大韓民国憲法
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大韓民国憲法 | |
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대한민국 헌법 | |
大韓民国第一共和国憲法 | |
施行区域 | 大韓民国 |
効力 | 現行法 |
成立 | 1948年7月12日 |
公布 | 1948年7月12日 |
施行 | 1948年7月17日 |
政体 | 単一国家、共和制、大統領制 |
権力分立 |
三権分立 (立法・行政・司法) |
元首 | 大統領 |
立法 | 国会 |
行政 | 大統領(国務総理が補佐) |
司法 |
大法院 (大韓民国) 憲法裁判所 |
改正 | 9 |
最終改正 | 1987年 |
旧憲法 | 大韓国国制 |
大韓民国憲法(だいかんみんこくけんぽう、韓: 대한민국 헌법 / 大韓民國憲法)は、大韓民国の成文憲法である。
現行の憲法は第六共和国憲法(제6공화국 헌법)とも別称され、1987年10月29日に採択された。
大韓民国憲法は大韓民国成立以前の1948年7月12日に制定され、同年7月17日に公布された。起草者は兪鎮午。それ以降、大韓民国憲法は9回にわたって改憲され、特にそのうちの5回におよぶ改憲は韓国の国家体制を大きく変えるほどの修正がなされた。そのため、5回におよぶ改憲は韓国政体の歴史的な一区切りとされ、それぞれの時期に存続していた憲法には第一から第六までの番号が憲法の通称として付けられている。
沿革
[編集]大韓民国憲法の9回に及ぶ改訂は、1950年代の李承晩による強権独裁政治、1960年代-1970年代の朴正煕による強権独裁政治、そして1980年代の全斗煥による独裁政治とそれに対する民主化運動の帰結という政治的な一連のできごとと密接に関連している。そのため、韓国憲法史は激動の韓国政治史を象徴していると見ることができる。
- 1948年7月12日:大韓民国憲法(第一共和国憲法、または制憲憲法)を制定。同月17日に公布。
- 1952年7月7日:第一次憲法改正として、憲法条文の一部を改訂。
- 1954年11月29日:第二次憲法改正として、憲法条文の一部を改訂。
- 1960年6月15日:第三次憲法改正として、憲法条文の一部を改訂(第二共和国憲法)。
- 1960年11月29日:第四次憲法改正として、憲法条文の一部を改訂。
- 1961年6月16日:5・16軍事クーデターで権力を掌握した国家再建最高会議が、国家再建非常措置法を制定・公布し、憲法の効力を停止する。
- 1962年12月26日:第五次憲法改正として、憲法条文を全面的に改訂した新憲法が公布される(第三共和国憲法)。
- 1969年10月21日:第六次憲法改正として、憲法条文の一部を改訂。
- 1972年12月27日:第七次憲法改正として、憲法条文を全面的に改訂(第四共和国憲法、または維新憲法)。
- 1980年10月27日:第八次憲法改正として、憲法条文を全面的に改訂(第五共和国憲法)。
- 1987年10月29日:第九次憲法改正として、憲法条文を全面的に改訂(第六共和国憲法)。
制憲憲法
[編集]大韓民国憲法の制定は、1948年5月10日の総選挙後、同年6月1日の第一回国会で設置された「憲法起草委員会」が憲法草案を国会に提案する形式で進められた。これにより成立した憲法のことを韓国では制憲憲法と呼称している。当初の原案では、国会の二院制、議院内閣制(責任内閣制)、大法院(最高裁判所)による違憲立法審査が主な内容として盛り込まれていた。しかし、国会議長であった李承晩の圧力によって成立した憲法の主な内容は、国会の一院制、大統領制、憲法委員会による違憲立法審査や統制計画経済などへと大きく修正された。この憲法により、大統領は任期が4年とされ、国会議員の間接選挙によって李承晩が選出された。もっとも、大統領は国務総理の選出に国会の同意が必要であり、制憲憲法下の大統領制度は大統領制に議院内閣制の要素を加えた折衷型の権力制度となっていた。
第一次憲法改正(抜粋改憲)
[編集]朝鮮戦争直前の1950年5月に行われた第2代国会議員選挙で、単独政府作りを推し進めた李承晩に批判的な中道派や南北協商派が多数当選し、国会議員による間接選挙では自身の当選が危うくなったことから、大統領の選出方法を間接選挙から、国民による直接選挙制に改める必要性に迫られて行われた憲法改正である。朝鮮戦争最中の1951年11月30日に最初の憲法改正案を国会に提出した際は圧倒的多数(賛成19名、反対143名、棄権1名)で否決された。その後、白骨団や民衆自決団などの政治ヤクザが国会への抗議デモを行い、1952年5月に臨時首都となっていた釜山一円に戒厳令を布告し、国会議員多数が国際共産党関連嫌疑で検挙され、国会議事堂周辺を警察や政治ヤクザが包囲する中、1952年7月4日に圧倒的賛成多数(賛成163、反対0、棄権3)で可決されて成立した(釜山政治波動)。なお、この憲法改正は与党側が主張する大統領直選制改憲案と野党側の責任内閣制改憲案の両方から改憲条項を抜粋して作られた改憲案であるため、通称「抜粋改憲」と呼ばれている。この改憲に対しては憲法に規定された事前公告手続の不履行や読会手続が欠けるなど手続的な瑕疵があるという指摘が多い。
改憲内容の要点
[編集]- 国務委員(閣僚)は国務総理の推挙で大統領が任命。
- 国務院(内閣)に対する国会の不信任案可決には、在籍議員が3分の2以上出席した上、出席議員の3分の2以上の賛成を必要とする。
- 国会を現行の一院制から二院制にする[注 1]。
- 大統領の選出方法を国会議員による間接選挙から、国民による直接選挙制に改める。
第二次憲法改正(四捨五入改憲)
[編集]1954年5月20日に行われた第3代民議院総選挙で与党・自由党は過半数を上回る議席を得た。そのため、政府と与党は李承晩大統領の三選を可能とするための改憲案を国会に提出したが、11月27日の評決では、在籍議員203名中、賛成135名、反対60名、棄権7名で、憲法改正に必要な136名に1人足らなかったため、国会議長は否決を宣言した。しかし、自由党はいったん否決された改憲を数学の四捨五入原則を持ち出して(203議席の3分の2は135.3であるから四捨五入した135議席が議決定足数であるとして)、11月29日に、27日の否決を取り消し、可決されたことを宣言し、改正案は国会を通過し、宣布された。
改憲内容の要点
[編集]- 初代大統領に限って三選制限を撤廃
- 主権の制約又は領土変更時の国民投票制度導入
- 国務総理制度の廃止と国務委員に対する個別的不信任制の採択
- 大統領欠位時における副大統領の地位継承制度の新設
- 憲法改正の国民発案制と限界条項の新設
- 軍法会議の憲法上根拠の明示
- 自由経済体制の導入
第三次憲法改正(議院内閣制改憲、第二共和国憲法)
[編集]1960年3月15日に実施された正副大統領選挙(通称:3.15不正選挙)における大規模な不正をきっかけにした学生と市民の反発が4月革命へと発展し、李承晩大統領は退陣に追い込まれた。直後の5月2日、許政を内閣首班とした過渡政府が発足し、国会に憲法改正のための憲法改正起草委員会が構成され、議院内閣制を骨格とする改憲案を6月11日に国会に提出し、同月15日に国会を通過し、同日付で公布された。
改憲内容の要点
[編集]- 基本的権利の修正・補完と強化
- 大統領制から議院内閣制への変更
- 複数政党制の保障と憲法における政党の地位向上
- 法官を選挙人団で選出する
- 弾劾裁判所と憲法裁判所の新設
- 中央選挙管理委員会を憲法上の機関とする
- 警察の中立性を規定
- 地方自治体の長を直接選挙で選出する
第四次憲法改正(不正選挙処罰改憲)
[編集]3.15不正選挙を主導した首謀者と不正選挙に抗議した市民を殺傷した警察官などを処罰する目的で、憲法に刑罰不遡及の原則に対する例外規定が新設された。
改憲内容の要点
[編集]- 刑罰不遡及原則に対する例外規定の新設 - 不正選挙関連者の処罰法、反民主行為者の公民権制限法、不正蓄財特別処理法、特別裁判所及び特別検察部組織法など一連の遡及特別法が制定された。
第五次憲法改正(全面改憲。第三共和国憲法)
[編集]張勉政権の与党である民主党内部の派閥争いや、デモの多発で国内が混乱状態を迎え、朴正煕将軍を中心とする軍部の一部が1961年5月16日に軍事クーデター(5・16軍事クーデター)を起こし、張勉政権を倒して三権を掌握した。軍部は国家再建措置法で国政を運営しつつ、第二共和国憲法も同法に反しない範囲において、その効力を認めるようにした。
クーデター翌年、軍政当初の革命公約に基づいて民政移管のための憲法改正作業を進め、1962年12月17日の国民投票で憲法改正案は承認・確定した。
改憲内容の要点
[編集]- 人間の尊厳と価値に関する条項の新設
- 国家安全保障による基本権制限
- 第二共和国時代の二院制国会から一院制国会に変更
- 大統領制採用(1期4年、重任は1回のみ容認)
- 憲法裁判所の廃止と裁判所への違憲立法審査権付与
- 国民投票制度新設
- 経済科学審議会議と国家安全保障会議の新設
- 公職選挙立候補者の所属政党公薦の義務化、所属政党を党籍離脱及び変更した際の議員職喪失規定の新設
第六次憲法改正(3選改憲)
[編集]第6次憲法改正は1962年の第5次改正において「大統領は1回に限って再任することができる」としていた3選禁止規定を撤廃し、朴正煕大統領の3選を可能とするために行われたものである。1969年9月14日深夜、与党・民主共和党の国会議員のみで強引に採決し、国会を通過させた。そして、同年10月17日に行われた国民投票において投票者全体の65%余りの賛成で確定し、10月21日に公布された。
改憲内容
[編集]- 国会議員定数を現行の150人以上200人以下から、150人以上250人以下に増員。
- 国会議員の国務委員(閣僚)兼職の容認
- 大統領に対する弾劾発議をするために必要な定足數の最低人数を30人以上から50人以上に引き上げる。
- 大統領の任期について、継続任期は3期までとする。
第七次憲法改正(維新憲法)
[編集]1971年の大統領選挙で朴正煕大統領は3選を果たした。しかし、最大野党である新民党の大統領候補である金大中に激しく追い上げられた上に、直後に行われた国会議員選挙において、新民党が改憲阻止線の3分の1を大幅に上回る議席を獲得したことで、任期を延長するための憲法改正が事実上不可能になった。そのため、朴は1972年10月17日に非常戒厳令を全国に宣布した上で、国会の解散、政党などの政治活動を中止するなど憲法の一部条項の効力を停止、停止された機能を非常国務会議が代行するといった「10.17非常措置」を断行した。その上で、非常国務会議は1972年10月27日に憲法改正案を公告し、翌11月21日に国民投票での承認を経て、12月27日に公布された。この時の憲法改正は第七次改正で、通称「維新憲法」と呼ばれた。
維新憲法の内容
[編集]- 基本権が制限される事由に国家安全保障が追加、拘束適否審査制の廃止、緊急拘束要件の緩和、任意性のない自供の証拠能力否認条項削除
- 財産権の使用・収益・制限の場合、法律での補償方法と基準を設定、軍人・軍属の二重賠償請求禁止
- 労動3法の主体と範囲の縮小
- 大統領直選制の廃止、大統領選出機構として統一主体国民会議を新設
- 大統領の任期を4年から6年に延長、重任制限は撤廃。
- 大統領に、国会の同意や承認を必要としない事前的・事後的緊急措置権、国会解散権、国会議員定足数の3分の1の推薦権、国民投票付議権、大法院院長を始めとする全ての法官の任命・補職権と懲戒による罷免権を付与
第八次憲法改正(第五共和国憲法)
[編集]1979年10月26日に朴正煕大統領が暗殺(朴正煕暗殺事件)された後、12月12日の粛軍クーデター、翌1980年5月の5・17クーデターで政治の実権を掌握した新軍部は、光州事件を鎮圧した直後に全斗煥将軍を委員長とする国家保衛非常対策委員会(国保委)を設置し、大統領を辞任した崔圭夏の後を継いで1980年9月1日に全斗煥が大統領に就任した。全の下で進められた憲法改正案は10月22日に国民投票で承認され、10月27日から施行された。
第8次改憲の骨子
[編集]- 幸福追求権と環境権の新設
- 自供の証拠能力制限・連座制の禁止・拘束適否制の復活・刑事被告人の無罪推定など基本権保障を強化
- 統一主体国民会議を廃止、大統領の選挙は選挙人団による間接選挙制で、任期は7年単任制に
- 大統領の任期延長のための憲法改正は憲法改正当時の大統領に対しては適用を除外
- 国政調査権の新設、国会権限の回復
第九次憲法改正(第六共和国憲法)
[編集]大統領直選制と基本権保障の拡大・強化を強く求めていた国民の改憲要求を当時の与党であった民主正義党の盧泰愚代表委員が1987年の6・29民主化宣言の形態で受け入れたことで行われた第9次の改憲である。6・29宣言の後、与野党間の政治協商を経て、合意改憲案が準備され、10月27日の国民投票で確定、29日に公布された(施行は翌1988年2月25日)。この9次改憲は、与党と野党の合意でなされたという点で非常に重要な意義を有し、以降、今日まで存続している。
第九次改憲の内容
[編集]- 大統領直接選挙制、任期5年で再任禁止
- 大統領権限の制限
- 非常措置権の廃止
- 国会解散権の廃止
- 前文において、大韓民国臨時政府の法的正当性と4・19民主理念の継承および祖国の民主改革の使命を明記
- 国政監査権の復活
- 国会の権限強化(国会会期制限の撤廃)
- 大法官(最高裁判所長官)は国会の同意を経た上で大統領が任命
- 憲法裁判所の新設
- 国民の基本的人権の強化
- 拘束適否審査制の全面保障
- 犯罪被害者に対する国家支援の新設
- 刑事被疑者の権利拡大
- 許可・検閲の禁止による「表現の自由」の自由拡大
現行憲法(第六共和国憲法)の構成
[編集]現行憲法は、前文と本文10ヶ章130箇条、附則6箇条で構成されている。前文には憲法の成立した由来と基本的精神を明記し、本文には第1章「総綱」、第2章「国民の権利と義務」、第3章「国会」、第4章「政府」、第5章「裁判所」、第6章「憲法裁判所」、第7章「選挙管理」、第8章「地方自治」、第9章「経済」、第10章「憲法改正」の順で規定されている。
前文
[編集]悠久な歴史と伝統に輝く我々大韓国民は3・1運動で成立した大韓民国臨時政府の法統と、不義に抗拒した4・19民主理念を継承し、祖国の民主改革と平和的統一の使命に即して正義、人道と同胞愛を基礎に民族の団結を強固にし、全ての社会的弊習と不義を打破し、自律と調和を土台とした自由民主的基本秩序をより確固にし、政治・経済・社会・文化のすべての領域に於いて各人の機会を均等にし、能力を最高に発揮なされ、自由と権利による責任と義務を果すようにし、国内では国民生活の均等な向上を期し、外交では恒久的な世界平和と人類共栄に貢献することで我々と我々の子孫の安全と自由と幸福を永遠に確保することを確認しつつ、1948年7月12日に制定され8次に亘り改正された憲法を再度国会の議決を経って国民投票によって改正する。
第一章 総綱
[編集]第1章では韓国の国体、領土、国民を規定する他、侵略戦争の放棄や公務員の地位など国家を形成する基本概念を規定している。
- 第1条
- 大韓民国は民主共和国である。
- 大韓民国の主権は国民にあり、全ての権力は国民より出る。
- 第2条
- 大韓民国国民の要件は法律によって定める。
- 国家は法律が定めるところによって在外国民を保護する義務を負う。
- 第3条
- 大韓民国の領土は韓半島とその付随島嶼とする。
- 第4条
- 大韓民国は統一を指向し、自由民主的な基本秩序に即した平和的統一政策を樹立してこれを推進する。
- 第5条
- 大韓民国は国際平和の維持に努力し、侵略戦争を否認する。
- 国軍は国家の安全保障と国土防衛の神聖な義務を遂行することを使命とし、その政治的中立性は遵守される。
- 第6条
- 憲法のもとで締結・公布された条約と一般的に承認された国際法規は、国内法と同様の効力を有す。
- 外国人は国際法と条約が定めるところによってその地位が保障される。
- 第7条
- 公務員は国民全体に対する奉仕者であり、国民に対して責任を負う。
- 公務員の身分と政治的中立性は法律が定めるところによって保障される。
- 第8条
- 第9条
- 国家は伝統文化の継承、発展と民族文化の発達に努力しなければならない。
第二章 国民の権利および義務
[編集]第2章では国民の義務と権利、事後法の禁止や一事不再理の原則を規定している。日本と大きく異なる内容として、第39条で国防の義務が明記されており、徴兵制の基礎となっている点が挙げられる。また、第12条で緊急逮捕が明文化されていることも特徴である。
- 第10条
- 全ての国民は人間としての尊厳と価値を有し、幸福を追求する権利を有する。国家は個人が有する不可侵の基本的人権を確認し、これを保障する義務を負う。
- 第11条
- 全ての国民は法の前に平等である。何人も性別、宗教または社会的身分により政治的、経済的、社会的、文化的生活のすべての領域において差別を受けることはない。
- 社会的特殊階級の制度はこれを認めず、如何なる形態であってもこれを創設することはできない。
- 勲章などの栄典はこれを受けた者にのみ効力を有し、如何なる特権もこれに伴わない。
- 第12条
- 全ての国民は身体の自由を有する。何人とも法律によらない逮捕、拘束・押収・捜索または審問を受けることはなく、法律と適法な手続によらない処罰、保安処分または強制労役を受けることはない。
- 全ての国民は拷問を受けることはなく、刑事上自分に不利な陳述を強要されることはない。
- 逮捕、拘束、押収または捜索をする場合は、適法な手続に基づく検事の申請によって裁判官が発付した令状を提示しなければならない。ただし、現行犯の場合及び3年以上の刑にあたる罪を犯し、逃亡または証拠隠滅の恐れがある場合には事後に令状を請求することができる。
- 何人も逮捕または拘束にあった場合、直ちに弁護人の助力を受ける権利を有する。ただし、刑事被告人が自ら弁護人を求めることができない場合は法律が定めるところにより国家が弁護人を付ける。
- 何人も逮捕または拘束の理由と弁護人の助力を受ける権利の告知を受けること無くして逮捕または拘束されることはない。逮捕または拘束された者の家族など法律が定める者に対しては、その理由と日時、場所が遅滞なく通知されなければならない。
- 何人も逮捕または拘束された場合には、その適否の審査を裁判所に請求する権利を有する。
- 被告人の自白が拷問、暴行、脅迫、拘束の不当な長期化または欺罔その他の方法により、自らの意思による陳述でないと認められる場合、または正式な裁判において被告人の自白がその不利な唯一の証拠である場合には、これを有罪の証拠とし、これを理由として処罰することはできない。
- 第13条
- 全ての国民は行為時の法律により犯罪を構成しない行為で訴追されることはなく、同一の犯罪に対して重ねて処罰を受けない。
- 全ての国民は遡及立法により参政権の制限を受け、財産権を侵害されることはない。
- 全ての国民は自分の行為ではない親族の行為に基づいて起因する不利益な処遇を受けない。
- 第14条
- 全ての国民は居住移転の自由を有する。
- 第15条
- 全ての国民は職業選択の自由を有する。
- 第16条
- 全ての国民は居住の自由の侵害を受けない。住居に対する押収や捜索を行う場合、検事の申請に基づき裁判官が発行した令状を提示しなければならない。
- 第17条
- 全ての国民は私生活の秘密と自由の侵害を受けない。
- 第18条
- 全ての国民は通信の秘密の侵害を受けない。
- 第19条
- 全ての国民は良心の自由を有する。
- 第20条
- 第21条
- 第22条
- 全ての国民は学問と芸術の自由を有する。
- 著作者、発明家、科学技術者と芸術家の権利は法律で保護する。
- 第23条
- 全ての国民の財産権は保障される。その内容と範囲は法律で定める。
- 財産権の行使は公共の福利に適合するようにしなければならない。
- 公共の必要による財産権の収用、使用または制限及びそれに対する補償は法律に基づいて行い、正当な補償を支給しなければならない。
- 第24条
- 全ての国民は法律が定めるところにより選挙権を有する。
- 第25条
- 全ての国民は法律が定めるところによる公務担任権を有する。
- 第26条
- 全ての国民は法律が定めるところによる国家機関に対し文書による請願を行う権利を有する。
- 国家は請願に対して審査する義務を負う。
- 第27条
- 第28条
- 刑事被疑者または刑事被告人として拘禁された者が法律が定める不起訴処分を受けた場合、または無罪判決を受けた場合、法律が定めるところにより国家に正当な補償を請求することができる。
- 第29条
- 公務員の職務上の不法行為により損害を受けた国民は、法律が定めるところにより国家または公共団体に対し正当な賠償を請求することができる。この場合公務員自身の責任を免除されない。
- 軍人、軍属、警察公務員その他法律で定める者が戦闘、訓練など職務執行と関連して受けた損害に対しては法律が定める報償以外に国家または公共団体に公務員の職務上の不法行為による賠償は請求することはできない。
- 第30条
- 他人の犯罪行為により生命、身体に対する被害を受けた国民は法律が定めるところにより国家から救助を受けることができる。
- 第31条
- 全ての国民は能力に従い均等に教育を受ける権利を有する。
- 全ての国民はその保護下にある子女に対し少なくとも初等教育と法律が定める教育を受けさせる義務を負う。
- 義務教育は無償とする。
- 教育の自主性、専門性、政治的中立性及び大学の自律性は法律が定めるところによって保障される。
- 国家は社会教育を振興させなければならない。
- 学校教育及び社会教育を含む教育制度とその運営、教育財政及び教員の地位に関する基本的な事項は法律によって定める。
- 第32条
- 全ての国民は勤労の権利を有する。国家は社会的、経済的な方法により勤労者の雇用促進と適正賃金の保障に努力しなければならず、また法律が定めるところにより最低賃金制を施行しなければならない。
- 全ての国民は勤労の義務を負う。国家は勤労の義務の内容と条件を民主主義的原則により法律によって定める。
- 勤労条件の基準は人間の尊厳性を保障するよう法律により定める。
- 女子勤労は特別な保護を受けて、雇用、賃金及び勤労条件に於いて不当な差別を受けない。
- 年少者の勤労は特別な保護を受ける。
- 国家有功者・傷痍軍警及び戦没軍警の遺族は法律が定めるところにより優先的に勤労の機会を与えられる。
- 第33条
- 勤労者は勤労条件の向上のため自主的な団結権、団体交渉権及び団体行動権を有する。
- 公務員である勤労者は法律が定める者に限り団結権、団体交渉権及び団体行動権を有する。
- 法律が定める主要防衛産業体に従事する勤労者の団体行動権は法律が定めるところによりこれを制限あるいは認めない場合がある。
- 第34条
- 全ての国民は人間らしい生活をする権利を有する。
- 国家は社会保障、社会福祉の向上に努力する義務を負う。
- 国家は女子の福祉と権利の向上のために努力しなければならない。
- 国家は老人と青少年に対する福祉向上のための政策を実施する義務を負う。
- 身体障碍者及び疾病、老齢その他の事由で生活能力のない国民は法律が定めるところにより国家の保護を受ける。
- 国家は災害を予防し、その危険から国民を保護するために努力しなければならない。
- 第35条
- 全ての国民は健康で快適な環境の下で生活する権利を有し、国家と国民は環境保全のために努力しなければならない。
- 環境権の内容と行使に関しては法律で定める。
- 国家は住宅開発政策などを通し、全ての国民が快適な住居生活が送れるべく努力しなければならない。
- 第36条
- 婚姻と家族生活は個人の尊厳と両性の平等を基礎として成立し維持されなければならず、国家はこれを保障する。
- 国家は母性の保護のために努力しなければならない。
- 全ての国民は保健に関して国家の保護を受ける。
- 第37条
- 国民の自由と権利は憲法に列挙されない理由により軽視されてはならない。
- 国民の全ての自由と権利は国家安全保障、秩序維持または公共の福祉のため必要な場合に限って法律により制限することができるが、制限を行う場合も自由と権利の本質的な内容を侵害することはできない。
- 第38条
- 全ての国民は法律が定めるところにより納税の義務を負う。
- 第39条
- 全ての国民は法律が定めるところにより国防の義務を負う。
- 何人も兵役義務の履行により不利益な処遇を受けない。
第三章 国会
[編集]- 第40条
- 立法権は国会に属する。
- 第41条
- 国会は国民の普通、平等、直接、秘密選挙により選出された国会議員によって構成される。
- 国会議員の数は法律によって定め、200名以上とする。
- 国会議員の選挙区と比例代表制その他の選挙に関する事項は法律によって定める。
- 第42条
- 国会議員の任期は4年とする。
- 第43条
- 国会議員は法律が定める職を兼ねる事は出来ない。
- 第44条
- 国会議員は現行犯の場合を除き会期中に国会の同意なしに逮捕または拘禁にされることはない。
- 国会議員が会期前に逮捕または拘禁された場合、現行犯でなければ国会の要求があれば会期中釈放される。
- 第45条
- 国会議員は国会で職務上行った発言と表決に関して国会外での責任を負わない。
- 第46条
- 国会議員は清廉の義務を負う。
- 国会議員は国益を優先し良心によって職務を遂行する。
- 国会議員はその地位を濫用し国家、公共団体または企業体との契約やその処分によって財産上の権利、利益または職位を取得し、または他人のためにその取得を斡旋することはできない。
- 第47条
- 国会の定期会は法律が定めるところにより毎年1回集会し、国会の臨時会は大統領または国会在籍議員4分の1以上の要求によって集会される。
- 定期会の会期は100日を、臨時会の会期は30日を超過することはできない。
- 大統領が臨時会の集会を要求する場合、期間と集会要求の理由を明示しなければならない。
- 第48条
- 国会は議長1名と副議長2名を選出する。
- 第49条
- 国会は憲法または法律に特別な規定がない限り在籍議員過半数の出席と出席議員過半数の賛成により議決される。可否同数である時には否決されたものとみなす。
- 第50条
- 国会の会議は公開とする。ただし出席議員過半数の賛成がある、または議長が国家の安全保障のために必要だと認める場合には公開しないことがある。
- 非公開の議事録内容の公表に関しては法律が定めるところに従う。
- 第51条
- 国会に提出された法律案その他の議案は会期中に議決できなかったことを理由に廃棄されることはない。しかし国会議員の任期が満了した場合にはその限りではない。
- 第52条
- 国会議員と政府は法律案を提出することができる。
- 第53条
- 国会で議決された法律案は政府へ移されてから15日以内に大統領が公布する。
- 法律案に異議がある場合は大統領は第一項の期間内に異議書を付して国会に還付し、その再議を要求することができる。国会の閉会中もまた同じとする。
- 大統領は法律案の一部に対してまたは法律案を修正して再議を要求することはできない。
- 再議の要求がなされた場合、国会は再議に付し、在籍議員過半数の出席と出席議員3分の2以上の賛成を得て再度議決をすれば法律案は法律として確定する。
- 大統領が第一項の期間内に公布や再議の要求をしない場合もその法律案は法律として確定する。
- 大統領は第四項と第五項の規定によって確定した法律を遅滞なく公布しなければならない。第五項により法律が確定した後または第四項による確定法律が政府に移送された後5日以内に大統領が公布しない場合には国会議長がこれを公布する。
- 法律は特別な規定がない限り、公布された日より20日を経過することで効力が発生する。
- 第54条
- 国会は国家予算案を審議、確定する。
- 政府は会計年度ごとに予算案を編成し会計年度開始90日前までに国会に提出し、国会は会計年度開始30日前までこれを議決しなければならない。
- 新会計年度が開始されるまで予算案が議決されない場合は政府は国会で予算案が議決されるまで以下の目的のための経費は前年度予算に準拠して執行することができる。
- 憲法や法律によって設置された機関または施設の維持、運営
- 法律上の支出義務の履行
- 既に予算が承認された事業の継続
- 第55条
- 一会計年度を跨いで継続して支出する必要がある場合には政府は年限を定めて継続費として国会の議決を得なければならない。
- 予備費は総額を国会の承認を得なければならない。予備費の支出は次期国会の承認を得なければならない。
- 第56条
- 政府は予算に変更を加える必要がある場合には追加更正予算案を編成し国会に提出することができる。
- 第57条
- 国会は政府の同意なしに政府が提出した支出予算各項の金額を増加させたり新たな費目を設置することはできない。
- 第58条
- 国債を募集し、または予算外に国家の負担になる契約を締結する場合には政府は予め国会の議決を得なければならない。
- 第59条
- 租税の種目と税率は法律によって定める。
- 第60条
- 国会は以下の内容の条約の締結と批准に同意する権限を有する。相互援助または安全保障に関する条約、重要な国際組織に関する条約、友好・通商・航海条約、主権の制限を伴う条約、講和条約、国家や国民に重大な財政的負担を負わせる条約または立法事項に関する条約。
- 国会は宣戦布告、国軍の海外への派遣、または外国の軍隊の大韓民国領内への駐留に関して同意権を持つ。
- 第61条
- 国会は国政を監査し、特定の国政事案について調査すること、および、これに必要な書類の提出または証人の出席と証言、供述書・意見の陳述を要求することができる。
- 国政監査と調査の手続きその他必要な事項に関しては、法律に定める。
- 第62条
- 国務総理、国務委員または政府委員は、国会およびその委員会に出席し、国政処理状況について報告し、意見を述べ、質問に回答することができる。
- 国会およびその委員会の要求がある場合には、国務総理、国務委員および政府委員は、国会に出席し、質問に答えなければならない。国務総理または国務委員が出席を求められた場合、他の国務委員または政府委員に会議に出席させ、質問に回答させることができる。
- 第63条
- 国会は国務総理または国務委員の解任を大統領に建議することができる。
- 第一項の解任建議は国会在籍議員3分の1以上の発議によって国会在籍議員過半数の賛成がなければならない。
- 第64条
- 国会は法律に抵触しない範囲内で議事と内部規律に関する規則を制定することができる。
- 国会は議員の資格を審査し、議員を懲戒することができる。
- 議員を除名するためには国会在籍議員3分の2以上の賛成がなければならない。
- 第二項と第三項の処分に対しては裁判所に提訴できない。
- 第65条
- 大統領、国務総理、国務委員、行政各部の長、憲法裁判所裁判官、裁判官、中央選挙管理委員会委員、監査院長、監査委員その他法律が定めた公務員がその職務執行において憲法または法律に違背する時には国会は弾劾の訴追を議決することができる。
- 第一項の弾劾訴追は国会在籍議員3分の1以上の発議がなければならず、その議決は国会在籍議員過半数の賛成がなければならない。但し、大統領に対する弾劾訴追は国会在籍議員過半数の発議と国会在籍議員3分の2以上の賛成がなければならない。
- 弾劾訴追の議決を受けた者は弾劾審判がある時までその権限行使が停止される。
- 弾劾決定は公職から罷免されることに尽きて終わる。しかし、これによって民事上または刑事上の責任が免除されるものではない。
第四章 政府
[編集]第一節 大統領
[編集]- 第66条
- 大統領は国家の元首であり、外国に対し国家を代表する。
- 大統領は国家の独立・領土の保全・国家の継続性と憲法を守護する責務を担う。
- 大統領は祖国の平和的統一のために誠実に努力する義務を負う。
- 行政権は大統領を首班とする政府に属する。
- 第67条
- 大統領は国民の普通・平等・直接・秘密選挙によって選出する。
- 第1項の選挙において最高得票者が2人以上の時は国会の在籍議員過半数が出席する公開会議にて多数票を得た者を当選者とする。
- 大統領候補者が一人のみである時はその得票数が選挙権者総数の3分の1以上でなければ大統領として当選されることができない。
- 大統領として選挙されることができる者は国会議員の被選挙権があり選挙日現在40歳に達していなければならない。
- 大統領の選挙に関する事項は法律で定める。
- 第68条
- 大統領の任期が満了する時は任期満了70日前ないし40日前に後任者を選挙する。
- 大統領が欠位となった時又は大統領当選者が死亡し若しくは判決その他の事由により、その資格を喪失した時は60日以内に後任者を選挙する。
- 第69条
- 大統領は就任に際して次の宣誓をする。
- 「私は、憲法を遵守し、国家を保衛し、祖国の平和的統一並びに国民の自由及び福利の増進並びに民族文化の暢達に努力し、大統領としての職責を誠実に遂行することを国民の前に厳粛に宣誓します。」
- 第70条
- 大統領の任期は5年とし、重任することはできない。
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脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ ただし、第一共和国時代は民議院のみ国会議員の選挙が行われ、参議院については実施されなかった。
参考文献
[編集]- 李範燦・石井文廣編著『大韓民国法概説』成文堂
- 尹景徹『分断後の韓国政治 : 一九四五〜一九八六年』木鐸社、1986年11月30日。NDLJP:12173192。
- 尹龍沢・姜京根 編著『現代の韓国法 - その理論と動態』有信堂
関連項目
[編集]外部リンク
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