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純炭粉末

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

純炭粉末(じゅんたんふんまつ 英語:Pure Charcoal)とは、吸着炭の一種である[1][2]。 ただし「医薬品」でなく「健康食品」として製造・販売されている[1][3]

吸着炭は、ヒトの体内の有害物質を吸着し、排出する効果を期待して服用される[1]腎臓病の「医薬品」として医師に処方される吸着炭には、「クレメジン®」がある[4]。この「クレメジン®」と「純炭粉末」を併用する腎臓病患者もいる[5]。 従来の一般的な活性炭とは、原料や製造方法が異なっており、2009年から石川県金沢市に本社のある株式会社ダステックが製造・販売している[2][6]

月刊誌「健康365」(株式会社エイチアンドアイ)で初めて紹介されたのは、2011年11月16日に発売された2012年1月号。特集ページにおいて、原料・製法・特徴などが詳述されている[1]。 いっぽう「純炭粉末」は、一般的な単語の組み合わせに起因し、商標登録のできない名称である[7]。よって、「ダイエタリーカーボン」という名称で商標登録されている[6]。このような背景もあって2020年ごろからは、「純炭粉末」を標榜する多様な吸着炭が出現した[8]

本項では、金沢医科大学で開発され、株式会社ダステックが製造する「純炭粉末」に関して記述する[1][2]

概要

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純炭粉末は、金沢医科大学腎臓内科学教授の友杉直久が開発し、株式会社ダステックが製造する吸着炭である。腎臓を守るための新しい食品素材として開発された[1][9]

慢性腎臓病は、病態の進行により末期の腎不全になると、腎本来の機能が障害される。これによって、身体の恒常性が保てない状態となる。たとえば、乏尿・多尿などの尿量異常、吐き気や食欲不振などの胃腸症状、咳や息苦しさなどの呼吸器症状、動悸、めまい、皮膚のかゆみといった「自覚的尿毒症症状」が現れる[10][11]。 この尿毒症症状は、腎機能の低下に伴いヒトの体内に蓄積された尿毒症毒素が原因の1つとして考えられている[12]。 これに対し、おもに1970年代より粉末活性炭などの炭素系吸着剤を使って尿毒症毒素を除去する取り組みがみられるようになった[13]

一般的な活性炭は、木・竹・椰子殻・胡桃殻などの植物性原料を使用し、化学的または物理的処理(活性化・賦活化)を施した多孔性炭素である[14]。 そのため組成としては、カリウムを主としたミネラル分を豊富に含有している[15][16]。さらに服用の際は、消化酵素など有益なタンパク質も吸着する[17]。 このため、慢性腎臓病患者が長期間服用すると、消化不良を起こす可能性がある。さらに、高カリウム血症高リン血症になる可能性もある。

純炭粉末は、原料に高純度結晶セルロースを使用し、「非賦活炭化法」で製造する。そのため炭素以外のミネラル分が少ない。これが、カリウムやリンの摂取制限のある慢性腎臓病患者でも長期間、安全に摂取できる論拠とされている[18][19]。 また、アルブミンなどのタンパク質吸着はわずかであり[20]、動物を用いた安全性試験においても消化不良や栄養失調の副作用は認められない特徴を有している[21]

原材料および製造方法

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純炭粉末の原材料は、旭化成ケミカルズ株式会社(現旭化成株式会社)が医薬品の賦形剤用途に製造販売している「セオラスPH-101」である[22]

製造方法の特徴である「非賦活炭化法」は、水蒸気によるガス賦活や薬品賦活を施さずに電気炉を用いて1000℃から1300℃に加熱して炭化している[18][22]

用途

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解毒剤

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2011年4月、富山など北陸3県を中心に、ユッケを原因とする集団食中毒が発生した[23][24][25]。 その際、溶血性尿毒症症候群で意識のない患者に純炭粉末が経口投与された。因果関係は特定されていないが、この患者は他の重症患者にみられた消化管穿孔に至らず、溶血性尿毒症症候群も回復。搬送から約60日後に退院した[23]

健康補助食品

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ヒトに有害な物質を吸着し、便として排出させる健康補助食品材料として開発された[1]。たとえば、多種多様な食品添加物、AGEs(終末糖化産物)など食事と共にカラダへ入ってくる物質。あるいは、腸内環境の乱れで生じる二次胆汁酸や尿毒素など[1][2]

食品

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2015年(平成27年)、石川県七尾市出身のパティシエショコラティエである辻口博啓[26]が、お菓子の原料として純炭粉末を採用。洋菓子店「ル ミュゼ ドゥ アッシュ」が製造販売している「黒のバウム」に使われている[27][28]

化粧品

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カーボンブラックなどの代用品として、純炭粉末が大手化粧品メーカーの製品に使用されている[20]

脚注

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  1. ^ a b c d e f g h 腎臓を守る新食品発見!腎臓を蝕む糖化物質[AGE]を追放!大学病院の腎臓内科医が開発した[純炭粉末] 「健康365」(2012年1月号/エイチアンドアイ社)より。
  2. ^ a b c d 体内を浄化しようか純炭で “出す”に特化した世界でいちばん安全な食べる炭 サイト「日本の身土不二」より。2023年8月2日閲覧。
  3. ^ きよらが医薬品ではない理由 サイト「純炭粉末公式専門店」2023年8月2日閲覧。
  4. ^ 球形吸着炭の解説 サイト「日経メディカル」より。2023年8月2日閲覧。
  5. ^ 幅広いリスクをカバーする、という観点でクレメジンときよらを併用している方も沢山いらっしゃいます。 サイト「純炭粉末公式専門店」より。2023年8月28日閲覧。
  6. ^ a b 歴史・沿革 サイト「株式会社ダステック」より。2023年8月28日閲覧。
  7. ^ 出願しても登録にならない商標 サイト「特許庁」より。2023年8月2日閲覧。
  8. ^ 偽物に注意!純炭粉末の選び方。結晶セルロースから作ったダステックの純炭粉末。 YouTube「純炭粉末チャンネル」より。2023年8月2日閲覧。
  9. ^ 友杉直久 サイト「KAKEN」より。2023年8月2日閲覧。
  10. ^ 3.腎臓がわるくなったときの症状 サイト「一般社団法人日本腎臓学会」より。2023年8月2日閲覧。
  11. ^ 腎臓病の症状 サイト「腎臓病なんでもサイト」より。2023年8月2日閲覧。
  12. ^ 尿毒素 サイト「じんラボ」より。2023年8月2日閲覧。
  13. ^ 尿毒症症状は,腎機能の低下に伴い体内に蓄積された尿毒症毒素がその原因の一つとして考えられ,主に1970 年代から粉末チャコールなどの炭素系吸着剤により尿毒症毒素を除去する試みがなされるようになった。 「医薬品インタビューフォーム 慢性腎不全用剤 クレメジン®速崩錠500mg 2023年3月改訂(第4版)」6ページより。2023年8月28日閲覧。
  14. ^ ウィキペディア記事「活性炭」より。2023年8月2日閲覧。
  15. ^ さまざまな研究から、ココヤシのヤシ殻活性炭がカリウムを主としてミネラルを豊富に含有することに注目 「SUNTORY BEVERAGE & FOOD NEWS RELEASE No.SBF1332(2023.2.9)」より。2023年8月28日閲覧。
  16. ^ ミネラルを含む K, Mg, Na, Ca など 「バイオ炭の現状と展望 20213.20(土) 於:福井市 谷田貝光克」より。2023年8月28日閲覧。
  17. ^ 薬用炭はいずれの消化酵素に対しても高い吸着率を示した。「医薬品インタビューフォーム 慢性腎不全用剤 クレメジン®速崩錠500mg 2023年3月改訂(第4版)」23ページより。2023年8月28日閲覧。
  18. ^ a b 純炭粉末は薬品やガスといった余分なものは一切使わないダステックが独自開発した非賦活炭化法(日・米・韓で特許取得)で製造 サイト「純炭粉末公式専門店」より。2023年8月2日閲覧。
  19. ^ ダイエタリーカーボン「純炭」は、高純度結晶セルロースを独自の「非賦活炭化法」で製造しています。 「ダステックプレス Vol.1(2015.4.21)」より。2023年8月3日閲覧。
  20. ^ a b 対談②炭の科学から健康を考える―株式会社ダステックの取り組み―/山岸昌一/樋口正人ANTI-AGING BUSINESS 日本抗加齢協会誌 No.2【電子版】」より。2023年8月3日閲覧。
  21. ^ 人間の1日ぶん目安量の約50倍をラットに28日間食べさせ続けても体重減少は認められませんでした。貧血や栄養失調を起こさせない安全性の高い炭であることが証明されています。 冊子「きよら公式ガイドブック」(株式会社ダステック)。13ページより。
  22. ^ a b 公開特許公報「特開2011-184403」 サイト「特許情報プラットフォーム」より。2023年8月28日閲覧。
  23. ^ a b 健康産業流通新聞 平成23年12月22日 第815号より。
  24. ^ 平成23年4月下旬、焼肉チェーン店で発生した食中毒について サイト「富山県」より。2023年8月3日閲覧。
  25. ^ 飲食チェーン店での腸管出血性大腸菌食中毒の発生について 「食品安全部監視安全課食中毒被害情報管理室」より。2023年8月3日閲覧。
  26. ^ 辻口博啓 サイト「スーパースイーツ」より。2023年8月3日閲覧。
  27. ^ 黒のバウム サイト「ル ミュゼ ドゥ アッシュ」より。2023年8月3日閲覧。
  28. ^ 辻口シェフと食べる純炭のコラボレーション サイト「あるんけ金沢」より。2023年8月2日閲覧。