緑簾石グループ
緑簾石グループ | |
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分類 |
ケイ酸塩鉱物 ソロケイ酸塩鉱物 |
シュツルンツ分類 | 50.02.01a |
化学式 | [A2][M3](Si2O7)(SiO4)O(OH) |
結晶系 | 単斜晶系 |
文献 | [1][2] |
プロジェクト:鉱物/Portal:地球科学 |
緑簾石グループ (Epidote Group) とは、ソロケイ酸塩鉱物で単斜晶系の結晶系を持つ鉱物グループの1つである。最新の定義は2006年にThomas Armbrusterを座長とする国際鉱物学連合・新鉱物命名分類委員会のチームにより造られたものである[1][3](日本からは赤坂正秀が参加している)。ただし、この時改称された三種については、ハンコック石の改名を巡り問題が発生し、従来の命名を尊重するガイドラインが設けられたことにより2015年から2016年にかけて元に戻された。また、灰簾石(Zoisite, [Ca2][Al3](Si2O7)(SiO4)O(OH))は直方晶系であるため緑簾石グループには含まれないことが確認された(多形の単斜灰簾石はグループに含まれる)。
基本的な組成は [A2][M3](Si2O7)(SiO4)O(OH) である。AにはCa、Sr、Mn2+、Y、La、Ce、Nd、Pbが入る。MにはAl、Fe2+、Fe3+、Mn2+、Mn3+、Mg、V3+が入る。Aには2つ、Mには3つの原子が入るが、複数が全て同じ原子の場合もあれば、全て違う原子の場合もある[1]。
なお、組成中の O(OH) は鉱物によっては違う場合がある。アスカゲン石 (Askagenite-(Nd)) は O2 、ドレイス石 (Dollaseite-(Ce)) とフリストフ石 (Khristovite-(Ce)) は (OH)F となっている。
鉱物と下位分類
[編集]2022年現在では、33種類の鉱物種が緑簾石グループに属している。また、まだ承認されていない名前のない鉱物が16種類属している[1]。
天然で存在する原子の組み合わせだけでも、鉱物種は理論上21952種類存在する。元素の組成が少し変わるだけで種類が変わることが多く、特に褐簾石グループの場合は一つの結晶に複数の鉱物が累帯構造することも多い。このため、上記の命名規約が確立される前の緑簾石グループの同定は困難であった。
緑簾石 (Epidote) が代表的な鉱物である。また、単斜灰簾石 (Clinozoisite) を代表して単斜灰簾石サブグループ (Clinozoisite subgroup) という下位の分類が存在する場合もある。
主な一覧
[編集]英名 | 和名 | 組成 | 備考・注釈 |
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Allanite-(Ce) | 褐簾石 | [CaCe][Al2Fe2+](Si2O7)(SiO4)O(OH) | |
Allanite-(La) | ランタン褐簾石 | [CaLa][Al2Fe2+](Si2O7)(SiO4)O(OH) | |
Allanite-(Nd) | ネオジム褐簾石 | [CaNd][Al2Fe2+](Si2O7)(SiO4)O(OH) | |
Allanite-(Y) | イットリウム褐簾石 | [CaY][Al2Fe2+](Si2O7)(SiO4)O(OH) | |
Manganiandrosite-(La) | ランタンマンガニアンドロス石 | [Mn2+La][Mn3+AlMn2+](Si2O7)(SiO4)O(OH) | 2006年までの旧称は「ランタンアンドロス石 androsite-(La)」[4]。 |
Askagenite-(Nd) | アスカゲン石 | [Mn2+Nd][Al2Fe2+](Si2O7)(SiO4)O2 | |
Clinozoisite | 単斜灰簾石 | [Ca2][Al3](Si2O7)(SiO4)O(OH) | 灰簾石の多形。 |
Dissakisite-(Ce) | ディサキス石 | [CaCe][Al2Mg](Si2O7)(SiO4)O(OH) | |
Dissakisite-(La) | ランタンディサキス石 | [CaLa][Al2Mg](Si2O7)(SiO4)O(OH) | |
Dollaseite-(Ce) | ドレイス石 | [CaCe][MgAlMg](Si2O7)(SiO4)(OH)F | |
Epidote | 緑簾石 | [Ca2][Al2Fe3+](Si2O7)(SiO4)O(OH) | 1801年に発見された、緑簾石グループの中で最も古い鉱物。[5] |
Hancockite | ハンコック石 | [CaPb][Al2Fe3+](Si2O7)(SiO4)O(OH) | 1899年に命名されたアメリカ合衆国原産の鉱物で、風景画家・鉱物コレクターのElwood P. Hancockにちなむ。2006年に鉛緑簾石 (Epidote-(Pb)) と改称したが、鉱物ファンからの批判が多く2015年に戻された[6]。 |
Epidote-(Sr) | ストロンチウム緑簾石 | [CaSr][Al2Fe3+](Si2O7)(SiO4)O(OH) | 日本産新鉱物[7]。赤褐色のため、紅簾石と間違われやすい。 |
Ferriakasakaite-(La) | ランタンフェリ赤坂石 | [CaLa][Fe3+AlMn2+](Si2O7)(SiO4)O(OH) | 日本産新鉱物。赤坂正秀にちなむ。 |
Ferriallanite-(Ce) | フェリ褐簾石 | [CaCe][Fe3+AlFe2+](Si2O7)(SiO4)O(OH) | |
Ferriallanite-(La) | ランタンフェリ褐簾石 | [CaLa][Fe3+AlFe2+](Si2O7)(SiO4)O(OH) | |
Khristovite-(Ce) | フリストフ石 | [CaCe][MgAlMn2+](Si2O7)(SiO4)(OH)F | |
Manganiandrosite-(Ce) | セリウムマンガンアンドロス石 | [Mn2+Ce][Mn3+AlMn2+](Si2O7)(SiO4)O(OH) | |
Manganiandrosite-(La) | マンガンアンドロス石 | [Mn2+La][Mn3+AlMn2+](Si2O7)(SiO4)O(OH) | |
Tweddillite | トウェディル石 | [CaSr][Mn3+AlMn3+](Si2O7)(SiO4)O(OH) | 南アフリカで発見され、Thomas Armbrusterにより2002年に命名。2006年にArmbrusterらによりストロンチウムマンガニ紅簾石(Manganipiemontite-(Sr))と変更されたが、2016年に戻された[8]。 |
Mukhinite | ムキーナ石 | [Ca2][Al2V3+](Si2O7)(SiO4)O(OH) | |
Niigataite | 新潟石 | [CaSr][Al3](Si2O7)(SiO4)O(OH) | 日本産新鉱物。2006年にストロンチウム単斜灰簾石(Clinozoisite-(Sr))と変更されたが[9]、2016年に復活した[10]。 |
Piemontite | 紅簾石 | [Ca2][Al2Mn3+](Si2O7)(SiO4)O(OH) | |
Piemontite-(Pb) | 鉛紅簾石 | [CaPb][Al2Mn3+](Si2O7)(SiO4)O(OH) | |
Piemontite-(Sr) | ストロンチウム紅簾石 | [CaSr][Al2Mn3+](Si2O7)(SiO4)O(OH) | 2006年までは Strontiopiemontite と呼ばれていた。[11] |
Uedaite-(Ce) | 上田石 | [Mn2+Ce][Al2Fe2+](Si2O7)(SiO4)O(OH) | 日本産新鉱物。[12] |
Vanadoakasakaite-(Ce) | セリウムバナジウム赤坂石 | [CaCe][V3+AlMn2+](Si2O7)(SiO4)O(OH) | 日本産新鉱物[13]。 |
Vanadoallanite-(La) | ランタンバナジウム褐簾石 | [CaLa][V3+AlFe2+](Si2O7)(SiO4)O(OH) | 日本産新鉱物。 |
Vanadoandrosite-(Ce) | バナジウムアンドロス石 | [Mn2+Ce][V3+AlFe2+](Si2O7)(SiO4)O(OH) | |
Ferriandorosite-(La) | ランタンフェリアンドロス石 | [Mn2+La][Fe3+AlMn2+](Si2O7)(SiO4)O(OH) | 日本産新鉱物。 |
組成 | 備考・注釈 |
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[(Ca,La,REE,Mn2+)2][(Mn3+,Fe3+,Al)Al(Mn2+,Mg)](Si2O7)((Si,Al,As)O4)O(OH) | マンガンアンドロス石のカルシウム置換体。 |
[CaCe][(Fe3+,Al)Al(Mg,Fe2+)](Si2O7)(SiO4)O(OH) | フェリ褐簾石のマグネシウム置換体。 |
[CaCe][Fe3+AlMn2+](Si2O7)(SiO4)O(OH) | フェリ褐簾石のマンガン置換体。 |
出典
[編集]- ^ a b c d e f Epidote Group mindat.org
- ^ 58.02.01a Epidote group (Clinozoisite subgroup) Mineralogy Database
- ^ Recommended nomenclature of epidote-group minerals
- ^ Manganiandrosite-(La) mindat.org
- ^ Epidote mindat.org
- ^ Hancockite mindat.org
- ^ Epidote-(Sr) mindat.org
- ^ Tweddillite mindat.org
- ^ Niigataite mindat.org
- ^ 日本から発見された新鉱物たち(一覧)→新潟石 / Niigataite (2016年に復活)、浜根大輔、東京大学物性研究所・電子顕微鏡室
- ^ Piemontite-(Sr) mindat.org
- ^ Uedaite-(Ce) mindat.org
- ^ 新鉱物、セリウムバナジウム赤坂石(Vanadoakasakaite-(Ce))、東京大学物性研究所電子顕微鏡室、2024年10月4日