg)](Si2O7)((Si,Al,As)O4)O(OH) マンガンアンドロス石のカルシウム置換体。
[CaCe][(Fe3+,Al)Al(Mg,Fe2+)](Si2O7)(SiO4)O(OH) フェリ褐簾石のマグネシウム置換体。
[CaCe][Fe3+AlMn2+](Si2O7)(SiO4)O(OH) フェリ褐簾石のマンガン置換体。

出典

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  1. ^ a b c d e f Epidote Group mindat.org
  2. ^ 58.02.01a Epidote group (Clinozoisite subgroup) Mineralogy Database
  3. ^ Recommended nomenclature of epidote-group minerals
  4. ^ Manganiandrosite-(La) mindat.org
  5. ^ Epidote mindat.org
  6. ^ Hancockite mindat.org
  7. ^ Epidote-(Sr) mindat.org
  8. ^ Tweddillite mindat.org
  9. ^ Niigataite mindat.org
  10. ^ 日本から発見された新鉱物たち(一覧)→新潟石 / Niigataite (2016年に復活)、浜根大輔、東京大学物性研究所・電子顕微鏡室
  11. ^ Piemontite-(Sr) mindat.org
  12. ^ Uedaite-(Ce) mindat.org
  13. ^ 新鉱物、セリウムバナジウム赤坂石(Vanadoakasakaite-(Ce))東京大学物性研究所電子顕微鏡室、2024年10月4日

関連項目

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